153 / 168
蒼編
10 3人での会話
しおりを挟む
テンション高めに問われて、どう答えようか迷う。どうやら俺と蒼の噂が広まっているらしい。
俺にとってはいい迷惑だった。
俺は、あまり深くは言わないように努めながらアユに説明する。
「俺はソウの別の働いているところのただの同期ですよ」
「え?! ということは、聖月くんってディメントで働いてるの?! 見えない~! 意外~!」
「え?! なんで知って…!」
思わずオレンジジュースを吹き出しそうになって、何とか堪える。
「知っているも何もソウから聞いたよ~」
「あいつ、ディメントの事オープンにしすぎだろ…」
俺は、はぁ…とため息をつく。シモンにも話しているし、女性客にも話すなんてどうかしている。
それだけディメントで働いていることは、ステータスになるのだろうか。俺には全く理解出来ない事だった。
アユは興奮気味に言葉を紡ぐ。
「ソウと仲いいってことはナンバー持ちだったりするの?!」
「仲は良くないけど…。俺はナンバー3だよ」
「えー?! ナンバー4のソウより上?! どんだけテクニシャンなの?! 見えなーい!」
「…」
彼女は酔っているのだろうか。テンションが高く俺の事をバシバシと肩を叩いてくる。ほんのりと顔を赤らめている様子を見ると、そうなのかもしれない。
「ぁあ、ごめんね。テンションあがっちゃった! わたしもソープ嬢だから同業だと思うと興奮しちゃって」
「ソープ嬢…」
そうだったのか、と俺は頷く。
頷いた俺に彼女は1枚の名刺を渡してくる。
「これ、うちの店! 良かったら来て~」
「あ、ありがとう…ございます…」
名刺にはアユと可愛いフォントと店の名前が書いてあり、俺はポケットの中にいれた。こういう時、ディメントに名刺がない事を思い出す。
それでいいと思っていたが、こういう時に困ってしまう。
「で? あのソウのオキニの聖月くんは、どんな関係なの?」
「どんな関係って言われても………。アイツにはすごく迷惑してて…」
言ってから、あ、と口を覆う。どうやら自分は今あまり言ってはいけないことを言ってしまったようだ。
その証拠にアユが目をキラキラとさせてこちらを見ている。
俺の言葉は彼女の好奇心を刺激するのは十分なものだった。
「迷惑してるって何?! 狙われてるの?!」
「え…えっとぉ」
彼女の鋭い指摘に目が泳ぐ。
俺は嘘が苦手だ。
ディメントで嘘をつき続けているが、それでもやはり苦手なのだ。どうやって誤魔化しをしようか、と悩んだ時だった。
俺に手が伸びる。
「よぉ、聖月。おまたせ」
「そ、ソウっ」
「わ、ソウ!」
現れたのは今話題にあがっているソウこと蒼だった。蒼はニヤニヤと笑いながら、俺の席の隣に座って見せる。
そして仲良さそうに、肩を組んでみせた。突然の触れ合いに驚きを隠せない。それは隣に座っていたアユも同じだった。
「こんばんは。アユも来ていたのか。うちの聖月とお話していただけたようで…。おい、聖月。ちゃんと話出来たのか?
お前童貞なんだから、アユで変な妄想するなよ?」
「そ、…ソウ!」
変な風に童貞であることを暴露され俺は顔を真っ赤にする。
アユは笑っていた。
「えぇ?! 童貞なの?! うちの店来る?」
「け、結構です…お気遣いなく…」
「え~、アユで童貞捨てればいいのに。童貞から、素人童貞になるだけだけど」
下品に爆笑する蒼を睨み、俺はアユに「有難うございます」と頭を下げる。絶対に蒼はからかって笑っているだけだ。
「聖月くんになら、安くするけどなぁ」
「だ、だから、お気遣い不要です!」
俺とアユの会話に蒼はくすくすと笑っている。
――なんだ、この羞恥空間!
