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39.エピローグ
しおりを挟む領都にあるギルド事務所を出た私は、次の町まで歩く事にした。
のだが……。
領都を出る少し前から時折、毛が逆立つようなざわざわとした感じがして落ち着かない。
領都を出る途中にある店々を覗いたりしながら、時々若い男性店員と話をした時などに特に強く感じる。
そっと振り返って見たりするけれど何も無い。
何かがおかしい。
直感がそう言っているから間違いないと思うんだけど……。
警戒するに越した事はないよね。
危害を加えるつもりなら領都を出た後に何らかのリアクションがあるだろうし。
けれど、何のリアクションも無くて肩透かしを食らったみたいな気分だった。
ひょっとしたら、お父様が私を心配して誰か付けているのかもしれない。
そう思いつつも警戒を怠らずに次の町まで歩いた。
何とか日没までに辿り着き、宿を探して回る。
貴族が泊まるような宿ではなく、平民が利用するような宿の中で条件が合いそうな宿を探した。
大通りからほんの少し離れている場所にあり、素泊まりOKで部屋にお風呂は無いけれど共同の入浴場が有って、朝食も前日の夕方までに注文しておけば用意して貰えるという宿に決めた。
宿泊料金が、素泊まりで一泊三千ルーカ(円とお考え下さい。)、朝食付きで四千ルーカなら平均的か少し安いランクだろうか。
条件に合っていて、そこそこ雰囲気も良いその宿に泊まる事にしたのはいいけれど、この後私は信じられない物…いや、者を見た。
外で食事を済ませ、お風呂でも…。と思い入浴場へと向かった私は、男性用の出入り口から出て来た人を見て固まった。
「え?」
「……。」
「何でハロルドが……?」
「……。」
何も答えない彼の後ろからもう一人。
「ラ、ライアン??」
思わず声が裏返る。
そして目の前のハロルドは片手を顔に当てて天を仰いでいる。
と、私を見たライアンがまるで犬がフリスビーに飛び付くが如く両手を広げて飛び付いて来た。
「ぐぇっ!!」
上半身の捻りを利用したハロルドのラリアットが決まり、ライアンがもんどり打って倒れた。
かと思えば、器用にバック宙を決めて立ち上がり首を摩る。
「何故邪魔をする。」
「黙れ変態!」
「「…っ!?」」
「お願いだから人目のある所で目立つ事しないで。わ・か・っ・た?」
それ以上何も言わせないように、二人の口を両手で塞いだ私はドスの効いた声でそう言うと、コクコクと首を縦に振った二人を見て手を離した。
△▽△▽△▽△▽△▽△
入浴後、宿の隣にある酒場で二人に洗い浚い事情を聞いた。
わかりやすく言えば、ライアン曰く、諦め悪く私を追って来たと言い、ハロルドはお父様に頼まれたのだと言う。
「はぁっ!?」
二人とも、耳を垂れて項垂れる犬のように目の前に座っている。
「私、貴方から離れたかったんだけど。」
ライアンに向けて言うと、捨てられた子犬のような目で私を見る。
うっ……。
そ、そんな目で縋るように見ても絆されないんだから!
そんな彼を見て勝ち誇ったように口角を上げるハロルドににっこり笑って言った。
「ハロルド過保護過ぎ。」
途端にショボくれるハロルド。
反対に“ざまぁ!”と言わんばかりにせせら笑うライアン。
「…にしても、お父様にも困ったものね。(勿論、あなた方二人も)」
右頬に手を当てて溜息を吐く。
「兎に角、一人旅の意味が無いから二人とも明日には帰ってね。」
言うだけ言って部屋に戻った。
△▽△▽△▽△▽△▽△▽△
早朝に宿を立ち、町外れまで来ると振り返ってみる。
物陰に何かがチラリと見えた。
案の定と言うか、宿を出てからずっと気配を感じていた。
「ま、そのうち諦めるでしょ。」
独り言ちた。
が、
この後、次の宿泊予定の町に着くまでの間や町に入ってから矢鱈絡まれたり声を掛けられた上、半ば強引にパーティーメンバーに勧誘されたりと何かと面倒事が増えた。
そして宿屋の前、現在絶賛絡まれ中だったりする。
しかも破落戸と言っていいような人相の方々に……。
“攻撃は最大の防御”とは言うが、この場合相手の破落戸度が問題である。
単なるチンピラか地元で幅を効かせている構成員か……。
前者なら遣っちまっても大した問題にはねらないだろう。しかし、後者なら後々更に面倒な事になる。
如何したものか……。
考えていると
「可愛いねーちゃんの一人旅だからこっちは心配して言ってやってんだぜ。なぁ、わかるだろ?だから……。「俺達の連れが何か?」」
声のした方を見ると、腕組みして仁王立ちをして破落戸達を柔やかに見ている二人が……。
「あ”ぁ”?なんだてめぇ!」
「ま、待て!」
凄んだ男に待ったを掛けた男が耳元で何か囁くと
「連れが居るなら初めに言いやがれ!」
そう言ってそそくさと立ち去った。
「「だから言っただろう?」」
勝ち誇ったように言う二人。
何度も繰り返した光景に溜息を吐きつつも認めざるを得ない。
「…わかったわ…。一緒に旅をして下さい。」
何なんだかなぁ。
という思いもあるけれど、この先の事を考えると仕方ないとも思うので二人にお願いした。
そして予想していた事とは言え、二人とも過保護全開で正直疲れる。
「お嬢様~っ!」
ん?お嬢様?
「待って下さいってば!」
「嘘だろ?」ハ
「マジでか?」ラ
「え?シトリン殿?何で?」ニ
「えへへへ。私も混ぜて下さいよ。」シ
「「「え?」」」
既に旅のメンバーになるのが確定しているとでも言うような言い方に疑問を持つも、彼から手渡された手紙を見たハロルドとライアンが
「やっぱりかぁ……。」
と天を仰ぐ。
そんな事はどこ吹く風とばかりにシトリンがニコニコと笑う。
訳がわからない私にハロルドが手紙を渡されて読んだのだが、読まなければ良かったと思った。
手紙には……
シトリンには、“二人(ハロルド&ライアン)の邪魔をしてこい!!”と命じているから呉々も軽はずみな事はしないように!
と書かれていた。
~~~~~~~~~~
*蛇足ですが、エピローグ追加しました。
シトリンは“うっかり八◯衛”ポジションです。
*いつもお読みいただきありがとうございます。
*お気に入り、しおり、エール等も本当にありがとうございます。m(_ _)m
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