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24話
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あの日、裏庭に呼び出され、彼女に向かって歩いていたら いきなり心臓を鷲掴みにされるような痛みで倒れた。
そんな自分を見ていた彼女は、自分以上に恐怖の色をその面に表していた。
そして、ベッドで意識を取り戻したとき、姉やテオドールにイルネギィアが助けを求めてくれた、と聞いた。
――罪悪感がいっぱいだった。
ギルバートは自分は悪人にはなれないのだ、と思った。
彼女を陥れるために赴いた先で その相手に助けられた。
我慢の限界だったのだ。
貴族の子女として教育を受けた。なのに、こんな卑劣な手段を父から指示され、正直自分の矜持は傷ついていた。ひどく辛かった。それが限界に達していたのだ、と気がついた。
姉はそんな弟の真意は知らず、ただ、子爵家の困窮を弟に押し付けていた、そして、その心労で弟は倒れた、と信じた。
だから彼女は髪の色を露呈することにしたのだ。
公爵家の次男、オーティス伯爵が銀の髪の娘が好きだというのは公然のことだったから。姉には可哀相だと思う気持ちもあるが、もしも力のない男に嫁ぎ、親の支援もない生活をさせるより経済的にも裕福な伯爵夫人におさまった方が幸せになれる。
自分が今 倒れたことは良かったのだ――と。
そのとき、テオドールには王都に戻るよう促された。そして、かかりつけの医師の診察を受けるようにと。
だが、ここにも公爵夫人のために医師が常勤していて、彼の診察では特に悪いところはなかった。
そして、ギルバートはどうしても心残りがあった。
イルネギィアがどうして自分を呼び出したのか――。
どうしても、気になって仕方なかったのだ。
イルネギィアは眼前のギルバートの様子に困惑する。自分をじっと見つめるその瞳。悪意があるようには思えないがひどく熱を帯びている気がする。対人経験の少ない自分でも、彼がなにを言わんとしているかうっすら予想がつく。
ただ、わからないのは、なんでそんな気持ちに彼がなったか――だ。
――ど、どうしちゃったの…。いかにも貴族のご子息って感じの方だったのに。あたしが人を呼んだと思っているから!? あ、あれはテオドール様が全部やってくださったのに。どうしよう。こういう時はどう対処したらいいの!?
戸惑っているイルネギィアにギルバートは言葉を選ぶ。確かに、先日まで彼はそんなことをする必要は感じなかった。所詮、使用人と侮っていたから。だが、今は違う。彼女の声を聞きたかった。ギルバートを、自分をあそこに呼んだ理由を知りたかった。
多幸感のある希望ある答えを期待している。
「どうして、あの小道に僕を呼び出したんだ?」
キターー! とイルネギィアは思った。
ドキドキとした。そのせいで声もうわずる。キース様があたしは顔に出すぎると心配するわけだ、と自分でも思った。
「あの、ヴィクトリア様のことでお話しようと…」
キースと打ち合わせて、聞かれたらこう答えるよう言われている。これは練習もしたので大丈夫。
「姉の事で?」
「はい、ヴィクトリア様はあまりこちらに馴染んでいらっしゃらなかったようなので、僭越ながらあたしがお相手できないかと…。それで、弟のギルバート様にご相談したかったんです。こちらには社交でいらしてらっしゃるのに、他家の使用人のあたしが出過ぎるのは如何とも思いましたから」
「…それだけ?」
残念そうな声がする。
「はい」
イルネギィアはホっと息をつく。
「そう…」
言って彼は半歩近づく。イルネギィアとの距離が縮まる。イルネギィアはそれに小首を傾げて背の高い彼を見上げる。
熱のありそうなお顔――と、いう感想を持ったがギルバートの手がイルネギィアの手に重なったとき、まずい、と思った。
と、同時に声がする。
「そこの! イリーと言ったな。こちらに来て手伝え」
この感じの悪い声は――!
イルネギィアは助かった、という安堵と、敵の出現に大きく息を吐いた。
「どのような御用でしょうか…」
ギルバートからリネンを受け取り洗濯室に届けると イルネギィアは先に自分を呼び止めたテオドールの書斎にいた。
テオドールは椅子に座り、トントンと指でテーブルを叩き、苛立ちをあらわにしている。
彼の書斎はキースと違って随分と雑多にものが置いてある。優雅で有能、と言われる公爵家の嫡子は意外にずぼらなのかもしれない。
「…お前は自分の立場がわかっているのか?」
――いきなりお説教か!
「あの、はい、一応は…」
――正直 怖い、この方。
「オーティス伯爵家の使用人です」
イルネギィアのこの返答にテオドールは息を吐く。
「馬鹿なのか、お前は。そんなことを言っているんじゃない…。キースはなんのためにお前を囮にしてギルバートを排除しようとしたのか、わからないのか?」
――…魔力の実験です、とは言えませんよ! て、いうか、この方どこまでご存知なのかしら?
