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しおりを挟む澤渡と明智に上から睨み付けられ涙目になっていた男の子は、とうとう頭を下げて「ごめんなさい!」と謝った。
澤渡が呆れた様に溜め息吐き、腕組みしたままその子の顔を覗き込むように顔だけ近付けて言った。
澤渡*「…それにしても、何で子供がこんな時間にこんな所に居るんだ?名前は?何処から入った?」
奏*「ちょ、ちょっ…澤渡、そんなに矢継ぎ早に聞いても…。」
怯えたように涙をポロポロ溢した目で見上げている男の子が気の毒に思えて私が言ったのだが…。
澤渡*「そんな事を言ってもこの子が居ない事に気付いたら親が心配するだろう?」
奏*「ぅぐ…それはそうなんだけど…っていうか、言い方!」
明智*「フロントにはいつ連絡するんだ?」
澤渡&奏「「あ。」」
明智*「二人共、先ずはそこだろう。」
澤渡&奏「「すまん。」「ごめんなさい。」」
明智からの最もなツッコミに二人してたじたじになる。
明智はそんな私達を余所に、電話の受話器を取りフロントに連絡を入れた。
暫くして、急いで走って来たのだろう足音が響いた。
澤渡がノックされる前にドアを開けて、駆け付けた男性従業員を部屋に招き入れた。
謝罪を口にして頭を下げ、恐縮しながら部屋に入った彼はベッドの上に座る男の子を見て目を瞠った。
従*「え、円珠君!?」
明智*「知っている子か?」
従*「え、ええ…はい。この洋館の元所有者のお孫さんで……。と、兎に角、フロントマネージャー(イケおじ)に連絡いたしますのでお待ちいただけますでしょうか?」
澤渡*「分かりました。では、詳しい話はフロントマネージャーが来てからという事で。」
従*「ありがとうございます。では、連絡いたしますので少々お待ち下さい。」
そう言って、ポケットからスマホを取り出しフロントマネージャーに電話した。
そして待つ事15分ほどだろうか、やはりバタバタと走る足音が響き渡る。
従業員の時同様、澤渡がドアを開けイケおじを部屋に招き入れた。
「この度はご迷惑をお掛けして申し訳ございません!」
何度もペコペコと頭を下げながら部屋に入って来たイケおじもベッドの上の槐君を見て驚いていた。
イケおじ*「円珠君!?な、何でこんな所に???」
ベッドの上の円珠君は気不味そうに顔を逸らす。
そんな円珠君の側にイケおじが駆け寄った。
イケおじ*「何でこんな時間に此処に居るのですか?しかも何をなさったのですか?」
円珠*「………………。ごめんなさい。」
円珠君は酷く項垂れ小さく言った。
イケおじ*「兎に角、円珠君のお父さんに連絡いたしますので、今暫くお待ちいただけますでしょうか?」
円珠*「…え?」
澤渡*「分かりました。お願いします。」
戸惑う様に自分を見る円珠君を見つつイケおじはスマホで連絡を入れた。
私は、ベッドの上で「どうしよう。」「ごめんなさい。」と、俯き繰り返し泣きながら言う円珠君の隣に座って背中を摩ってあげる事しか出来なかった。
暫くして、15分ぐらい経っただろうか、以外と早く円珠君のお父さんがこの部屋に来た。
父親の姿を見た彼はベッドから下りると父親の元に一目散に駆けていった。
座ってそれを受け止め抱き締め私達に謝罪した後、円珠君にこんな時間に此処に居る訳を聞いた。
誰もが事の成り行きを見守る中、円珠君とそっくり瓜二つのお父さんを見て、槐君ではなく彼が子供の頃の記憶にある男の子だったのだと、何故かホッとして見ていた。
この時の私は何故ホッとしたのか深く考えもしなかったのだ。
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*超遅亀更新&不定期更新にも拘わらず、いつもお付き合い(お読み)いただきありがとうございます!
*投票して下さった方々本当にありがとうございます!!
*お気に入り、しおり、エールやいいね等もありがとうございます!
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