相手にしてください

詩織

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相手にしてください

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え?なに?

ここどこですか?

えっと、確か…

会社の飲み会で、調子にのって久々に飲んで、でも記憶がなくなる前にお酒はセーブしたはず…

でも、そのあとが覚えてない!!

藤川希衣子ふじかわきいこ、28歳。社会人6年目。意識なくなるくらいの酒は新人のときに数回したが、この年でまさかやっちまうとは



ここって、ホテル…だな

そして、シャワーの音がする!

まじっすか?

ど、どうしよう?逃げるか?

服は幸い着てるし、カバンを持って出ようとしては、ドアが開く音がした。

ひっ!!

と、ベットの布団に包まる

やっやばい!とりあえず寝たフリ?

足は見えた。やっぱり男性だ。

ど、どうしよう…

知ってる人?それとも…

寝たフリしてるので、顔までは見れず、とりあえず警戒はしてる。

椅子に座ったようで、何か飲んでる。

ど、どうしよう。起きて話すか?でも逆に起きたら危機になるかもしれないし…

「はぁー」

ため息が聞こえた。

ため息だけじゃ、仮に知ってる人だとしても解らないし

足だけをみると、窓の方に向かって行った。

そっと、布団を下げて顔を見ようとするが、後ろ姿なのでよくわからない。

背は高い感じがする。

痩せ型でもなく、がっちりでもなく、ちょうどいい体型。

ミネラルウォーター?だかを飲んで窓側に行き外を見てる。

「…まいったなぁー」

と、声が聞こえた。

ん?どっかで聞いた声が…

えっと、どこだ?この声聞いてる。

知ってるはず…、どこでだろ?


と、考えてたら振り向きそうな感じがしたので、布団にそーとかぶった。

近くに来た気配がする。

ど、どうしよう?もしかして、もしかして…

と、思ったら

ソファの音がして、それ以降は音がなくなった。

チラッとみると、ソファの上で寝てる。

ま、まじですか?

部屋には男女がいるのに…って、別に期待はしてないけど

まだ、目を瞑っただけかもだから、すぐに見は行かず、しばらく待ってから見ようとしたんだけど…

まさかの、そのまま寝てしまった。



ハッと起きると、窓から光がさしていた。

時計は7時前。

そして、ソファで寝てた人は居なかった。

バスルームも居なく

「誰かもわからなかった」


ホテルの部屋を出てフロントに行ったら

「お支払いは済まされてます」

と言われ、自宅に戻ってシャワーを浴びて、そのまま出勤した。


「昨日大丈夫でした?」

「え?」

「かなり、酔ってたけど大丈夫って言って1人で帰ってたから」

「あっ、うん。大丈夫だったよ」

全然大丈夫じゃありませんでした…

多分会社の人だろうな。声は聞いたことある。だから知ってる人なのは間違いない。


い、いかん!仕事しないと!!

今日は金曜だし、かなりの疲れと二日酔いがあるが、なんとか今日だけ頑張れば…

目の前にある画面を見て切り替えてキーボードを打つ。

何とか昼休みになった。

とりあえず半日はおわった。

この調子で定時で上がれれば…

コンビニでおにぎりとサンドウィチを買って食べたあと、15分だけ休憩室で仮眠をとった。

「藤川さん、来週の月曜の打ち合わせのことでいいかな?」

「あ、はい」

課長にそう言われて、課長の所に行った。

「悪いんだけど、ここと、ここが内容変わってね、今日中に資料直してほしいんだ」

「えっ!?」

まじで?

「今からですか?」

「…悪いね。手伝いたいんだけど、こっちも別の打ち合わせがこれからあって」

えええ!?

