apocalypsis

さくら

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date et dabitur vobis

undecim

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 思わず、不安が口を吐いて出る。その言葉を聞くと天弥の表情から笑みが消え、軽いため息を吐いた。そして天弥は、リビングのドアの前で座り込んでいる黒豹へと視線を移す。
「なぜって、祖父は今、万が一の時の対策をするのに必死のようですし、他に気が回らないのだと思います」
 少し、忌々しげな口調で天弥が答えた。何かを言いたげな視線も気にせず、黒豹は静かに座り込んでいる。
 天弥の言葉にサイラスは、羽角が何をしようとしているのかを考え出す。考え得る総ての事柄を想定して、何があっても対応出来るようにしておきたいのだ。
 考え込むサイラスへ、天弥は再び視線を戻した。
「後、これはサービスです」
 天弥は、その容色にサイラスを誘うような濃艶な微笑を浮かべた。
「レヴィー ハルフォード、十七歳」
 思いもかけない言葉に、サイラスの身体から力が抜ける。
「Levi Halford?」
 天弥は自分の手に力を込め、腕を掴んでいるサイラスの手を引き離した。
「貴方の名前です」
 そう言われ、何度もその名前を小さく呟いた。だが、やはり何の記憶も実感もサイラスの中には無かった。
「ちなみに、ご両親はメイン州のポートランドに居ます」
 天弥の手から力が抜け、サイラスの手が落ちる。
「そんな近くに……」
 力なく呟く。州は違うが、マサチューセッツ州とメイン州はそう遠い場所にあるわけではない。間にニューハンプシャー州があるとはいえ、ポートランドならボストンまで170㎞ほどの距離で、一番近い大都市となる。犯罪がらみだとしたら、真っ先に思いつく場所である。
「ほんまに……?」
 力の無いサイラスの声が室内に響く。
「ほんまに、俺の家族はそこに居るんか?」
 なぜ、そんなに近くに居ながら真っ先に思いつきそうな場所を捜さなかったのか、それとも捜したが見つからなかったのか、どちらなのか分からず思考は混乱する。
「貴方なら、それだけ分かれば調べる事も可能でしょう?」
 楽しそうに微笑み、天弥が答える。
「せやけど……」
 調べる事は可能だ。何が起こったのか、すぐにでも分かるはずだ。だが、そのときに報じられたものが真実だとは限らない。報道される事をすべて鵜呑みに出来ないことなど、嫌というほど知っている。そして何よりも厄介なのは、人の心である。例え、子供を捨てたとしても、公然とそれを口に出来る訳が無い。
「何か不安でも?」
 宗教画に描かれた天使も太刀打ち出来ないような、極上の美に浮かべられている天弥の微笑が、今のサイラスには悪魔の誘惑にしか思えなかった。
「真実が知りたい」
 なぜ、自分は家族と離れ、一人でボストンに居たのか、両親は本当に自分を捜していたのか、総てを知りたいと望む。
「では、それも取り引きに付け加えておきます」
 天弥は、リビングのドアへと向かって再び足を踏み出す。
「なんでや!?」
 サイラスは天弥に駆け寄り、その腕を掴んで無理やり足を止めさせた。
「その方が、より確実に取り引きを遂行していただけるでしょう?」
 楽しそうに笑みを浮かべながら、サイラスの問いに答える。
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