親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃

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第四章 モンスターバトル編

第185話 モグの一撃

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 神奈の話を聞いた後で、俺たちは伊達にチャレンジを続ける旨を伝えた。

「俺はモンスターをテイムしてるんだが……一緒に戦わせてもいいか?」

 チャレンジ開始前、俺は伊達に確認を入れる。
 モコやラム、マールたちが期待の目を向ける中、モグが「モグゥ!」と胸を張るように鳴いた。

「ふむ……一匹だけならいいだろう。三人の枠とは別で加えてやる」

 伊達が頷くと、観客からも「おお!」とどよめきが上がる。モグは地面をカリカリと掘り、準備万端といった様子だ。

 モグは俺と一緒に考えるという扱いなので、チャレンジ料金は三人分で済んだ。

 そして俺たちは伊達と対峙する。

「よし、行くぞハル!」
「おう!」
「私も負けないからね!」

 熊谷、俺&モグ、秋月。三人と一匹のチャレンジが始まった。

 合図と同時に、熊谷が猛然と突っ込む。鋭い拳が風を切り、伊達の顔面を狙った。だが伊達は半歩引いて軽くかわす。
 秋月は間を置かず低い体勢から蹴りを繰り出すが、それもさらりとかわされた。

「くっ……!」

 さすがは秋月。もとから強かったが、格闘家のジョブを得て、技の切れ味はさらに鋭くなっている――が、それでも、伊達には届かない。

 俺もモグに合わせて動くが、目の前の男は余裕の笑みを崩さない。
 こんなことなら鍬でも持ってくれば良かったか。いや、これだけ実力差があるなら、鍬があっても気休めかもしれない。

 観客からは「おお、速ぇ!」「当たんねぇぞ!」と歓声が飛び、ますます熱が高まる。

 時間は刻一刻と過ぎ、審判役が声を張った。

「残り三十秒!」

 焦りが胸を掠める。
 本当に勝てるのか――? ふと神奈を見る。彼女は笑顔で俺たちの戦いを見ていた。

 そうだ。まだ手はある。もし神奈の考えが正しいなら――

 そのとき、伊達が眉を顰めた。

「そういや……モグラはどうした?」

 彼が疑問の声を上げた、その瞬間。

 伊達が避けるために踏み出した片足が、ズブリと地面に沈んだ。モグが掘った穴にはまったのだ。

「なっ――!?」

 驚きに顔を歪める伊達。次の瞬間、別の地面からモグが飛び出した。

「モグゥッ!」

 同時に、秋月が宙を舞う。

「せぇいっ!」

 モグの奇襲と秋月の飛び蹴り。二方向から迫る攻撃に、さすがの伊達も目を見開いた。

――だが。

 伊達は咄嗟に足を引き抜き、ギリギリで秋月の蹴りをかわす。
 モグの爪もかすめるだけに終わった。

「くっ……駄目か……!」

 悔しさが胸を締めつける。

 だが次の瞬間、伊達が手を挙げた。

「一本取られたな」
「……え?」

 俺たち三人は思わず声を揃えた。

「モグラの穴にはまった時点で、一発食らったのと同じだからな。見事だったぜ」

 伊達は豪快に笑う。
 モグは誇らしげに「モグゥ!」と鳴き、観客からも大きな拍手が湧き起こった。

「うちから言おうと思ったけど、自分で認めるなんて見直したで」

 神奈が腕を組み、にやりと笑う。

「はは、してやったりだ!」
「うん! モグちゃんのおかげだね!」

 熊谷と秋月が歓びの声を漏らす。俺も胸の奥が熱くなるのを感じた。

 伊達は腰のポーチから光る石を取り出し、俺に差し出す。

「チャレンジ達成の証だ。持っていけ」
「これは……」

 淡い青白い光を放つ、雷の魔石。
 両手で受け取ると、ずしりとした重みと、ビリリとした微弱な力が伝わってきた。

「やったな、ハル!」
「あぁ。そうだな!」

 秋月も熊谷も、そしてモンスターたちも喜びの声を上げる。
 こうして俺たちは、雷の魔石を手に入れたのだった――。
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