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心境
しおりを挟む土曜日
「今日、遊びに行ってもいい?」
「別にいいけど...。今まで私に許可なんか取ってなかっただろ、これからも許可なんか取る必要ないよ」
恋人でもあるまいし。
「んー...でもさ」
朝食を食べ終えた神崎が、珍しく悩んでいる。
普段、悩みなんか一切無さそうな顔をしているから、口にすることを渋る姿を見れば、何やら深刻な問題を抱え込んでいるのではないかと心配してしまう。
「男だけで遊ぶんじゃなくて、今日は女子もいるから」
なるほど、そういうことか。
「先生はヤキモチ妬きだろ?だから念の為に確認した」
「や、ヤキモチ妬きじゃない...!それに、高校最後の年なんだから、思い出は沢山作っておいた方がいい」
ベランダの植物に水をあげていると、彼は背後で笑った。
「はは、それもそうだな。日付けが変わる前には帰ってくるよ」
「結構遅くなるんだね。どこに遊びに行くの?」
「最近できたばっかのアミューズメント施設あるでしょ、そこのプール」
「...は...」
プール...?
「あ、やらしー。なに想像してんの?女子生徒の水着姿?」
「なっ、違うよ...!何でまた女子含めて遊びに行くところがプールなんだろうって思っただけで...」
「今ならカップルで行けば割引になるみたいだよって女子に誘われたんだ。俺は面倒だったからパスしようと思ったんだけど、深瀬と山本がめっちゃ喜んでさ」
か...カップル...。
ソファーに座る神崎の隣に腰掛け、じっと顔を見詰める。
スマホから目を逸らし、きょとん、とした表情で私を見詰め返す神崎は、女子生徒から言い寄られてもNOと言えるのだろうか。
こんなに顔が良くて、一際身長も高いから目立つだろうに...。
「どうかした?...わっ、なに...」
ぺたぺたと身体に触れ、Tシャツを捲りあげると綺麗に縦に割れた腹筋が露になる。
...いかにも女子ウケしそうな身体。
「何か言いたげだな」
彼の太腿に自ら腰を押し付け貞操帯を意識させれば、彼は熱い視線で私を見やる。
確かに神崎は私の恋人ではない。
私が何かを言える立場でないことは重々承知の上だが、女子が大好きな神崎を放っておくはずも無い。
水着なんてほぼ下着みたいな物だし、乳を寄せられて「私と一緒に遊ばない♡?」なんて言われたりでもしたら...普通の男はイチコロだ...!
神崎は優しいし、元々ノーマルの人間だろうから、やっぱりNOとは言えないよな...。
若王子の時のように、目の前で繰り広げられないだけマシかもしれないけど、神崎に色仕掛けで擦り寄る女子生徒を目にしたら私は性懲りもなくモヤモヤするのだろう。
ただ、思い出作りは大切だと言った手前、やっぱり行って欲しくないとも言えず。
「楽しんでおいで」
「......うーん」
何かを考える神崎は、私の頭をそっと撫でた。
「この前まで俺に彼女がいて、色んな子を取っかえ引っ変えしてたから、女子が絡むと心配なんだろ?自分が相手されなくなるって思って」
「...そんなこと、思ってない」
「分かりやすいんだよ、全部顔に書いてる」
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