R18・心乱れて【完結】

雫喰 B

文字の大きさ
13 / 44

13.合同訓練・襲撃①

しおりを挟む

 *前話でも予告しましたが、今話の終わりの方で残酷、残虐、グロテスクな表現が有ります。
 苦手な方は全力で回避して下さい。
 読まれる方は自己責任でお願いします。



~~~~~~~~~~



 その日の訓練はラフレシアが参加するとあって如何なる事かと不安になったが、午前中の訓練では何事も無く、午後からの訓練もあと少しで終わろうといていた。

 だが、只の杞憂だったと皆が思い始めた時それは起こった。

 一つ目の救援を求める信号弾が上がり、警報が鳴り響く。
 そして、司令部に報告する伝令が駆け込んで来た。

 司令部に残る騎士達の半数を応援に向かわせ何とか魔獣を撃退できたと思われた。

 が、それから半時もせぬ内に次々と救援を求める信号弾が上がり、それと共に警報も彼方此方で鳴り響き現場は混乱を極めた。

 訓練を行う場所によって信号弾の色を分けていた為、場所の特定ができたがそうでなければ次々鳴り響く警報と相俟って何処からの物か分からなくなっていただろう。

 そして今も国境の森の奥に展開していた部隊は次々と魔獣の襲撃を受けていた。
 
 第一波目はいきなり現れた魔獣の群れに現場はパニックに陥りかけたが、部隊長の適切な判断で切り抜けたのも束の間、第二波目の襲撃があった。

 流石に第二波までは防ぎきれず、救援要請の信号弾を上げ、近くにいた部隊と合流したものの、更に増えた魔獣の数に後退を余儀なくされ、防衛ラインは崩れ更に後退。

 最終防衛ラインに至る前に部隊の再編、立て直しを行い半包囲網を展開させたが、魔獣の数が多く、一体仕留めるのに時間がかかりすぎ、あっという間に戦線は崩れ、各部隊が救援要請の信号弾を上げる羽目になった。

 応援部隊と共に駆けつけた指揮官補佐達と部隊長達は、騎士達を前線から最終防衛ラインまで後退させた後、部隊を再編しながら情報交換した。

 そして、導き出された結果に皆が顔を青くする。

 魔獣達がらしい。
 もしそうならば群れを率いるが居る事になる。

 一番近い砦に増援と各所への連絡要請の伝令を司令部に走らせ、魔獣の群れをここで足止めするべく部隊を配置した。

 すると、獲物を追い、狩る事しかしない筈の魔獣が深追いして来ない。
 偵察に出した騎士の話では、声だけで姿を見る事はできなかったが魔獣を統率しているが確かに存在していたと言うのだ。

 私と他部隊の指揮官補佐達は顔を見合わせた。
 私もそうだが他の補佐達も顔色が悪い。

「貴殿達は、知能の高い魔獣についてどの程度知っている?」

 不意にモーリス伯爵(東部指揮官)の指揮官補佐を務めるシトリン・カーライル男爵が私達の顔を見ながら問うた。

「  ……。」
 オブシディアン伯爵(南部指揮官)の指揮官補佐を務めるデビアス・マーキス子爵は首を左右に振る。

「カーネリアン令嬢は?」

 と問われて答えた。
「人の言語を解する、更に人語を話す、そして…群れを統率する。…それ以上は文献でも見た事は無い。が、能力に比例して強いともあった。」

 私の答えを聞いた補佐や部隊長達は、更に顔色を悪くした。

「状況は?」

 声のした方を振り返ると、司令部に残っていた部隊と司令官、指揮官達も此方に来たのだった。

 そしてライアンの腕には、やはりというかラフレシアが…。
「ここは戦場だったよな。」
カーライル男爵がボソッと呟いた。

「は!どうやら知能の高い魔獣が群れを統率しているようであります。」
 背筋をピンと伸ばし姿勢を正してマーキス子爵が報告した。

「「「 なっ!?」」」

 報告を受けた司令部の面々が険しい表情を浮かべる。

「間違いないのか?」
私の隣に来たハロルドが言った。

「ああ、間違い無い。現に魔獣達も今は此方の出方を窺っているようだ。」
私は視線を森の奥に向けて答えた。

 森の奥を見て眉を顰めるハロルド。

「なら、こんな所から一刻も早く逃げなきゃ!ね、そうでしょライアン。」
 彼の腕に縋り付いてそう進言するラフレシア。

「ちッ!」
 私の隣でハロルドが舌打ちをする。

「ガーネット卿、を連れて戦場から離脱されたらいかがかな?」
 モーリス伯爵が皮肉を込めて言った。

「私は部下達だけを戦わせて自分だけ安全な後方に隠れているつもりなど無い。」
 真剣な表情で言うライアン。

 惜しむらくは、腕に女をぶら下げている事だった。
