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本編
プロローグ
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「ひっ! ば、化け物!」
またか……
「この忌み子がっ! 近付くな!」
どうして……
「お前は気持ち悪いんだよ! 失せろ!」
僕は、何か呪われることをしたのか?誰か教えてくれよ。
「あははっ、アイツの家燃やしてやったぜ!」
「ま、あんな奴、村にいるだけでなんか呼び寄せそうだったもんな」
「じゃっ、俺達は正義の味方ってか? あはは!」
僕の家、燃えてる。父さんと母さんの思い出が、燃えてる。
なんで、こうなったんだろう。またこの力のせいなの?
僕、一生懸命生きたよ?いっぱい働いたよ?ご飯我慢したよ?
なのにさ、どうしてこうなっちゃったのかな?
もう、泣いてもいいんじゃないかな?
◇
「おい……あいつ、食事中なのにフルアーマー着てるぜ」
「しっ! お前、知らないのかよ……アイツは【無慈悲な守護者】のシオンだぞ?」
「え? 実力はSSSランク冒険者なのにAランク冒険者留まりの?」
「そうそう……この前なんか、たかが護衛クエストで盗賊団を一人で潰したらしいし……」
酒場の隅から冒険者たちが俺のことを噂しているらしい。その表情は憧れのものではなく恐怖のものなのは言うまでもない。
酒場にいても会話する仲間もいない。食事を済ませていつものようにギルドの受付に向かうだけだ。
「……依頼」
俺がギルドの受付でそう言うと、受付嬢は顔をしかめて対応する。明らかに不愉快感を露わにしていた。
「はいはい、これでいいんじゃない? と、いうか気持ち悪いから他の受付で依頼受けてくれない?」
「……すまぬ」
他の受付でもこんな対応ばかりだ。俺が向かった受付嬢の子はいつも『今日は運が無かったね』などと言われているらしい。
俺が嫌われてる理由は単純だ……フルアーマーを脱がないから、だ。ギルドではAランクまでは依頼の実績を積めばなれる。しかし、Sランクからはギルドからの信用も必要になる。
俺はある事情でフルアーマーを脱ぎたくない、と言った。顔も見せない相手をSランク冒険者にすることなどできない、だそうだ。
脱げる事ならフルアーマーを脱ぎたい。だけどそれをすればあの日々が来る。それぐらいならAランクのままでも構わないのだ。
「……『ゴミ拾い』」
「何? あんたの信頼のためにそれ選んでやったのよ? 早く行きなさいよ」
「……」
出された依頼は初心者向けのゴミ拾い、という依頼だった。大変な割には報酬が少なく、誰もやらない仕事の一つだ。
だけど、やるしかない。そうしないと俺の存在意義が無いから――――
◇
「鎧で雑草抜いてるー! 変なのー」
「しっ! 見るの止めなさい!」
ただ、ひたすら抜くだけ。周りの眼なんて気にするだけ無駄。そんな作業を一日やっていればいいだけ……
「なんであの鎧を脱がないのかしら……気味が悪いわ」
「きっと指名手配でもされてるのよっ! なんてこの国にあんなのがいるのかしら……」
……雑草を、抜く。根元から抜く。
ガンッ
頭に衝撃が走った……気がした。まるで痛くないからどうだか分からないが……
「この鎧お化け! このおかーさんは僕が守る!」
「こらっ! やめなさい!」
どうやら子供が木剣で俺の頭を叩いたみたいだ……子供の母らしき人が止めている……
「すみません! この子には言い聞かせますので!」
「……俺が居たら怖い?」
「い、いえ! そんなことはないです! 雑草抜き、ありがとうございます!」
女性は明らかに無理をしている。そうだよな、フルアーマーの俺が居たら怖がるのも無理はない……か。
「……すぐに終わらせるから……許してほしい」
「へ? あ、あの……」
突然謝った俺に戸惑ってるみたいだ……こんなフルアーマーから謝られても困るだけだよな……
「……このフルアーマーを脱ぐと人から『化け物』と言われるものでね。脱ぐのだけは勘弁してくれないだろうか……」
俺がそう答えると、女性は何故か辛そうな顔を浮かべる。
「どうした?」
「……ごめんなさい、うちの子供が酷いことを言って……ほら、謝りなさい」
「……ごめんなさい」
親子はそう言うと、何処かに去っていった。……よく分からないが、早く雑草を抜くか。
◇
その日は雑草取りに時間を費やし、夕方には報酬を受け取る。
そして俺は決まってある場所に行く――――
ガタン
『寄付します』
そう書かれた紙と一緒に報酬の半分を教会の郵便受けに入れる。これはただの自己満足。褒めてほしいんじゃない。自分を褒めるためにやってるんだ。
そしてもう一つ。
『街の人達を怖がらせました。ごめんなさい』
懺悔の紙、教会に入って懺悔したいが、教会の子供を怖がらせるし、神の御前でフルアーマーという訳にもいかない。
だからいつもこうしてるのだ。少しでも街の人達やギルドの冒険者達と仲が良くなるように――――
そして俺は再び自分の寝場所に向かって歩を進めるのだ。
◇
「マザー! 今日も寄付金が!」
「……本当に、誰なんでしょうね」
「そうですよね……それと今日も懺悔の紙が」
「寄付金は子供達にご飯を食べさせられるので嬉しいのですが……どこの誰だか分からないとお礼が出来ませんね……」
「そうですよね……でも、この文字からして【女の子】だと思うんですけね……」
「そうですね……今までの懺悔の紙から見て、冒険者なのは確かなんですが……街の方に聞いても、女の子の冒険者なんて知らないって言いますからね……」
またか……
「この忌み子がっ! 近付くな!」
どうして……
「お前は気持ち悪いんだよ! 失せろ!」
僕は、何か呪われることをしたのか?誰か教えてくれよ。
「あははっ、アイツの家燃やしてやったぜ!」
「ま、あんな奴、村にいるだけでなんか呼び寄せそうだったもんな」
「じゃっ、俺達は正義の味方ってか? あはは!」
僕の家、燃えてる。父さんと母さんの思い出が、燃えてる。
なんで、こうなったんだろう。またこの力のせいなの?
