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date et dabitur vobis
duodecim
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「せやけど……」
調べる事は可能だ。何が起こったのか、すぐにでも分かるはずだ。だが、そのときに報じられたものが真実だとは限らない。報道される事をすべて鵜呑みに出来ないことなど、嫌というほど知っている。そして何よりも厄介なのは、人の心である。例え、子供を捨てたとしても、公然とそれを口に出来る訳が無い。
「何か不安でも?」
宗教画に描かれた天使も太刀打ち出来ないような、極上の美に浮かべられている天弥の微笑が、今のサイラスには悪魔の誘惑にしか思えなかった。
「真実が知りたい」
なぜ、自分は家族と離れ、一人でボストンに居たのか、両親は本当に自分を捜していたのか、総てを知りたいと望む。
「では、それも取り引きに付け加えておきます」
天弥は、リビングのドアへと向かって再び足を踏み出す。
「なんでや!?」
サイラスは天弥に駆け寄り、その腕を掴んで無理やり足を止めさせた。
「その方が、より確実に取り引きを遂行していただけるでしょう?」
楽しそうに笑みを浮かべながら、サイラスの問いに答える。
天弥の腕を掴んだサイラスの手から、力が抜ける。何がサービスだと、心の中で呟く。サービスどころか、天弥の策略であり、より一層サイラスを絡め取るものであった。もし万が一、天弥の望みよりも先にサイラスと羽角が再会したとしても、確実に取り引きを続行せざるを得ない状況に、追い込まれたのだ。
何も聞かなければ、何も知らなければ、真実を欲しようとは思わなかった。せめぎ合いながらも、羽角を選び望んだのだ。
「それでは、失礼します」
無言で立ち尽くすサイラスに声をかけ、天弥は黒豹が待つドアへと向かい、揃って部屋から出ていった。
玄関のドアが閉まる音がすると、サイラスはきつく拳を握り締めた。このまま、何もかもあの天弥に翻弄される積もりはなく、提示された取り引きの内容、斎の言葉、羽角に与えられた情報などを整理し始める。
落ち着いて考えを纏めるため、ソファーへ向かうと腰を下ろした。目の前に置かれている手付かずのペットボトルを手に取り、蓋を開けると口を付けた。
問題は、普段の天弥が本来の天弥と同じ力を使えるかにかかっている。羽角の予想では、同種のものなので可能性は高いだった。もし、普段の天弥が同じ力を使えるのだとしたら、確実にそちらの方が扱いやすい。わざわざ本来の天弥を引きずり出す必要も無くなる。
飲みかけのペットボトルをテーブルの上に置くと、今度はポテトチップスの袋を手に取った。そのついでに、テレビのリモコンも手に取り、スイッチを入れる。画面に映し出された怪しい通販番組の画面が、Blu-ray Discへと切り替えられる。リモコンを置くとすぐに、ポテトチップスの袋を開けそれを摘まむ。
普段の天弥が同じように力を使えるのだとしたら、そちらから情報を得れば良い。その場合の問題は斎だが、神と本来の天弥の両方を相手にするよりは遥かに楽である。
一番良いのは、斎が普段の天弥を取り戻す前に羽角を見つけ出す事だ。わざわざ保険をかけに、本来の天弥が出向いて来たぐらいなのだから、斎が普段の天弥を取り戻す可能性は高いのだと思われる。
調べる事は可能だ。何が起こったのか、すぐにでも分かるはずだ。だが、そのときに報じられたものが真実だとは限らない。報道される事をすべて鵜呑みに出来ないことなど、嫌というほど知っている。そして何よりも厄介なのは、人の心である。例え、子供を捨てたとしても、公然とそれを口に出来る訳が無い。
「何か不安でも?」
宗教画に描かれた天使も太刀打ち出来ないような、極上の美に浮かべられている天弥の微笑が、今のサイラスには悪魔の誘惑にしか思えなかった。
「真実が知りたい」
なぜ、自分は家族と離れ、一人でボストンに居たのか、両親は本当に自分を捜していたのか、総てを知りたいと望む。
「では、それも取り引きに付け加えておきます」
天弥は、リビングのドアへと向かって再び足を踏み出す。
「なんでや!?」
サイラスは天弥に駆け寄り、その腕を掴んで無理やり足を止めさせた。
「その方が、より確実に取り引きを遂行していただけるでしょう?」
楽しそうに笑みを浮かべながら、サイラスの問いに答える。
天弥の腕を掴んだサイラスの手から、力が抜ける。何がサービスだと、心の中で呟く。サービスどころか、天弥の策略であり、より一層サイラスを絡め取るものであった。もし万が一、天弥の望みよりも先にサイラスと羽角が再会したとしても、確実に取り引きを続行せざるを得ない状況に、追い込まれたのだ。
何も聞かなければ、何も知らなければ、真実を欲しようとは思わなかった。せめぎ合いながらも、羽角を選び望んだのだ。
「それでは、失礼します」
無言で立ち尽くすサイラスに声をかけ、天弥は黒豹が待つドアへと向かい、揃って部屋から出ていった。
玄関のドアが閉まる音がすると、サイラスはきつく拳を握り締めた。このまま、何もかもあの天弥に翻弄される積もりはなく、提示された取り引きの内容、斎の言葉、羽角に与えられた情報などを整理し始める。
落ち着いて考えを纏めるため、ソファーへ向かうと腰を下ろした。目の前に置かれている手付かずのペットボトルを手に取り、蓋を開けると口を付けた。
問題は、普段の天弥が本来の天弥と同じ力を使えるかにかかっている。羽角の予想では、同種のものなので可能性は高いだった。もし、普段の天弥が同じ力を使えるのだとしたら、確実にそちらの方が扱いやすい。わざわざ本来の天弥を引きずり出す必要も無くなる。
飲みかけのペットボトルをテーブルの上に置くと、今度はポテトチップスの袋を手に取った。そのついでに、テレビのリモコンも手に取り、スイッチを入れる。画面に映し出された怪しい通販番組の画面が、Blu-ray Discへと切り替えられる。リモコンを置くとすぐに、ポテトチップスの袋を開けそれを摘まむ。
普段の天弥が同じように力を使えるのだとしたら、そちらから情報を得れば良い。その場合の問題は斎だが、神と本来の天弥の両方を相手にするよりは遥かに楽である。
一番良いのは、斎が普段の天弥を取り戻す前に羽角を見つけ出す事だ。わざわざ保険をかけに、本来の天弥が出向いて来たぐらいなのだから、斎が普段の天弥を取り戻す可能性は高いのだと思われる。
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