君の幸せを願って

キャロライン

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プロローグ

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 恋をする事も誰かのために生きようとも、俺はそんな事を考えた事がなかった。

でも彼奴に出会って、気づけば俺は、彼奴しか眼中にしかなくなっていた。瞳の中で揺れる彼奴の表情や動きが、いちいち気になってしょうがない。

暇さえあれば、自然と顔がそっちに向く。

違う違う、、頭の中で否定しようとも、鼓動はドクドクと目が合うたびに脈打ってばかりだ。

体は正直で仕方ない。

でも敢えて言おう、俺高校三年緋月春樹17歳は、同級生で他クラスの琴梓が恋愛的に好きなのかも、、しれない。


「ねえ春ちゃん、、俺等付き合ってみない?」

「は、、ふざけてんのか?」

「んーん真剣な事だけど」

港の沖合で堤防に座り、横に仲良く座り釣り竿を持つ。すると突然梓からそんな提案をされ目が点になる。


「だって、、春ちゃんは恋愛小説がすきなんでしょ?」

「違う、、気になってんだよジャンル的に」

「ジャンル的??」

「次回書く話の参考にしようと思ってる」


こんな突拍子もない話合いはいつものことだ。そもそも梓と今こうして知り合っているのも、ある事がきっかけだった。


「ねえコレ君のだよね??」

「え、、あはい」

数カ月前、新学期になり早々俺は趣味で書いていた、小説ノートを落としてしまい必死に探していた。

そんな時、梓が俺のノートを拾い、返しに来てくれたのだ。

「ありがとう、、えっと」


「中身は読んだよ」

「え」

その瞬間体が固まる、嘘だろと普段誰にも見せない自分の作った話を読まれていた事に、なんとも言えない羞恥心が上から下にかけて体を熱くしていった。


「、、、すごい面白かった」

「、、、、、、、、、、、、は?」

「話の纏り方もそうだけど、文章の表現が秀逸で、読んでて魂を本の中に吸い取られてる気分」


その言葉に、伏せていた顔を上げ彼の表情を見れば、興奮したように目を光らせ熱く語る姿に嘘ではないと理解する。


「あっそう」

素っ気なく返した言葉にも、「作家ぽい癖強キャラみたい」と独特な視点で俺を観察し、気づけば俺の書く話のファン1号となっていた。

「だからだよ」


「え?」


話は戻り、俺は竿の揺れる感覚に、当たりを引いたかとリールを回している最中、そんな事を突然言われ俺は手を止め梓の方を見た。

「俺言ってなかったけど、、、第二の性オメガなんだよね」

「、、、、まじか」

オメガとはこの世界で人々にある、第二の性と呼ばれるものの一つで、俺は少し珍しいアルファの性だ。オメガの場合、運命の番を見つける事で項を噛むことで、番が成立する。

たまに運命の相手というものに、惹かれることもあるらしく、不思議でしかたない。オメガの人間は男女に関わらず、同性同士の子供を産めるという事に共通点がある。

「春ちゃんの匂いで何となく分かった、、アルファなんでしょ??」



「、、ああそうだよ」



「じゃあさ俺達仮の番になろうよ」


「、、意味わかんねえよ」


「だって恋を知りたいんでしょ??」


「っつ”ーーーーーーーでもいいのかよお前は」


「いいよ、、春ちゃんのためになるなら」

そう言って、俺の方へと寄ってきた梓は顔を近づけ、スッと横に置いた左手に自身の手を重ね合わせ笑った。


コイツは、、不思議で仕方ない。



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