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第二章 第六話
66 優しさの拷問
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ケイの部屋の前まで来て、聖月は固まる。何と言って謝ればいいのだろう。そして、謝ったとしても、今までのように罵声をあびせられそうだ。だけれど、このまま許してもらえず、仲違いしたままでいいのかといえばそうではない。
息を吸って、決意をかためる。ノックをして待つと、ケイの声が聞こえる。
「…誰?」
ドア越しに聞こえる、ケイの可愛らしい声。
「聖月だけど…」
「何しに来たの? 帰ってよ」
すぐに言われて、聖月は息を呑む。拒絶が現れている声音と、言葉で聖月は怖気づきそうになる。だが、ここで逃げては今までと何にも変わらない。
「帰らない。俺…謝りに来たんだ…ごめん」
ドア越しで、ケイの顔は一切見えない。聖月はドアに懇願するように、顔を寄せた。ちゃんと、目を見て謝りたかった。
「俺が怒ってるって、何に怒ってるか分かっていってるの?」
「…うん」
ケイは、今までとは違って、ちゃんと言葉を返してくれている。これだけでも、すごいことだ。これまで謝っても、ただ「馬鹿」なんて罵声を浴びせられるだけだったのだ。ちゃんと話を聞いてくれるのが嬉しかった。
「だったらなんで…入れてくれなかったの」
「…っ、それは……」
ケイの言いたいことが分かり、聖月は言いよどむ。
蒼の言っていた言葉を思い出す。お前は価値観ちげえかも知れないけど、気持ちいいことはダチでも出来る―――。そう彼は言っていた。ケイは、そういう男なのだから…――とはっきりと言い切ったのだ。
きっと聖月の理由は、ケイには到底理解できないことなのだろう。聖月は、言葉を選びながらケイに語りかけるように口を動かす。
「俺は…ケイを大切な友達だって思ってる…。だから、そういうことはしたくなくて…」
「したくないって何? 友達だったら…聖月も蝶だから分かるよね。俺の気持ち!」
蝶――それは、ディメントでの女役のことだ。
ケイは叫びにも思える、訴えを聖月にぶつけた。ドアで彼の表情も見えないのに、ケイの顔が浮かんでくる。今彼は、どんな表情でこれを言っているのだろう。
聖月には、ケイのいう気持ちが分からない。聖月に感覚がないから。焦らされても、気持ちよくも切羽詰った辛い想いもしないから。鞭を打たれても次の日に痛む程度で済むから。聖月には、ケイの気持ちが分からないのだ。
何もいえない聖月に、ケイは叫ぶ。
「だったら…なんで…っ! あんな、触り方したの! あんなことして欲しくなかったのに!」
「え…」
触り方。聖月は、あのホテルのことを必死に思い出そうとする。自分の触り方に、何か問題があったのかと急に不安になる。
あのときは、必死でとにかくケイを気持ちよくさせたかった。傷つけないように、優しく触れていた。
「あんなの…拷問だよ…」
「っ…」
拷問――…。
聖月は、ドアに縋りつく。そうしないと、この場でなんと言ってしまうか怖かったからだ。小向の言葉を思い出す。君はどんなディメントの客より加嗜的だね、と小向は聖月の目の前でそう言い切った。
そうなのかもしれない。聖月は、諦めに近いものを感じた。聖月は、自分勝手な言い分でケイの願いを無視した。それは、紛れもない事実だ。それを、ケイがそのことについて拷問だと思うのは当然のことだろう。
「ご…めん…」
聖月は、謝ることしか出来ない。身勝手な自分を許して欲しかった。自分のエゴだけで、ケイとまだ同じように仲良くして欲しいと願っている。
なんて、浅はかな自分。きっと、そうなのだ。ディメントで働いてるなかで、一番の加虐者は自分だ。聖月は、そう思いながら夜の月に照らされているドアの前に縋るように立っていた。
「ずっとそこで謝り続けるつもりなの?」
「うん…」
聖月は、しばらく経って言われた言葉に答える。
少し間があって、ずっと開けられなかったドアが開いた。ドア越しに居た、ケイと対面する。
「少しだけなら…言い訳聞いたあげる。入って」
