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9.熱烈業火なアプローチ
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街は外出許可の下りた生徒達で予想外の賑わいだった。
人目ばかり気にする俺の腕にキヨがしがみついてくる。
鼻歌なんて口ずさんで。上機嫌なのはいいことだと思う。
思うよ、本当に。
「ご、ご機嫌ですね……」
「そう? 開陽様がそうおっしゃるならそうなのでしょう。悪い虫も、今は遠くにいますから」
遠目から警戒するアイス。キヨに迂闊には近付けなかった。
とりあえず、俺は大丈夫だということを全力でアピールした。
そうすることで、本当によからぬ企みをしているキヨを刺激しないことにも繋がる。
「少し遅いけど。二人ともお昼はなににする?」
久志が尋ねてきた。
異世界の街がよほど物珍しかったのだろう。
すでにキヨにはあちこち付き合わされた身になった俺は学園を出てから歩き通しだった。
空腹より疲労が勝って腹は減ってない。
「開陽様、あれ。キヨはあれを食べてみたいです」
「クレープ屋か。開陽いいんじゃない? 確かにもうおやつの時間だしね」
キヨ、クレープ屋を見つけ食べたいと俺にせがんだ。
まあ確かに俺も、疲れて糖分を摂りたい気分だった。
「どれに」
「開陽様とおなじで」
でしょうね。
バナナとチョコ、久志は大人向けなツナをトッピングに使ったクレープを買った。
「我々は苺を」
「はいよ、今日は騎士さんらも多いから苺が飛ぶように売れるよ」
店主の男と削銘は顔馴染みか?
姉妹で好みが揃うのは、人以外でもあるあるらしい。
「あそこで食べようか」
久志が指した休憩スポットは街道の外れにある神社だった。
「買い食いするようなこの感じ、なんか懐かしさを掻き立てられるな」
石段に腰かけた俺の隣にキヨがつくと、アイスはまたも絹を裂くような声を上げた。
「いただきます」
「あそこのクレープ屋さん、普段は生徒や護衛騎士で行列ができるのに。運がよかった」
「へぇ……うぉ!」
一口噛んだ俺の口に、クレープの生地はふんわりと。チョコのほろ苦さにバナナの果汁が融け合って。
ここ最近不運続けだった俺も、今日は久志の言う通り運に恵まれたらしい。
「じゃあ。僕らは消えるよ……ほらアイスさん」
「ええ!? ちょっと……久志さん……!」
「アイスさんの護衛に少しの距離は大した意味を持たないでしょう? それではお二人さん、ごゆっくり」
「開陽さぁああああん!」
久志は神の眷属でもあるアイスを俺があっという間にどこかへと連れて行ってしまった。
俺がクレープを食べる前、キヨがそわそわしているのに俺も気付いたが。
まさか……。
「おいしい」
嫌な予感に汗を垂らしていた俺の横で、キヨは一口クレープの先を含んで呟いた。
「こんなに美味しいものは、異世界にはありませんでした……」
「大袈裟な」
「旦那様に嘘はつきません。向こうは、貧富問わず大抵薄味なメニューばかりですから」
そう俯き加減にキヨが言った食糧事情から。
異世界の食糧事情について、俺はふと不穏な気配を感じた。
自分が転生する予定の世界について好奇心がなかったわけではない。
たとえば、女神至上主義で悪しきモノと冷遇された魔族が叛旗を翻した。フィクションでありきたりだが。
現実で起きた話だとして、俺には他人事とは思えなかった。
「知りたいですか……キヨの生い立ち」
「ナンデワカルノ?」
「ふふっ」
鼻で笑われても馬鹿にされように聞こえないことってあるんだ!?
