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第24章 王国騎士団

第179話 合同大遠征

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 ある日パーシバル団長はお城のある人物に呼ばれその人物の下へ向かっていた。そして呼び出した人物の部屋の前に着きコンコン! 「パーシバルです」「入れ」「失礼します。お呼びでしょうか? グレン王子」とサンドリア王国の王子であるグレン・サンドリアの下を訪れた。

「実はな、昨日エルフ族から報せが届いてな。その内容が亜人族領の魔物達が突然大量に南下して来ているというものだ」「何ですって!?」

「しかも南下して来ているのがちょうどヒト族とエルフ族の領境辺りだということでこちらにも報せてくれたみたいだ」「そうでしたか」

「あぁ。向こうは討伐隊を組織して向かわせると伝えてきたんだが、こちらも当然······」そこまで言ってグレン王子はパーシバル団長を見た。

「分かりました。そのように対応致します」「うん。頼んだぞパーシバル」「はっ!」と返事をして退室した。

 
 パーシバル団長は早速騎士団本部に戻るとハリー、シュピーゲル両隊長とアッシュに魔物達の大量南下の事を伝え、シュピーゲル隊長に偵察隊を組織して向かわせるよう指示し、その上で3人に各々討伐隊を組織するよう指示した。

 パーシバル団長に指示され各部隊魔物討伐へ向かう部隊が編成され、当然僕達第1小隊も選出された。そしてエルフ族と共に迎え撃つ場所へ向かった。

 現地では先に向かっていた支援部隊や魔法部隊と武闘部隊の先遣隊によって既に前線基地が設けられていた。

 基地に着いてパーシバル団長や兄ちゃんら隊長達がエルフ族側の代表者らと情報交換や作戦会議を行いだし、その間は割り当てられたテントにて待機する事となった。

 暫くジャックらと雑談した後、皆に一声かけて空気を吸いに外に出た。外に出たところで周りを見渡し(まるでダークエルフと戦う前にいた野営地のようだなぁ)と感じた。

 そしてエルフの人達を見ていてある人物の事を思い出し、(今頃どうしてるのかなぁ、ロースは······)と物思いに更けっていた。

 
 その時突然「レックスーーっ!」僕を呼ぶ声が聞こえたのでそちらを振り返ってみたら、「えっ······ロ、ロース!?」なんと先ほど思っていたロースがこちらに駆け寄ってきたのだった。

「レックス! 久しぶり!」「う、うん久しぶり。ロースも来てたんだ?」「うん! からねっ!」「ある理由?」「今大丈夫?」「う、うん。大丈夫だけど」「なら一緒に来て!」ロースに手を引かれてある場所に向かった。

 そして目的の場所に着いたところで「レックス、あそこ見て」と言われてロースが指した方向を見たら、「っ! ダ、ダークエルフ!?」そこにはダークエルフ族の1人がいたのだ。

「いやそっちも気になるけど、その隣のエルフの彼の方だよ」「エルフの?」ロースの言った通り、ダークエルフの隣にエルフ族の男性がいた。

「あの人、見覚えない?」「え?」そう言われてその男性をよく見たら、確かにどこかで見たような······あっ。

「ま、まさかあの人······」「そう。あの時ギルドのクエストで捜索したエルフの彼だよ」「じゃあ、一緒にいるダークエルフの人って?」「うん。あの村の人だよ」

「ど、どういう事?」「実は、僕達の卒業式の後すぐに彼がダークエルフの彼女を連れて里に戻ったんだ。その時仲介役として僕も同席したんだよ。それで彼が父親である里の長を説得して2人の仲を認めてもらったんだ」「そうなんだ」「うん。それから村同士の交流も始まって、今ではすっかりそれぞれの村の人同士も仲良くなったんだ」「凄いじゃない!」

「本当に。僕もこんなに早く実現するなんて思ってもみなかったから最初は驚いたよ。それで今回の一件を聞いてダークエルフの方からも人を派遣してくれたんだよ」「まさかダークエルフと一緒に戦う事になるなんて······」