「〝守護者〟については聞いているのか?」
「はい」
「…お前になにかあったら〝守護者〟が発動するということは?」
「伺っております」
――あ、言いたいこと、なんとなくわかってきましたぁ。
「じゃあ、なぜ、ギルバートと二人でいるんだ? 無用心すぎるだろう! お前はこの館で死人を出すつもりなのか?」
――…認めます。不注意でした…。
「…〝守護者〟の発動を防ぐため、とあいつは言っていたが、お前がこんなんじゃ無意味だな。全く…。あいつの女の趣味はわからない。こんな馬鹿な女が好きなら、なぜあのヴィクトリア嬢と…」
――馬鹿で悪かったですね! キース様とは別にそういう関係じゃないんです! 敵! やっぱり敵!! …あれ? 今、この方なんか言いませんでした?
と、つい不思議に思って口をついてしまう。
「ヴィクトリア様がなにか?」
それにテオドールはその形のいい唇をゆがめた。
「お前ごときが知る必要はないだろ。お前はキースに捨てられた情婦なんだから」
「ご無礼いたしました。申し訳ありません」
イルネギィアは慇懃無礼に謝罪した。
――いいや、もう、この方はこういう対処でいこう。あとでキース様に聞こうっと。それにこういう方はマーネメルト男爵家で働いていた時もいたもの。男爵様にお金を貸していたご縁戚の方とか。ああ、駆け落ちなさったお嬢様、お元気かなぁ。
そんな風にぼんやりとテオドールの暴言を流していたが、彼はまた神妙な顔になった。
「…キースは、あいつはヴィクトリア嬢と結婚する気なのか?」
――あ、ヴィクトリア様に戻った。気になるのなら、最初からそうお訊ねになればいいのに。
と、イルネギィアは口にしそうになったが慌てて口に手をやる。
「いえ、存じません」
――お役に立てず。
「情婦のくせに、それくらいもわからないのか?」
――違うってー! あたしは今一角獣に触れと言われたら触れる体です! なんなら連れて来てきてくださぁい!
そこまで考えてイルネギィアは以前 キースに非難は甘んじて受ける、と言った自分を思い出した。己の認識の甘さに腹が立つ。誤解がこんな形で非難されるとは。淑女方の嫉妬や紳士の誹謗は覚悟していたけれど、実の兄なのにキース様のこと、まるで手癖が悪い男のように言うこの方には我慢できない。
「だいたい、そこまでキース様とヴィクトリア様のことをお気になさるんなら、ご本人にお訊ねになるべきです! 男らしくない!」
――あ。
そこに沈黙が落ちた。
――あ、口にしちゃった…。
そんな自分を見ていた彼女は、自分以上に恐怖の色をその面に表していた。
そして、ベッドで意識を取り戻したとき、姉やテオドールにイルネギィアが助けを求めてくれた、と聞いた。
――罪悪感がいっぱいだった。
ギルバートは自分は悪人にはなれないのだ、と思った。
彼女を陥れるために赴いた先で その相手に助けられた。
我慢の限界だったのだ。
貴族の子女として教育を受けた。なのに、こんな卑劣な手段を父から指示され、正直自分の矜持は傷ついていた。ひどく辛かった。それが限界に達していたのだ、と気がついた。
姉はそんな弟の真意は知らず、ただ、子爵家の困窮を弟に押し付けていた、そして、その心労で弟は倒れた、と信じた。
だから彼女は髪の色を露呈することにしたのだ。
公爵家の次男、オーティス伯爵が銀の髪の娘が好きだというのは公然のことだったから。姉には可哀相だと思う気持ちもあるが、もしも力のない男に嫁ぎ、親の支援もない生活をさせるより経済的にも裕福な伯爵夫人におさまった方が幸せになれる。
自分が今 倒れたことは良かったのだ――と。
そのとき、テオドールには王都に戻るよう促された。そして、かかりつけの医師の診察を受けるようにと。
だが、ここにも公爵夫人のために医師が常勤していて、彼の診察では特に悪いところはなかった。
そして、ギルバートはどうしても心残りがあった。
イルネギィアがどうして自分を呼び出したのか――。
どうしても、気になって仕方なかったのだ。
イルネギィアは眼前のギルバートの様子に困惑する。自分をじっと見つめるその瞳。悪意があるようには思えないがひどく熱を帯びている気がする。対人経験の少ない自分でも、彼がなにを言わんとしているかうっすら予想がつく。
ただ、わからないのは、なんでそんな気持ちに彼がなったか――だ。
――ど、どうしちゃったの…。いかにも貴族のご子息って感じの方だったのに。あたしが人を呼んだと思っているから!? あ、あれはテオドール様が全部やってくださったのに。どうしよう。こういう時はどう対処したらいいの!?
