109 / 236
nosce te ipsum
duo
しおりを挟む
斎は、天弥の言葉に掴んでいたその腕を振り払った。
「何を言ってるんだ? お前が、俺を捨てたんだろ!」
耳を疑うような言葉に、天弥は驚倒する。
「なんで? 僕、先生の事が好きなのに……」
無言で自分へと視線を向ける斎を見ながら、絶対にそんな事は有り得ないと思う。斎に捨てられる事はあっても、自ら斎を手放す事などあるはずがない。
「僕、先生が好きです。お願いです。信じてください」
その言葉に斎は、手を伸ばし天弥の顎を掴むと、ジッと目の前の美しい顔に視線を向ける。
「なら、今すぐ俺のものになるか?」
天弥は、真っ直ぐに迷いのない瞳を向け、ゆっくりと口を開いた。
「はい」
何のためらいもない返事を聞くと、斎はメガネを外した。天弥の顎を掴んでいた手がその頬へと移動すると、その形の良い唇に激しく貪るように、自らの唇を重ねた。すぐに、天弥の腕が斎の身体へと回される。
斎の腕が天弥の身体に回され、きつく抱きしめた。唇は何度も重ね合わされ、深く、激しく、角度を変えてはお互いを求めあう。
天弥は、何の迷いもためらいもなく斎を好きだと言った。あの時、自分を見限りサイラスを選んだのだと思っていた。
息も出来ぬほど、きつく抱きしめられているせいなのか、激しい口付けによる快楽のせいなのか、天弥の意識が濁りだす。斎の背中に回された手が、崩れ落ちる身体を支えようと必死にすがりつく。
唇が離れると、天弥は斎の胸に顔を埋めた。斎は天弥の総てを抱え込むかのように抱きしめる。
斎にとっての総ては天弥なのだと、嫌というほど思い知った。悋気というものも、初めて知った。とにかくあの場所に居たくなくて、あの二人を見ていたくなくて、どこでも良いから逃げ出すように車を走らせた。気がついたら、列島を横断する高速道の、全長十一キロ弱というトンネルの中だった。
よく、そこまで無事に走ったものだと、今更ながら少し慄然とする。それに、その地点にたどり着くまで、自動速度違反取締装置、通称オービスが二ヶ所にあったと記憶している。下手をしたら一発で免停ということもありえる。だがそれは、自業自得なので仕方がないと思う。
「天弥」
いつもと変わらぬ声音で名を呼ばれ、天弥は斎の顔を見上げた。すぐに唇が重ねられ、天弥は目を閉じる。今度は、先程とは違い優しい口付けだった。
片道、約三百キロ、往復で約六百キロを走る間、斎の中には天弥しかなかった。家にたどり着いた時、すでに日付は変わっており身も心も疲労を抱えていた。
ガレージに車を停め玄関へと向かう途中、身を隠すように小さくなっている天弥の姿を見つけた。すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られたが、自分は天弥に見限られたのだと思いとどまった。
「先生、好きです」
唇が離れると天弥は、斎を見つめ自分の想いを告げる。
「俺もだ」
斎の言葉を聞き、天弥は嬉しそうに微笑んだ。斎はメガネをかけると腕時計に視線をやり、時間を確認する。日付が変わってから二時間以上が経過していた。
「もう晩いから、家まで送る」
「何を言ってるんだ? お前が、俺を捨てたんだろ!」
耳を疑うような言葉に、天弥は驚倒する。
「なんで? 僕、先生の事が好きなのに……」
無言で自分へと視線を向ける斎を見ながら、絶対にそんな事は有り得ないと思う。斎に捨てられる事はあっても、自ら斎を手放す事などあるはずがない。
「僕、先生が好きです。お願いです。信じてください」
その言葉に斎は、手を伸ばし天弥の顎を掴むと、ジッと目の前の美しい顔に視線を向ける。
「なら、今すぐ俺のものになるか?」
天弥は、真っ直ぐに迷いのない瞳を向け、ゆっくりと口を開いた。
「はい」
何のためらいもない返事を聞くと、斎はメガネを外した。天弥の顎を掴んでいた手がその頬へと移動すると、その形の良い唇に激しく貪るように、自らの唇を重ねた。すぐに、天弥の腕が斎の身体へと回される。
斎の腕が天弥の身体に回され、きつく抱きしめた。唇は何度も重ね合わされ、深く、激しく、角度を変えてはお互いを求めあう。
天弥は、何の迷いもためらいもなく斎を好きだと言った。あの時、自分を見限りサイラスを選んだのだと思っていた。
息も出来ぬほど、きつく抱きしめられているせいなのか、激しい口付けによる快楽のせいなのか、天弥の意識が濁りだす。斎の背中に回された手が、崩れ落ちる身体を支えようと必死にすがりつく。
唇が離れると、天弥は斎の胸に顔を埋めた。斎は天弥の総てを抱え込むかのように抱きしめる。
斎にとっての総ては天弥なのだと、嫌というほど思い知った。悋気というものも、初めて知った。とにかくあの場所に居たくなくて、あの二人を見ていたくなくて、どこでも良いから逃げ出すように車を走らせた。気がついたら、列島を横断する高速道の、全長十一キロ弱というトンネルの中だった。
よく、そこまで無事に走ったものだと、今更ながら少し慄然とする。それに、その地点にたどり着くまで、自動速度違反取締装置、通称オービスが二ヶ所にあったと記憶している。下手をしたら一発で免停ということもありえる。だがそれは、自業自得なので仕方がないと思う。
「天弥」
いつもと変わらぬ声音で名を呼ばれ、天弥は斎の顔を見上げた。すぐに唇が重ねられ、天弥は目を閉じる。今度は、先程とは違い優しい口付けだった。
片道、約三百キロ、往復で約六百キロを走る間、斎の中には天弥しかなかった。家にたどり着いた時、すでに日付は変わっており身も心も疲労を抱えていた。
ガレージに車を停め玄関へと向かう途中、身を隠すように小さくなっている天弥の姿を見つけた。すぐにでも抱きしめたい衝動に駆られたが、自分は天弥に見限られたのだと思いとどまった。
「先生、好きです」
唇が離れると天弥は、斎を見つめ自分の想いを告げる。
「俺もだ」
斎の言葉を聞き、天弥は嬉しそうに微笑んだ。斎はメガネをかけると腕時計に視線をやり、時間を確認する。日付が変わってから二時間以上が経過していた。
「もう晩いから、家まで送る」
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する
克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる