アルスの日常

星月

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7月11日

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エル「行ってきま~す」

自宅の玄関の扉を開け、家を出る。

外に出たエルは、手にしていた弁当箱を横にしないよう、慎重にバッグに入れた。

顔を上げると、アルスが壁に持たれて待っているのが見えた。

アルス「おはよう、エル。」

片手を上げ、挨拶を交わすアルス。

エル「アルス君!おはよ~!」

彼の元へ駆け寄り、一緒に学校の方へと歩み出す。

エルが「いつから待ってたの?」と尋ねると、アルスは「今来たとこだ」と答えた。



アルス「そういや、昨日のドラマ観たか?前飛鳥が勧めてきたの。」
エル「観たよ!すごい展開だったね!」
アルス「あれは予想外だったな、そう来るか~って。」

しばらくの間、他愛のない会話が続いている。
彼との会話は楽しいはずだが、エルはどうも落ち着かない。

今日がなんの日なのか、忘れちゃったのかなぁ。

さっきから、そんな疑問が頭の中を飛び交うからだ。

ソワソワするエルを見て、アルスは空を見上げる。

アルス「そういえばエル、この前の星空を見に行った日のこと覚えているか?」

突然アルスが、天体観測をしに行った時のことについての話を切り出した。

アルスと最後に行ったのは、確か4月下旬だったような。

おおぐま座の一部である北斗七星が観測できるという情報を耳にし、学校でアルスに話していた。
「じゃあ、見に行くか。」と、アルスが言ってくれたので一緒に見に出掛けた。

エル「まあ、それなりには...なにかあったっけ?」





覚えていると言っても、どのことなのかが分からないので、覚えているかどうか以前の問題だった。

詳細を言ってくれればいいのだが。

アルス「2人で望遠鏡を覗き合ってるとき、お前はこう言った。あの北斗七星をそのままインテリアにしたら、ロマンチックじゃない?って。」

確かに、それは言った気がする。
星空が見えやすい場所まで来て、望遠鏡を覗くまでもなくすぐに北斗七星を見つけた。

望遠鏡を広げて、アルスに説明をしている途中で、そのようなことを言った記憶がある。

エル「あ~、言ったねそんなこと!」

その時のことを思い出したエルは、声を上げて笑った。

エル「帰ってから北斗七星のインテリア無いかなって調べたけど、イマイチピンと来るものは無かったんだよね~。」

笑うエルを見ていたアルスは、鞄から一つの小さな箱を取り出した。

アルス「じゃあ、これを開けてみてくれ。」

それを差し出され、エルは一瞬それがプレゼントなのかが分からなかった。

それを手に取ると、意外とずっしりしていた。

重量感があった。

蓋を開けると、緩衝材代わりなのか新聞紙で覆われているのが分かる。

新聞紙を剥がし、中身を取り出す。
すると、小さなスノードームのようなものが出てきた。

夜の丘のような場所で、背景の夜空には北斗七星が描かれていた。

エル「え~すご~い!!これどうしたの!?」
アルス「エルの言う通り、ネットとかで売られてるの見ても刺さらなかったんだよな。なら、いっそ作っちまおうかと。」

探してきたのかと思ったら、まさかのハンドメイドだった。

エル「ありがと~アルス君!!」

両手を広げ、アルスをがっちりと抱き締めた。

アルス「エル、苦しい。」

彼女の肩を、そっと両手で押した。
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