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第一章
第二話 23 幸せな時間
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「で、何話してたの? 二人とも」
衛は興味が湧いたようで、好奇心がある様子の表情をして聖月と十夜に話しかけてきた。十夜は面倒くさそうに、重い口を開く。
「聖月に俺が勉強教えようとしただけ。その計画のお話」
はあ、とため息をつき頬杖をしている十夜の言葉に、衛はすばやく食いついた。まるで餌をもとめる貪欲な魚のようだった。
「ええっ! オレも教えてよ勉強ーっ! じゅうくんっいいでしょ? 一人や二人増えたって。オレのほうが聖月より成績悪いしさぁー…」
衛は十夜の顔に自分の顔を近づけて、必死になって同意を求めてきた。十夜はあからさまに、口をへの字に曲げさも嫌そうな顔をした。勘弁してくれよ、そんな想いが透けて見えた。
衛の成績はたしかに聖月のものよりも悪かった。こう衛が十夜に頼むのも自然なものだと聖月は思った。十夜は衛の必死になっている表情を、数十秒間じっと見ていたが、ついにその懸命さに最後に折れた。
「あー、分かったよ。やればいいんだろ、教えてやれば。聖月ひとりでも楽じゃないってのに、衛まで来るとは思わなかった。衛はあとでアイス奢れよ? それも高いアイスでよろしく」
「…あーっ! 差別だ、差別っ。ミツには何もいわないのに、何でオレだけなの~? ちゃんとお金払わないといけないの?! ひっでえーッ!」
「ごちゃごちゃうるせえな、聖月は俺が初めに勉強教えるっていったんだよ。お前は俺に頼んできたんじゃねえか。 衛は馬鹿で教えるのタイヘンだから、手数料金ぐらいもらわないとやりたくないっての! 俺の気持ちも考えろよ、少しは。たった何百円ぐらいのアイス1つにギャーギャー喚くなっ、うるさい」
「たかが何百円のアイスってオレには結構な金なんだよーっ! ミツだってそこまで頭良くないじゃんっ俺とほぼ同じだもん」
「お前何言ってんだ、聖月はだいたい3だが、衛の通知表はだいたい2ばっかじゃねえか…まったく違うものだろ?」
「いいもん、ミツは体育3だけどオレは4だもん。その差だよっ!」
「はあっ?!お前それとこれじゃ全然違うじゃ――」
聖月は二人の言い合いに自分が酷い言われようだと勉強をして重い頭で考えた。衛の言っていることは小学生レベルだし、十夜は頭はいいが変な所で頑固なのでなかなか話は進まない。
どんどん二人の言い争いがまだ続いているし、それに比例して声が大声になり始めている。平行線になっている言い合いにこれはまずいと―――聖月は喧嘩みたいに大声を言い合っている二人の会話を終わらせようと、話題を変えようとした。
「あ、あのさどこで勉強するの…!」
二人を割り込むように話した聖月の言葉は、二人の耳にきちんと届いたらしく、十夜と衛の言葉のドッヂボールは止み、静止した。
十夜は自分たちが意味のないことしていることを分かったらしく、考え込むような姿勢になりしばらくうねっていたが、やがて答えが見つかったらしくはっきりとした声で言い放った。
「屋上は、どうだ? 日陰になる所が結構あるし誰にも邪魔されないくていいだろ。聖月、衛、それでいいか」
十夜のいう通り屋上は、聖月の記憶でもあまり人が少なかったと覚えている。
日陰もドア部分の近くにあり、勉強するにはとても打ってつけな場所かもしれない。それにほとんどの生徒が勉強会のほうへと、足を運んでいるので屋上にいく人は少ないだろうと聖月も十夜の意見に賛成した。
「うん。俺はそこでいいよ。衛くんもあそこでいいよね」
衛は嬉しそうに顔をさせて「うん!」と頷いた。それほど嬉しかったのだろう。
十夜は重い腰を椅子からあげて、立ち上がってまだ立っている衛と座っている聖月に、急ぐように早口でせかすようにいった。
「俺職員室行って、鍵借りてくるわ。2人とも先に屋上にあがっていっておいて。早くここから出よう。ちょっとまずい」
聖月は初めその「早くここから出よう」といった十夜の発言にどういうことだろうと首を傾げたが、それに気付いたのか衛がクイッと目でその理由を目線で教えてくれた。
