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1B-修練と改良
1B-06 理論と構造
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魔力回路の増強訓練は続いている。
パラケル爺さんの助言どおり、起きている間はできるだけ時間を費やすようにしている。
朝の支度中、家業の店頭に立つまでの間、取引先の細工職人や鍛冶職人へのお使いの道中――。隙間時間を見つけては、魔力の循環を意識する。
こうした地道な作業は、案外得意だ。
滞っていた回路が開くたびに、筋肉痛のような痛みが走るのは困りものだが、
確実に身につくなら我慢できる。
筋肉だけでなく、神経にまで魔素が通るというのは、予想どおりの発見だった。
解剖学や経絡の知識があったことも、理解の助けになっている。
ただ、妹からは「構ってくれない」と苦情が来た。
訓練の合間、爺さんは魔法理論の講義をしてくれる。
普段は寡黙な人だが、専門分野になると途端に饒舌になる。
「ワシの【職業】は魔導師だ。属性魔法全般と錬金術が得意な魔法専用職だ。もちろん魔法も使える。属性魔法は火・水・風・土・光・闇・無。まあ、一般的な分類だな。ワシは大出力よりも、魔力の制御に長けていると自己分析している」
属性魔法は六属性+無属性。
複合魔法も存在する。
アイテムボックスは無属性で、ほとんどの人間に適性がある。
収納量は職業によって異なり、商人は多く、戦士系は少ない。
魔力器官の総量が、容量に影響するという。
爺さんは魔導具店を営んでいるだけあって、魔術と魔法陣への理解が深い。
魔導具を作るには、魔力と魔術の理論が不可欠なのだろう。
爺さんは、基本六属性と無属性すべてを持っている。
兵士の話では、属性の適性は七歳までに増え、石の儀式で固定されるという。
すべての属性を持つことが「一般的」かどうかは、正直わからない。
「学院の研究によると、魔素量と属性系統は、経験と血統によって決まるとされている。魔力器官の蓄積量は人によって異なる。貴族やエルフ族は初期量が多い傾向がある。訓練で増やすこともできる。たまに隔世遺伝で魔力量の多い庶民が現れる。ワシもその一人だ。親父からそう言われた。小僧もそうだと思うぞ。拉致の後、魔力量が格段に増えたように見える。経験でも増える事例があるからな」
「拉致の後」という言葉に、心がざわつく。
「経験でも」という補足に、少し安堵する。
乱れた魔力を整え、循環を意識する。
爺さんはちらりとこちらを見て、話を続けた。
「魔力器官の総量は、ため込める魔素の量だ。魔素の乏しい環境では、大規模な魔法や連続使用に制限が出る。魔力回路の訓練は、一瞬の出力量を増やすためのものだ。
回路の訓練は、魔力器官にも刺激を与える。長期的には、総量にも影響するだろう」
「魔力量は理解しました。魔力波形には何か意味があるのでしょうか?」
「学院でもまだ分かっていない。魔術の適性に関係しているのではないか、という仮説があるだけだ」
魔素・魔力・魔力回路・魔力器官――
それぞれを電気に置き換えて考えてみる。
魔力回路は電線、魔力器官は充電池。魔力出力は電力に相当する。
電力は電流×電圧。ならば、魔力波形は電圧に近いのではないか?
個人差のある魔力波形が、出力の質を左右する。
この仮説はまだ検証されていないが、今後の研究テーマとして面白い。
話は魔法陣の作成に移る。
「魔法陣は、魔素を多く含むインクを使って発現する。インクの原料は、魔力を豊富に含む植物素材と、魔素の塊である魔石だ。魔石を動力源とし、魔力回路を通じて魔法陣から魔法を出力する。魔法陣は、属性魔法を擬似的に放つ出力装置だ」
魔法陣を複数管理し、目的に即した製品が魔導具という。
魔法陣には古代文字が使われる。
この国では、種族間の共通言語としてアルミア語が使われているが、魔法陣の文字体系はそれとは異なる。
学院の研究によれば、古代文字は四種類の体系があり、それらを組み合わせて使うため、非常に難解だという。
学院で修学を重ねなければ、解読は困難。
現在でも自由に記述できる者は少ない。
爺さんは誇らしげに語る。
古代文字の体系が四種類あることを発見したのは、自分だと。
爺さんは魔導具を解体し、魔法陣を見せてくれた。
「緻密に書かれていますね」
「ああ、正確に記述することで、稼働の安定性が決まる。発掘された古代文字は個性が強くてな。昔は一つ一つ紐解いて解析したものだ」
魔法陣と回路を見て、心がざわついた。
そこに使われていたのは、日本語と英語の組み合わせ。
カナ、ひらがな、漢字、英字――
まさに、四種類の文字体系。
他にも界渡りをした人物がいたのか?
