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── 第一章 ──
22.後継
しおりを挟む後ろ手に拘束され、腹這いになった長兄と兄。
そこへ祖父と父が来た。
「たった一人にここまでやられるとはな。情け無さすぎて涙も出んわい。」
「申し訳ありません。甘やかし過ぎました。それで、どの様な処分に…?」
「一生、タダ働きさせるしか無いかのぅ。頭も剣の腕も悪いが、書類にサインぐらいは出来るだろう。」
「承服しかねる!こんなクズなど…!」
そう言って、長兄オトフリートの頭目掛け、突き刺すように勢い良く剣を突き下ろす。
「ヒィーッ!!」
オトフリートの顔のすぐ横に剣が突き刺さる。
白眼を剥いて、気を失なった。
それを見た三男のフランツは失禁して長兄同様、気を失なった。
「クッソ―ッ!!」
本当は殺してやりたい程憎い。何でこんな奴らが兄弟なんだよ。
ヴィルヘルムが臣籍降下する時に、極秘に作り上げた物…それを作るに当たって、兄である国王に出された条件があった。
“身内の不始末は、身内で方を付ける”それが条件だった。
ライテンバッハの剣技、この王国でトップクラスの剣を止める事など、他の者には出来ない。 それ故に突き付けられた条件だった。
その中でも、恐らく王国一の腕前を持つ次男アルフォンスは婚姻により、ローエングリン公爵家に婿養子として入った。
が、病弱な事もあり、王国最強でありながら、“幻の剣聖”などという、有り難くもない二つ名で呼ばれている。
20歳まで生きられないと言われていた彼も、医術が進歩したお陰で、30才に手が届こうかというところまで生きる事が出来ていた。
しかし、それでも年を追う毎に、体調を崩す日が多くなってきている。
ウルリッヒはその事を知らなかったが、この時祖父と父から聞いた。
そして、アルフォンスが多数の人間を相手にするような戦場に立つ事が出来ないだろう事も…。
故に、今回の事件に関しては、最初から末弟と一緒に動けない事が分かっていた。
けれど、何か力になりたくて舅(ルイーゼの父)に頼み込んでローエングリン家の影を借りて、ジジの行方を探させたのだった。
そして、国王が突き付けた条件の通り、前ライテンバッハ公爵と現ライテンバッハ公爵が二人に出した処分は、長兄オトフリート、兄フランツの二人とウルリッヒとの決闘だった。
勿論、ルールは決闘する者同士で決めて良いという話になり、その上で、敗者は勝者の決定に従う事となった。
ウルリッヒを馬鹿にしていた二人は、既に勝った気でいる。
何せ、2対1である。負ける気がしなかった。しかも、使用するのは木剣。(二人が提案して、ウルリッヒが決めた。)
それを見たヴィルヘルムの言葉は
「俺の孫とは思いたくない程、度し難い馬鹿だな。」
だった。
因みに、二人とも、騎士養成所での剣の腕前は上位だったが、士官学校では平均より上だった。
付け加えるなら、二人ともアルフォンスやウルリッヒと、模擬戦ですら対戦した事は無い。
結果は火を見るより明らかだった。
ウルリッヒは、残像攻撃の“残月”、二人いるように見える(片方は虚像)攻撃の“水月”をマスターしている。
そんな彼にオトフリートとフリッツがいくら二人掛であったとしても、実力差がありすぎる。
あっという間に勝敗が決まった。
勿論、ウルリッヒの勝ちであったが、祖父の「書類のサインに必要だから、利き手は潰すな。」という言い付けを守った。
あと、皮肉にも、木剣を使用した為に、オトフリートとフリッツの二人は何ヵ所か、骨折する羽目になった。
~~~~~
━━ 補足 ━━
“残月“と”水月”二つの技を考案、完成させたヴィルヘルムは“残月”をマスターしているが、“水月”の成功率は五分五分である。
現ライテンバッハ公爵のジークフリートは、“残月”のみマスターしている。
そして、ライテンバッハ家(現ローエングリン公爵)最強と言われたアルフォンスは、“水月“、”残月”をマスターしている上に、ほぼ二人攻撃の技である“ツヴァンツィヒ”の成功率は7割を越えている。(今のところ、この技が使えるのはアルフォンスだけ)
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