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1A-遭難と保護
1A-05 一時の安息
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兵士の話によれば、自分が拉致されたことを察した家族が、捜索金を村長に託したという。
領内には捜索依頼が出されているが、この界隈では積極的な捜索は行われていない。
こうした案件はごく稀で、兵士も「年に一度あるかどうか」と語っていた。
奴隷として扱われる可能性があっても、都市に入るには身分証が必要だとレッド君は言う。
証明がなければ都市に入れず、そうなると奴隷商もある程度の規模が必要になる。
残念ながら、監禁されていた洞窟の場所は不明で、今の段階では分からないことが多い。
それでも、難を逃れたことだけでも幸運だと考えるべきだろう。
詰所から場所を移し、屋敷のような規模の役所へ向かう。
ベンベルクの北側、広場に面した大きな建物だ。
専門の部門へ案内され、手続きが始まる。兵士はそのまま付き添ってくれていた。
制服姿の文官は、魔導具を扱う専門員のようだった。
「こちらの台に身分石を乗せてください。籍のある村へ接続します」
石を乗せると、淡く発光した。
文官が魔導具の端末を操作する。ボタン式らしく、ピーピーという音が鳴る。
しばらく無音が続き、五分ほどして年配の男性の声が聞こえた。まるで電話のようだった。
「こちらホーミィー村。村長のサーカエと申します」
『ああ、村長だ』
「こちらベンベルク城郭都市、役所捜索課のアジソンです。そちらに籍があるレッドという少年の捜索届についてです」
「!! 一ヶ月前に、商人のサルタンから提出を受けています。進展があったのですか?」
「はい。ベンベルク南門の検問で発見され、都市兵士によって本日身柄を確保しました。本人への聴取と、捜索届・外見・持参した身分石の照合により、本人と確認済みです。取り決めに従い、村側で引き取りの手配をお願いします」
「了解しました。本日は日暮れのため、家族への連絡のみとします。準備の都合もあり、引き取りは明日か明後日になるでしょう」
「日時の件、承知しました。到着次第、担当者には役所へ来るよう伝えてください。 少年は手続き完了まで、詰所の拘留所で責任を持って保護しますので、ご安心ください」
「ご手配、ありがとうございます。村長として、迅速な対応に感謝いたします」
通信は無事に終了した。
「よかったな、少年。明日か明後日には家族と再会できるぞ」
兵士が優しく声をかけてくれる。
「ありがとうございます。ほっとしました。動いてくださって感謝しています」
「捜索者が見つかるのは珍しい。ここは魔の森が近いから、残念な結果になることが多い。俺も、良い報告ができて嬉しいよ」
兵士と役所の担当者に感謝の言葉を伝える。
その言葉とは裏腹に、心の中では「明日か明後日」が制限時間だと刻み込んでいた。 帰り道、安心した少年の風貌を利用し、兵士と雑談を交えながら情報収集を試みる。
ホーミィー村のこと、城郭都市の事情など、知っておくべきことは多い。
レッド君には負担をかけたくない。
城郭都市ベンベルクは、辺境領の領都であり、パール家が統治している。
魔の森が近く、魔物の氾濫が度々起こる地だが、政治は比較的安定しているという。パール家は庶民派と呼ばれる穏健な貴族で、税も軽く、他領に比べて住みやすいと兵士は語った。
並行して、レッド君の家族の記憶を探る。
今まで意識できなかったが、彼の記憶は意識すれば流れてくる。
警戒心が解けたことで、情報がストレートに伝わってくるようになった。
父・サルタン、母・ジーナ、妹・マリンの四人家族。ホーミィー村で雑貨店を営む商人一家だ。
『父さんがサルタン、ジーナが母さん、妹がマリンだね』
親戚もベンベルクにいるらしく、こちらも商店を営んでいる。
祖父は都市の有力者らしいが、レッド君は祝い事でしか会ったことがなく、詳しくは知らないという。
過去の記憶は、映画を観ているような感覚。
今の主人格は自分であり、レッド君は副人格として次第に弱まっている。
自分がそう感じるなら、彼自身も同じように感じているはずだ。
あの洞窟で頭を打ったことが原因なのかもしれない。
「すまないが、待機場所は詰所の勾留所だけなんだ。宿泊には向かないことは、事前に謝っておく。身元が分かっているのに宿屋ではなくて、本当に済まない。もちろん、食事は出すぞ」
しばらくは兵士と共に、拘留所で過ごすことになるようだ。
野宿よりは遥かにマシだ。
安心して休める場所があるだけでも、ありがたい。
領内には捜索依頼が出されているが、この界隈では積極的な捜索は行われていない。
こうした案件はごく稀で、兵士も「年に一度あるかどうか」と語っていた。
奴隷として扱われる可能性があっても、都市に入るには身分証が必要だとレッド君は言う。
証明がなければ都市に入れず、そうなると奴隷商もある程度の規模が必要になる。
残念ながら、監禁されていた洞窟の場所は不明で、今の段階では分からないことが多い。
それでも、難を逃れたことだけでも幸運だと考えるべきだろう。
詰所から場所を移し、屋敷のような規模の役所へ向かう。
ベンベルクの北側、広場に面した大きな建物だ。
専門の部門へ案内され、手続きが始まる。兵士はそのまま付き添ってくれていた。
制服姿の文官は、魔導具を扱う専門員のようだった。
「こちらの台に身分石を乗せてください。籍のある村へ接続します」
石を乗せると、淡く発光した。
文官が魔導具の端末を操作する。ボタン式らしく、ピーピーという音が鳴る。
しばらく無音が続き、五分ほどして年配の男性の声が聞こえた。まるで電話のようだった。
「こちらホーミィー村。村長のサーカエと申します」
『ああ、村長だ』
「こちらベンベルク城郭都市、役所捜索課のアジソンです。そちらに籍があるレッドという少年の捜索届についてです」
「!! 一ヶ月前に、商人のサルタンから提出を受けています。進展があったのですか?」
「はい。ベンベルク南門の検問で発見され、都市兵士によって本日身柄を確保しました。本人への聴取と、捜索届・外見・持参した身分石の照合により、本人と確認済みです。取り決めに従い、村側で引き取りの手配をお願いします」
「了解しました。本日は日暮れのため、家族への連絡のみとします。準備の都合もあり、引き取りは明日か明後日になるでしょう」
「日時の件、承知しました。到着次第、担当者には役所へ来るよう伝えてください。 少年は手続き完了まで、詰所の拘留所で責任を持って保護しますので、ご安心ください」
「ご手配、ありがとうございます。村長として、迅速な対応に感謝いたします」
通信は無事に終了した。
「よかったな、少年。明日か明後日には家族と再会できるぞ」
兵士が優しく声をかけてくれる。
「ありがとうございます。ほっとしました。動いてくださって感謝しています」
「捜索者が見つかるのは珍しい。ここは魔の森が近いから、残念な結果になることが多い。俺も、良い報告ができて嬉しいよ」
兵士と役所の担当者に感謝の言葉を伝える。
その言葉とは裏腹に、心の中では「明日か明後日」が制限時間だと刻み込んでいた。 帰り道、安心した少年の風貌を利用し、兵士と雑談を交えながら情報収集を試みる。
ホーミィー村のこと、城郭都市の事情など、知っておくべきことは多い。
レッド君には負担をかけたくない。
城郭都市ベンベルクは、辺境領の領都であり、パール家が統治している。
魔の森が近く、魔物の氾濫が度々起こる地だが、政治は比較的安定しているという。パール家は庶民派と呼ばれる穏健な貴族で、税も軽く、他領に比べて住みやすいと兵士は語った。
並行して、レッド君の家族の記憶を探る。
今まで意識できなかったが、彼の記憶は意識すれば流れてくる。
警戒心が解けたことで、情報がストレートに伝わってくるようになった。
父・サルタン、母・ジーナ、妹・マリンの四人家族。ホーミィー村で雑貨店を営む商人一家だ。
『父さんがサルタン、ジーナが母さん、妹がマリンだね』
親戚もベンベルクにいるらしく、こちらも商店を営んでいる。
祖父は都市の有力者らしいが、レッド君は祝い事でしか会ったことがなく、詳しくは知らないという。
過去の記憶は、映画を観ているような感覚。
今の主人格は自分であり、レッド君は副人格として次第に弱まっている。
自分がそう感じるなら、彼自身も同じように感じているはずだ。
あの洞窟で頭を打ったことが原因なのかもしれない。
「すまないが、待機場所は詰所の勾留所だけなんだ。宿泊には向かないことは、事前に謝っておく。身元が分かっているのに宿屋ではなくて、本当に済まない。もちろん、食事は出すぞ」
しばらくは兵士と共に、拘留所で過ごすことになるようだ。
野宿よりは遥かにマシだ。
安心して休める場所があるだけでも、ありがたい。
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