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辺境伯 x 剣聖
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「ようこそ、ノルトルンドへ!」
ようやくたどり着いたノルトルンド王国は、お世辞にも栄えているとは言い難い状況でした。
国境を越えて、最初の街へと続く街道沿いの土地は放棄されて荒れた畑ばかり。
街に入っても行き交う人々の顔は暗く、背を曲げ、下を向いて歩き。子供たちの笑い声すら聞こえず、ただ風が乾いた土を巻き上げるだけ。
「静か……ね」
エボルス王子の顔も、こんな惨状とは思っていなかったのか、明らかに驚きを隠せない様子。
「俺が国を出た四年前は、戦争が終わった直後だったから分からなかったが……これはあの時より酷くなっているぞ、辺境伯は何をしているんだ」
立ちすくみ、震えるエボルス王子の手をそっと握るアルバス王子。
辺境を守る辺境伯の城へと入り、使節団の代表としてアルバス王子と私、そして折衝役の伯爵がエボルス王子に連れられて辺境伯と面会する。
辺境伯のお城の謁見の間は、よく言えば質実剛健、控え目に言って殺風景な空間でした。
アースガルドの謁見の間は凄く豪華だったものね。
辺境伯さん、かつては精悍だったであろう顔立ちが今は頰がこけ、目が窪み、力なく見えた。
ただ、その眼力だけはまだ鋭い光を宿している。
エボルス王子すら下に見るような横柄な態度で接し、アースガルドの使節団の話もろくに聞こうとしない。
「中央からの支援は遅れ、領民は毎日逃げ出していく。俺一人でどうしろというのだ」
思った通り、辺境は大変な状態だった。
辺境伯は中央議会からの突き上げと、領民の脱走問題だけで精一杯で。その上、他国からの使節団に対応するなんて到底無理な話しだよね。
立ち上がろうとしてよろめく辺境伯を傍らに控える従者が素早く支える。
その従者の男の人は、辺境伯の古い友人であり戦友だったらしく。
辺境伯が弱々しく微笑み、従者の肩に手を置いたその瞬間、互いに向けられる優しい眼差しを私は見逃さなかった。
( 二人は長年の苦楽を共にした仲で、ストロノフ辺境伯(仮)が心を許す唯一の存在だった。
「すまない、コリンド(仮)」
コリンド(仮)はストロノフ(仮)の弱った体を気遣い、領内の巡回も代わりに行い、領民の不満を一身に受け止めていた。
「お前の体の方が大事だ……」とコリンド(仮)が囁くと、ストロノフ(仮)は小さく頷き、「お前がいなければ、俺はとっくに折れていた」
そして見つめ合う二人――
その絆の深さが、疲弊した二人の心にわずかな温かさを生んでいた )
これは戻ったらルナとマリーに共有しなきゃね!
ある事を思い付いた私は『ガマぐちポシェットくん』からジャガイモとトウモロコシを取り出して料理を始めていました。
この使節団の目的は、この作物をノルトルンドにも広めて食料不足を改善させる事。
となれば、やっぱり食べて貰うのが一番手っ取り早い!
ジャガイモとトウモロコシを丁寧に湯がいていったん濾し、クリーミーなポタージュスープに仕上げる。
香ばしい匂いが城内に広がり、疲れた者たちの鼻をくすぐった。
温かく優しい味のスープを辺境伯に差し出すと、従者のコンリド(仮)が毒味をして、ストロノフ(仮)に渡す。
彼は最初は渋る顔をしたけれど、一口飲むなり表情が緩んだ。
「……これは、何だ? こんなに体に染みる味は久しく味わっていなかった」
私は、ストロノフ(仮)辺境伯にニッコリ微笑んで答える。
「この国を救う、雪解けのスープです」
ひとくち飲むほどに、彼の心の氷が少しずつ解けていくのが分かった。
従者も隣でスープを飲み、辺境伯に「殿下、美味いですね」と笑顔を見せる。
二人の間に、再び穏やかな空気が流れた。
話し合いが再開され、私は黒岩の森で出会った男たちをこの領で農民として働かせてほしいとお願いすると、エボルス王子も賛同し辺境伯にお願いしてくれる。
彼らには移動中に、それぞれの作物の育て方をすでに教えてある。彼らの顔は自身に溢れ、もう以前のギラついた雰囲気は無くなっていた。
辺境伯はスープの温かさと皆の誠実さに心を動かされ、ようやく頷いた。
「分かった、試してみよう。あの者たちを受け入れ、新たな作物を植えさせてみよう」
辺境伯の判断に、エボルス王子とアルバス王子もホッとして――
あっ、アルバス王子がエボルス王子の袖をツンてして何か囁いてる。
見つめ合って微笑む二人の王子の姿に、私の魂は悲鳴をあげていた――
公式提供ありがとうございます!
