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13.合同訓練・襲撃①
しおりを挟む*前話でも予告しましたが、今話の終わりの方で残酷、残虐、グロテスクな表現が有ります。
苦手な方は全力で回避して下さい。
読まれる方は自己責任でお願いします。
~~~~~~~~~~
その日の訓練はラフレシアが参加するとあって如何なる事かと不安になったが、午前中の訓練では何事も無く、午後からの訓練もあと少しで終わろうといていた。
だが、只の杞憂だったと皆が思い始めた時それは起こった。
一つ目の救援を求める信号弾が上がり、警報が鳴り響く。
そして、司令部に報告する伝令が駆け込んで来た。
司令部に残る騎士達の半数を応援に向かわせ何とか魔獣を撃退できたと思われた。
が、それから半時もせぬ内に次々と救援を求める信号弾が上がり、それと共に警報も彼方此方で鳴り響き現場は混乱を極めた。
訓練を行う場所によって信号弾の色を分けていた為、場所の特定ができたがそうでなければ次々鳴り響く警報と相俟って何処からの物か分からなくなっていただろう。
そして今も国境の森の奥に展開していた部隊は次々と魔獣の襲撃を受けていた。
第一波目はいきなり現れた魔獣の群れに現場はパニックに陥りかけたが、部隊長の適切な判断で切り抜けたのも束の間、第二波目の襲撃があった。
流石に第二波までは防ぎきれず、救援要請の信号弾を上げ、近くにいた部隊と合流したものの、更に増えた魔獣の数に後退を余儀なくされ、防衛ラインは崩れ更に後退。
最終防衛ラインに至る前に部隊の再編、立て直しを行い半包囲網を展開させたが、魔獣の数が多く、一体仕留めるのに時間がかかりすぎ、あっという間に戦線は崩れ、各部隊が救援要請の信号弾を上げる羽目になった。
応援部隊と共に駆けつけた指揮官補佐達と部隊長達は、騎士達を前線から最終防衛ラインまで後退させた後、部隊を再編しながら情報交換した。
そして、導き出された結果に皆が顔を青くする。
魔獣達が群れとして統率されているらしい。
もしそうならば群れを率いる知能の高い魔獣が居る事になる。
一番近い砦に増援と各所への連絡要請の伝令を司令部に走らせ、魔獣の群れをここで足止めするべく部隊を配置した。
すると、獲物を追い、狩る事しかしない筈の魔獣が深追いして来ない。
偵察に出した騎士の話では、声だけで姿を見る事はできなかったが魔獣を統率している個体が確かに存在していたと言うのだ。
私と他部隊の指揮官補佐達は顔を見合わせた。
私もそうだが他の補佐達も顔色が悪い。
「貴殿達は、知能の高い魔獣についてどの程度知っている?」
不意にモーリス伯爵(東部指揮官)の指揮官補佐を務めるシトリン・カーライル男爵が私達の顔を見ながら問うた。
「 ……。」
オブシディアン伯爵(南部指揮官)の指揮官補佐を務めるデビアス・マーキス子爵は首を左右に振る。
「カーネリアン令嬢は?」
と問われて答えた。
「人の言語を解する、更に人語を話す、そして…群れを統率する。…それ以上は文献でも見た事は無い。が、能力に比例して強いともあった。」
私の答えを聞いた補佐や部隊長達は、更に顔色を悪くした。
「状況は?」
声のした方を振り返ると、司令部に残っていた部隊と司令官、指揮官達も此方に来たのだった。
そしてライアンの腕には、やはりというかラフレシアが…。
「ここは戦場だったよな。」
カーライル男爵がボソッと呟いた。
「は!どうやら知能の高い魔獣が群れを統率しているようであります。」
背筋をピンと伸ばし姿勢を正してマーキス子爵が報告した。
「「「 なっ!?」」」
報告を受けた司令部の面々が険しい表情を浮かべる。
「間違いないのか?」
私の隣に来たハロルドが言った。
「ああ、間違い無い。現に魔獣達も今は此方の出方を窺っているようだ。」
私は視線を森の奥に向けて答えた。
森の奥を見て眉を顰めるハロルド。
「なら、こんな所から一刻も早く逃げなきゃ!ね、そうでしょライアン。」
彼の腕に縋り付いてそう進言するラフレシア。
「ちッ!」
私の隣でハロルドが舌打ちをする。
「ガーネット卿、ご婦人を連れて戦場から離脱されたらいかがかな?」
モーリス伯爵が皮肉を込めて言った。
「私は部下達だけを戦わせて自分だけ安全な後方に隠れているつもりなど無い。」
真剣な表情で言うライアン。
惜しむらくは、腕に女をぶら下げている事だった。
それが無ければ騎士達の士気も高まっただろう。
現に、周囲の騎士達は彼の事を残念な物を見るような表情で見ている。
« グギャゥゥオォォーッ!! »
魔獣の叫び声が聞こえた。
««««« グゥゥオォォーッ!! »»»»»
それに答えるかのような魔獣達の咆哮。
「迎撃態勢を取れッ!!」
前衛の二列の騎士達が少し腰を落として大楯を構える。その後ろの二列は上に向けて大楯を構えた。
後衛に配置された大弓隊が矢を番えて魔獣達の襲撃に備えた。
森の木々の間から魔獣達が躍り出る。
「 撃てーッ!!」
一斉に放たれる杭のような矢が魔獣達に突き刺さるが、その勢いが衰える事は無い。
構える大楯に体当たりをするように激突するのを前衛の騎士達が踏ん張り、大楯の隙間から槍部隊が槍で魔獣の体を突く。
大楯を飛び越えて来た魔獣を私たち遊撃隊が、上に向けて構えられた大楯を足場にジャンプして攻撃を加える。
魔獣と雖も、空中で姿勢を変える事ができない。
それを利用した攻撃方法だが、それは此方も同じだった。
そして、空中から落ちてきた魔獣に槍部隊がとどめを刺す。
先達が考えた攻撃方法だが魔獣の襲撃に対して有効で、魔獣の数が目に見えて減って行くのが分かる。
けれど、時間と共に此方の怪我人も増えた。
「あと少しだ!気を抜くな!!」
指揮官の檄が飛ぶ。
そして、最後の一頭を斃した時森の奥からさっきまで相手にしていた魔獣とは桁違いに大きな魔獣が姿を現した。
しかも先ほど相手にした魔獣よりも強そうな魔獣達を従えて。
「な、何なんだあれは。」
「あんな化け物、見た事無いぞ。」
騎士達が口々に言う中、その魔獣が笑った。
「「「「「 ッ?!」」」」」
「笑っ…た?」
「見たか?今のを。」
「マジかよ…。」
皆が衝撃を受け、動揺し、困惑した。
そして……恐怖した。
「うあぁぁぁーッ!!」
一人の騎士が恐怖からか狂ったように剣を振り翳し、魔獣に向かっていった。
ゴキャッ!!
今まで聞いた事の無い音が聞こえた。
一瞬だった。
魔獣は座ったまま前足を上げ、クイッと手首を返しただけだった。
手だけで軽く払った動きでその騎士の体は吹っ飛び、木に叩き付けられて熟れたトマトのように潰れ、木にその血肉が張り付いている。
その光景を見た何人かが嘔吐した。
「…最悪だな…。」
ハロルドが呟く。
「パニックにならないうちに撤退させるタイミングが難しいな。」
「ああ。」
「そうだな。」
モーリス伯爵の言葉にハロルドと私が答えた。
カーライル男爵とオブシディアン伯爵が青い顔で頷いていた。
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