「キヨは、ある魔族の姫でした。いつか一族を率いる長として育てられ……唐突に、未来の先にあるはずだったそのすべてを、戦争の火が焼いたのです」
そして魔族を討伐した人間の軍隊に捕まり、商品として檻に閉じ込められた。
その後、キヨは女神に聴かされた。
キヨにとっては第二の未来を俺にも話してくれた。
「異世界に来た勇者様は、キヨを奴隷として買ったのだそうです。囚われた娘を不憫に思い。奴隷として救われたキヨは、冒険を経て勇者様の伴侶になるんです」
その未来を実現させるべく、真実を話した女神によってこの世界に遣わされた。
「てことは、俺、やっぱり殺されちゃうの……?」
キヨは首を横に振った。
あの奴隷紋が袖から見える。
「この世界でキヨがすべきことを見つけました」
見えた奴隷紋は、怪しげな光を放っていた。
強い光から顕現したのは魔物と。
なんと女神本人だった。
「アンナチュラル!?」
「真っ昼間からクレープなんか食って、死ねよニートが」
「会うなり悪口かよ殺すぞ!」
俺が立てた中指を後光を背負うアンナチュラルは冷たく見据えるように。
「あの神もどきの結界か。思念体と低級の魔物しか召喚できなかったとか草生えねぇし」
「思念体」
目の前にいるのはアンナチュラルの本体じゃない。
言われると姿を見たのに腹もややしか立たなかった。
「それでも、やっぱりムカつくがな!」
「お互い様。なんでまだ生きてんだよ」
日曜でも通常運転。
ダンジョンの一件で学校にも馴染めずいい加減飽き飽きしていた。
「キヨに命じ開陽を殺させようとしたが、今もずっと呪いの効きが弱い。だから直に指示を出す。開陽をさっさと殺」
「お前が死ね」
「……は?」
魔物と女神の思念体をキヨは呆気なく食い殺した。
「魔力が、増大している!?」
「ミチル!?」
声をかけたのに来なかったのが突然どうしてミチル達がここに。
「ま、まさか……外出に浮かれた陽キャ共に陰キャの祟りがついに発動したのか陽キャが駆逐されるのを眺め最後に呪いを回収し陰キャの勢力を拡大する足掛かりとするぞ!」
「やぁあありましたねぇええええ……! ミチルさまぁああ!」
明日からのミチルとの共同生活が一気に不安になった。
「でぇ……すがぁ、今は……私怨を優先していい、状況じゃ、ない、ようですよぉおお……」
「女神を喰ったから!?」
「女神を……!? 毒々しい妖気を感じ来たが」
捕食の影響で魔力が増大。
「やはり女神に命を狙われるだけならまだしも、余計な虫が多い開陽様は、キヨがなんとかするしかありませんね」
背が伸び、妖艶な気を纏う姿に変じたキヨ。
いや。これが彼女の本来の姿なのか。
「善は急げ。良妻の秘訣な迅速な対応……お掃除を、はじめましょう」
掌で印をつくるキヨ。
「『来迎印』? でも、逆さまねぇええ……」
「騎士様は妖術にもお詳しいの? キヨの一族では裏印相と言います。かつては如来の印相を逆に構える邪法を極めていましたの。これで、通常の効果が反転して発動する」
異世界で滅ぼされたその一族か。
光の届く一帯の土の中から、鬼族の軍勢を呼び覚ましたキヨは街を襲撃するよう命じた。
「か、開陽、奴隷紋」
「さっきからやっているが、止まらない!」
「女神への抵抗力ゆえでしょう、強い意志なら開陽様の命令にも抗えるようになりました」
俺は言葉での説得を試みた。
「どうしてこんな、街は……ほかの人間は関係ないんじゃないのかよ!」
「食べ物が美味しい、恵まれたこの世界を支配下に治め女神と戦争する。異世界は2つの勢力争いに疲弊、漁夫の利を狙うなら絶好の機会」
「やめろ……俺が憎いのは」
