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姉の城
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早速、コルチカム帝国の建国500年式典の話し合いのため、ユアン殿下、ノア殿下、私、それからそれぞれの側近としてロシェルとユーリアでコルチカム帝国に訪れた。
「いらっしゃいココ、皆さん。」
出迎えてくれたのは姉様だった。
「姉様、相変わらずこの国は花々が綺麗ね。」
コルチカムは、薄紫の可愛い花の名前。
城の周りにはその花を中心としたたくさんの紫色の花で統一されている。
城の中の絨毯やカーテンも紫色で統一されていて、可愛らしく、女の子ならときめく内装となっている。
通された部屋には、ラベンダーで飾られた長テーブルとその上には、紫色のハーブティーが置かれていた。
「帰りにはラベンダーの花束のお土産もあるわ。」
乙女チックな姉様主催のお茶会は、気が利いていて可愛らしくて胸が踊る。
「リリア殿、ミレサ王子は?」
ユアン殿下がそう言うと、リリアが答えた。
「この式典は私が主催者なの。すべて私の好みにしていいと言われているのよ。だからミレサは、話し合いには参加しないわ。今は違う国の接待をしているところよ。」
「そうなのですね。」
1人で主催できるなんてさすがの姉様だ。
きっと自分だけでやりたいと、ミレサ王子に駄々を捏ねたのだろうと想像できた。
「だから、ここには気の知れた人間だけ。ユアン殿下私の呼び方は前みたいにリリアでいいわよ。せっかくだから昔話もしたいわ。」
「…そうか、分かったリリア。」
王妃モードを解いて、リラックスして話す姉様にロシェルが少し警戒するように彼女を見る。
その視線に気づいた姉様がいじわるモードに入った。
にこりと楽しそうに笑って話しかける。
「ロシェル。あなたとこうして話すのも久しぶりね。」
「…そうですね。」
「緊張してるの?」
2人の関係性を知らないノア殿下だけがほのぼのと会話を聞いている。
私とユーリアは、ユアン殿下の前でそんなふうに話すリリアにドキマギしていた。
「…あなたも、お元気そうで楽しそうに王妃をやっていて安心しました。」
ロシェルが優しい表情でそう言う。
小さな子供を見るような表情を浮かべるロシェルがリリアのことを遠く離れていても想っていたのが伝わった。
「ふふ。私は、どこに居たって周りのこと振り回して楽しくやっていけるんだから安心して。」
「それもそうですね。…リリア様ですからね。」
二人の間に流れる素敵な空気に、彼らが離れ離れになったのが今更切なくなった。
ユアン殿下もハーブティーを飲みながらにこやかに話を聞いている。
関係を知っていたのかもしれなくても、こうやって許容してくれるのが嬉しかった。
「というか、ユアン殿下、あなた達の国はどうなっているの?どうしてそんなに短期間で治安が悪化したのよ。」
「…それには、本当に困っているんだ。だからこうして話を受けてくれて本当に感謝しているよ。」
「式典の話ならむしろ有難いのだけど、あなた達の派閥分裂の諍いが面白いことになっているわよね。」
「そうなのです。」
ノア殿下も申し訳なさそうに答える。
「ココがノア殿下と婚約解消する前に解決しないとさらに複雑になるわよ。」
「そうですわよね。…一体なんでこんなことに。」
原因はレイアだと分かっているのだが、わざとそう言ってみた。
「でも、いずれはそんな風になるんじゃないかとも私は思っていたわ。」
「え?」
リリアの意外な言葉に驚く。
「ユアン殿下とノア殿下は違いすぎるもの。それに、ほのぼのとしたあの国がずっとそのままじゃいられないって皆分かっていたはずなのよ。」
ハーブティーを一口飲んでリリアは続けた。
「なにがきっかけになったのかは分からないけど、変わらないままじゃダメって風潮になったのは、いいことなのかもね。」
そう言う彼女の視線は私に向いていた。
「私の力が必要なら言ってねココ。あなたなら、何とかできるような気がしてるわ。」
その言葉になぜかノア殿下も頷いた。
そんなことを言われたって私がなにかできるわけが無い。
「あなたにだって導く力はあるわ。」
私がレイアの力ばかり信じていたことを見抜かれているような気がした。
その後話し合いは、クォーツ帝国がコルチカム帝国の建国を記念した新しい試みに手を貸すということまで決まった。
これを機にもっと助け合う形になればいい。
大体の骨組みが決まったところで話し合いは解散になった。
迎えの馬車が来るまで待っている間、皆それぞれ城で過ごしていた。
私は、式典の予告を監修しているパンフレットに載せようと思って、考えた記事とレイアウトの案を姉様に見せに行こうとしていた。
姉様の部屋に行くと、先に来客が居たようだ。
中から声が漏れ出てくる。
「…ユアン殿下、あまり不安に思う必要はないと思いますわ。ロシェルも知っての通り、仕事もできて人を想う気持ちがちゃんとある人間なのだから、力を合わせていけばそこまで悪くはならないわよ。」
「…そうだね。」
「この立場だから言わせてもらいますけど、もっと歩み寄らないと行けないのはあなたの方なのですからね。」