戸惑っているイルネギィアにギルバートは言葉を選ぶ。確かに、先日まで彼はそんなことをする必要は感じなかった。所詮、使用人と侮っていたから。だが、今は違う。彼女の声を聞きたかった。ギルバートを、自分をあそこに呼んだ理由を知りたかった。
多幸感のある希望ある答えを期待している。
「どうして、あの小道に僕を呼び出したんだ?」
キターー! とイルネギィアは思った。
ドキドキとした。そのせいで声もうわずる。キース様があたしは顔に出すぎると心配するわけだ、と自分でも思った。
「あの、ヴィクトリア様のことでお話しようと…」
キースと打ち合わせて、聞かれたらこう答えるよう言われている。これは練習もしたので大丈夫。
「姉の事で?」
「はい、ヴィクトリア様はあまりこちらに馴染んでいらっしゃらなかったようなので、僭越ながらあたしがお相手できないかと…。それで、弟のギルバート様にご相談したかったんです。こちらには社交でいらしてらっしゃるのに、他家の使用人のあたしが出過ぎるのは如何とも思いましたから」
「…それだけ?」
残念そうな声がする。
「はい」
イルネギィアはホっと息をつく。
「そう…」
言って彼は半歩近づく。イルネギィアとの距離が縮まる。イルネギィアはそれに小首を傾げて背の高い彼を見上げる。
熱のありそうなお顔――と、いう感想を持ったがギルバートの手がイルネギィアの手に重なったとき、まずい、と思った。
と、同時に声がする。
「そこの! イリーと言ったな。こちらに来て手伝え」
この感じの悪い声は――!
イルネギィアは助かった、という安堵と、敵の出現に大きく息を吐いた。
「どのような御用でしょうか…」
ギルバートからリネンを受け取り洗濯室に届けると イルネギィアは先に自分を呼び止めたテオドールの書斎にいた。
テオドールは椅子に座り、トントンと指でテーブルを叩き、苛立ちをあらわにしている。
彼の書斎はキースと違って随分と雑多にものが置いてある。優雅で有能、と言われる公爵家の嫡子は意外にずぼらなのかもしれない。
「…お前は自分の立場がわかっているのか?」
――いきなりお説教か!
「あの、はい、一応は…」
――正直 怖い、この方。
「オーティス伯爵家の使用人です」
イルネギィアのこの返答にテオドールは息を吐く。
「馬鹿なのか、お前は。そんなことを言っているんじゃない…。キースはなんのためにお前を囮にしてギルバートを排除しようとしたのか、わからないのか?」
――…魔力の実験です、とは言えませんよ! て、いうか、この方どこまでご存知なのかしら?
「〝守護者〟については聞いているのか?」
「はい」
「…お前になにかあったら〝守護者〟が発動するということは?」
「伺っております」
――あ、言いたいこと、なんとなくわかってきましたぁ。
「じゃあ、なぜ、ギルバートと二人でいるんだ? 無用心すぎるだろう! お前はこの館で死人を出すつもりなのか?」
――…認めます。不注意でした…。
「…〝守護者〟の発動を防ぐため、とあいつは言っていたが、お前がこんなんじゃ無意味だな。全く…。あいつの女の趣味はわからない。こんな馬鹿な女が好きなら、なぜあのヴィクトリア嬢と…」
――馬鹿で悪かったですね! キース様とは別にそういう関係じゃないんです! 敵! やっぱり敵!! …あれ? 今、この方なんか言いませんでした?
と、つい不思議に思って口をついてしまう。
「ヴィクトリア様がなにか?」
それにテオドールはその形のいい唇をゆがめた。
「お前ごときが知る必要はないだろ。お前はキースに捨てられた情婦なんだから」
「ご無礼いたしました。申し訳ありません」
イルネギィアは慇懃無礼に謝罪した。
――いいや、もう、この方はこういう対処でいこう。あとでキース様に聞こうっと。それにこういう方はマーネメルト男爵家で働いていた時もいたもの。男爵様にお金を貸していたご縁戚の方とか。ああ、駆け落ちなさったお嬢様、お元気かなぁ。
そんな風にぼんやりとテオドールの暴言を流していたが、彼はまた神妙な顔になった。
「…キースは、あいつはヴィクトリア嬢と結婚する気なのか?」
――あ、ヴィクトリア様に戻った。気になるのなら、最初からそうお訊ねになればいいのに。
と、イルネギィアは口にしそうになったが慌てて口に手をやる。
「いえ、存じません」
――お役に立てず。
「情婦のくせに、それくらいもわからないのか?」
――違うってー! あたしは今一角獣に触れと言われたら触れる体です! なんなら連れて来てきてくださぁい!
そこまで考えてイルネギィアは以前 キースに非難は甘んじて受ける、と言った自分を思い出した。己の認識の甘さに腹が立つ。誤解がこんな形で非難されるとは。淑女方の嫉妬や紳士の誹謗は覚悟していたけれど、実の兄なのにキース様のこと、まるで手癖が悪い男のように言うこの方には我慢できない。
「だいたい、そこまでキース様とヴィクトリア様のことをお気になさるんなら、ご本人にお訊ねになるべきです! 男らしくない!」
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