「キヨは知っていますよ。女神の暴挙に開陽様だって嫌気が差している。開陽様がご自身が言った言葉を、忘れる妻ではありません」
こうするのが一番手っ取り早い。
これが当たり前のように言ったキヨの神経を俺は疑った。
「なにを言っても無駄です。キヨは異世界から来た魔族、戦争で敵を殺すことこそが、彼女にとっての日常なんです」
そう亡者を斃し道を切り開く。
神の遣いで戦火からの守り手たる、騎士が俺を諭した。
人目ばかり気にする俺の腕にキヨがしがみついてくる。
鼻歌なんて口ずさんで。上機嫌なのはいいことだと思う。
思うよ、本当に。
「ご、ご機嫌ですね……」
「そう? 開陽様がそうおっしゃるならそうなのでしょう。悪い虫も、今は遠くにいますから」
遠目から警戒するアイス。キヨに迂闊には近付けなかった。
とりあえず、俺は大丈夫だということを全力でアピールした。
そうすることで、本当によからぬ企みをしているキヨを刺激しないことにも繋がる。
「少し遅いけど。二人ともお昼はなににする?」
久志が尋ねてきた。
異世界の街がよほど物珍しかったのだろう。
すでにキヨにはあちこち付き合わされた身になった俺は学園を出てから歩き通しだった。
空腹より疲労が勝って腹は減ってない。
「開陽様、あれ。キヨはあれを食べてみたいです」
「クレープ屋か。開陽いいんじゃない? 確かにもうおやつの時間だしね」
キヨ、クレープ屋を見つけ食べたいと俺にせがんだ。
まあ確かに俺も、疲れて糖分を摂りたい気分だった。
「どれに」
「開陽様とおなじで」
でしょうね。
バナナとチョコ、久志は大人向けなツナをトッピングに使ったクレープを買った。
「我々は苺を」
「はいよ、今日は騎士さんらも多いから苺が飛ぶように売れるよ」
店主の男と削銘は顔馴染みか?
姉妹で好みが揃うのは、人以外でもあるあるらしい。
「あそこで食べようか」
久志が指した休憩スポットは街道の外れにある神社だった。
「買い食いするようなこの感じ、なんか懐かしさを掻き立てられるな」
石段に腰かけた俺の隣にキヨがつくと、アイスはまたも絹を裂くような声を上げた。
「いただきます」
「あそこのクレープ屋さん、普段は生徒や護衛騎士で行列ができるのに。運がよかった」
「へぇ……うぉ!」
一口噛んだ俺の口に、クレープの生地はふんわりと。チョコのほろ苦さにバナナの果汁が融け合って。
ここ最近不運続けだった俺も、今日は久志の言う通り運に恵まれたらしい。
「じゃあ。僕らは消えるよ……ほらアイスさん」
「ええ!? ちょっと……久志さん……!」
「アイスさんの護衛に少しの距離は大した意味を持たないでしょう? それではお二人さん、ごゆっくり」
「開陽さぁああああん!」
久志は神の眷属でもあるアイスを俺があっという間にどこかへと連れて行ってしまった。
俺がクレープを食べる前、キヨがそわそわしているのに俺も気付いたが。
まさか……。
「おいしい」
嫌な予感に汗を垂らしていた俺の横で、キヨは一口クレープの先を含んで呟いた。
「こんなに美味しいものは、異世界にはありませんでした……」
「大袈裟な」
「旦那様に嘘はつきません。向こうは、貧富問わず大抵薄味なメニューばかりですから」
そう俯き加減にキヨが言った食糧事情から。
異世界の食糧事情について、俺はふと不穏な気配を感じた。
自分が転生する予定の世界について好奇心がなかったわけではない。
たとえば、女神至上主義で悪しきモノと冷遇された魔族が叛旗を翻した。フィクションでありきたりだが。
現実で起きた話だとして、俺には他人事とは思えなかった。
「知りたいですか……キヨの生い立ち」
「ナンデワカルノ?」
「ふふっ」
鼻で笑われても馬鹿にされように聞こえないことってあるんだ!?
