落ちこぼれ一兵卒が転生してから大活躍

きこうダきこう

文字の大きさ
69 / 224
第13章 依頼

第69話 頼み事(アルバイト)2~洞窟のクリスタル~

しおりを挟む
「洞窟のクリスタルを?」「ああ、そうなんだ」

 ある日兄ちゃんから夕ご飯を一緒に食べながら相談があると言われ、たまたま一緒になったアリスと話を聞いているところであった。

「前にアリスの誕生日のプレゼントを作ってもらうためにクリスタルを持ってった宝石彫刻師さん覚えてるか?」「うん」

「あの人が注文を受けた品を作るのに、あのクリスタルが大量に必要みたいで取りに行って欲しいって頼み事を学校に出したんだ」「その頼み事が何でSクラス者限定にされてるの?」

 そう、今回の相談とは"洞窟のクリスタル大量納品、Sクラス"という頼み事を一緒にやらないかというものだった。

「俺も気になって事務所に聞きに行ったら、(まだ表沙汰にはなってねぇんだが、あの洞窟内でまた見掛け出した奴がいるんだよ、"ロックサイ"を)」「「ええっ!?」」

 去年の僕達の合同授業の際に現れて僕が倒したロックサイと同じ奴がまた?

「洞窟に用があって中に入った生徒や先生が何回かロックサイらしき奴を見掛けたみたいで、去年の事もあって一応Sクラス限定にしたみたいなんだ」そうなんだ。

「ただ相手も出来るだけ早くと要求しているみたいだし、報酬が凄く良いもんだからお前を誘って次の休日にでも行こうかと思って相談をしたんだ」

「うん。次の休日なら特に用事はないから大丈夫だけど」「よっしゃ! なら俺らとメリッサの3人で······」「お兄ちゃん」「ん? 何だアリス」「私も、行きたい」「「えっ?」」

 恐らくお姉ちゃんを含めた3人で行こうと言い掛けたところで、アリスが自分も行きたいと言い出した。

「でもお前、大丈夫なのか?」「うん。レックスやお兄ちゃん達と一緒だったら大丈夫よ」と聞いて兄ちゃんは僕を見た。

 僕も学年末の実技試験の時の事を振り返り、あの時も大丈夫だったから、問題無いだろうと思い首を縦に振った。

「分かった。じゃあ4人で行くとしよう」「「うん!」」と決めてその日は解散となった。


 そして当日、洞窟前には兄ちゃんとお姉ちゃん、念のためにベアーズを連れた僕、そしてアリスだけがいるはずなんだけど······。

「今日はよろしくお願い致します、アッシュ先輩」「あぁ」なぜかマーシュもいたのであった。

 アリスが後日今日の事を話したみたいで、心配だから付いて行くよと言われ、アリスも人手が多い方が良いだろうと考えて来てもらったとの事だ。

「まぁ取り敢えず行こっか」兄ちゃんがそう言って洞窟の中に入った。 

 クリスタルがある部屋までは既に明かりなどが整備されているため、今回はヴァンパイアバット達の部屋には寄らず直接向かった。

 部屋に向かいながら兄ちゃんやお姉ちゃんが僕にアリスとマーシュの事で話し掛けてきた。

「(良いのかよレックス。あれ)」「(良いも悪いも誰と付き合うかはアリスの自由だし、それに······)」「(それに?)」「(この方があの未来を回避出来る可能性が高いかもしれないし)」「(かもしれねぇけどよぉ)」

 そこまで言ったところでお姉ちゃんが兄ちゃんの肩に手を当て、それ以上はと言わんばかりに首を横に振った事もあり兄ちゃんも何も言わなくなった。

 その間もアリスはマーシュと2人で話をし続けていた。

 そしてあのクリスタルの部屋に着き、初めて訪れたアリスとマーシュは驚いていた。

「それで兄ちゃん、どれだけ必要なの?」「あぁ」と兄ちゃんは近くのそこそこの大きさのクリスタルを指し、「あれぐらいの大きさのを5、6個で十分だ」「じゃあ、1人1個運べば良いぐらいだね」「そうだな」

 ということで各自1個ずつ(ベアーズの背中にも1個背負わせた)クリスタルを持ったところで部屋を出た。

 部屋を出てからも特に何も起きずに出口の見える辺りまで来た所で、突然ベアーズが立ち止まって後ろを向いた。

「どうした? ベアーズ」真後ろを歩いていた僕が聞いた直後にベアーズは洞窟の奥に駆けて行った。

「あっ、ベアーズ! ごめん、兄ちゃん。追い掛けて行くからこれ持ってって」と言って僕が持っていたクリスタルを兄ちゃんに押し付けてベアーズを追った。

「あ、おい! レックス!!」兄ちゃんが叫んだが僕には聞こえてなかった。


 かなり奥まで走って行ったみたいで全然姿が見えないでいたが、ようやく追い付いてベアーズの姿が見えた。

「ったくお前は、どこまで行く気なんだ?」と聞いたが、ベアーズはずっと奥を見続けていた。

 その時後ろから「レックスーー!」と声が聞こえたので振り返ったら、アリスが1人でこっちに向かって来ていた。

「ア、アリス!?」「ハァ、ハァ、ベアーズはいた?」「いたけど、何で1人で来たんだよ!」「だって、心配だったから」「だからって、あんな事があったのに1人で来ること無いだろ!」一言一言の語尾を荒げてアリスにそう言い寄った。

「レックス、何をそんなに怒ってるの?」「だから!」「今の事だけじゃないでしょ?」「えっ?」

「洞窟に入ってからお兄ちゃんやお姉ちゃんとヒソヒソ話してたし、最近私と接する時も何かイライラしてるし」「そ、そんなこと······」「ねぇ、また私にだけ何か隠してるんじゃないの?」