そこには3人の話を聞いて自分も教えて貰おうという邪(よこしま)な気持ちであろう女の子が沢山こそこそと集まっていた。
十夜か衛めあての飢えた獣のような目をした、女性をみて聖月は合点がいった。たしかに早くいかなければ餌食になってしまう。
聖月がぼんやりとしていた内に、十夜は目の前に居なくなっていてもう職員室に向かってしまったようだった。
聖月は衛の「ミツ、屋上に行こう」という言葉に従い衛と一緒に女の子たちを振り切るかのように早々と教室からでていった。
かすかに聖月の背中の方向から「ッチ」とクラスの女の子の舌打ちが聞こえてきた。
◆
屋上に聖月は衛と一緒に向かった。
5階にある屋上のカギは開いていて、ドアを開けると夏の熱風が聖月の体を包んだ。屋上のドア近くには影になっている部分があり、十夜はそこに立っていた。
十夜は待っているのが暇なのか鍵を手のひらで上に放ったり、掴んだりしていた。2人の足音に気づいたのか、十夜は顔を聖月たちのほうへと向ける。
「あ、来たな。誰も先客はいなかったぜ? 運がよかったっていうか、今までカギ閉まっていたから当たり前だけど」
「へえ~、よく借りられたね」
感心したように衛が呟いた。十夜はそんなことを言った衛を見てふふんと鼻で笑った。
「まぁ、俺はせんせーに気に入られてるから普通に借りられるんだよ。あ、あと、女子にレジャーシート借りたからここにひいてやろうぜ」
「うわ、借りたんだ。女の子の行動力すごいな」
「なんか屋上に行くんだ?って言われてじゃあこれあげるっていってくれた」
「くれたのかよ! 借りたんじゃないのかよッ。てか貰うな!」
「どうぞって言われたら、普通貰うのが礼儀だろ」
聖月はげえっと思わず大声で叫ぶ。人気者はスゴイとも聖月は思った。
やはり十夜は女の子にすごい目立っているのだなあと、感心した。まあスポーツもできるし話も面白いから男にも人気だけど。普通レジャーシートをくれる女の子なんて普通の男だったら体験できないだろう。
あらためて自分がすごい人物と付き合っていると、今更ながら考えた。どうして十夜は聖月と仲良くしてくれるのだろうかと、聖月の頭の中の疑問が残るばかりだった。
衛は興味が湧いたようで、好奇心がある様子の表情をして聖月と十夜に話しかけてきた。十夜は面倒くさそうに、重い口を開く。
「聖月に俺が勉強教えようとしただけ。その計画のお話」
はあ、とため息をつき頬杖をしている十夜の言葉に、衛はすばやく食いついた。まるで餌をもとめる貪欲な魚のようだった。
「ええっ! オレも教えてよ勉強ーっ! じゅうくんっいいでしょ? 一人や二人増えたって。オレのほうが聖月より成績悪いしさぁー…」
衛は十夜の顔に自分の顔を近づけて、必死になって同意を求めてきた。十夜はあからさまに、口をへの字に曲げさも嫌そうな顔をした。勘弁してくれよ、そんな想いが透けて見えた。
衛の成績はたしかに聖月のものよりも悪かった。こう衛が十夜に頼むのも自然なものだと聖月は思った。十夜は衛の必死になっている表情を、数十秒間じっと見ていたが、ついにその懸命さに最後に折れた。
「あー、分かったよ。やればいいんだろ、教えてやれば。聖月ひとりでも楽じゃないってのに、衛まで来るとは思わなかった。衛はあとでアイス奢れよ? それも高いアイスでよろしく」
「…あーっ! 差別だ、差別っ。ミツには何もいわないのに、何でオレだけなの~? ちゃんとお金払わないといけないの?! ひっでえーッ!」
「ごちゃごちゃうるせえな、聖月は俺が初めに勉強教えるっていったんだよ。お前は俺に頼んできたんじゃねえか。 衛は馬鹿で教えるのタイヘンだから、手数料金ぐらいもらわないとやりたくないっての! 俺の気持ちも考えろよ、少しは。たった何百円ぐらいのアイス1つにギャーギャー喚くなっ、うるさい」
「たかが何百円のアイスってオレには結構な金なんだよーっ! ミツだってそこまで頭良くないじゃんっ俺とほぼ同じだもん」
「お前何言ってんだ、聖月はだいたい3だが、衛の通知表はだいたい2ばっかじゃねえか…まったく違うものだろ?」
