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偶然
しおりを挟む「神崎、3人でお茶でもしようか」
「喜んで」
「ええ...立ち直り早...」
動揺を隠しきれない蒼依は、スタスタと歩き出した神崎の後ろを「まって~」と言いながら慌てて着いて行く。
大型犬みたいだ...。
大型犬2匹を追いかけようと足を踏み出した瞬間、突然背後からがっしりと肩を掴まれた。
「えっ、何...!?」
「奇遇ですね」
「若王子くん!?どうしてこんな所に...」
「ジムの帰りです」
うわあ、タイミング悪っ!!
神崎と一緒に居る時に限ってこいつとバッタリ出会すなんて!
完全に修羅場だぞ。
どうにかして穏便に済ませなくては。
さっさと別れを告げて、大型犬2匹が居る場所まで走ろう。
それにしても...私服姿。
ジム帰りと言った彼は、黒のTシャツに細身のスキニーと、かなりラフな格好なのだが...やっぱりちょっとカッコいいかも。
いや、そんなことを考えている場合じゃない!
「そ、そうなんだ!じゃあ急ぐから、私はこれで...」
「ええ、また明日」
何とかバレずに済みそうだ。
ほっ、と胸を撫で下ろし、若王子に背をむけて喫茶店まで走ろうとした途端。
「先生ー、はやくー」
大きい男が大きい声出すんじゃねぇ!!目立つだろうが!!
「あ?...神崎?...姫神主任。どうして僕以外の男と一緒にいるんです?」
にこやかな表情、柔らかな声質、全く笑ってない目。
あっ...殺られる。
「...んで若王子も居るんだよ」
「お前みたいな獣と姫神主任を2人きりにさせる訳ないだろうが」
「蒼依も入れて3人ですけど?若王子先生、お帰りいただけますか?」
なに、この状況。
私の隣に座る蒼依も眉を下げながら、おどおどしている。
「蒼依さん、初めまして。若王子と申します」
「おい」
目を細めて微笑む若王子は、神崎を完全に無視して初対面の蒼依に話しかける。
「あっ、はじめまして...蒼依です!差し支えなければお名前もお伺いしていいですか?」
「亮介だよ、こいつの名前」
ぶっきらぼうに答えた神崎は、コーラの入ったグラスを回している。
その度に中の氷がグラスに当たり、小気味いい音を奏でた。
「亮介さん...」
あれ?蒼依くん?
ちょっと若王子のこと気に入ってない?
またしょうもないことで言い合いを始めた彼等に呆れていると、蒼依がぐっと身体を近付けてきて、耳打ちで喋りかけてくる。
「Sっ気が強そうで、結構タイプです」
「蒼依くんは、Sな人が好きなの?」
「はい、ご存知だとは思うのですが...俺かなりMなので...」
ですよね。
「神崎も痛いの好きって言ってて、自称Mだったよ」
「いや...七王くんはただ痛みに興奮するクレイジーサイコ野郎です、絶対にMではない」
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