「ありがとう…」
聖月は、胸を撫で下ろしてケイの部屋に招かれる。ケイの部屋は、前に入ったことがある。それも、数えるほどだけだ。
聖月より、少し可愛らしいものが置いてあるリビング。ぬいぐるみ、水玉模様のカーペット、淡いピンク色のカーテン、白いシンプルなベット。それだけ見たら、どこかの女子高生みたいな部屋だけれど、どうしてかこじんまりとした印象を与えるのが、ケイの部屋だ。
可愛い動物のぬいぐるみや、カップなどは人から貰ったものだという。自分からは買わなくても、こういうのは揃っちゃうんだよね、とケイは前に笑っていた。
それは、ケイの容姿にあっているからだろう。ふわふわした、ミルクティー色の髪の毛。天使のような、容姿――…。
これで、男だというのだから、貰い物のラインラップも理解できる。
だが、ケイの容姿はいつもより違っていた。覇気がなく、目には隈が出来ている。普段のケイではありえないことだった。彼は身だしなみを気をつける人なので、早寝早起きがモットーだといっているぐらいだ。その割には、寝坊をしているように思える。
ケイがベットに座ったのを見て、聖月は床に座る。カーペットの水玉模様の黄色のものが目に眩しく見える。
「…目の隈…大丈夫?」
心配になって聞くと、ケイはぶっきらぼうに言う。当たり前だけれど、まだ許してくれたわけではないみたいだ。
「眠れないの」
「大丈夫なの…?」
「誰のせいだと思ってるの…。まあ、こんなコト言っても聖月には分かってくれないか」
「……」
呆れたものいいに、聖月は押し黙る。
コレで本当に、許してくれるのだろうか…?
「どうしたら…許してくれる…?」
「そんなヒモ男みたいなこと言わないでよ。だったら、俺に突っ込んでよ。リベンジしてくれたら許す」
「……」
聖月にとって無茶なお願いに、聖月はまた口を硬く閉ざした。ケイはその様子をみて「馬鹿みたい」といって、そっぽを向いた。これでは、許してくれるとか、謝るとかそういうことではなくなってくる。
黙っている聖月に、我慢できなくなったのかケイは口を動かした。
「じゃあ言うけど、聖月は俺のどこが駄目って言うわけ? 魅力なしって遠まわしに言ってるの? なんで、あんなに頑張った俺を無視して、道具でやったっていうのさ」
「駄目じゃないよ…。むしろ……可愛かったし…」
ケイの言葉に、聖月は顔に熱が集まるのを感じながら答える。
「可愛いっていうなら、どうして我慢できたの? あそこの場面だったら、絶対どんな男だって俺に入れてたのに」
自信満々にケイは言う。たしかに、あの場面でくらっとしない男はいないだろう。だが、聖月にはあの時は感覚がない。だから、我慢できたのだというのは、ケイには説明できないことだった。教えたら、ケイはどう思うのか分からなかったし、不快に思われるかもしれないからだ。
無表情で固まっている聖月に、ケイは天使のような顔を歪める。
早く言え、ということだろう。聖月は、必死になって言葉を紡ぐ。
「俺も…そうしたいって思ったけど…。ケイは、俺の大切な友達だから…。あそこで、そのまま行動しちゃったら…ディメントで買ってる客と同じになるから…」
聖月の言葉に、ケイは目を見開かせる。怯えた目をしている聖月に、ケイは泣きそうで掠れた声で言う。
「聖月は……勝手なヤツだね…」
ケイはそういって、口角をあげる。ケイの表情は、様々な色がまじっていた。泣き笑いの顔になって、ケイは呻く。
「ひどいやつ…さいてー…」
うずくまって、ケイはむせび泣く。聖月はケイのことを、何も言えず見守る。ここで何か言ったとして、何もケイにはならないと思ったし、謝罪の言葉を言うのもはばかられたからだ。聖月とケイは、部屋のなかで窒息しそうだった。
ケイが、鼻をすすって、顔をあげる。それは、聖月に文句をいってからかなりの時間がたったあとだ。
聖月の顔を見て、ケイはどうしてか驚いた顔をする。
「なんだ…帰ったかと思った…あんまりにも静かだったから…」
「帰ってねぇよ」
聖月が、そういうとケイは一瞬驚いたあと、優しく笑う。
一緒に寝てくれたら、許す…――。
小さな声でケイは言った。聖月は心から大きく頷いた。