「あの時のベアーやヴァンパイアバット、ロックサイほどじゃないだろうけど驚いただろ?」「うん、本当に」

 などとロースと話していたらエルフの彼が僕達に気付いて手を振ってくれ、僕達も振り返したところでその場を離れ、ロースとも別れてテントに戻った。

 
 テントに戻ったところで「どこ行ってたんだ? レックス」ジャックが聞いてきたから「テントを出たところでロースと偶然再会したんだよ」

「えっ、あいつも来てるのか!?」「うん。おまけに······」ジャック達に去年ロースと受けた例のクエスト内容を説明し、今回そのダークエルフの村人も一緒に戦ってくれる事を話した。

「ダ、ダークエルフも一緒に!?」「そ、そりゃあ凄い」ジャックやライアンはもちろん、同じテントにいた多くの人達が僕達の話を聞いてとても驚いていた。

 その時外から「武闘部隊! 集合!」兄ちゃんの集合の合図がかかり、僕達はテントの外に出て整列した。

 
「今から今回の作戦と我々の役割などを説明する!」と切り出し、色々な説明が始まった。

 まず現在南下してきている魔物は、偵察部隊の報告でゴブリンにオーク、トロルといったお馴染みの奴らから、サイクロプスやケルピー、グリズリーなどの歩行型の種類と、フッケバインやコンドル、ワイバーンにグリフォンなどの飛行型の種類が総勢二、三千体に上るとの事で、恐らくあと2、3日でこの辺りにやって来ると予想されると伝えられた。

 それを聞いて僕達はとても驚いた。そのうち僕達武闘部隊は歩行型の魔物を、魔法部隊は飛行型の魔物を相手にし、エルフ族側も半分ずつ分担して相手にする事となった。

 そして僕達の中での戦い方としては、全体 (30小隊)を二組に分け、先に戦う組と後で戦う組に分け、一定時間で随時交代する事とした。それからさらに15小隊を3小隊ずつ5組に分け、その中で連携しあって迎え撃つ事となった。

 僕達は兄ちゃん達の隊とカールやレイルらが所属している第2小隊と一緒に組む事となった。

 この後は各組に別れて作戦会議が行われ、魔物達が近付いて来るのを待つ事となった。


 そして予測通り2日後に魔物達がやって来たため、僕達は迎え撃つ場所へ出陣した。場所に着いたところで前方を見たら、まだ少し距離があるが確かに大量の魔物達がこちらに向かって来ている事が分かった。その光景を見て僕達は改めて緊張感を持ち出した。

 暫くして······「突撃ー!」兄ちゃんの合図で僕達は魔物達に向かって駆け出した。

 目の前から僕達が向かって来ているのが分かっているはずなのに、魔物達は一瞬も怯えたり立ち止まる事もなく僕らの方へ向かって来た。そして······ついに両者が激突した。

 僕達武闘部隊や一部のエルフ族は剣などで目の前の魔物達を倒して行き、魔法部隊や多くのエルフ族は弓や魔法で上空の敵を倒していった。向こうも負けじと反撃をしてきて一進一退の攻防が続き、暫くして武闘部隊の交代組が近付いて来たのを見て「各自状況に応じて交代だ!」と兄ちゃんが叫んだ。

 僕達もひとまず目の前の相手を倒したところで交代した。

 
 そして一旦前線基地まで後退し、傷ついた者は随時救護所で支援部隊の治療を受け、その他の者は各自のテントにて休息をとった。

 僕達は皆テントに戻って休憩し、「あ、あいつら、俺達が突撃してくるのを見ても全然物怖じせずに突っ込んできたよな?」「うん」「普通なら一瞬でも怯むはずだろ」「確かにそうだよな」休みながら皆で魔物達が一心不乱に向かって来た事に違和感を持った事を話していた。

(確かに、これまで遭遇してきた奴らも突然目の前に僕達が現れたりしたら驚いていたし、ましてやあんなにもいたのなら少しぐらいは一瞬でも怯えてもおかしくないはずなのに······)僕も1人でそう考え込んでいた。