「キヨは、ある魔族の姫でした。いつか一族を率いる長として育てられ……唐突に、未来の先にあるはずだったそのすべてを、戦争の火が焼いたのです」
そして魔族を討伐した人間の軍隊に捕まり、商品として檻に閉じ込められた。
その後、キヨは女神に聴かされた。
キヨにとっては第二の未来を俺にも話してくれた。
「異世界に来た勇者様は、キヨを奴隷として買ったのだそうです。囚われた娘を不憫に思い。奴隷として救われたキヨは、冒険を経て勇者様の伴侶になるんです」
その未来を実現させるべく、真実を話した女神によってこの世界に遣わされた。
「てことは、俺、やっぱり殺されちゃうの……?」
キヨは首を横に振った。
あの奴隷紋が袖から見える。
「この世界でキヨがすべきことを見つけました」
見えた奴隷紋は、怪しげな光を放っていた。
強い光から顕現したのは魔物と。
なんと女神本人だった。
「アンナチュラル!?」
「真っ昼間からクレープなんか食って、死ねよニートが」
「会うなり悪口かよ殺すぞ!」
俺が立てた中指を後光を背負うアンナチュラルは冷たく見据えるように。
「あの神もどきの結界か。思念体と低級の魔物しか召喚できなかったとか草生えねぇし」
「思念体」
目の前にいるのはアンナチュラルの本体じゃない。
言われると姿を見たのに腹もややしか立たなかった。
「それでも、やっぱりムカつくがな!」
「お互い様。なんでまだ生きてんだよ」
日曜でも通常運転。
ダンジョンの一件で学校にも馴染めずいい加減飽き飽きしていた。
「キヨに命じ開陽を殺させようとしたが、今もずっと呪いの効きが弱い。だから直に指示を出す。開陽をさっさと殺」
「お前が死ね」
「……は?」
魔物と女神の思念体をキヨは呆気なく食い殺した。
「魔力が、増大している!?」
「ミチル!?」
声をかけたのに来なかったのが突然どうしてミチル達がここに。
「ま、まさか……外出に浮かれた陽キャ共に陰キャの祟りがついに発動したのか陽キャが駆逐されるのを眺め最後に呪いを回収し陰キャの勢力を拡大する足掛かりとするぞ!」
「やぁあありましたねぇええええ……! ミチルさまぁああ!」
明日からのミチルとの共同生活が一気に不安になった。
「でぇ……すがぁ、今は……私怨を優先していい、状況じゃ、ない、ようですよぉおお……」
「女神を喰ったから!?」
「女神を……!? 毒々しい妖気を感じ来たが」
捕食の影響で魔力が増大。
「やはり女神に命を狙われるだけならまだしも、余計な虫が多い開陽様は、キヨがなんとかするしかありませんね」
背が伸び、妖艶な気を纏う姿に変じたキヨ。
いや。これが彼女の本来の姿なのか。
「善は急げ。良妻の秘訣な迅速な対応……お掃除を、はじめましょう」
掌で印をつくるキヨ。
「『来迎印』? でも、逆さまねぇええ……」
「騎士様は妖術にもお詳しいの? キヨの一族では裏印相と言います。かつては如来の印相を逆に構える邪法を極めていましたの。これで、通常の効果が反転して発動する」
異世界で滅ぼされたその一族か。
光の届く一帯の土の中から、鬼族の軍勢を呼び覚ましたキヨは街を襲撃するよう命じた。
「か、開陽、奴隷紋」
「さっきからやっているが、止まらない!」
「女神への抵抗力ゆえでしょう、強い意志なら開陽様の命令にも抗えるようになりました」
俺は言葉での説得を試みた。
「どうしてこんな、街は……ほかの人間は関係ないんじゃないのかよ!」
「食べ物が美味しい、恵まれたこの世界を支配下に治め女神と戦争する。異世界は2つの勢力争いに疲弊、漁夫の利を狙うなら絶好の機会」
「やめろ……俺が憎いのは」
「キヨは知っていますよ。女神の暴挙に開陽様だって嫌気が差している。開陽様がご自身が言った言葉を、忘れる妻ではありません」
こうするのが一番手っ取り早い。
これが当たり前のように言ったキヨの神経を俺は疑った。
「なにを言っても無駄です。キヨは異世界から来た魔族、戦争で敵を殺すことこそが、彼女にとっての日常なんです」
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