・
・
・
別れの後、一年半が過ぎた。
ノルトルンドの辺境は、少しずつ変化を遂げていた。
ジャガイモとトウモロコシが豊かに実り、食料不足が緩和され始めたのだ。
荒れ畑が再び耕され、黒岩の森の男たちが中心となって新しい農法を広め、領民たちも希望を取り戻しつつあった。
逃げ出す者も減り、子供たちの笑い声が街道に響くようになった。
辺境伯の城にも活気が戻り、彼の頰にはわずかに血色が戻っていた。
従者は辺境伯の傍らで「あのスープが、この景色を作ってくれたのですね」と笑う。
辺境伯も珍しく声を上げて笑い。
「ああ、あかり殿の恩は一生忘れん。あの作物の広がりがこの領を救ってくれた」
二人の絆はより深まり、領民たちからも信頼を集めていた。
アースガルドの使節団がもたらした小さな種が、ノルトルンドに新たな希望の芽を吹かせていた。
この変化が、王国全体に広がるきっかけとなることを、誰もが信じ始めていた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ストロノフ辺境伯
ルーカス・フォン・ストロノフ(45歳)
ノルトルンド国内にて名将の名を挙げると三本の指に入る程の武将、だが武勲は持たず『無勲の名将』として親しまれている。
従者コリンド
コリンド・ミルグノフ(44歳)
先の争い時にストロノフ大隊長の参謀として仕えた知将。古くからの友人かつ戦友の仲はいつしか……。
ようやくたどり着いたノルトルンド王国は、お世辞にも栄えているとは言い難い状況でした。
国境を越えて、最初の街へと続く街道沿いの土地は放棄されて荒れた畑ばかり。
街に入っても行き交う人々の顔は暗く、背を曲げ、下を向いて歩き。子供たちの笑い声すら聞こえず、ただ風が乾いた土を巻き上げるだけ。
「静か……ね」
エボルス王子の顔も、こんな惨状とは思っていなかったのか、明らかに驚きを隠せない様子。
「俺が国を出た四年前は、戦争が終わった直後だったから分からなかったが……これはあの時より酷くなっているぞ、辺境伯は何をしているんだ」
立ちすくみ、震えるエボルス王子の手をそっと握るアルバス王子。
辺境を守る辺境伯の城へと入り、使節団の代表としてアルバス王子と私、そして折衝役の伯爵がエボルス王子に連れられて辺境伯と面会する。
辺境伯のお城の謁見の間は、よく言えば質実剛健、控え目に言って殺風景な空間でした。
アースガルドの謁見の間は凄く豪華だったものね。
辺境伯さん、かつては精悍だったであろう顔立ちが今は頰がこけ、目が窪み、力なく見えた。
ただ、その眼力だけはまだ鋭い光を宿している。
エボルス王子すら下に見るような横柄な態度で接し、アースガルドの使節団の話もろくに聞こうとしない。
「中央からの支援は遅れ、領民は毎日逃げ出していく。俺一人でどうしろというのだ」
思った通り、辺境は大変な状態だった。
辺境伯は中央議会からの突き上げと、領民の脱走問題だけで精一杯で。その上、他国からの使節団に対応するなんて到底無理な話しだよね。
立ち上がろうとしてよろめく辺境伯を傍らに控える従者が素早く支える。
その従者の男の人は、辺境伯の古い友人であり戦友だったらしく。
辺境伯が弱々しく微笑み、従者の肩に手を置いたその瞬間、互いに向けられる優しい眼差しを私は見逃さなかった。
( 二人は長年の苦楽を共にした仲で、ストロノフ辺境伯(仮)が心を許す唯一の存在だった。
「すまない、コリンド(仮)」
コリンド(仮)はストロノフ(仮)の弱った体を気遣い、領内の巡回も代わりに行い、領民の不満を一身に受け止めていた。
「お前の体の方が大事だ……」とコリンド(仮)が囁くと、ストロノフ(仮)は小さく頷き、「お前がいなければ、俺はとっくに折れていた」
そして見つめ合う二人――
その絆の深さが、疲弊した二人の心にわずかな温かさを生んでいた )
これは戻ったらルナとマリーに共有しなきゃね!
