異世界転生したおっさんが普通に生きる

カジキカジキ

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知らない間に

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side 町長

 町長と男爵がやっと開放されて、伯爵領からの帰り道。

「疲れましたね」

「疲れたな」

「……」

 伯爵からは献上されたシルクの褒美がかなり渡されていたのだが、二人とも伯爵家の屋敷に一ヶ月以上閉じ込められていた事もあり疲れ果てていた。

 ゴトゴトと馬車の振動だけが響く車内で、無言の時間だけが過ぎる。
 
 ガタンッ!!
 
「「痛っ」」

 領都から男爵の街へと続く街道は、整備されているとは言え離れるにつれ凸凹も多くなり、また男爵の馬車は町長の持つ馬車よりは立派な事もあって揺れも少なくはあるのだが、やはり三日も乗り続けるとなると尻も痛くなる。

「そう言えば」
 
 まもなく男爵の街に着きそうだと言う所になって、町長がふと思い出したように手紙を開いた。

「何だそれは?」

「町を出る時に、この話の仕掛け人のゴウから帰り道で読んでくれてと言われて渡されていた手紙です」

「……」

 手紙を読んだ町長の顔がどんどん赤くなり、手紙を持つ手も震え出した。

「おい、大丈夫か!?」

 無言で手紙を男爵に渡す町長。

「町長へ
 
 この手紙を読んでいると言う事は、無事に終わって帰っている最中だと思う。
 
 大丈夫だとは思っているが、いつまでも用心して疲れるのも嫌なので早く帰って詳細を教えてくれ。
 
 そうそう、馬車の乗り心地はどうだい? 帰ったら馬車の乗り心地を良くする改良の話もあるので楽しみに帰って来ると良いよ。

ではお土産楽しみに待ってます。
 
 ゴウより」

「ゴーーーーーーウ!!!」

◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

side 伯爵
 
「さて、これからだが……」

「王への報告はどうなさいますか?」

「それは、まだ先でいいだろう。最低でもドレスが作れるだけのシルクが用意出来なければ、こんなちっぽけな布切れを持って行っても、アイツらにいい笑い物にされるだけだ」

「それに、しっかりと生産拠点を構えて、警備やら何やら整えてからでないと何処からでも豚どもが入り込んで来ようとするからな」

「左様でございますな」

「男爵の領地はどうなんだ?」

「バザール男爵領には、およそ三千人の領民が登録されております。そのなかで五百人程の町が三ヶ所、その他は小さな村々ですな。件の町はバザール男爵領では一番南に位置しており、アレの生産を行っている他領とは近い気候かと」

偶々たまたま……か」

 部下たちの報告によると、町に住む元冒険者の男、たしかゴウだったか、が冒険者として国を回っている間に偶々知った話しを覚えており、町で見つけた事が切っ掛けらしい。

「町の場所は?」

「バザール男爵の街とは馬車で約一日の距離ですが、主だった産業もないので街道もそう広くなく、人の行き来も隣のデパートの町の方が盛んなほどです」

「ならば、其方に人が流れるようにしてセールスの町は目立たぬよう開発させるか」

「それが宜しいかと」

「では、その様に取り計らえ。人と金は幾ら使っても良い、しかし目立たぬようにな。他領には絶対知られてはならぬぞ」
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