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3A-街道と魔物
3A-09 研究室の選択
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夕食を終え、焚き火を囲んでしばしの安らぎを得る。
「奥様、ここは冷えます。中に入られた方が……」
「暫くの間だけよ。火の近くにいるわ。たまには外の空気も良いものね」
バルサムさんが薪をくべ、炎がぱちぱちと音を立てる。クリスティーヌ様はその温もりを楽しみながら、再び学院の話を続けられた。
「学院の魔術科からね。まずはレノック教授。彼は四元素魔法を基盤とした単体魔術を重視するの。詠唱、形、大きさ、魔力の込め方、魔素量……とにかく基礎に徹底してこだわるわ」
「本当に面倒なのよ。風には魔素を込めすぎるな、岩石を混ぜるな、とか。詠唱は不要なのに必須だと譲らないの」
「何を言う。レノック教授の講義は魔導具作りの基礎にも通じる。魔石換算の魔力量は出力安定に役立つ。集団戦でも有効だ。小僧にとっては今更だが、基礎を学び直したいなら勧めるぞ」
「エリスのお気に入りはアントニ教授ね。複合魔術の研究者だから。風と土の複合で随分と凶悪な魔法を身につけたわ」
「アントニ先生の講義は本当に勉強になる。風と火の複合――火炎旋風は圧巻だった。ただ使いどころが難しいのが欠点ね」
「大規模魔法はどれもそうだ。だが事象理解と制御を重視する彼の考え方は冒険者にも有用だ」
「学院長は?」
「独自路線よ。動物の使役、空間制御、精神魔法。光や闇、無属性を得意とする。領主科も兼任しているわ」
「……多方面すぎて掴みどころがないですね。初めて動物と会話しましたよ。あれが使役魔法か」
「ふふふ、驚くでしょう? 並行思考で複数の場を同時に制御するのよ」
学院長の話題から、魔導師ギルド総長シュヴァイツェルとの確執に話が及ぶ。魔導師資格試験を学院に引き寄せた学院長と、魔導商や人員采配を堅持する総長。両者の綱引きは続いているらしい。
「新設された研究室が、パラケル師の魔導具科ですね?」
「そうだ。後任はフリードだ。現場主義で、迷宮に潜り続けた男だ」
「教授が俺に現場に行けと言っていた理由が分かりました」コカルスさんが警備の合間に口を挟んだ。
クリスティーヌ様は微笑み、続けた。
「貴方の報告書も立派な研究の形よ。魔導具便覧を目指しているように見える。文章には人を惹きつける力がある。出版するなら研究費の追加も考えましょう」
「ありがとうございます! 励みます!」
話題は再び教授陣へ。
「レッド君を受け入れる可能性があるのは、フリード教授、ムカージ教授、アルナル教授、ゲオルク教授ね」
「アルナル教授は?」
「万能薬の追及者。シュヴァイツェル派よ」
「ゲオルク教授は植物研究。地味だが学術的価値は高い」
植物の組み合わせと魔素の影響――自分の知識とも重なる分野だ。
「……悩みますね」
「王都に着いたら学院長に相談しましょう。魔術科は選択肢に無いでしょうね。錬金科か魔導具科の二つに絞って慎重に決めなさい」
焚き火の炎が小さくなり、クリスティーヌ様はバルサムに促されて馬車へ戻られた。これからは自分たちが輪番の警戒に立つ番だ。
「奥様、ここは冷えます。中に入られた方が……」
「暫くの間だけよ。火の近くにいるわ。たまには外の空気も良いものね」
バルサムさんが薪をくべ、炎がぱちぱちと音を立てる。クリスティーヌ様はその温もりを楽しみながら、再び学院の話を続けられた。
「学院の魔術科からね。まずはレノック教授。彼は四元素魔法を基盤とした単体魔術を重視するの。詠唱、形、大きさ、魔力の込め方、魔素量……とにかく基礎に徹底してこだわるわ」
「本当に面倒なのよ。風には魔素を込めすぎるな、岩石を混ぜるな、とか。詠唱は不要なのに必須だと譲らないの」
「何を言う。レノック教授の講義は魔導具作りの基礎にも通じる。魔石換算の魔力量は出力安定に役立つ。集団戦でも有効だ。小僧にとっては今更だが、基礎を学び直したいなら勧めるぞ」
「エリスのお気に入りはアントニ教授ね。複合魔術の研究者だから。風と土の複合で随分と凶悪な魔法を身につけたわ」
「アントニ先生の講義は本当に勉強になる。風と火の複合――火炎旋風は圧巻だった。ただ使いどころが難しいのが欠点ね」
「大規模魔法はどれもそうだ。だが事象理解と制御を重視する彼の考え方は冒険者にも有用だ」
「学院長は?」
「独自路線よ。動物の使役、空間制御、精神魔法。光や闇、無属性を得意とする。領主科も兼任しているわ」
「……多方面すぎて掴みどころがないですね。初めて動物と会話しましたよ。あれが使役魔法か」
「ふふふ、驚くでしょう? 並行思考で複数の場を同時に制御するのよ」
学院長の話題から、魔導師ギルド総長シュヴァイツェルとの確執に話が及ぶ。魔導師資格試験を学院に引き寄せた学院長と、魔導商や人員采配を堅持する総長。両者の綱引きは続いているらしい。
「新設された研究室が、パラケル師の魔導具科ですね?」
「そうだ。後任はフリードだ。現場主義で、迷宮に潜り続けた男だ」
「教授が俺に現場に行けと言っていた理由が分かりました」コカルスさんが警備の合間に口を挟んだ。
クリスティーヌ様は微笑み、続けた。
「貴方の報告書も立派な研究の形よ。魔導具便覧を目指しているように見える。文章には人を惹きつける力がある。出版するなら研究費の追加も考えましょう」
「ありがとうございます! 励みます!」
話題は再び教授陣へ。
「レッド君を受け入れる可能性があるのは、フリード教授、ムカージ教授、アルナル教授、ゲオルク教授ね」
「アルナル教授は?」
「万能薬の追及者。シュヴァイツェル派よ」
「ゲオルク教授は植物研究。地味だが学術的価値は高い」
植物の組み合わせと魔素の影響――自分の知識とも重なる分野だ。
「……悩みますね」
「王都に着いたら学院長に相談しましょう。魔術科は選択肢に無いでしょうね。錬金科か魔導具科の二つに絞って慎重に決めなさい」
焚き火の炎が小さくなり、クリスティーヌ様はバルサムに促されて馬車へ戻られた。これからは自分たちが輪番の警戒に立つ番だ。
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