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幕間

第二百八十話 転生忍者、主を探しに山へ向かう

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 王槍ラビットの角も特に問題なく納品出来た。冒険者ギルドには盗賊も引き渡した。

 そして次はいよいよ山の主を探しにいく予定なのだが。

「ジンよ! お主最近何やらこそこそしてるようじゃな!」

 姫様がやってきて眉を尖らせて不機嫌そうに指摘してきた。こそこそというつもりもなかったんだけどなぁ。

「別にこそこそしていたわけじゃないぞ。ちょっと頼まれごとをして動いていたんだ」
「頼まれごと?」
「沼と森と山にいる主から素材を集めて欲しいという依頼だ」

 俺が説明すると姫様がぷるぷると肩を震わせ、ガバっと顔を上げる。

「面白そうではないか! 何故妾を誘わんのじゃ!」
「えぇ……いやカグヤは勉強もあったし、それに主というのは魔獣だから危険なんだよ」
「黙るのじゃ! 今日は勉強も休みじゃから一緒に行くのだ!」

 本気かよ……いや、本当結構危険かと思うんだけど。でも、姫様言ったら利かないしな……そもそもの性格からしてずっと中に引きこもってるような性格じゃなかったなそういえば。

 城にいたころもよく抜け出していたし、俺も何度も団子を食いに行くのにつきあわされた。今となっては懐かしい思い出だが、姫様もそろそろ外を出歩きたくなったということか。

「う~ん、わかったよ。でも俺の言うとおりにしてくれよ危険だから」
「ふん、仕方ないのう」

 というわけで今日は姫様と山に向かうことになったのだが。





◇◆◇

「付き合ってくれてありがとうジンさん!」
「いや、まぁついでみたいなものだけどね」

 山に向かった俺達だったがデトラも同行していた。何故こうなったかと言えば一度街に立ち寄ったのが原因だが、そこでデトラに頼まれたんだ。

 どうしても見てみたい植物があるけど、一人だと親が許してくれない。だから一緒にいけないかなと、とね。そしてそれが俺の目的地と丁度重なった形だ。

「その植物というのはどこにあるんだい?」
「えっと山の中腹あたりに生えてて火ノ木という木なの」

 火ノ木ね。檜とは違うようだな。檜なら日ノ本では建築材料として重宝されたものだが。

「デトラも一緒で楽しいのう。天気も良いし絶好の野掛けピクニック日和なのじゃ!」
「ガウガウ!」

 快晴の空を仰ぎながら姫様がはしゃいだ。その下ではマガミも楽しそうに吠えている。今回も姫様はマガミの上だ。

「キキィ♪」
「うむ、マガミもエンコウも一緒に愉しむのじゃ!」
『主よ、安心めされよ! 姫の身は我が命にかえても!』

 そしてエンコウは姫様の肩の上、一人張り切るエンサイはその後ろについている。妙な使命感に燃えてるなエンサイは。

 麓の森から山道に入り登っていく。二合目ぐらいまではなだらかな道で姫様の言う通りピクニック気分で進むことが出来た。

 凶悪な獣もそんなには出てこないが三合目からは足を踏み外したら崖下に真っ逆さまといった道も通る必要が出てきた。

「滑落しないように気をつけてな」
「う、うん――」

 デトラも結構おっかなびっくりだな。

「ケーケー!」
「何か飛んでるのじゃ!」
「怪鳥か――」

 上空から俺達を見下ろしてくる鳥がいた。首が妙に長く目玉が大きな鳥だ。サイズも大きいぞ。

「ケェエエエェエエエエェエエ!」

 こっちに向かって襲いかかってきた。案の定か。足場が狭い道だから狙い目とでも思ったのだろう。しょうがないな魔法で――

「わ、私にまかせてください!」

 しかし俺が動く前にデトラが魔法を行使。棘の生えた緑色の植物が生えてきて、向かってきた怪鳥に向けて棘を飛ばした。

「キェエエェエェエエエエエエエ!」

 たまらんと言わんばかりに怪鳥が逃げ去っていく。おお、デトラも中々やるな。

「凄いじゃないかデトラ。前よりも更に扱える植物が増えてないか?」
「えへへ、ギルドでメグさんやエロイさんからも色々教わって――」

 そ、そうなのか? 確かに二人は魔法士だが、あいつらそんなにまともに教えられるものだったのか?
 
