婚約破棄とか言って早々に私の荷物をまとめて実家に送りつけているけど、その中にあなたが明日国王に謁見する時に必要な書類も混じっているのですが

マリー

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・・・・・・。

えー。
結論から申し上げます。

職員の方が、私たちを案内する倉庫を取り違えておりました。
やはり、現在国際学会の真っ只中であるセンチェール地方には、一般の郵便物は配送を止められていたのです。閉会後にまとめて郵送されるため、期間中に投函された荷物は一箇所に保管されます。
小さい街とはいえローレルとセンチェール地方行きの荷物を合わせたらあれくらいの量になるのだな、なんて思っていたのですが、なんのことはない。
通常はローレル地方とセンチェール地方宛ての荷物をまとめて保管しているコンテナ。そこへ、実に数日分のセンチェール宛の荷物が全て集結していたのでした。

「そりゃあれだけの量になりますわな!!」
途方もない脱力感に見舞われて、マーリンと二人へなへなと崩れ落ちそうに・・・・・・、なっている場合ではありません。
「じゃあローレル地方宛の荷物は!?」
「どうなってるんです!?」
せっつく私たちに、職員の方はふてくされたような態度で言いました。
「少し離れた倉庫に保管してございます。本日分のローレル地方宛の配送物はそこまでの量はありませんから、すぐ確認はできるかと」

じゃあ早く鍵をよこせ~~~!!・・・・・・と言いたいのをぐっと堪えて、私とマーリンは結構鬼気迫る表情で倉庫の解錠手続きを待ちます。視界の端に、ほくそ笑みながらこちらを見ているヴァン教授がチラリと映りました。なんだかんだ、この職員たち相手にここまで要求を通せたのはこの人のおかげなのでした。結局力を借りることになってしまって誠に遺憾であるといったところですが、いつかこのお返しはさせてもらいます。

(その前に、私にはやることがたくさんあるんだから・・・・・・)

差し出された鍵をひったくるように受け取ると、私たちは三たび港の奥に向かって走り出します。まだまだ夜の帳は下りていましたが、着実に夜明けが近づいてきているはずです。
全速力で走りました。まるでお互いに追い越されまいとしているかのように、私たちは走って走って走ってそして・・・・・・。
覚悟を決めてマーリンの方をちらりと見ます。驚いたことに、ほぼ同じタイミングで彼もまた私のほうを見るのです。
「あ、あのっ・・・・・・」
「船に乗らなくて正解だったな!」
言いかけた私の言葉は、張り上げたマーリンの声によってかき消されてしまいました。
「えっ?」
「感謝する。お前が国際学会のことを思い当たらずに船に積まれた貨物の中を探していたら、いつまでも見つからずに朝を迎えていたところだった」
「は、はい・・・・・・」

息が弾み、まともに返事もままなりません。ですが・・・・・・。
「セシーヌ!ここまで来てくれてありがとう、僕は明日、・・・・・・いや、もう今日か?今日のプレゼンを終えたら、しばらく一人で頭を冷やすことにする。お前には迷惑かけたが、ゆっくり実家に帰って休養を・・・・・・」

今からでも、遅くないでしょうか。

「マーリン!」
突然の大声に、マーリンは虚を突かれたようでした。
「なんだ・・・・・・?」
「はあっ、マーリ、ン・・・・・・、はああっ・・・・・・」
職員の方に教えられた倉庫が、もうすぐそこにちらちらと見えてきていました。あと、あと、・・・・・・少し。
「私はっ、強くなどありません!一人で前を向いて歩いていけることもないし、迷ってばっかりです!」
「へ?」
私の足が限界を訴えておりました。思うように前に進みません。そもそも大人は普通全速力で駆けることなどありません。

「あなたっ、さっき・・・・・・、言ってたでしょう。私があなたを置いて行ってるような気がするって。あなたと違って私が輝いてるとかっ・・・・・・」
私は完全に息が上がりよたよたと両脚を動かすことしかできなくなってきていました。
「い、言った、けどっ・・・・・・。はあっ、はあ・・・・・・」
普段から研究室にこもりきりのマーリンなんてなおさらです。結局いつしか私たちは、二人並んでぜーはー言いながら船着場をのろのろと移動しておりました。

「私はいつも不安だらけ。自分に自信なんてないですよ。あなたから書類を送ってしまったと聞いたときも、どんなに動揺したか。正直、もう終わりなんじゃないかって強く思いました」
「嘘だろ・・・・・・」
「嘘じゃない!」
彼を一蹴して、私は語りつづけます。
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