今すぐでも穴があったら入りたい。
「んで? お二人はどんなお話をしてたんだ?」
ひとしきり笑った後、蒼は聞いてくる。蒼の目が据わっており、どこか恐ろしかった。そんな蒼に気付いていないのだろう。
アユは意気揚々と答える。
「ソウと聖月くんがどんな関係か聞いてたの!」
「あ、アユさんっ?」
「へぇ」
蒼がふぅん、とアユと俺を見詰める。アユは何てことを言うのだろう。これでは誤解をされてしまうのではないか?と不安になった。
蒼はニヤニヤと笑いながら言った。
「どんな関係って…。ふかーい関係だよ。なぁ?」
「深い関係って何だよ! 俺とお前はただの同じ場所で働いてる人間だろっ」
「もー、聖月ちゃんはツンデレなんだから」
蒼の嘘にアユは目を輝かしている。どうしてこんな反応するのか、全く分からない。
「おい。もっとサービスしとけ。この子は男同士の恋愛に気付きを感じるタイプだ。ディメントの話が大好物の変態なんだよ」
「男同士の恋愛に気付きを感じるタイプってどういう意味?!」
まさかディメントの話が大好物という女性がいるなんて、思いもしなかった。俺の混乱に蒼はさらに肩の絡まりを強くする。
「え~?! 禁断の男娼同士の恋ってこと! 尊い~ッ」
「そうそう。そういう事」
「そういう事じゃないんだが? ――いたっ」
「話を合わせとけ」
――痛いんだけど?!
思い切り足を蹴られて俺は呻く。小声で「話を合わせとけ」と言われても困る。だがここで、そうではないと言ったら彼女を悲しませるような気がしてならない。
俺は無理やり笑顔を作った。
――しょうがない。ここは話を合わせておくか…。
彼女の笑顔を曇らせるのも悪い気がする。
「俺の事が好きすぎてここまで通ってきて、健気だよなぁ?」
ニヤニヤと笑いながら言われて、それは流石に文句も言いたくなる。
「はぁ? 嘘をつく――いたぁ!」
肩をぎゅーっと掴まれて、俺は蒼を睨みつける。蒼は目で「言う事を聞け」と伝えてくる。かなり不本意だが、これは従うしか痛みを解消する方法はないようだ。
「え~! マジ尊みを感じる~! 美形×平凡受! サイッコー!」
「あはは…」
アユの言っている事の半分は理解出来ない。俺は曖昧に笑って見せた。だが、力を弱められほっと息を吐く。
「2人はヤったことあるの?!」
「あぁ」
「キャ~! 最高~!」
――もう、アユが楽しそうだからいいか…。
幸せそうに笑っている彼女を見て、俺は諦めのため息をつく。ここで嘘ですと言えればどれだけ楽になれるのだろうか。
本当は蒼とセックスはしたことがないのだが、ここで訂正するのは面倒だ。
このまま蒼にはずっとセックスをしたことがあると嘘をつき続けるかと思うと、気が滅入ってくる。
自信たっぷりの顔で「あぁ」と頷く蒼に憐みの目線を送る。
俺にとってはいい迷惑だった。
俺は、あまり深くは言わないように努めながらアユに説明する。
「俺はソウの別の働いているところのただの同期ですよ」
「え?! ということは、聖月くんってディメントで働いてるの?! 見えない~! 意外~!」
「え?! なんで知って…!」
思わずオレンジジュースを吹き出しそうになって、何とか堪える。
「知っているも何もソウから聞いたよ~」
「あいつ、ディメントの事オープンにしすぎだろ…」
俺は、はぁ…とため息をつく。シモンにも話しているし、女性客にも話すなんてどうかしている。
それだけディメントで働いていることは、ステータスになるのだろうか。俺には全く理解出来ない事だった。
アユは興奮気味に言葉を紡ぐ。
「ソウと仲いいってことはナンバー持ちだったりするの?!」
「仲は良くないけど…。俺はナンバー3だよ」
「えー?! ナンバー4のソウより上?! どんだけテクニシャンなの?! 見えなーい!」
「…」
彼女は酔っているのだろうか。テンションが高く俺の事をバシバシと肩を叩いてくる。ほんのりと顔を赤らめている様子を見ると、そうなのかもしれない。
「ぁあ、ごめんね。テンションあがっちゃった! わたしもソープ嬢だから同業だと思うと興奮しちゃって」
「ソープ嬢…」
そうだったのか、と俺は頷く。
頷いた俺に彼女は1枚の名刺を渡してくる。
「これ、うちの店! 良かったら来て~」
「あ、ありがとう…ございます…」
名刺にはアユと可愛いフォントと店の名前が書いてあり、俺はポケットの中にいれた。こういう時、ディメントに名刺がない事を思い出す。
それでいいと思っていたが、こういう時に困ってしまう。
「で? あのソウのオキニの聖月くんは、どんな関係なの?」
「どんな関係って言われても………。アイツにはすごく迷惑してて…」
言ってから、あ、と口を覆う。どうやら自分は今あまり言ってはいけないことを言ってしまったようだ。
その証拠にアユが目をキラキラとさせてこちらを見ている。
俺の言葉は彼女の好奇心を刺激するのは十分なものだった。
「迷惑してるって何?! 狙われてるの?!」
「え…えっとぉ」
彼女の鋭い指摘に目が泳ぐ。
俺は嘘が苦手だ。
ディメントで嘘をつき続けているが、それでもやはり苦手なのだ。どうやって誤魔化しをしようか、と悩んだ時だった。
俺に手が伸びる。
「よぉ、聖月。おまたせ」
「そ、ソウっ」
「わ、ソウ!」
現れたのは今話題にあがっているソウこと蒼だった。蒼はニヤニヤと笑いながら、俺の席の隣に座って見せる。
そして仲良さそうに、肩を組んでみせた。突然の触れ合いに驚きを隠せない。それは隣に座っていたアユも同じだった。
「こんばんは。アユも来ていたのか。うちの聖月とお話していただけたようで…。おい、聖月。ちゃんと話出来たのか?