ある事を思い付いた私は『ガマぐちポシェットくん』からジャガイモとトウモロコシを取り出して料理を始めていました。
この使節団の目的は、この作物をノルトルンドにも広めて食料不足を改善させる事。
となれば、やっぱり食べて貰うのが一番手っ取り早い!
ジャガイモとトウモロコシを丁寧に湯がいていったん濾し、クリーミーなポタージュスープに仕上げる。
香ばしい匂いが城内に広がり、疲れた者たちの鼻をくすぐった。
温かく優しい味のスープを辺境伯に差し出すと、従者のコンリド(仮)が毒味をして、ストロノフ(仮)に渡す。
彼は最初は渋る顔をしたけれど、一口飲むなり表情が緩んだ。
「……これは、何だ? こんなに体に染みる味は久しく味わっていなかった」
私は、ストロノフ(仮)辺境伯にニッコリ微笑んで答える。
「この国を救う、雪解けのスープです」
ひとくち飲むほどに、彼の心の氷が少しずつ解けていくのが分かった。
従者も隣でスープを飲み、辺境伯に「殿下、美味いですね」と笑顔を見せる。
二人の間に、再び穏やかな空気が流れた。
話し合いが再開され、私は黒岩の森で出会った男たちをこの領で農民として働かせてほしいとお願いすると、エボルス王子も賛同し辺境伯にお願いしてくれる。
彼らには移動中に、それぞれの作物の育て方をすでに教えてある。彼らの顔は自身に溢れ、もう以前のギラついた雰囲気は無くなっていた。
辺境伯はスープの温かさと皆の誠実さに心を動かされ、ようやく頷いた。
「分かった、試してみよう。あの者たちを受け入れ、新たな作物を植えさせてみよう」
辺境伯の判断に、エボルス王子とアルバス王子もホッとして――
あっ、アルバス王子がエボルス王子の袖をツンてして何か囁いてる。
見つめ合って微笑む二人の王子の姿に、私の魂は悲鳴をあげていた――
公式提供ありがとうございます!
・
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別れの後、一年半が過ぎた。
ノルトルンドの辺境は、少しずつ変化を遂げていた。
ジャガイモとトウモロコシが豊かに実り、食料不足が緩和され始めたのだ。
荒れ畑が再び耕され、黒岩の森の男たちが中心となって新しい農法を広め、領民たちも希望を取り戻しつつあった。
逃げ出す者も減り、子供たちの笑い声が街道に響くようになった。
辺境伯の城にも活気が戻り、彼の頰にはわずかに血色が戻っていた。
従者は辺境伯の傍らで「あのスープが、この景色を作ってくれたのですね」と笑う。
辺境伯も珍しく声を上げて笑い。
「ああ、あかり殿の恩は一生忘れん。あの作物の広がりがこの領を救ってくれた」
二人の絆はより深まり、領民たちからも信頼を集めていた。
アースガルドの使節団がもたらした小さな種が、ノルトルンドに新たな希望の芽を吹かせていた。
この変化が、王国全体に広がるきっかけとなることを、誰もが信じ始めていた。
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ストロノフ辺境伯
ルーカス・フォン・ストロノフ(45歳)
ノルトルンド国内にて名将の名を挙げると三本の指に入る程の武将、だが武勲は持たず『無勲の名将』として親しまれている。
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