 
 そのうち交代の時間が近付いたので僕達は再び前線に向かった。そして状況を見てもう一組と交代し、目の前の魔物達を相手にしだした。

 このように出撃と休息を何回も繰り返し続けて戦った。そんなある時「ぐっ!」僕は敵の攻撃を受け深手を負ってしまった。

 すぐに後退しなければならないというほどではなかったのでそのまま戦い続け、次に交代した時オリバー隊長に一声かけて救護所に直行した。

 
 救護所に着いて中を覗いたら、ちょうどアリスが別の人の治療を終えたところだったので、「こちらもお願いします」と声をかけ、「今行き······レックス!?」と驚かれ、「よろしく、アリス」とアリスに頼んだのであった······。

「はい、終わったわよ」「ありがとう」「全く。本当にアンタは怪我をする時は大怪我をしてくるんだから」「ハハハ。どうもすいません」と平謝りをして救護所を出た。

(ああ言われても仕方がないよなぁ)と思いながらテントに戻っていたら、キラン! 突然ある方向から何かを感じとった。

 
(えっ?)突然の事で僕もその場に立ち尽くした。(い、今のは?)そう思って再び目を閉じて集中スキルを発動させた。すると先ほどと同じ方向から反応を感知したのだった。

 すぐに目を開け反応を感知した場所を確認したら、少し離れた場所に存在していた森林部分であった。

(あの森から。でも何で?)と思っていたら、聖なる短剣がキラリと光ったように見えた。

(まさか、この剣が······ということは、あそこにいるのって······)そう思ったら急いでテントに戻った。

 
 テントに戻るやすぐオリバー隊長に声をかけ「オリバー隊長」「ん? 何だ? レックス」「実は······」先ほど感じた反応の事を伝えた。

「ホントか!?」「はい。この短剣が見せてきましたので間違いないかと」と黒い短剣を見せて言った。

 オリバー隊長もその短剣の事は認識していたので、「確かに。ちょっと待ってろ······」とオリバー隊長は立ち上がってどこかへ向かった。そしてすぐパーシバル団長らを連れて戻って来た。

「レックス君、本当かね? 離れた森林部分で何かの反応を感知したと言うのは?」「はい。間違いありません」

 断言した僕の様子を見てパーシバル団長は少し考えた後、「アッシュ!」「はい!」「次の回お前達と第2小隊だけで行けるか?」と兄ちゃんに尋ねた。

 すると兄ちゃんが「っ! はい、問題ありません! 今の相手の数であれば大丈夫です!」と答えたので、「分かった。すぐハリーにもこの事を伝えてきてくれ!」「はっ!」と団員の1人がテントを出て行った。

 その後「第1小隊! 私とハリーと共にその森林へ向かい、反応の正体を確かめに行くぞっ!」「「了解!」」と僕達に命じた。

 
 それからすぐにハリー隊長が数人の隊員を連れて来たため、パーシバル団長とハリー隊長、彼らの部下数人と僕達第1小隊は森林地帯へ向かった。

 森林に入ってからは僕が先頭を歩いて慎重に進み、少しして先ほど感じた反応を感知した事をパーシバル団長に伝えたところで団長が先頭を歩きだし目的の場所に向かった。

 目的の場所に着く直前に団長がその場所に何かいるのを察知し、隠れて様子を見た。

 すると目の前には巨大な斧を携え、頭に3本の角を生やした巨大な魔物が岩の上に座っていた。

「(あ、あいつは一体?)」「(パーシバル、もしや奴は?)」「(あぁ。恐らく"オーガ"だろう)」「「(オーガ!?)」」

 初めて聞く名前だったため、僕達は驚きながら聞き返した。「あぁ。オークやトロル以上に凶暴な奴だ」「そ、そんな奴が······」

 僕達が隠れてそんなやり取りをしていたら、目の前のオーガが突然「マサカ、俺様ノ気配ニ気付ク奴ガイルトハナァ」と言い出したのだ。

(しゃ、喋った!?)オーガが突然喋った事に全員が驚いていたら、「ソコノ草ムラニ隠レテイル奴等、出テ来タラドウダ?」と言われ、バレていてはしょうがないと言わんばかりに団長を筆頭に姿を現した。

「ヤハリゾロゾロト隠レテイタカ」「貴様は一体何者だ!」パーシバル団長がオーガに尋ねたら「フッフッフッ。我ハ魔王様配下ノ1人、"ハイオーガキング"様ダァッ!」と答えた。
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