そんな会話が聞こえた。
ユアン殿下が歩み寄る存在というのは、ノア殿下なのだろう。
王国の一番の問題、派閥争いは実は単純な形をしているのだろうか。
「いらっしゃいココ、皆さん。」
出迎えてくれたのは姉様だった。
「姉様、相変わらずこの国は花々が綺麗ね。」
コルチカムは、薄紫の可愛い花の名前。
城の周りにはその花を中心としたたくさんの紫色の花で統一されている。
城の中の絨毯やカーテンも紫色で統一されていて、可愛らしく、女の子ならときめく内装となっている。
通された部屋には、ラベンダーで飾られた長テーブルとその上には、紫色のハーブティーが置かれていた。
「帰りにはラベンダーの花束のお土産もあるわ。」
乙女チックな姉様主催のお茶会は、気が利いていて可愛らしくて胸が踊る。
「リリア殿、ミレサ王子は?」
ユアン殿下がそう言うと、リリアが答えた。
「この式典は私が主催者なの。すべて私の好みにしていいと言われているのよ。だからミレサは、話し合いには参加しないわ。今は違う国の接待をしているところよ。」
「そうなのですね。」
1人で主催できるなんてさすがの姉様だ。
きっと自分だけでやりたいと、ミレサ王子に駄々を捏ねたのだろうと想像できた。
「だから、ここには気の知れた人間だけ。ユアン殿下私の呼び方は前みたいにリリアでいいわよ。せっかくだから昔話もしたいわ。」
「…そうか、分かったリリア。」
王妃モードを解いて、リラックスして話す姉様にロシェルが少し警戒するように彼女を見る。
その視線に気づいた姉様がいじわるモードに入った。
にこりと楽しそうに笑って話しかける。
「ロシェル。あなたとこうして話すのも久しぶりね。」
「…そうですね。」
「緊張してるの?」
2人の関係性を知らないノア殿下だけがほのぼのと会話を聞いている。
私とユーリアは、ユアン殿下の前でそんなふうに話すリリアにドキマギしていた。
「…あなたも、お元気そうで楽しそうに王妃をやっていて安心しました。」
ロシェルが優しい表情でそう言う。
小さな子供を見るような表情を浮かべるロシェルがリリアのことを遠く離れていても想っていたのが伝わった。
「ふふ。私は、どこに居たって周りのこと振り回して楽しくやっていけるんだから安心して。」
「それもそうですね。…リリア様ですからね。」
二人の間に流れる素敵な空気に、彼らが離れ離れになったのが今更切なくなった。
ユアン殿下もハーブティーを飲みながらにこやかに話を聞いている。
関係を知っていたのかもしれなくても、こうやって許容してくれるのが嬉しかった。
「というか、ユアン殿下、あなた達の国はどうなっているの?どうしてそんなに短期間で治安が悪化したのよ。」
「…それには、本当に困っているんだ。だからこうして話を受けてくれて本当に感謝しているよ。」
「式典の話ならむしろ有難いのだけど、あなた達の派閥分裂の諍いが面白いことになっているわよね。」
「そうなのです。」
ノア殿下も申し訳なさそうに答える。
「ココがノア殿下と婚約解消する前に解決しないとさらに複雑になるわよ。」
「そうですわよね。…一体なんでこんなことに。」
原因はレイアだと分かっているのだが、わざとそう言ってみた。
「でも、いずれはそんな風になるんじゃないかとも私は思っていたわ。」
「え?」
リリアの意外な言葉に驚く。
「ユアン殿下とノア殿下は違いすぎるもの。それに、ほのぼのとしたあの国がずっとそのままじゃいられないって皆分かっていたはずなのよ。」
ハーブティーを一口飲んでリリアは続けた。
「なにがきっかけになったのかは分からないけど、変わらないままじゃダメって風潮になったのは、いいことなのかもね。」
そう言う彼女の視線は私に向いていた。
「私の力が必要なら言ってねココ。あなたなら、何とかできるような気がしてるわ。」
その言葉になぜかノア殿下も頷いた。
そんなことを言われたって私がなにかできるわけが無い。
「あなたにだって導く力はあるわ。」
私がレイアの力ばかり信じていたことを見抜かれているような気がした。
その後話し合いは、クォーツ帝国がコルチカム帝国の建国を記念した新しい試みに手を貸すということまで決まった。
これを機にもっと助け合う形になればいい。
大体の骨組みが決まったところで話し合いは解散になった。
迎えの馬車が来るまで待っている間、皆それぞれ城で過ごしていた。
私は、式典の予告を監修しているパンフレットに載せようと思って、考えた記事とレイアウトの案を姉様に見せに行こうとしていた。
姉様の部屋に行くと、先に来客が居たようだ。
中から声が漏れ出てくる。
「…ユアン殿下、あまり不安に思う必要はないと思いますわ。ロシェルも知っての通り、仕事もできて人を想う気持ちがちゃんとある人間なのだから、力を合わせていけばそこまで悪くはならないわよ。」
「…そうだね。」
「この立場だから言わせてもらいますけど、もっと歩み寄らないと行けないのはあなたの方なのですからね。」
そんな会話が聞こえた。
ユアン殿下が歩み寄る存在というのは、ノア殿下なのだろう。
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