巻き込まれた薬師の日常

白髭

文字の大きさ
33 / 259
1C-試行と結果

1C-13 魔導具化と保存

しおりを挟む
爺さんから借りた教本と数日間格闘した末、ついに魔導具の実作成に踏み出すことにした。
まずは、光属性魔法の魔導具化。
目的は、光安定性試験に使用する遮光箱の改良だ。


教本によると、出力点には水晶が適しているらしい。
水晶はピレネ村でよく採取されている。
陶石が採れるあの村だ。
石英と陶石は鉱物系統が近いため、採取場所も似通うのだろう。

「遮光箱を作りたいのですが、魔導インクや金属板など材料がありません。貸してもらえますか?」

「この作業部屋にあるものは使って構わん。好きに使え。足りないものは言え」

案外太っ腹なパラケル爺さん。
礼を言って、作業を開始する。


水晶を留めた光魔法の魔導盤を、箱の裏側に設置。
箱の横に小さな穴を開け、薄い金属板を這わせて表の制御盤へ。
魔導回路として作用させるための下地だ。

表の制御盤には、魔石を置いたときに起動するよう設計。
発光量は太陽光の十倍に設定。
試運転でポーション瓶の劣化が確認できたため、出力は問題ない。

教本通りに作成すれば、素材さえ揃えば簡便に作れる。
思ったよりも、教本はわかりやすかった。


稼働時間は制御盤で操作する。
ただし、教本通りだと魔石とタイマーが同じ回路にあり、扱いづらい。
そこで、回路を別系統に分割。
タイマーユニットと魔石ユニットを機能ごとに切り離し、カード化。
組み合わせて汎用できるように改造した。
パズルのように、三連の続きでパチンとはめる。
はめれば発光開始。魔石カードを外せばリセット。
タイマーユニットは、一時間・十時間・二十時間用を作成。


爺さんに確認を取る。
「これが試験用の遮光箱か。なるほど。裏の魔導盤は教本通り、表の制御盤は改良したのか。役割ごとに分解して、組み替え可能にしたわけだな」

「はい。パーツ化することで、汎用性を持たせました」
「この仕組みは、もう少し複雑にすれば売れそうだな。
ずれないように、ガラスのカバーをかけておけ」

合格点をもらった。
このまま試験は続行だ。


爺さんによると、この程度の出力なら、低グレードの魔石一個で百時間は使えるとのこと。
魔石のランクを上げれば時間は延びるが、価格も上がる。
魔石は魔物から入手可能。
城郭都市近辺では安価に手に入る。
爺さんから十個ほど譲り受けた。
これで千時間分の試験が可能だ。


試験を続行。
磁薄釉瓶の遮光性能は非常に高く、劣化が確認されたのは八〇時間を超えたあたり。
元のポーションを「1」とすると、保管期限は四十倍。
品質期限「三年」のポーションが完成した。


三年経過品――
向こうの感覚でも、これは長期保存に分類される。
魔素があるものは、腐敗しないのか?
試飲と鑑定を行ったが、腐敗臭や品質劣化は確認できなかった。

魔素由来の特別な効果か?
材料に含まれるフラボノイドなどの抗菌成分と魔素が結びつき、雑菌の繁殖を防いでいるのだろう。

さらに、こちらには【物質鑑定】がある。
品質保証ができるのは、非常に大きな強みだ。



遮光箱の魔導具化。
制御盤の改良。
魔石の運用。
そして、三年保存ポーションの誕生。
魔術と技術の融合が、確かな成果を生み出した。
レッド少年は今、保存技術の革新者として、確かな一歩を踏み出した。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

九尾と契約した日。霊力ゼロの陰陽師見習いが大成するまで。

三科異邦
ファンタジー
「霊力も使えない。術式も出せない。 ……西園寺玄弥、お前は本当に陰陽師か?」 その言葉は、もう何度聞いたか分からない。 霊術学院の訓練場で、俺はただ立ち尽くしていた。 周囲では炎が舞い、水がうねり、風が刃のように走る。 同年代の陰陽師たちが、当たり前のように霊を操っている。 ――俺だけが、何もできない。 反論したい気持ちはある。 でも、できない事実は変わらない。 そんな俺が、 世界最強クラスの妖怪と契約することになるなんて―― この時は、まだ知る由もなかった。 これは―― 妖怪の王を倒すべく、九尾の葛葉や他の仲間達と力を合わせて成長していく陰陽師見習いの物語。

令嬢失格な私なので

あんど もあ
ファンタジー
貴族の令息令嬢が学ぶ王都学園。 そこのカースト最下位と思われている寮生の中でも、最も令嬢らしからぬディアナ。 しかしその正体は……。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

ダンジョン学園サブカル同好会の日常

くずもち
ファンタジー
ダンジョンを攻略する人材を育成する学校、竜桜学園に入学した主人公綿貫 鐘太郎(ワタヌキ カネタロウ)はサブカル同好会に所属し、気の合う仲間達とまったりと平和な日常を過ごしていた。しかしそんな心地のいい時間は長くは続かなかった。 まったく貢献度のない同好会が部室を持っているのはどうなのか?と生徒会から同好会解散を打診されたのだ。 しかしそれは困るワタヌキ達は部室と同好会を守るため、ある条件を持ちかけた。 一週間以内に学園のため、学園に貢献できる成果を提出することになったワタヌキは秘策として同好会のメンバーに彼の秘密を打ちあけることにした。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

処理中です...