と、結局修正を1人ですることになった。

定時になって、人も少しずつ減り、時計を見たら20時前になってた。

定時で帰る予定が…

課長はまだ帰ってこないし、結局1人でやるのか。

「…藤川さん、1人?」

「あっ、お疲れ様です」

部長がこっちに向かってきた。

「あっ、月曜の打ち合わせの資料に修正が入って」

「えっ!?で、1人で?」

「あっ、はい」

「確か、修正はあるけど1人じゃ大変でしょう?」

「あっ、頑張って終わらせます」

と言って、手は休めず必死にやっていた。

「あと、どれくらい?」

「え?」

「俺が修正依頼したしな。どこまで修正したか教えてくれれば、こっちでもやるよ」

「いえ、そんな。部長にそんなこと」

「こっちも出来てないと困るし、それに1人じゃちょっと大変な量だしな。それでどこまで?」

と、近くにきて画面を見ようとしたとき

あれ?なんだろ?この感じ…

「…あっ、えっと、(4)まで修正終わってます。ですので」

「あー、了解。じゃ、ここと、ここは俺が直すよ」

「す、すいません」

結局助けてもらって、終わったのは23時過ぎてた。

そのときに、課長が戻ってきて

「いや、ごめん。ずっと会議で…あれ?部長?」

「これ、1人で直させるのは大変でしょう?」

「はぁ、私も終わったらやる予定でしたが…」

部長が一緒にやったことを話すと、課長はすいません、助かりますと言って頭を下げた。

「藤川さん、助かったよ」

「いえ、大丈夫です。部長本当にありがとうございました」

と、部長に頭を下げた。

3人とも仕事が終わり帰る準備をした。

最寄り駅まで一緒に帰り、課長は下り線だったので、別れた

まさか、部長と同じ電車に乗ることになるとは…

「今電車出たばかりですね」

「そうみたいだね、あと20分も待つのか。まいったなー」

「え?」

うそ?なんで気づかなかったんだろ?

部長の、まいったなーの言葉聞くまで仕事のことで頭いっぱいで、全然考えもしなかった。

「藤川さん、どうしたの?」

「…部長だったんですね」

「え?」

「私をホテルに運んでくれたの」

ビックリした顔をしてる。

やっぱり、部長だったんだ。

「す、すいません。ほんとご迷惑を」

「…あ、いや」

と、少しどもった返事がきた。

「私、何かやっちゃいましたか?」

ど、どうしよう。まさか相手が部長だったなんて

部長といえばもう、40過ぎてるとはいえ、イケメンで若い子からももてるし、こんな人にホテルに連れて行ってもらったとは…

「いや、大人しかったよ」

と、部長は言ってくれたが

「もしかして知ってるの?」

と、聞かれたので

「え?」

知ってるって?

「あ、あの…」

「いや、どこまで記憶あるか知らないけど、変なこと覚えてなかればいいよ」

「変なこと?」

変なことってなんだろ?

「あ、あの部長、本当に申し訳ありませんでした」

気にはなったけど、迷惑かけたのは事実だし、とりあえず謝罪をしないと

「いや、気にしないで」

気にします!

「な、なにか、お礼を…、あっ、ホテル代!」

「大丈夫だから」

「で、でもあの…」

謝罪で終わり?でもなんか申し訳ない。

「こ、今度なんかご馳走とかさしてください。もう記憶がなくなるまで飲みませんから。空いてる日あったら…、あっ、もし恋人とかいたら2人きりは失礼でよね。えっと、何か他で出来ることあれば…」

もう、なんかてんぱってて言うことが…

って、確か部長まだ独身だったよね?奥様とか言わないでよかった。

「ほんと、大丈夫だから」

「でも、私の気がすみません。今日も助けて貰ったし」

と、言うと少し考えて

「…じゃ、俺の頼み聞いてくれる?」

「は、はい!私に出来ることあれば…」

ど、どうしよう?凄い仕事量だったりしたら。


しばらく、部長は考えてたようだったが

「じゃあ…」

と言って、私の近くにきて

「俺の家来る?」

耳元で急に今までとは違う低い声で言われ

「えっ!?」

ビックリして硬直してしまった。

「どうする?」

「あ、あの…」

な、何?どうなってるの?

まさか、散らかりすぎて片付け手伝えとかそういうこと?

