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尾鷲遼

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一番星の演奏者

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 これは6年前の合唱コンクールでの奇跡の物語だ…
 俺のクラスにスポーツ万能、ピアノも出来て、イケメン、性格も良くて誰からでも愛されるというパーフェクトみたいなクラスメートがいた。そいつの名前は垣田かきた怜侍れいじ。俺は幸運なことに小学校、中学校とずっと仲が良かった。
 物語の時期は、中学校最期の合唱コンクールの活動が始まる時だった。伴奏者、指揮者、パートリーダーを決めなければならない。みんなが沈黙して俯く中、まっさきに手を上げたのが怜侍だった。彼は称賛の声を浴びながら伴奏者になった。彼が手を挙げたのを皮切りに、他の役職も順調に決まり、活動が始まった。そこまでは順調だった…役職が決まってから1週間がたったある日、怜侍はあまりいっしよに話しているイメージがないやつを呼び出していた。不思議に思った俺はその後相手に内容を聞いた。彼はこう答えた。
「怜侍に伴奏を変わってくれと頼まれたんだ。一応練習はしておくけれど本番当日はやる気はないよ」
 不思議に思ってその日の放課後怜侍に聞いてみた。が、ゴニョゴニョと言葉を濁すばかり。何だ、俺とは友達じゃないのか? その後も俺はしつこく問いただした。そしたら思いもよらぬ回答が帰ってきた。
「俺、余命あと2週間なんだ…だから合唱コンクールでられない可能性のほうが高いんだ…」
 詳しく聞くと役職を決めたあと大会前のスポーツ検診で末期の癌が見つかって余命宣告をされたらしい。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ…そんなこと…信じないぞ。
 悲しくなり怜侍をおいて帰ってしまった。俺はその事は誰にも言いはしなかったが、風の速さで怜侍の癌はクラス全員に伝わり、怜侍は本格的に入院を始めた。

 合唱コンクール当日。やはり怜侍はこない。伴奏を頼まれていたやつは、『サビの部分がどうしても弾けないからサビだけ暗い演出をし、先生にうまく変わってもらい、明るくなる頃にまた変わってもらう』という斬新な一発勝負の案で行くことになった。
 そしてリハーサルを終え、本番。ここにはいない怜侍に届けるように、俺は、いやクラス全員が心を込めて歌った。
 サビになった。代わりの伴奏のやつが変わった。そして何故か半べそで合唱に混じった。ピアノを引くんじゃないの?と焦ったが、今は聞けないのでとにかく一生懸命歌った。そして明かりがついた瞬間俺は人生のすべての運を使ったのではないかというぐらいの奇跡が起こった。
 なんと弾いていたのは。何かの幻覚でなく、確かに、苦しそうな表情をしながらピアノを弾いている怜侍だった。俺は号泣のあまり歌えなくなりそうだったが、大親友の怜侍の伴奏なので死ぬ気で歌った。
合唱が終わった。俺等のクラスは最後だったのでみんなで怜侍に駆け寄った。だがもう怜侍は息を引き取っていた。俺は直感的に気付く。怜侍は命を振り絞って弾いていたのだ。 俺は命懸けで来てもらったので嬉しく、今の状況に対してすごく悲しかったので大泣きした。
 怜侍は動物の本能で感じ取ったのか死期を悟り、病院を抜け出しタクシーで来たそうだ。自分の命の最後の輝きを、彼は見事に演出してみせたのだ。
 それからはみんなで怜侍のことをスターと呼ぶようになった。
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