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ノルトルンド x アルバス
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辺境から移動を続ける事五日、私たちアースガルド王国使節団はノルトルンド王都へと到着しました。
立派な王宮、白い大理石の柱が立ち並ぶ廊下の最奥にある謁見の間は、こちらも白を基調としたデザインで歴史の古さを感じさせながらも魅入るような美しさを保っていました。
ノルトルンドはもともと文化の都とも呼ばれていたそうなのでその片鱗を垣間見た気がします。
ノルトルンド王の玉座の前に、アルバス王子と私が並んで膝をつく。
王の隣にはエボルス王子の他、数人の貴族の姿が見えた。
王の声が、重々しく響いた。
「アースガルド王国からは荷馬車十台分の献上品と聞いていたが……二十台分とは。
帝国からの荷馬車は十五台だったな。それと、第二王子に帝国第一王女を婚約者として遣わされておるが」
王様の側に並ぶエボルス第二王子の表情は変わらない。
だけど、隣のアルバス王子から息を呑んだ音が聞こえた。
扉が開き、足音が近づいてくる。
足音の主が、私たちの目の前で立ち止まる。
「アウレリア帝国、第一王女リリアーナです。以後、お見知りおきを」
銀の髪をゆるく編み、淡い青のドレスに包まれたその姿は、まるで雪の妖精のように儚く、美しかった。
アルバス王子は唇を噛みしめたまま、一瞬も目を合わせようとしない。
・
・
・
王都に入る前日の夜、私はアルバス王子とエボルス王子を呼んで今後予想される展開を話していました。
「帝国からこの会談を潰す横槍が入っているはず。
こちらより多い物資の援助や、王女を婚約者として送って来ているかも知れない」と説明。
「帝国はどこからその情報を知り得る?」
エボルス王子は懐疑的だったけれど、帝国に繋がっている貴族かスパイがきっといるはず……ノルトルンド王国へ手紙を出させたのは、そのあぶり出しも兼ねているのよね。
アルバス王子は「想定内だ」と笑ってみせていたのに。
そして今、目の前に立つ第一王女。
その彼女が、エボルスの婚約者候補として紹介されると――
アルバスはゆっくりと立ち上がる。
膝が震えている。
「……失礼を」
顔は血の気を失い、額に冷や汗が浮かんでいた。
「長旅の……疲れが、まだ……」
言葉を絞り出すように言い終えると、アルバス王子はよろめきながら謁見の間を去っていった。
誰もが息を呑む中、エボルス王子は静かにアルバス王子が出ていった扉を見つめている。
何が想定内だったのよ! メチャクチャ動揺してるじゃないの!
・
・
・
──夜。
月明かりが差し込むアルバスの寝所。
扉が静かに開き、エボルスが入ってくる。
窓辺に座ったままのアルバスは、肩を小さく震わせていた。
月光に照らされた横顔は、まるで壊れそうなガラス細工のようだった。
エボルスが近づくと、アルバスは俯いたまま、途切れ途切れに呟いた。
「……悪かった」
声は、ひび割れていた。
「俺は……お前がいないと、もう……」
言葉が続かない。
喉が詰まる。
「お前の隣に……俺以外が立ってる姿なんて……考えただけで、息ができない」
嗚咽しながらやっとの事で絞り出した言葉。
エボルスは、無言でその前に跪いた。
そして、ゆっくりとアルバスの体を抱き寄せた。
震えが、伝わってくる。
「お前がいなければ……俺だって、何もできない」
エボルスは、耳元で囁いた。
「俺の全ては、お前だけだ」
アルバスは、ようやく顔を上げた。
瞳に涙が溜まり、頬を伝い落ちる。
「……エボルス」
名前を呼ぶ声は、祈りのように切なかった。
二人は、ただ互いの体温だけを頼りに、長い夜を溶かしていった。
・
・
・
翌朝・中庭朝の散策中、エボルスは少し離れた場所で立ち止まるアルバスを見つけた。
視線の先には、庭園の花壇を眺めるリリアーナ第一王女の姿。
アルバスはすぐに目を逸らし、苦しげに眉を寄せた。
エボルスが心配そうに声をかけようとしたその時――
リリアーナが、ふとこちらを振り返った。
そして、頬を染めて、慌てて視線を逸らす。
その仕草がどこか不自然でぎこちなくて、ある人物の目に止まった。
「……おや?」
遠くの茂みの陰から、ルナとマリーが顔を出す。
「マリー、あの頬の赤らみ方……見逃せないわね」