「いいもん、ミツは体育3だけどオレは4だもん。その差だよっ!」
「はあっ?!お前それとこれじゃ全然違うじゃ――」
聖月は二人の言い合いに自分が酷い言われようだと勉強をして重い頭で考えた。衛の言っていることは小学生レベルだし、十夜は頭はいいが変な所で頑固なのでなかなか話は進まない。
どんどん二人の言い争いがまだ続いているし、それに比例して声が大声になり始めている。平行線になっている言い合いにこれはまずいと―――聖月は喧嘩みたいに大声を言い合っている二人の会話を終わらせようと、話題を変えようとした。
「あ、あのさどこで勉強するの…!」
二人を割り込むように話した聖月の言葉は、二人の耳にきちんと届いたらしく、十夜と衛の言葉のドッヂボールは止み、静止した。
十夜は自分たちが意味のないことしていることを分かったらしく、考え込むような姿勢になりしばらくうねっていたが、やがて答えが見つかったらしくはっきりとした声で言い放った。
「屋上は、どうだ? 日陰になる所が結構あるし誰にも邪魔されないくていいだろ。聖月、衛、それでいいか」
十夜のいう通り屋上は、聖月の記憶でもあまり人が少なかったと覚えている。
日陰もドア部分の近くにあり、勉強するにはとても打ってつけな場所かもしれない。それにほとんどの生徒が勉強会のほうへと、足を運んでいるので屋上にいく人は少ないだろうと聖月も十夜の意見に賛成した。
「うん。俺はそこでいいよ。衛くんもあそこでいいよね」
衛は嬉しそうに顔をさせて「うん!」と頷いた。それほど嬉しかったのだろう。
十夜は重い腰を椅子からあげて、立ち上がってまだ立っている衛と座っている聖月に、急ぐように早口でせかすようにいった。
「俺職員室行って、鍵借りてくるわ。2人とも先に屋上にあがっていっておいて。早くここから出よう。ちょっとまずい」
聖月は初めその「早くここから出よう」といった十夜の発言にどういうことだろうと首を傾げたが、それに気付いたのか衛がクイッと目でその理由を目線で教えてくれた。
そこには3人の話を聞いて自分も教えて貰おうという邪(よこしま)な気持ちであろう女の子が沢山こそこそと集まっていた。
十夜か衛めあての飢えた獣のような目をした、女性をみて聖月は合点がいった。たしかに早くいかなければ餌食になってしまう。
聖月がぼんやりとしていた内に、十夜は目の前に居なくなっていてもう職員室に向かってしまったようだった。
聖月は衛の「ミツ、屋上に行こう」という言葉に従い衛と一緒に女の子たちを振り切るかのように早々と教室からでていった。
かすかに聖月の背中の方向から「ッチ」とクラスの女の子の舌打ちが聞こえてきた。
◆
屋上に聖月は衛と一緒に向かった。
5階にある屋上のカギは開いていて、ドアを開けると夏の熱風が聖月の体を包んだ。屋上のドア近くには影になっている部分があり、十夜はそこに立っていた。
十夜は待っているのが暇なのか鍵を手のひらで上に放ったり、掴んだりしていた。2人の足音に気づいたのか、十夜は顔を聖月たちのほうへと向ける。
「あ、来たな。誰も先客はいなかったぜ? 運がよかったっていうか、今までカギ閉まっていたから当たり前だけど」
「へえ~、よく借りられたね」
感心したように衛が呟いた。十夜はそんなことを言った衛を見てふふんと鼻で笑った。
「まぁ、俺はせんせーに気に入られてるから普通に借りられるんだよ。あ、あと、女子にレジャーシート借りたからここにひいてやろうぜ」
「うわ、借りたんだ。女の子の行動力すごいな」
「なんか屋上に行くんだ?って言われてじゃあこれあげるっていってくれた」
「くれたのかよ! 借りたんじゃないのかよッ。てか貰うな!」
「どうぞって言われたら、普通貰うのが礼儀だろ」
聖月はげえっと思わず大声で叫ぶ。人気者はスゴイとも聖月は思った。
やはり十夜は女の子にすごい目立っているのだなあと、感心した。まあスポーツもできるし話も面白いから男にも人気だけど。普通レジャーシートをくれる女の子なんて普通の男だったら体験できないだろう。
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