 それが無ければ騎士達の士気も高まっただろう。

 現に、周囲の騎士達は彼の事を残念な物を見るような表情で見ている。

 
« グギャゥゥオォォーッ!! »
魔獣の叫び声が聞こえた。

««««« グゥゥオォォーッ!! »»»»»
それに答えるかのような魔獣達の咆哮。

「迎撃態勢を取れッ!!」

 前衛の二列の騎士達が少し腰を落として大楯を構える。その後ろの二列は上に向けて大楯を構えた。
 後衛に配置された大弓隊が矢を番えて魔獣達の襲撃に備えた。

 森の木々の間から魔獣達が躍り出る。

「 撃てーッ!!」

 一斉に放たれる杭のような矢が魔獣達に突き刺さるが、その勢いが衰える事は無い。

 構える大楯に体当たりをするように激突するのを前衛の騎士達が踏ん張り、大楯の隙間から槍部隊が槍で魔獣の体を突く。

 大楯を飛び越えて来た魔獣を私たち遊撃隊が、上に向けて構えられた大楯を足場にジャンプして攻撃を加える。

 魔獣と雖も、空中で姿勢を変える事ができない。
 それを利用した攻撃方法だが、それは此方も同じだった。

 そして、空中から落ちてきた魔獣に槍部隊がとどめを刺す。

 先達が考えた攻撃方法だが魔獣の襲撃に対して有効で、魔獣の数が目に見えて減って行くのが分かる。

 けれど、時間と共に此方の怪我人も増えた。

「あと少しだ!気を抜くな!!」

 指揮官の檄が飛ぶ。
 
 そして、最後の一頭を斃した時森の奥からさっきまで相手にしていた魔獣とは桁違いに大きな魔獣が姿を現した。
 しかも先ほど相手にした魔獣よりも強そうな魔獣達を従えて。

「な、何なんだあれは。」
「あんな化け物、見た事無いぞ。」

 騎士達が口々に言う中、その魔獣が笑った。

「「「「「 ッ?!」」」」」

「笑っ…た?」
「見たか?今のを。」
「マジかよ…。」

 皆が衝撃を受け、動揺し、困惑した。
 そして……恐怖した。

「うあぁぁぁーッ!!」

 一人の騎士が恐怖からか狂ったように剣を振り翳し、魔獣に向かっていった。

ゴキャッ!!

 今まで聞いた事の無い音が聞こえた。

 一瞬だった。
 魔獣は座ったまま前足を上げ、クイッと手首を返しただけだった。

 手だけで軽く払った動きでその騎士の体は吹っ飛び、木に叩き付けられて熟れたトマトのように潰れ、木にその血肉が張り付いている。

 その光景を見た何人かが嘔吐した。

「…最悪だな…。」
ハロルドが呟く。

「パニックにならないうちに撤退させるタイミングが難しいな。」
「ああ。」
「そうだな。」
 モーリス伯爵の言葉にハロルドと私が答えた。
 カーライル男爵とオブシディアン伯爵が青い顔で頷いていた。


 

 





 
しおりを挟む
感想 61

あなたにおすすめの小説

届かぬ温もり

HARUKA
恋愛
夫には忘れられない人がいた。それを知りながら、私は彼のそばにいたかった。愛することで自分を捨て、夫の隣にいることを選んだ私。だけど、その恋に答えはなかった。すべてを失いかけた私が選んだのは、彼から離れ、自分自身の人生を取り戻す道だった····· ◆◇◆◇◆◇◆ 読んでくださり感謝いたします。 すべてフィクションです。不快に思われた方は読むのを止めて下さい。 ゆっくり更新していきます。 誤字脱字も見つけ次第直していきます。 よろしくお願いします。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました

蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。 そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。 どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。 離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない! 夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー ※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。 ※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

処理中です...