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第2章 球技を扱う冒険者編
第51話 無尽流と門下生
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「でもキング。本当にあのハスラーって子、大丈夫かな?」
「ふむ。ダーテにも話したが、精神的にはタフだと思うぞ。敗北したのが全く効いていないということはないだろうが、今はとにかく一人で考える時間も必要だろう」
「そっか……」
キングがそういうならウィンとしてもそれ以上は語ることもなかった。ウィンとしては今日はじめて会った間柄であり、下手に口をだすべきじゃないと考えたのもあるだろう。
――ぐぅぅううぅうう。
その時、ウィンの腹の音が鳴った。当の本人は顔を真っ赤にさせている。
「こ、これはその――」
「うむ、そういえば何だか小腹が空いたな。良かったら食べにいくか?」
「う、うん!」
「キュッ、キュッ~♪」
キングの肩の上でボールが飛び跳ねた。
ボールも食事には賛成のようだった。ちなみに敢えてキングはウィンの腹の音には触れていない。
「ここの食堂でいいかな? 値段が手頃で味もいいからおすすめなんだ」
「へぇ~キングが言うなら間違いなさそうね!」
「キュッ、キュッ~」
こうしてキング達は店に入り、テーブル席に案内された。店員に注文を頼み暫く待っていたが――
「いやいや、流石はヤン先生。おかげで上手く話がまとまりましたよ」
「フン、当然だ。この俺様がわざわざ出向いてやったんだからな」
その声の主に顔を向けるキングである。巨大な槍が特徴のヤンである。しかも今度は多くの男女を率いており、狡猾そうな顔の男が揉み手をしながらヤンを持ち上げていた。
「おい! ヤン先生がわざわざ来てくれたんだ。店のありったけの酒を持ってこい!」
「ちょ、何あれ。随分と偉そうよね」
「キュッキュッ~」
集団は酒を求めながら勝手に席や椅子を運び、くっつけて場所を広げた。
「あの道場の連中も、ヤン先生の鶴の一声で看板を下ろすことを決めてくれましたよ。これで岩斧流の影響力はより高まります」
「それは良かった。だが忘れるなよ。お前らは我ら無尽流があるからやっていけてるんだ」
「へっへ、勿論ですよ。あ、これは少ないですが先生に個人的に――」
ヤンがさし出された袋を受け取り中身を見た。
「金貨か。わかってるじゃないか」
「勿論です! ですから今後とも末永いお付き合いを」
「うむ――」
「そういえば聞きましたよ。無尽流の免許皆伝などと言いふらしていた冒険者の餓鬼を先生が打ちのめしたって」
「何だ随分と耳が早いな」
「それはもう。世の中情報がすべてですからねぇ」
「それにしてもあの野郎。自分みたいな若造でも免許皆伝がとれるんだから無尽流は大したことないなんて言いふらしていましたからね」
「しかしその餓鬼も馬鹿なやつだ。ちょっと弟子がいびられてるぐらいで無駄な正義感ひけらかして無尽流に楯突くような真似しやがって」
「大体才能ない馬鹿はいくらやっても無駄なんだよ」
「だからこそ、それをわからせるために才能ない馬鹿は甚振ってやってるってのになぁ」
キングがヤンたちが座るテーブルを見た。これまでの話ではさもハスラーが一方的に師範を暴力で打ちのめし無理矢理免許皆伝にさせたなどという話だったが、連中の話を聞く分にはそれだけの真似をした理由がハスラーにはあったように思える。
「大体他の道場のやりかたがぬるいんだよ。才能なんてものは持って生まれた天性のもの。いくら修行を積んだところで殆どが塵で無駄な努力。だったらそんな連中に安い授業料で長々教えたって意味がない」
「仰るとおりで」
語るヤンに狡猾そうな男が同調する。
「その点無尽流は賢い。入門料を高く設定し、入門させた後、才能ない塵は厳しい訓練と指導で徹底的に痛めつけ、道場をやめるよう持っていくのですから」
「どうせ育てたって無駄な連中だからな。金だけ貰えば後はようなしだ。とっとと止めてもらった方がこっちも楽だし金も稼げるって寸法よ」
そして連中がゲラゲラと下品な笑い声を上げた。
「酷い。何て連中よ。散々ハスラーのこと好き勝手言っていたくせに!」
その様子にウィンが怒りを顕にした。
「キュッ! キュッ~!」
ボールも腹を立てているようである。
「おい! 酒はまだか!」