「あれは……間違いなく腐女子の反応――」
二人は目を輝かせ、小声で囁き合った。
「最新刊の『王子と王子の禁断の契り』を仕掛けるタイミングですね」
「了解! 作戦開始よ!」
・
・
・
――昼・会見の席ノルトルンド王の前で、ジャガイモのニョッキ、トウモロコシのスープ、サツマイモの蜜煮が並ぶ。
あかりが自信満々に説明する。
「これらの作物は、アースガルドの領土で収穫されたものですが、ノルトルンドの寒冷地でも育ち、収量も多いのでノルトルンドの食料事情を一変させるでしょう」
王は一口食べて、目を丸くした。
「……これは、美味い!」
隣のリリアーナ第一王女も、小さくスプーンを口に運んで、頬を緩めている。
「サツマイモの甘さ……不思議ですね。こんな味、初めてです」
その瞳が料理だけでなく、作り手であるあかりにも興味深げに向けられていることに、あかりは少し照れた。
会見は和やかに進み、ノルトルンド王も新しい作物に前向きだった。
そして本題へ。
「荷馬車二十台分の種苗と種イモ、そして農業技術者の派遣。第一王子の病状への治療法の共有……全てを受け入れる用意がある」
王の言葉に、アルバス王子が深く頭を下げた。
「感謝します。これが、ノルトルンドの――
そして我々の明るい未来の、第一歩となるでしょう」
その横で、アルバスはまだ少し青ざめた顔をしていたが、エボルスの袖をそっと掴んで、小さく頷いた。
遠くの席で、リリアーナ第一王女が、なぜか二人を交互に見つめ、頬を赤く染めながら、こっそりメモ帳に何かを書き留めていた。
ルナとマリーは、廊下の陰から親指を立て合う。
――腐女子のセンサーは、確実に反応していた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リリアーナ第一王女
リリアーナ・マーガレット・アウレリア(15歳)
アウレリア帝国皇帝の娘
腐女子の才能が見え隠れする才女
立派な王宮、白い大理石の柱が立ち並ぶ廊下の最奥にある謁見の間は、こちらも白を基調としたデザインで歴史の古さを感じさせながらも魅入るような美しさを保っていました。
ノルトルンドはもともと文化の都とも呼ばれていたそうなのでその片鱗を垣間見た気がします。
ノルトルンド王の玉座の前に、アルバス王子と私が並んで膝をつく。
王の隣にはエボルス王子の他、数人の貴族の姿が見えた。
王の声が、重々しく響いた。
「アースガルド王国からは荷馬車十台分の献上品と聞いていたが……二十台分とは。
帝国からの荷馬車は十五台だったな。それと、第二王子に帝国第一王女を婚約者として遣わされておるが」
王様の側に並ぶエボルス第二王子の表情は変わらない。
だけど、隣のアルバス王子から息を呑んだ音が聞こえた。
扉が開き、足音が近づいてくる。
足音の主が、私たちの目の前で立ち止まる。
「アウレリア帝国、第一王女リリアーナです。以後、お見知りおきを」
銀の髪をゆるく編み、淡い青のドレスに包まれたその姿は、まるで雪の妖精のように儚く、美しかった。
アルバス王子は唇を噛みしめたまま、一瞬も目を合わせようとしない。
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王都に入る前日の夜、私はアルバス王子とエボルス王子を呼んで今後予想される展開を話していました。
「帝国からこの会談を潰す横槍が入っているはず。
こちらより多い物資の援助や、王女を婚約者として送って来ているかも知れない」と説明。
「帝国はどこからその情報を知り得る?」
エボルス王子は懐疑的だったけれど、帝国に繋がっている貴族かスパイがきっといるはず……ノルトルンド王国へ手紙を出させたのは、そのあぶり出しも兼ねているのよね。
アルバス王子は「想定内だ」と笑ってみせていたのに。
そして今、目の前に立つ第一王女。
その彼女が、エボルスの婚約者候補として紹介されると――
アルバスはゆっくりと立ち上がる。
膝が震えている。
「……失礼を」
顔は血の気を失い、額に冷や汗が浮かんでいた。
「長旅の……疲れが、まだ……」
言葉を絞り出すように言い終えると、アルバス王子はよろめきながら謁見の間を去っていった。
誰もが息を呑む中、エボルス王子は静かにアルバス王子が出ていった扉を見つめている。
何が想定内だったのよ! メチャクチャ動揺してるじゃないの!