その夜、聖月とケイは同じベットで寝る。1人用のベットは狭かったけれど、聖月は優しくケイを抱きしめるような形で寝付くことにする。
その日の夢は、誰かが聖月のことを引っ張って空に溶けるようにペガサスに乗ってる―――そんな幻想的で優しい夢を見たのだった。
息を吸って、決意をかためる。ノックをして待つと、ケイの声が聞こえる。
「…誰?」
ドア越しに聞こえる、ケイの可愛らしい声。
「聖月だけど…」
「何しに来たの? 帰ってよ」
すぐに言われて、聖月は息を呑む。拒絶が現れている声音と、言葉で聖月は怖気づきそうになる。だが、ここで逃げては今までと何にも変わらない。
「帰らない。俺…謝りに来たんだ…ごめん」
ドア越しで、ケイの顔は一切見えない。聖月はドアに懇願するように、顔を寄せた。ちゃんと、目を見て謝りたかった。
「俺が怒ってるって、何に怒ってるか分かっていってるの?」
「…うん」
ケイは、今までとは違って、ちゃんと言葉を返してくれている。これだけでも、すごいことだ。これまで謝っても、ただ「馬鹿」なんて罵声を浴びせられるだけだったのだ。ちゃんと話を聞いてくれるのが嬉しかった。
「だったらなんで…入れてくれなかったの」
「…っ、それは……」
ケイの言いたいことが分かり、聖月は言いよどむ。
蒼の言っていた言葉を思い出す。お前は価値観ちげえかも知れないけど、気持ちいいことはダチでも出来る―――。そう彼は言っていた。ケイは、そういう男なのだから…――とはっきりと言い切ったのだ。
きっと聖月の理由は、ケイには到底理解できないことなのだろう。聖月は、言葉を選びながらケイに語りかけるように口を動かす。
「俺は…ケイを大切な友達だって思ってる…。だから、そういうことはしたくなくて…」
「したくないって何? 友達だったら…聖月も蝶だから分かるよね。俺の気持ち!」
蝶――それは、ディメントでの女役のことだ。
ケイは叫びにも思える、訴えを聖月にぶつけた。ドアで彼の表情も見えないのに、ケイの顔が浮かんでくる。今彼は、どんな表情でこれを言っているのだろう。
聖月には、ケイのいう気持ちが分からない。聖月に感覚がないから。焦らされても、気持ちよくも切羽詰った辛い想いもしないから。鞭を打たれても次の日に痛む程度で済むから。聖月には、ケイの気持ちが分からないのだ。
何もいえない聖月に、ケイは叫ぶ。
「だったら…なんで…っ! あんな、触り方したの! あんなことして欲しくなかったのに!」
「え…」
触り方。聖月は、あのホテルのことを必死に思い出そうとする。自分の触り方に、何か問題があったのかと急に不安になる。
あのときは、必死でとにかくケイを気持ちよくさせたかった。傷つけないように、優しく触れていた。
「あんなの…拷問だよ…」
「っ…」
拷問――…。
聖月は、ドアに縋りつく。そうしないと、この場でなんと言ってしまうか怖かったからだ。小向の言葉を思い出す。君はどんなディメントの客より加嗜的だね、と小向は聖月の目の前でそう言い切った。
そうなのかもしれない。聖月は、諦めに近いものを感じた。聖月は、自分勝手な言い分でケイの願いを無視した。それは、紛れもない事実だ。それを、ケイがそのことについて拷問だと思うのは当然のことだろう。
「ご…めん…」
聖月は、謝ることしか出来ない。身勝手な自分を許して欲しかった。自分のエゴだけで、ケイとまだ同じように仲良くして欲しいと願っている。
なんて、浅はかな自分。きっと、そうなのだ。ディメントで働いてるなかで、一番の加虐者は自分だ。聖月は、そう思いながら夜の月に照らされているドアの前に縋るように立っていた。
「ずっとそこで謝り続けるつもりなの?」
「うん…」
聖月は、しばらく経って言われた言葉に答える。
少し間があって、ずっと開けられなかったドアが開いた。ドア越しに居た、ケイと対面する。
「少しだけなら…言い訳聞いたあげる。入って」
「ありがとう…」
聖月は、胸を撫で下ろしてケイの部屋に招かれる。ケイの部屋は、前に入ったことがある。それも、数えるほどだけだ。
