巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1D-窯業と産業

1D-10  魔力ポーションの特性

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 ハイポーションの組み合わせ実験をしたい衝動に駆られながらも、まずは濃縮ポーションの品質保持試験に数日を費やした。途中、村長に呼び出され、試作したポーション百本を領主代行に献上するという一幕もあった。

 中間製品である濃縮ポーションが安定供給できるなら、輸送の問題は大きく改善される。販売先での小分けも可能になり、派生製品の基盤としても用途が広がるだろう。焦らず、まずは足場を固めることが肝心だ。前に使った光安定性試験用の遮光箱に入れ、試験を開始した。

「マリン。今日は何か予定あるかい?」
 朝食の席で妹に声をかける。今日は休息日で、教会のお勉強会も休みのはずだ。ブラックメンタの採取に人手を確保したい。遮光試験は放置しておける。

「うん。ローズちゃんとフローラちゃんと遊ぶ予定」
「それなら川の側で一緒にお小遣い稼ぎしない?」
「二人次第だけど、私はいいよ」

 妹とその友達二人を確保できれば理想的だ。遊びと採取を兼ねられる。待ち合わせの鍛冶屋へ一緒に向かう。

「おや?マリンの兄じゃないか。珍しいな、こっちに来るなんて」
「ディオスさん、おはようございます。妹と採取に行こうと思って。友達を誘いに来ました」

 玄関先で出会ったディオスさんは、革の前掛けをしたがっちりした体格の鍛冶職人。剣や盾、料理道具や馬具まで扱う村唯一の何でも屋だ。本人は専門的ではないと謙遜するが、パラケル爺さんや細工職人のクバナさんと並ぶ村の誇りの一人だ。

「おい、ローズ。マリンちゃんとレッドが誘いに来たぞ」
「あれ?レッドがなんで?」
「川の近くで採取をしようと思って。この前の薬草とは別のものだよ」
「マリンが行くならいいけど……あ、ちょうどフローラも来た」

 再度説明し、二人の同意を得て採取場へ向かう。
「採るのはこれ。もちろん買い取りするよ。二株で銀貨一枚」

 ブラックメンタを見せる。メンタは一株単位の買い取りだが、ブラックメンタはアルテミ草の五倍の値がつく。

「!? ずいぶん高いね」
「見分けが少し難しいからね。コツを教えるよ」

 ブラックメンタの見分け方を伝え、採取を開始した。森に近いが川も近く、魔力探知にも慣れてきたので支障はないだろう。

 一日かけて採取したのは五十五株。通常のメンタを除くと五十二株となった。銀貨二十六枚。妹と友達は大喜びで、自宅へ帰っていった。ホーミィー村の物価は安い。子供たちにとっては手に余るほどのお小遣いだ。自分は素材の劣化を防ぐため、乾燥と部位選定を手早く済ませる。

 翌日、ブラックメンタの水蒸気蒸留を行い、瓶に移して鑑定する。
【*10倍濃縮魔力ポーション。特級。少しの気付効果。魔素回復6。中間製品。液量1/10】

 魔力枯渇で確認できなかったが、想定通り製品化した。五株で一瓶という単位は変わらない。
 さらに通常の乾燥草を熱水抽出してみる。

【*魔力ポーション。劣化品。二日は不眠状態。魔素回復6】
【*魔力ポーション。普及品。一日は不眠状態。魔素回復6】
【*魔力ポーション。一級品。気付効果。魔素回復6】

 結果はポーションとほぼ同じ。ただし、魔力ポーションには「不眠」という副作用が付与される。特級品では副作用が大幅に軽減される。ポーションと違い、劣化品でも利用価値がある。むしろ「不眠」を求める者もいるだろう。軍隊や一部の働き手にとっては重宝される品になるかもしれない。

 濃縮魔力ポーションと魔力ポーションを遮光箱に入れ、保存試験を行った。数日後、濃縮ポーションは想定通りポーション並みの保管期間を示した。磁器瓶の性能は予想以上だ。本当に開発してよかった。

 一日遅れて実施した魔力ポーションの遮光試験も、通常のポーションと同じ結果となった。こうして一連の試験が終わったのは、会議から一週間が過ぎた頃だった。


 そしてちょうどその頃、出張に出ていた父サルタンが帰宅した。
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