 いや、確かに大会のとき、意外にもメグの指導のおかげでデトラはマグと渡り合えるぐらいに成長したけど、メグとエロイ……う~ん――

「その、なんだ。爆発とかその、下ネタっぽい発言は控えたほうがいいぞ?」
「しないよ! え、ジンさん私をそんな風にみてたの!?」
 
 すごく驚かれた。そして肩を落とされた。

「ジン、お前は酷いやつなのじゃ」
「いやいや、ちょっと心配になっただけなんだって。だって教えてるのがあいつらだぞ!」
「そ、それは確かに爆破の魔法を覚えない? とか大人な感じの、その、した、ぎ、いや! でも基本的にいい人だからそんな心配は不要だよ!」

 デトラが二人を擁護した。だが、不安になるワードも聞こえてきたんだが……ま、まぁ本人がそう言うならその意思も尊重しよう。

 とにかく怪鳥を追い払った後は順調に進んだ。山の中腹までやってきたところでデトラが声を上げた。

「あ、あれが火ノ木です!」

 指輪した場所に火ノ木とやらが生えていた。全長二十メートル程度の喬木だ。見た目は日ノ本の檜に実に似てるが赤味が強いな。

 木には燃えたように赤い実がなっていた。形は丸く罅が割れたような見た目をしている。

「出来れば一つ実が欲しいんだけど……」

 デトラは種を利用して魔法を使う。だから実が欲しいのだろうな。だけど、眉を落とし困ったような表情だ。何が問題があるのだろうか?

「ウキィ!」

 するとエンコウが任せろと言わんばかりに木に飛びついた。

「あ、駄目! エンコウちゃん?」
「ウキィ?」
 
 エンコウが疑問の声を上げる。すると突如火ノ木が燃え上がり、なっていた実が火球となって降り注いだ。

「ウキャキャキャーーーー!」

 エンコウが悲鳴を上げて急いで戻ってきた。火の玉が当たりそうだったからとっさに忍法で石の盾を発生させ庇った。

 だけど、エンコウの尻尾の先がちょっと燃えてた。地面に叩きつけて火は消えたが尾っぽにふぅふぅと息を吹き付けて涙目だ。

「エンコウちゃん大丈夫!?」
「任せるのじゃ!」

 マガミに乗ったままの姫様がエンコウに近づき、尻尾を治療してあげる。

『いやはや、これは驚きですな! 近づくと火塗れになる木とは!』
「う~ん、火ノ木か。まさに名前通りだな」
「うん。火ノ木は自己防衛で自分を燃やしたり実を火に包んで落としたりするんだよ」

 なるほど。しかも実は地面に落ちると爆発し、砕け散る。これだと実の回収も中々難しそうだが。

「厄介な木じゃな。あの実は採れるのか?」
「やっぱり難しいかな?」
「……爆発する前に回収できれば何とかなるかな?」
「え? うん、それなら多分」

 デトラが答える。それなら何とかななるかな。

「ちょっとやってみるかエンコウ」
「キキッ?」

 エンコウと打ち合わせし行動に移る。

 リングナイフを取り出し、火ノ木に向けて投げる。直後エンコウが実に電撃を放った。即座に反応し樹木が燃え火に塗れた実を落としてきた。

 ナイフが地面に刺さり、実もそれに続くが、そこで実の動きが止まった。

「え? これって?」
「磁力さ。エンコウが実に磁気を浴びせた。俺の投げたナイフにも魔法で磁気を帯びさせている。それで途中で動きを止めているんだ」

 強めれば吹き飛ぶが調整すれば均等し止まったようになる。

「ウォーターリリース!」

 デトラが魔法を行使、生えてきた花が実に向けて勢いよく水を放出した。燃えていた火が沈下し、それをエンコウが回収した。

『おお! やりましたな!』
「ウッキィ!」
「ガウガウ!」

 戻ってきたエンコウが実を掲げ得意がった。エンサイとマガミがエンコウを称える。
 
「良かった。ジンさんありがとう」
「無事手に入ってよかったよ」
「うむ、お主も中々やるのう」

 デトラも喜んでくれて何よりだ。姫様にも感心されたし。

「あれ? お前たちこんなところで何してるんだ?」

 その時俺達に声を掛けてくる人物。男勝りっぽい口調だが、やってきたのは女の冒険者、ダガーだった。
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