僕、一生懸命生きたよ?いっぱい働いたよ?ご飯我慢したよ?
なのにさ、どうしてこうなっちゃったのかな?
もう、泣いてもいいんじゃないかな?
◇
「おい……あいつ、食事中なのにフルアーマー着てるぜ」
「しっ! お前、知らないのかよ……アイツは【無慈悲な守護者】のシオンだぞ?」
「え? 実力はSSSランク冒険者なのにAランク冒険者留まりの?」
「そうそう……この前なんか、たかが護衛クエストで盗賊団を一人で潰したらしいし……」
酒場の隅から冒険者たちが俺のことを噂しているらしい。その表情は憧れのものではなく恐怖のものなのは言うまでもない。
酒場にいても会話する仲間もいない。食事を済ませていつものようにギルドの受付に向かうだけだ。
「……依頼」
俺がギルドの受付でそう言うと、受付嬢は顔をしかめて対応する。明らかに不愉快感を露わにしていた。
「はいはい、これでいいんじゃない? と、いうか気持ち悪いから他の受付で依頼受けてくれない?」
「……すまぬ」
他の受付でもこんな対応ばかりだ。俺が向かった受付嬢の子はいつも『今日は運が無かったね』などと言われているらしい。
俺が嫌われてる理由は単純だ……フルアーマーを脱がないから、だ。ギルドではAランクまでは依頼の実績を積めばなれる。しかし、Sランクからはギルドからの信用も必要になる。
俺はある事情でフルアーマーを脱ぎたくない、と言った。顔も見せない相手をSランク冒険者にすることなどできない、だそうだ。
脱げる事ならフルアーマーを脱ぎたい。だけどそれをすればあの日々が来る。それぐらいならAランクのままでも構わないのだ。
「……『ゴミ拾い』」
「何? あんたの信頼のためにそれ選んでやったのよ? 早く行きなさいよ」
「……」
出された依頼は初心者向けのゴミ拾い、という依頼だった。大変な割には報酬が少なく、誰もやらない仕事の一つだ。
だけど、やるしかない。そうしないと俺の存在意義が無いから――――
◇
「鎧で雑草抜いてるー! 変なのー」
「しっ! 見るの止めなさい!」
ただ、ひたすら抜くだけ。周りの眼なんて気にするだけ無駄。そんな作業を一日やっていればいいだけ……
「なんであの鎧を脱がないのかしら……気味が悪いわ」
「きっと指名手配でもされてるのよっ! なんてこの国にあんなのがいるのかしら……」
……雑草を、抜く。根元から抜く。
ガンッ
頭に衝撃が走った……気がした。まるで痛くないからどうだか分からないが……
「この鎧お化け! このおかーさんは僕が守る!」
「こらっ! やめなさい!」
どうやら子供が木剣で俺の頭を叩いたみたいだ……子供の母らしき人が止めている……
「すみません! この子には言い聞かせますので!」
「……俺が居たら怖い?」
「い、いえ! そんなことはないです! 雑草抜き、ありがとうございます!」
女性は明らかに無理をしている。そうだよな、フルアーマーの俺が居たら怖がるのも無理はない……か。
「……すぐに終わらせるから……許してほしい」
「へ? あ、あの……」
突然謝った俺に戸惑ってるみたいだ……こんなフルアーマーから謝られても困るだけだよな……
「……このフルアーマーを脱ぐと人から『化け物』と言われるものでね。脱ぐのだけは勘弁してくれないだろうか……」
俺がそう答えると、女性は何故か辛そうな顔を浮かべる。
「どうした?」
「……ごめんなさい、うちの子供が酷いことを言って……ほら、謝りなさい」
「……ごめんなさい」
親子はそう言うと、何処かに去っていった。……よく分からないが、早く雑草を抜くか。
◇
その日は雑草取りに時間を費やし、夕方には報酬を受け取る。
そして俺は決まってある場所に行く――――
ガタン
『寄付します』
そう書かれた紙と一緒に報酬の半分を教会の郵便受けに入れる。これはただの自己満足。褒めてほしいんじゃない。自分を褒めるためにやってるんだ。
そしてもう一つ。
『街の人達を怖がらせました。ごめんなさい』
懺悔の紙、教会に入って懺悔したいが、教会の子供を怖がらせるし、神の御前でフルアーマーという訳にもいかない。
だからいつもこうしてるのだ。少しでも街の人達やギルドの冒険者達と仲が良くなるように――――
そして俺は再び自分の寝場所に向かって歩を進めるのだ。
◇
「マザー! 今日も寄付金が!」
「……本当に、誰なんでしょうね」
「そうですよね……それと今日も懺悔の紙が」
「寄付金は子供達にご飯を食べさせられるので嬉しいのですが……どこの誰だか分からないとお礼が出来ませんね……」
「そうですよね……でも、この文字からして【女の子】だと思うんですけね……」
「そうですね……今までの懺悔の紙から見て、冒険者なのは確かなんですが……街の方に聞いても、女の子の冒険者なんて知らないって言いますからね……」
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