「あ、あの申し訳ありません。他のお客様のこともあるのでもう少し静かにしていただける。それに席を勝手に移動されるのも……」
ヤンの取り巻き連中に店員が近づき注意した。
「は? 何だと貴様!」
「も、もうしわけありません! ただ、その、槍にしても、それだけ大きいと他のお客様の邪魔になりますし――」
店員がおそろおそろといった様子で連中に言った。するとヤンが立ち上がり。
「槍かそれはすまなかったな」
そう詫びるような言葉を告げる。店員がほっとした顔を見せ。
「わ、わかっていただけるならそれで――」
「ならばこの槍はお前で片付けておけ」
「え? ちょ!」
店員を見下ろし手にした槍を店員に向けて落とした。常識外の大きさを誇る槍であり、当然一般人が持てるような代物ではなく。
「ヒッ!」
「この槍を運べばいいんだな?」
「ムッ、貴様――」
頭を両手で覆い、怯える店員だったが、槍は落下するまえにキングが掴んでいた。
「お、おいおいつヤン先生の槍を……」
「片手で受け止めただと?」
「馬鹿な。三百キロはある槍だぞ!」
周囲の連中は驚いているがキングは軽々とそれを外に持っていきしっかりとした場所に立て掛けた後に戻ってきた。
「なるほど。力なら中々ということか。なんなら槍持ちの雑用係として飼ってやろうか?」
ヤンがにやりと口角を歪める。
「ぎゃはは、それはいい」
「脳筋の馬鹿にはいい仕事だ」
「お前も良かったじゃないか。仕事にありつけるぞ」
「いやいやしかし、見るからに頭は悪そうですから、やはり飼うのは厳しいかと」
「な、何なのよあいつらあの言い方!」
「キュッーーーー!」
連中がそんなことを口にし嘲笑しだす。聞いていたウィンやボールが怒りを顕にしていたが、連中に構うことなくキングはテーブルと椅子の配置を元に戻し始めた。
「な、貴様何を、ちょ、お、下ろせ!」
椅子に座っていた何人かを持ち上げ、適当なところで下ろし更にテーブルを戻すキングに、ヤンが怒鳴り散らす。
「貴様! 一体どういうつもりだ!」
「見てのとおりだ。お前らが勝手にずらした椅子やテーブルを元の配置に戻してるんだよ」
「何だと、貴様! 喧嘩を売ってるのか!」
「やってやりましょうよこんな奴!」
荒ぶる男たちをキングが振り返る。
「別に喧嘩を売るつもりはないが、店にもルールがある。それを守るつもりがないんだったら店にも客にも迷惑だ。とっとと出ていくんだな」
「ふむ。ダーテにも話したが、精神的にはタフだと思うぞ。敗北したのが全く効いていないということはないだろうが、今はとにかく一人で考える時間も必要だろう」
「そっか……」
キングがそういうならウィンとしてもそれ以上は語ることもなかった。ウィンとしては今日はじめて会った間柄であり、下手に口をだすべきじゃないと考えたのもあるだろう。
――ぐぅぅううぅうう。
その時、ウィンの腹の音が鳴った。当の本人は顔を真っ赤にさせている。
「こ、これはその――」
「うむ、そういえば何だか小腹が空いたな。良かったら食べにいくか?」
「う、うん!」
「キュッ、キュッ~♪」
キングの肩の上でボールが飛び跳ねた。
ボールも食事には賛成のようだった。ちなみに敢えてキングはウィンの腹の音には触れていない。
「ここの食堂でいいかな? 値段が手頃で味もいいからおすすめなんだ」
「へぇ~キングが言うなら間違いなさそうね!」
「キュッ、キュッ~」
こうしてキング達は店に入り、テーブル席に案内された。店員に注文を頼み暫く待っていたが――
「いやいや、流石はヤン先生。おかげで上手く話がまとまりましたよ」
「フン、当然だ。この俺様がわざわざ出向いてやったんだからな」
その声の主に顔を向けるキングである。巨大な槍が特徴のヤンである。しかも今度は多くの男女を率いており、狡猾そうな顔の男が揉み手をしながらヤンを持ち上げていた。
「おい! ヤン先生がわざわざ来てくれたんだ。店のありったけの酒を持ってこい!」
「ちょ、何あれ。随分と偉そうよね」
「キュッキュッ~」
集団は酒を求めながら勝手に席や椅子を運び、くっつけて場所を広げた。
「あの道場の連中も、ヤン先生の鶴の一声で看板を下ろすことを決めてくれましたよ。これで岩斧流の影響力はより高まります」
「それは良かった。だが忘れるなよ。お前らは我ら無尽流があるからやっていけてるんだ」
「へっへ、勿論ですよ。あ、これは少ないですが先生に個人的に――」