(ギクッ!)「やっぱりそうなのね」「そ、そんなこと」「じゃあ何でそんなイライラしてるのよ!」「そ、それは······」その直後、突然ベアーズが奥を見据えたまま唸りだした。

 僕らもその方向を見たら、奥からあのロックサイが現れたのだ。

(っ!!)僕らは一瞬緊張してしまったが、よく見たら目の前のロックサイは身体のサイズがやや小さかった。

 そのためすぐ緊張感も抜け、(ひょっとして、ロックサイの子供?)と思えるぐらいになった。

 僕が近付こうとしたら驚いて奥に走り去ってしまった。流石に気になったので、アリスに「追ってみよう」「うん」と声を掛けて後を追うことにした。


 少し進んだところでさっきの子供のロックサイともう1匹、明らかに大人のロックサイがいた。

 2匹を見掛けた事で僕達はその場でたじろいたが、ベアーズはお構いなしにと子供のロックサイに近付いた。

 十分近付いたところでベアーズは子供のロックサイに何か語りだし、子供のロックサイもベアーズに何か言い返しているみたいだった。そして、ついには2匹でじゃれ合いだしたのだった。

 その光景を僕達はただじっと見ていたが、アリスが急にロックサイに歩み寄ろうとしたので、「アリス!」と声を掛けたが、「大丈夫」と言ってさらに近付いた。

 そして、「さっきは驚かせてごめんね」とベアーズとじゃれていた子供のロックサイに近付いて言った。

 そうしたら子供のロックサイもアリスに近付き、体をアリスに擦り付けた。それに対してアリスも「くすぐったいわ」と反応していた。

 直後に大人のロックサイもアリスに近付き、アリスが「別にあなた達をどうにかしようと来たわけじゃないのよ」と言いながら大人のロックサイの顔を撫でた。

 それにロックサイも反応してアリスの手を擦り返していた。

 その光景を見て僕が「怖くないの?」と聞いたら、「うん、全然。きっと私達が勝手にロックサイは恐ろしいモノだと思い込んでいただけなのよ」と答えた。

 それを聞いて僕は(思い込んでいた。考えすぎていた······)と自問した。

 そして1つの答えを出したところでアリスに「行こっか」と声を掛け、ロックサイの親子に別れを言ってその場を離れた。


 少し戻った所で、「アリス、さっきの事だけど」「さっきって?」「何か隠し事してるんじゃ無いかって」「ああ」

「アリスの言う通り、アリスには黙ってたんだけど······」「うん」「実は、マーシュがあの水晶玉に映された中央の男だったんだよ」「······えっ?」

 その後僕は秘密にしていた前世の事や、アリスとの様子を見て色々思い込んだり考えすぎていたことを正直に話した。

「そうだったんだ」「うん。だからこのままの方があの未来を回避出来るはずなんだと思ってアリスには黙ってたんだ」

「ありがとう、教えてくれて。でも大丈夫よ。今の話を聞いたからってマーシュとの関係を変えるつもりはないし、もし本当にマーシュがレックスを刺すような事にでもなったら、絶対に止めるように説得するから」

「はは、そうなった時には期待してるよ」「うん!」そこまで言い合えたところで出口へ向かった。


 洞窟の外で兄ちゃん達が待っていてくれたのでロックサイの親子に遭遇した事を話した。流石に皆驚き心配してくれたが、大丈夫だと伝えた。

 その後はさっそく王都に戻って宝石彫刻師さんに取ってきたクリスタルを渡して報酬をもらった。

 そして学校に戻って先生にロックサイの親子の事を報告し、今後の対応をしてもらうようにしたのだった······。

 ちなみに、今回の報酬も兄ちゃんは全額僕に渡してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います

町島航太
ファンタジー
 異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。  善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。  しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。  存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。

SE転職。~妹よ。兄さん、しばらく、出張先(異世界)から帰れそうにない~

しばたろう
ファンタジー
ブラック企業で倒れたSEが、 目を覚ますと――そこは異世界だった。 賑やかなギルド、個性豊かな仲間たち、 そして「魔法」という名のシステム。 元エンジニアの知識と根性で、男は再び“仕事”を始める。 一方、現実世界では、 兄の意識が戻らぬまま、妹が孤独と絶望の中で抗っていた。 それでも彼女は、心ある人々に支えられながら、 科学と祈りを武器に、兄を救う道を探し続ける。 二つの世界を隔てる“システム”の謎が、やがて兄妹を結びつける。 異世界と現実が交錯するとき、物語は再起動する――。 《「小説家になろう」にも投稿しています》

異世界デバッガー ~不遇スキル【デバッガー】でバグ利用してたら、世界を救うことになった元SEの話~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した元システムエンジニア、相馬譲(ユズル)。異世界転生で得たスキルは、世界の情報を読み取り「バグ」を見つけ出す【デバッガー】。攻撃力も防御力もない外れスキルと思われたが、その真価は世界の法則すら捻じ曲げるバグ利用にあった! モンスターの行動、魔法の法則、スキル限界――あらゆるシステムの穴を突き、元SEの知識で効率的に攻略していくユズル。不遇職と蔑まれながらも、規格外の力でダンジョンを蹂躙し、莫大な富と影響力を築き上げる。 頼れる騎士、天才魔道具技師、影を歩むダークエルフといった仲間と共に、やがてユズルは、この世界そのものが抱える致命的な「システムエラー」と、それを巡る陰謀に直面する。これは、不遇スキルで世界のバグに挑む、元SEの異世界成り上がり譚!

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

処理中です...