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──夜。
月明かりが差し込むアルバスの寝所。
扉が静かに開き、エボルスが入ってくる。
窓辺に座ったままのアルバスは、肩を小さく震わせていた。
月光に照らされた横顔は、まるで壊れそうなガラス細工のようだった。
エボルスが近づくと、アルバスは俯いたまま、途切れ途切れに呟いた。
「……悪かった」
声は、ひび割れていた。
「俺は……お前がいないと、もう……」
言葉が続かない。
喉が詰まる。
「お前の隣に……俺以外が立ってる姿なんて……考えただけで、息ができない」
嗚咽しながらやっとの事で絞り出した言葉。
エボルスは、無言でその前に跪いた。
そして、ゆっくりとアルバスの体を抱き寄せた。
震えが、伝わってくる。
「お前がいなければ……俺だって、何もできない」
エボルスは、耳元で囁いた。
「俺の全ては、お前だけだ」
アルバスは、ようやく顔を上げた。
瞳に涙が溜まり、頬を伝い落ちる。
「……エボルス」
名前を呼ぶ声は、祈りのように切なかった。
二人は、ただ互いの体温だけを頼りに、長い夜を溶かしていった。
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翌朝・中庭朝の散策中、エボルスは少し離れた場所で立ち止まるアルバスを見つけた。
視線の先には、庭園の花壇を眺めるリリアーナ第一王女の姿。
アルバスはすぐに目を逸らし、苦しげに眉を寄せた。
エボルスが心配そうに声をかけようとしたその時――
リリアーナが、ふとこちらを振り返った。
そして、頬を染めて、慌てて視線を逸らす。
その仕草がどこか不自然でぎこちなくて、ある人物の目に止まった。
「……おや?」
遠くの茂みの陰から、ルナとマリーが顔を出す。
「マリー、あの頬の赤らみ方……見逃せないわね」
「あれは……間違いなく腐女子の反応――」
二人は目を輝かせ、小声で囁き合った。
「最新刊の『王子と王子の禁断の契り』を仕掛けるタイミングですね」
「了解! 作戦開始よ!」
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――昼・会見の席ノルトルンド王の前で、ジャガイモのニョッキ、トウモロコシのスープ、サツマイモの蜜煮が並ぶ。
あかりが自信満々に説明する。
「これらの作物は、アースガルドの領土で収穫されたものですが、ノルトルンドの寒冷地でも育ち、収量も多いのでノルトルンドの食料事情を一変させるでしょう」
王は一口食べて、目を丸くした。
「……これは、美味い!」
隣のリリアーナ第一王女も、小さくスプーンを口に運んで、頬を緩めている。
「サツマイモの甘さ……不思議ですね。こんな味、初めてです」
その瞳が料理だけでなく、作り手であるあかりにも興味深げに向けられていることに、あかりは少し照れた。
会見は和やかに進み、ノルトルンド王も新しい作物に前向きだった。
そして本題へ。
「荷馬車二十台分の種苗と種イモ、そして農業技術者の派遣。第一王子の病状への治療法の共有……全てを受け入れる用意がある」
王の言葉に、アルバス王子が深く頭を下げた。
「感謝します。これが、ノルトルンドの――
そして我々の明るい未来の、第一歩となるでしょう」
その横で、アルバスはまだ少し青ざめた顔をしていたが、エボルスの袖をそっと掴んで、小さく頷いた。
遠くの席で、リリアーナ第一王女が、なぜか二人を交互に見つめ、頬を赤く染めながら、こっそりメモ帳に何かを書き留めていた。
ルナとマリーは、廊下の陰から親指を立て合う。
――腐女子のセンサーは、確実に反応していた。
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リリアーナ第一王女
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腐女子の才能が見え隠れする才女
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