ヤンがさし出された袋を受け取り中身を見た。
「金貨か。わかってるじゃないか」
「勿論です! ですから今後とも末永いお付き合いを」
「うむ――」
「そういえば聞きましたよ。無尽流の免許皆伝などと言いふらしていた冒険者の餓鬼を先生が打ちのめしたって」
「何だ随分と耳が早いな」
「それはもう。世の中情報がすべてですからねぇ」
「それにしてもあの野郎。自分みたいな若造でも免許皆伝がとれるんだから無尽流は大したことないなんて言いふらしていましたからね」
「しかしその餓鬼も馬鹿なやつだ。ちょっと弟子がいびられてるぐらいで無駄な正義感ひけらかして無尽流に楯突くような真似しやがって」
「大体才能ない馬鹿はいくらやっても無駄なんだよ」
「だからこそ、それをわからせるために才能ない馬鹿は甚振ってやってるってのになぁ」
キングがヤンたちが座るテーブルを見た。これまでの話ではさもハスラーが一方的に師範を暴力で打ちのめし無理矢理免許皆伝にさせたなどという話だったが、連中の話を聞く分にはそれだけの真似をした理由がハスラーにはあったように思える。
「大体他の道場のやりかたがぬるいんだよ。才能なんてものは持って生まれた天性のもの。いくら修行を積んだところで殆どが塵で無駄な努力。だったらそんな連中に安い授業料で長々教えたって意味がない」
「仰るとおりで」
語るヤンに狡猾そうな男が同調する。
「その点無尽流は賢い。入門料を高く設定し、入門させた後、才能ない塵は厳しい訓練と指導で徹底的に痛めつけ、道場をやめるよう持っていくのですから」
「どうせ育てたって無駄な連中だからな。金だけ貰えば後はようなしだ。とっとと止めてもらった方がこっちも楽だし金も稼げるって寸法よ」
そして連中がゲラゲラと下品な笑い声を上げた。
「酷い。何て連中よ。散々ハスラーのこと好き勝手言っていたくせに!」
その様子にウィンが怒りを顕にした。
「キュッ! キュッ~!」
ボールも腹を立てているようである。
「おい! 酒はまだか!」
「あ、あの申し訳ありません。他のお客様のこともあるのでもう少し静かにしていただける。それに席を勝手に移動されるのも……」
ヤンの取り巻き連中に店員が近づき注意した。
「は? 何だと貴様!」
「も、もうしわけありません! ただ、その、槍にしても、それだけ大きいと他のお客様の邪魔になりますし――」
店員がおそろおそろといった様子で連中に言った。するとヤンが立ち上がり。
「槍かそれはすまなかったな」
そう詫びるような言葉を告げる。店員がほっとした顔を見せ。
「わ、わかっていただけるならそれで――」
「ならばこの槍はお前で片付けておけ」
「え? ちょ!」
店員を見下ろし手にした槍を店員に向けて落とした。常識外の大きさを誇る槍であり、当然一般人が持てるような代物ではなく。
「ヒッ!」
「この槍を運べばいいんだな?」
「ムッ、貴様――」
頭を両手で覆い、怯える店員だったが、槍は落下するまえにキングが掴んでいた。
「お、おいおいつヤン先生の槍を……」
「片手で受け止めただと?」
「馬鹿な。三百キロはある槍だぞ!」
周囲の連中は驚いているがキングは軽々とそれを外に持っていきしっかりとした場所に立て掛けた後に戻ってきた。
「なるほど。力なら中々ということか。なんなら槍持ちの雑用係として飼ってやろうか?」
ヤンがにやりと口角を歪める。
「ぎゃはは、それはいい」
「脳筋の馬鹿にはいい仕事だ」
「お前も良かったじゃないか。仕事にありつけるぞ」
「いやいやしかし、見るからに頭は悪そうですから、やはり飼うのは厳しいかと」
「な、何なのよあいつらあの言い方!」
「キュッーーーー!」
連中がそんなことを口にし嘲笑しだす。聞いていたウィンやボールが怒りを顕にしていたが、連中に構うことなくキングはテーブルと椅子の配置を元に戻し始めた。
「な、貴様何を、ちょ、お、下ろせ!」
椅子に座っていた何人かを持ち上げ、適当なところで下ろし更にテーブルを戻すキングに、ヤンが怒鳴り散らす。
「貴様! 一体どういうつもりだ!」
「見てのとおりだ。お前らが勝手にずらした椅子やテーブルを元の配置に戻してるんだよ」
「何だと、貴様! 喧嘩を売ってるのか!」
「やってやりましょうよこんな奴!」
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