聖月より、少し可愛らしいものが置いてあるリビング。ぬいぐるみ、水玉模様のカーペット、淡いピンク色のカーテン、白いシンプルなベット。それだけ見たら、どこかの女子高生みたいな部屋だけれど、どうしてかこじんまりとした印象を与えるのが、ケイの部屋だ。
可愛い動物のぬいぐるみや、カップなどは人から貰ったものだという。自分からは買わなくても、こういうのは揃っちゃうんだよね、とケイは前に笑っていた。
それは、ケイの容姿にあっているからだろう。ふわふわした、ミルクティー色の髪の毛。天使のような、容姿――…。
これで、男だというのだから、貰い物のラインラップも理解できる。
だが、ケイの容姿はいつもより違っていた。覇気がなく、目には隈が出来ている。普段のケイではありえないことだった。彼は身だしなみを気をつける人なので、早寝早起きがモットーだといっているぐらいだ。その割には、寝坊をしているように思える。
ケイがベットに座ったのを見て、聖月は床に座る。カーペットの水玉模様の黄色のものが目に眩しく見える。
「…目の隈…大丈夫?」
心配になって聞くと、ケイはぶっきらぼうに言う。当たり前だけれど、まだ許してくれたわけではないみたいだ。
「眠れないの」
「大丈夫なの…?」
「誰のせいだと思ってるの…。まあ、こんなコト言っても聖月には分かってくれないか」
「……」
呆れたものいいに、聖月は押し黙る。
コレで本当に、許してくれるのだろうか…?
「どうしたら…許してくれる…?」
「そんなヒモ男みたいなこと言わないでよ。だったら、俺に突っ込んでよ。リベンジしてくれたら許す」
「……」
聖月にとって無茶なお願いに、聖月はまた口を硬く閉ざした。ケイはその様子をみて「馬鹿みたい」といって、そっぽを向いた。これでは、許してくれるとか、謝るとかそういうことではなくなってくる。
黙っている聖月に、我慢できなくなったのかケイは口を動かした。
「じゃあ言うけど、聖月は俺のどこが駄目って言うわけ? 魅力なしって遠まわしに言ってるの? なんで、あんなに頑張った俺を無視して、道具でやったっていうのさ」
「駄目じゃないよ…。むしろ……可愛かったし…」
ケイの言葉に、聖月は顔に熱が集まるのを感じながら答える。
「可愛いっていうなら、どうして我慢できたの? あそこの場面だったら、絶対どんな男だって俺に入れてたのに」
自信満々にケイは言う。たしかに、あの場面でくらっとしない男はいないだろう。だが、聖月にはあの時は感覚がない。だから、我慢できたのだというのは、ケイには説明できないことだった。教えたら、ケイはどう思うのか分からなかったし、不快に思われるかもしれないからだ。
無表情で固まっている聖月に、ケイは天使のような顔を歪める。
早く言え、ということだろう。聖月は、必死になって言葉を紡ぐ。
「俺も…そうしたいって思ったけど…。ケイは、俺の大切な友達だから…。あそこで、そのまま行動しちゃったら…ディメントで買ってる客と同じになるから…」
聖月の言葉に、ケイは目を見開かせる。怯えた目をしている聖月に、ケイは泣きそうで掠れた声で言う。
「聖月は……勝手なヤツだね…」
ケイはそういって、口角をあげる。ケイの表情は、様々な色がまじっていた。泣き笑いの顔になって、ケイは呻く。
「ひどいやつ…さいてー…」
うずくまって、ケイはむせび泣く。聖月はケイのことを、何も言えず見守る。ここで何か言ったとして、何もケイにはならないと思ったし、謝罪の言葉を言うのもはばかられたからだ。聖月とケイは、部屋のなかで窒息しそうだった。
ケイが、鼻をすすって、顔をあげる。それは、聖月に文句をいってからかなりの時間がたったあとだ。
聖月の顔を見て、ケイはどうしてか驚いた顔をする。
「なんだ…帰ったかと思った…あんまりにも静かだったから…」
「帰ってねぇよ」
聖月が、そういうとケイは一瞬驚いたあと、優しく笑う。
一緒に寝てくれたら、許す…――。
小さな声でケイは言った。聖月は心から大きく頷いた。
その夜、聖月とケイは同じベットで寝る。1人用のベットは狭かったけれど、聖月は優しくケイを抱きしめるような形で寝付くことにする。
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