お前童貞なんだから、アユで変な妄想するなよ?」
「そ、…ソウ!」
変な風に童貞であることを暴露され俺は顔を真っ赤にする。
アユは笑っていた。
「えぇ?! 童貞なの?! うちの店来る?」
「け、結構です…お気遣いなく…」
「え~、アユで童貞捨てればいいのに。童貞から、素人童貞になるだけだけど」
下品に爆笑する蒼を睨み、俺はアユに「有難うございます」と頭を下げる。絶対に蒼はからかって笑っているだけだ。
「聖月くんになら、安くするけどなぁ」
「だ、だから、お気遣い不要です!」
俺とアユの会話に蒼はくすくすと笑っている。
――なんだ、この羞恥空間!
今すぐでも穴があったら入りたい。
「んで? お二人はどんなお話をしてたんだ?」
ひとしきり笑った後、蒼は聞いてくる。蒼の目が据わっており、どこか恐ろしかった。そんな蒼に気付いていないのだろう。
アユは意気揚々と答える。
「ソウと聖月くんがどんな関係か聞いてたの!」
「あ、アユさんっ?」
「へぇ」
蒼がふぅん、とアユと俺を見詰める。アユは何てことを言うのだろう。これでは誤解をされてしまうのではないか?と不安になった。
蒼はニヤニヤと笑いながら言った。
「どんな関係って…。ふかーい関係だよ。なぁ?」
「深い関係って何だよ! 俺とお前はただの同じ場所で働いてる人間だろっ」
「もー、聖月ちゃんはツンデレなんだから」
蒼の嘘にアユは目を輝かしている。どうしてこんな反応するのか、全く分からない。
「おい。もっとサービスしとけ。この子は男同士の恋愛に気付きを感じるタイプだ。ディメントの話が大好物の変態なんだよ」
「男同士の恋愛に気付きを感じるタイプってどういう意味?!」
まさかディメントの話が大好物という女性がいるなんて、思いもしなかった。俺の混乱に蒼はさらに肩の絡まりを強くする。
「え~?! 禁断の男娼同士の恋ってこと! 尊い~ッ」
「そうそう。そういう事」
「そういう事じゃないんだが? ――いたっ」
「話を合わせとけ」
――痛いんだけど?!
思い切り足を蹴られて俺は呻く。小声で「話を合わせとけ」と言われても困る。だがここで、そうではないと言ったら彼女を悲しませるような気がしてならない。
俺は無理やり笑顔を作った。
――しょうがない。ここは話を合わせておくか…。
彼女の笑顔を曇らせるのも悪い気がする。
「俺の事が好きすぎてここまで通ってきて、健気だよなぁ?」
ニヤニヤと笑いながら言われて、それは流石に文句も言いたくなる。
「はぁ? 嘘をつく――いたぁ!」
肩をぎゅーっと掴まれて、俺は蒼を睨みつける。蒼は目で「言う事を聞け」と伝えてくる。かなり不本意だが、これは従うしか痛みを解消する方法はないようだ。
「え~! マジ尊みを感じる~! 美形×平凡受! サイッコー!」
「あはは…」
アユの言っている事の半分は理解出来ない。俺は曖昧に笑って見せた。だが、力を弱められほっと息を吐く。
「2人はヤったことあるの?!」
「あぁ」
「キャ~! 最高~!」
――もう、アユが楽しそうだからいいか…。
幸せそうに笑っている彼女を見て、俺は諦めのため息をつく。ここで嘘ですと言えればどれだけ楽になれるのだろうか。
本当は蒼とセックスはしたことがないのだが、ここで訂正するのは面倒だ。
このまま蒼にはずっとセックスをしたことがあると嘘をつき続けるかと思うと、気が滅入ってくる。
自信たっぷりの顔で「あぁ」と頷く蒼に憐みの目線を送る。
10
あなたにおすすめの小説
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる