理系女子が16世紀イタリアに似た異世界の貴族令嬢に転生。追放されたので、魔法科学で領地の文明水準を引き上げます

ねこまんまる

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20 たまごを産む条件

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現代の採卵鶏とはまったくちがい、この時代のにわとりは、品種改良がほぼされていない。
なので、毎日たまごは産まないし、換羽期(※羽が生え替わる時期)は産卵を停止してしまう。

にわとりがたまごを産むのは、太陽のひかり……日照時間に強く影響される。

けれど、16世紀には電灯がないし、人工照明でにわとりを照らす発想もない。
鶏舎は寒くて暗いので、2~4日に1個産めばかなり優秀なほうだ。
そして晩秋~冬(11月~2月頃)は、にわとりの産卵がほぼ止まる。

だから私は、にわとり小屋に、魔法科学で人工照明を作ることにした。
人工照明を設置し、日照時間を1日12~14時間相当にたもてば、にわとりは冬でも産卵を再開してくれるはずだ。
これは現代の畜産でも同じ原理。

さっそく、魔法科学で作った照明を、にわとり小屋の天井に設置する。
金属と木を組み合わせた簡素な器具で、油も芯もいらない。
中核には、昼光を蓄える魔導結晶がはめ込まれていた。

炎ではない、やわらかな光がにわとり小屋に広がる。

止まり木で休んでいたにわとりのマッキアが、首をのばし、目をまたたかせた。

よし……これなら、にわとりも驚かないわね。

魔法灯は、日の入りとともに自動で点き、時間かけて徐々に明るくなる仕組みだ。

人の手で無理やり昼をのばすのではなく、「日が長い季節だ」と錯覚させるための工夫だった。

つぎにエサ箱も確認する。
光だけあたえても、体力がなければ卵は生まれない。

木でできたエサ箱に、魔法科学で術式をほどこす。
 
すると、板のすきまに穀粉や油分がついていたとしても菌は増えることはなく、清潔のまま維持される。
さらに、エサ箱にいれられたエサは、タンパク質や脂肪などの栄養価が高くなるようにしておいた。
 
さっそくエサ箱に、にわとりのエサを入れてみた。
 
エサとしてあたえられるのは、小麦・大麦・エン麦・粟などの『穀物のくず』や、固くなった黒パンを砕いたもの。
そら豆・ひよこ豆・レンズ豆などの調理くず。
キャベツの外葉、カブの葉。
ぶどうの搾りかすなどだ。
 
にわとりのマッキアは、エサ箱のエサをうれしそうについばんでいた。
 
つぎに、飲み水をいれておく水桶にも術式をかけておく。
 
水面に映る光がわずかに揺れ、桶の内側に付着した微細な汚れがキレイになっていく。
 
こうして、たまごを少しでも多く産んでくれるように、病気を予防し、にわとりの体力をへらさないように気をつけていく。
 

 
にわとりのマッキアは、毎日とはいかないけれど、たまごを多く産んでくれるようになった。
 
朝、にわとり小屋の様子を見に行くと、ぬくもりの残るたまごがふたつ転がっている。
 
それを見て、領地の村人たちがざわついていた。
 
「信じられない、いまは秋のおわりなのに」
「この寒さで、にわとりが卵を産むなんて……」
 
にわとりのマッキアは、何事もなかったように羽をふくらませ、エサをつついているだけだ。
 
村人たちを落ちつかせるために、私は一歩前に出た。

「大丈夫よ、おどろくことじゃないわ。このにわとりは風の当たらない場所で休ませているし、エサも少し工夫しているの。だから、たまたま……卵を産んでくれただけ」
 
村人たちは顔を見合わせる。
納得しかけた者もいれば、眉をひそめて首をかしげる者もいた。
いつもと違うことが起きれば、この時代の人々は、ささいなことでも不安になってしまうのだ。
 
そのとき、ルカが私の肩に手を置き、村人たちに声をかけた。
 
「イザベラのおかげで、にわとりは今日も元気そうだ。たまごも、たくさんあれば病人の助けにもなる」
 
私は、たまごをそっと持ち上げた。
冷えた指先に、ほのかなぬくもりが伝わる。
 
「これは、みんなで分けましょう。売らないようにします。悪いウワサにならないように」
 
たまごは、今夜は病気の子がいる家へあげることにした。
明日は、年寄りの粥に落とすつもりだ。

村人たちが落ちついたのを見て、ルカは私にやさしいまなざしを向けて言った。
 
「イザベラの工夫と、魔法科学のおかげだ。このまま卵を分けていけば、病人や年寄りの助けになる」
 
私は「はい」と笑みを返した。
 
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