2人の男に狙われてます

おもち

文字の大きさ
94 / 197

バスルーム

しおりを挟む

「でもやっぱり、それが良くなかった。身体を重ねる度に主任の反応が可愛くなって、本当は僕のことを好きなんじゃないかって自惚れてしまった...貴方の感情を無視しておきながらね。だから不快にさせたことがあるのなら、謝ります」

違う。
不快なんかじゃない。

君が謝る必要なんて微塵もない。

ただ私は

「でも今日...一緒に過ごせて嬉しいよ...」

「っ...」

私は

「.....駄目なんだ」

小さな声で呟いて、唇をキツく噛み締める。

「私は妻を愛していなければいけない、もう恋人なんて絶対に作らないし、君や、神崎のことも好きになんてならない...」

「どうして...?」

湯から掬いあげた両手で自分の顔を覆う。

『政宗くん。私、どんなことがあっても政宗くんのことが好き。ずっとずっと一緒だよ...約束ね』


私のことを愛してくれた、大切にしてくれた、こんなつまらない私でも受け入れてくれた最愛の妻。


彼女は私の光そのものだった。

厳格な父、敷かれたレールの上を歩く人生。
汚れた世界、冷たい大人、退屈な日常、性欲を満たすためだけに寄ってくる女。


空っぽな自分。


全部嫌いだった。

でも、彼女に出会って全てが変わった。


『政宗くんはつまらなくなんてないよ。政宗くんの良さは私が1番分かってるもの。政宗くんはまだ、自分の素晴らしさに気付いてないだけ。でも大丈夫。政宗くんが気付かなくても、私はちゃんと分かってるよ』

傍に居るだけで、温かくなる。

『政宗くん、私はどんな時でも貴方の味方だよ』

優しい声、君の笑顔が大好きだった。

だから、この世で1番愛した女性の最後の言葉に

『さようなら』

酷く絶望した。


「駄目なのに...君と目が合うだけで、こんなにも...っ、胸が苦しくなる...」

彼女を失ってから立ち直るまでにかなりの時間を要した。
それ程に愛した彼女は心の支えで、私にとってなくてはならない存在で、かけがえのない人で...

今度好きな人を失うことになれば、きっともう立ち直ることが出来ない。

失う辛さに比べたら、既に失っている1人の人だけを愛し続けた方が何倍も、何百倍も楽に決まっている。

彼女と別れてから寂しさを埋めるために交際した人もいたが、精神面かストレス面からで性的不能であったため直ぐにフラれた。

かなりのトラウマになっているのか5年経った今でも女性に対してはほぼ勃起しないのに、男性に対しては勃起するなんて呆れてしまう。

女々しい奴だと嘲笑ってくれ。
弱い人間だと罵倒してくれ。

もう、優しくしないでくれ。


「...お願いだから、これ以上...私の感情を揺さぶらないでくれ...このままでは...」


きっと、君を、君たちをーーー。


「...たちが悪いんですよ...貴方は」

低い声で呟いた彼は、背後から私を大切そうに抱き締め、大きなため息を吐いた。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

男子寮のベットの軋む音

なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。 そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。 ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。 女子禁制の禁断の場所。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

皇帝陛下の精子検査

雲丹はち
BL
弱冠25歳にして帝国全土の統一を果たした若き皇帝マクシミリアン。 しかし彼は政務に追われ、いまだ妃すら迎えられていなかった。 このままでは世継ぎが産まれるかどうかも分からない。 焦れた官僚たちに迫られ、マクシミリアンは世にも屈辱的な『検査』を受けさせられることに――!?

処理中です...