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名字呼び・染まる三日月の回(全2話)
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【名字呼び】~ナタモチ~
隼士「そういや俺、ずっとお前のこと名字で呼んでるけどよ。」
昼休み、キャッチボールをしていた2人はベンチに座り休憩をしていた。
隼士「そろそろ下の名前で呼んでみたいなって」
そう言うと近藤は立ち上がり「おお!是非呼んでくれ!」とウェルカム状態だった。
隼士「お、おう...分かった。」
咳払いをし、近藤に体の向きを変えた。
隼士「...隆太」
しかし、それは自分でも小さすぎると自覚するほどの声量だった。
近藤「もっとでけー声で!」
隼士「いや、ちょっと待ってくれ。」
顔を近付ける近藤から、隼士は遠ざかりながら言った。
隼士「しばらくは近藤でいいか?」
近藤という呼び方が定着しすぎて、逆に違和感を覚えるようになってしまったからだ。
近藤は少し残念そうに「お、おう...。」と返事をした。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
【染まる三日月の回】~アルスの日常~
エルとアルスは、部活の器具を片付けていた。
部活動の居残りが長引いたことで、辺りはすっかりと暗くなっていた。
アルス「いや~長かったな、まさかこんなに時間が掛かるとは。」
週末の練習試合に備えてなのか、後輩達がコツを教わりたいと押しかけてきた。
その相手をしていたことで、ここまで帰りが遅くなってしまったというわけだ。
エル「気を付けて帰ってね~」
アルス「お前ら風邪引くなよ?」
手を振って後輩達に別れを告げるエル。
アルスはその隣で小さく笑った。
帰路の道中、私は少し肩を落としていた。
明日はバレンタインだけど、そのための準備をする時間が削れてしまった。
家事や課題等のことを考えると、一体何時に寝れるだろうか。
...だからといって、誰かが悪いというわけではない。
後輩達には色々教えれたし、それは先輩としての務めでもあるのだから。
それでも...もう少しだけ早く切り上げられれば、時間は十分あったと言えてしまう。
あれこれ考えていると、アルスが私の顔を覗き込む。
アルス「どしたん、元気ないな。」
彼は気を遣ってくれて、私の鞄を持ってくれた。
エル「ううん...大丈夫。」
私は咄嗟に口角を上げるが...。無理に取り繕った笑顔が、逆に心配させてしまうのではないか。
そう思った頃にはもう遅かった。
アルス「...そうか」
しかし彼は、深堀りすることはなかった。
アルス「それよりエル、今日の月は面白いぞ。」
そう言って、空に浮かぶ三日月を指差すアルス。
私はそれにならって、付きの浮かぶ方向に視線を向けた。
するとそこにはオレンジにも似た、濃い黄色に染まる三日月が浮かんでいた。
エル「あ、本当だ!さっきまで普通だったのにね~。」
アルス「低い位置にある間だけだな、こうも色が濃くなるのは。」
それからは、月についての雑談が始まった。
同じ景色を眺める2人は肩を並べながら、私達は自分達の住む町へと向かった。
隼士「そういや俺、ずっとお前のこと名字で呼んでるけどよ。」
昼休み、キャッチボールをしていた2人はベンチに座り休憩をしていた。
隼士「そろそろ下の名前で呼んでみたいなって」
そう言うと近藤は立ち上がり「おお!是非呼んでくれ!」とウェルカム状態だった。
隼士「お、おう...分かった。」
咳払いをし、近藤に体の向きを変えた。
隼士「...隆太」
しかし、それは自分でも小さすぎると自覚するほどの声量だった。
近藤「もっとでけー声で!」
隼士「いや、ちょっと待ってくれ。」
顔を近付ける近藤から、隼士は遠ざかりながら言った。
隼士「しばらくは近藤でいいか?」
近藤という呼び方が定着しすぎて、逆に違和感を覚えるようになってしまったからだ。
近藤は少し残念そうに「お、おう...。」と返事をした。
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【染まる三日月の回】~アルスの日常~
エルとアルスは、部活の器具を片付けていた。
部活動の居残りが長引いたことで、辺りはすっかりと暗くなっていた。
アルス「いや~長かったな、まさかこんなに時間が掛かるとは。」
週末の練習試合に備えてなのか、後輩達がコツを教わりたいと押しかけてきた。
その相手をしていたことで、ここまで帰りが遅くなってしまったというわけだ。
エル「気を付けて帰ってね~」
アルス「お前ら風邪引くなよ?」
手を振って後輩達に別れを告げるエル。
アルスはその隣で小さく笑った。
帰路の道中、私は少し肩を落としていた。
明日はバレンタインだけど、そのための準備をする時間が削れてしまった。
家事や課題等のことを考えると、一体何時に寝れるだろうか。
...だからといって、誰かが悪いというわけではない。
後輩達には色々教えれたし、それは先輩としての務めでもあるのだから。
それでも...もう少しだけ早く切り上げられれば、時間は十分あったと言えてしまう。
あれこれ考えていると、アルスが私の顔を覗き込む。
アルス「どしたん、元気ないな。」
彼は気を遣ってくれて、私の鞄を持ってくれた。
エル「ううん...大丈夫。」
私は咄嗟に口角を上げるが...。無理に取り繕った笑顔が、逆に心配させてしまうのではないか。
そう思った頃にはもう遅かった。
アルス「...そうか」
しかし彼は、深堀りすることはなかった。
アルス「それよりエル、今日の月は面白いぞ。」
そう言って、空に浮かぶ三日月を指差すアルス。
私はそれにならって、付きの浮かぶ方向に視線を向けた。
するとそこにはオレンジにも似た、濃い黄色に染まる三日月が浮かんでいた。
エル「あ、本当だ!さっきまで普通だったのにね~。」
アルス「低い位置にある間だけだな、こうも色が濃くなるのは。」
それからは、月についての雑談が始まった。
同じ景色を眺める2人は肩を並べながら、私達は自分達の住む町へと向かった。
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