最近でも「遺構」と呼ばれる古代の発掘品が出土しているという。
自分が渡ってきた以上、向こうとこちらに関連があることは否定できない。
この文字体系は、こちらの人間にとっては非常に難解。
共通言語の存在が、さらに混乱を招いている。
自分には、少し達筆な日本語と英語の混合にしか見えなかった。
爺さんに尊敬の眼差しを向けながらも、心の中では動揺を隠せない。
表情に出さないよう注意し、魔力の制御に集中する。
感情を押しとどめる。
魔導具は、電力を動力とする家電に似ている。
そして、文字が読めてしまうという事実――
どこまで開示すべきか。
不審に思われないよう、慎重に振る舞わなければならない。
今は修行中。
自重が必要だ。
それを、心に刻む。
パラケル爺さんの助言どおり、起きている間はできるだけ時間を費やすようにしている。
朝の支度中、家業の店頭に立つまでの間、取引先の細工職人や鍛冶職人へのお使いの道中――。隙間時間を見つけては、魔力の循環を意識する。
こうした地道な作業は、案外得意だ。
滞っていた回路が開くたびに、筋肉痛のような痛みが走るのは困りものだが、
確実に身につくなら我慢できる。
筋肉だけでなく、神経にまで魔素が通るというのは、予想どおりの発見だった。
解剖学や経絡の知識があったことも、理解の助けになっている。
ただ、妹からは「構ってくれない」と苦情が来た。
訓練の合間、爺さんは魔法理論の講義をしてくれる。
普段は寡黙な人だが、専門分野になると途端に饒舌になる。
「ワシの【職業】は魔導師だ。属性魔法全般と錬金術が得意な魔法専用職だ。もちろん魔法も使える。属性魔法は火・水・風・土・光・闇・無。まあ、一般的な分類だな。ワシは大出力よりも、魔力の制御に長けていると自己分析している」
属性魔法は六属性+無属性。
複合魔法も存在する。
アイテムボックスは無属性で、ほとんどの人間に適性がある。
収納量は職業によって異なり、商人は多く、戦士系は少ない。
魔力器官の総量が、容量に影響するという。
爺さんは魔導具店を営んでいるだけあって、魔術と魔法陣への理解が深い。
魔導具を作るには、魔力と魔術の理論が不可欠なのだろう。
爺さんは、基本六属性と無属性すべてを持っている。
兵士の話では、属性の適性は七歳までに増え、石の儀式で固定されるという。
すべての属性を持つことが「一般的」かどうかは、正直わからない。
「学院の研究によると、魔素量と属性系統は、経験と血統によって決まるとされている。魔力器官の蓄積量は人によって異なる。貴族やエルフ族は初期量が多い傾向がある。訓練で増やすこともできる。たまに隔世遺伝で魔力量の多い庶民が現れる。ワシもその一人だ。親父からそう言われた。小僧もそうだと思うぞ。拉致の後、魔力量が格段に増えたように見える。経験でも増える事例があるからな」
「拉致の後」という言葉に、心がざわつく。
「経験でも」という補足に、少し安堵する。
乱れた魔力を整え、循環を意識する。
爺さんはちらりとこちらを見て、話を続けた。
「魔力器官の総量は、ため込める魔素の量だ。魔素の乏しい環境では、大規模な魔法や連続使用に制限が出る。魔力回路の訓練は、一瞬の出力量を増やすためのものだ。
回路の訓練は、魔力器官にも刺激を与える。長期的には、総量にも影響するだろう」
「魔力量は理解しました。魔力波形には何か意味があるのでしょうか?」
「学院でもまだ分かっていない。魔術の適性に関係しているのではないか、という仮説があるだけだ」
魔素・魔力・魔力回路・魔力器官――
それぞれを電気に置き換えて考えてみる。
魔力回路は電線、魔力器官は充電池。魔力出力は電力に相当する。
電力は電流×電圧。ならば、魔力波形は電圧に近いのではないか?
個人差のある魔力波形が、出力の質を左右する。
この仮説はまだ検証されていないが、今後の研究テーマとして面白い。
話は魔法陣の作成に移る。
「魔法陣は、魔素を多く含むインクを使って発現する。インクの原料は、魔力を豊富に含む植物素材と、魔素の塊である魔石だ。魔石を動力源とし、魔力回路を通じて魔法陣から魔法を出力する。魔法陣は、属性魔法を擬似的に放つ出力装置だ」
魔法陣を複数管理し、目的に即した製品が魔導具という。
魔法陣には古代文字が使われる。
この国では、種族間の共通言語としてアルミア語が使われているが、魔法陣の文字体系はそれとは異なる。
学院の研究によれば、古代文字は四種類の体系があり、それらを組み合わせて使うため、非常に難解だという。
学院で修学を重ねなければ、解読は困難。
現在でも自由に記述できる者は少ない。
爺さんは誇らしげに語る。
古代文字の体系が四種類あることを発見したのは、自分だと。
爺さんは魔導具を解体し、魔法陣を見せてくれた。
「緻密に書かれていますね」
「ああ、正確に記述することで、稼働の安定性が決まる。発掘された古代文字は個性が強くてな。昔は一つ一つ紐解いて解析したものだ」
魔法陣と回路を見て、心がざわついた。
そこに使われていたのは、日本語と英語の組み合わせ。
カナ、ひらがな、漢字、英字――
まさに、四種類の文字体系。
他にも界渡りをした人物がいたのか?
最近でも「遺構」と呼ばれる古代の発掘品が出土しているという。
自分が渡ってきた以上、向こうとこちらに関連があることは否定できない。
この文字体系は、こちらの人間にとっては非常に難解。
共通言語の存在が、さらに混乱を招いている。
自分には、少し達筆な日本語と英語の混合にしか見えなかった。
爺さんに尊敬の眼差しを向けながらも、心の中では動揺を隠せない。
表情に出さないよう注意し、魔力の制御に集中する。
感情を押しとどめる。
魔導具は、電力を動力とする家電に似ている。
そして、文字が読めてしまうという事実――
どこまで開示すべきか。
不審に思われないよう、慎重に振る舞わなければならない。
今は修行中。
自重が必要だ。
それを、心に刻む。
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