「…やっぱりダメか」

「えっ?あの…私が部長のお宅行って何かお手伝いとか…」

って、言うと

「もしかして、天然?」

「え?」

「しっかり言わないとダメだとか?」

状況が読めない。

「藤川さんが欲しいんだけど」







ええええっ!?

「じ、冗談ですよね?」

「なんで、こんな時に冗談?」

いや、今恋人もいないし特に問題は…って、そういうこと考えてる場合じゃない。

「やっぱり、相手されないよな。こんなおっさんじゃ」

「な、なに言ってるんですか?部長は社内では凄い人気あって、女性のファンも多いんですよ。今も部長のこと憧れたり好きって人もいて」

「へぇー、そうなんだ」

ちょっと、待って。なんか混乱してる。

確かに憧れてるけど、でも私みたいな美人でも可愛くもない、そして平凡以下と思われる人間にそんなこと言うかな?

あっ…そういうことか

「あの、私えっと…、そういう割り切っなのはちょっと出来なくって」

私みたいなのに本気になるわけないか、まぁ面倒みたからってことだろうか?

「はぁ?」

間抜けな声を出す部長

「何言ってるの?会社の人に手を出そうしてるのに、そんな関係とかないでしょ?」

「本気なんだけとけど」

顔を見られて、いやもうこんないい男に色っぽい目で見られたら

「昨日の飲み会で、彼氏今募集とか言ってたから、解散したあと声かけたんだけど」

そんなこと言ってたの?わたし…

いい年して、何会社の飲み会で暴露してるのよ!

「そしたら、俺に声かけられて嬉しいとか、光栄とか言って、バーに二人でそのあと行ったの覚えてる?」



そういえば、バーに行ってカクテル飲んだ気がする

「そのあとは、もう俺に寄り添ってそのまま寝ちゃったよ」

ひぃーー!!

「す、すいません」

「そろそろ電車くるけど、どうする?来る?」

その熱い眼差しで見られると、

「こ、断れないじゃないですか!部長みたいないい男に言われたら」

フッと笑い

「俺がいい男だから、断れないわけ?」

「いえ、それだけじゃ…、私も部長はずっと憧れてましたし」

「へぇー、じゃ憧れからそれ以上になってもらおうか」

と言って、私の腕を掴み電車に乗り込んだ。

電車の中では、お互い終始無言。

ドキドキが、ソワソワが、冷汗が止まらない。

腕を掴んだ部長もあまりこっちは見ないで、電車の広告とか見てる。

3駅先で

「降りるよ」

と言われて、一緒に降りる

「あ、あの部長?」

「なに?」

「わ、私でいいんですか?」

と言うと

フッと笑い

「それ、こっちのセリフ」

て、そんな笑顔でこっち向いて言わないでよ。心臓に悪いんだけど。

歩いて5分くらいで、マンションの中に入る

エレベーターで目的の階に着き、部屋の鍵をあけ

「入って」

と言われる。

ここまで来てなんだけど、勢いで来てしまって、悩んでしまった。

「入って!」

さっきより強めに言われて、家に入った。

ドアが閉まり、部長が私の顔をみる。

腕を引かれて、抱きしめられる。

「あっ、」

「昨日、我慢したからな。その分よろしく!」

よろしくって…

「上向いて」

え?

「向いて」

恥ずかしいから、嫌だよ!

なかなか上向かないでいると、顎を持ち上げられて

「ここまできてなんだけど…、藤川さんより一回り以上のおっさんだけど、大丈夫?」

「だ、だめって言ったらどうなるんですか?」

と言うと

「意地でも惚れさせるしかいな」

と言って、ガッチリ頭を固められて、キスをしてきた。

逃げ場がなく、深くなるだけで

「んーん!」

て、何か言いたいのに言うことができない。

抱きしめながら、キスをする部長に大人の何かを感じて、もう酔いしれるだけで

完璧に虜になりそうで…



「離す気ないから」

と言って、またキスがはじまった。
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