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1D-窯業と産業
1D-16 *旧友との再会
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ピレネ村、マーロ村での引き継ぎを終え、儂は城郭都市へ戻った。
マーロ村からベンベルクまでは馬車で一日の距離。
馬車に刻まれた紋章のおかげで監査もなく門を通過できる。
貴族案件というのは、こういう時に便利だ。
そのまま領主の館へ直行する。
ダミアンが窓を開け、門番と軽く言葉を交わす。
馬車は館の玄関に横付けされた。
まずは館の主に進捗を報告せねばならない。
だが代行はすでに王都へ向かったはず。
当主も王都に滞在中だろう。
最近は一度王都へ行くとなかなか戻らない。
となると、迎えてくれるのは家宰か……いや、あの女か。
「あら、珍しい。隠居した爺が来るとはね」
執務室にいたのは、優雅にティータイムを楽しむ顔なじみだった。
「クリスティーヌ。しばらくぶりだな。相変わらず変わらん」
クリスティーヌ。
男爵家の娘で元冒険者。
若い頃、エリスと共にパーティーを組んだこともある。
苦い思い出もある。
ワシが貴族に引き上げられた際に助けてくれた恩人でもある。
都市運営に相談役として参画できたのも、彼女の後押しがあったからだろう。
「ホーミィー村に引きこもって出てこないと思ったら、どういう風の吹きまわし?」
「弟子を久しぶりに取ったのでな。尻拭いだよ。親子共々の」
暗部から情報を仕入れる彼女のことだ。
レッドのことも、ベルナル商会のこともすでに知っているに違いない。
「あら、随分と可愛がるのね。魔力量が多いのかしら?」
「そうだな。ワシと同じ先祖返りだろう。発想も面白い。もしかすると……いや、これはわからん」
「何かしら。途中でやめると気になるわ」
「知ってのとおり、レッドは拉致被害者だ。帰ってきてから随分変わった」
「それは気になることね。エリスからの報告もあるわ」
「元から多い方だったが、魔力量がさらに増えた」
「……気になる事象ね。今度見させて欲しいわ。【鑑定】結果が楽しみだわ」
彼女の目が鋭く光る。強い興味を示した合図だ。
「よろしく頼む。人物の【鑑定】は苦手でな」
その後はマルガリタ商会の報告に移る。サルタンとの分担、ダミアンと共に陶石の村を訪れたこと、ピレネ村で磁器製作が始まったこと、マーロ村は一歩遅れているが自由度を持たせていること。領主側の意向を汲み取り、商人や貴族に売れる商品に仕上げる必要があることを伝えた。
「マルガリタ商会ね。いない間にアゼルがギルド長として資金を回収しに来たわ。金貨五千一枚渡したけど足りるかしら?ポーション代の三千枚も支払い済みよ」
「十分すぎる。当面の資金は問題ない。各ギルドも出資を望んでいる。全体で一万枚を超えなければ差し支えないのだろう?」
「あら、わかっているわね。出資金の運用と活用はよろしくね」
重要な決定は出資金の比率で発言力が決まる。
貴族の意向を通すには半分を抑えればよい。
ポーションは軍事物資、磁器は政治力の道具。
だからこそ五千一枚という数字に意味がある。
代行がホーミィー村経由で王都へ向かったこと、サルタンが各ギルドを回って打ち合わせをしていたこと、冒険者ギルドで薬草の備蓄が始まったことを知らされた。
話題は都市の運営へと移る。
「さっきまでエリスが来ていたのだけど、最近魔物が増えているという報告を受けたわ。魔の森から少しずつ溢れているみたい」
「早くないか?従来ならもう少し遅いはずだが」
「今年は早いみたいね。夫が戻ってくれば良いけど」
「呼び戻した方がよさそうだな。まだ時間はあるのだろう?」
「近々ではないわ。あなたも前みたいに城郭都市に居たらいいのに」
「もう現役ではない」
「私とエリスとパラケル。魔力量ではまだ三人が抜きん出ている。あそこを押さえるには三人が必要なのよ。魔力制御ならあなたが一番。ウィザーリングでは荷が重い。ダミアンを縛れば都市の自由が利かなくなる」
「今回のように働かされると身が持たん。もう爺さんだ。若い世代に任せる」
「お弟子さんは優秀そうね。学院に行くことは考えているのかしら?」
「さあな。代行から勧誘を受けている。報酬として。まあ断れんだろう。周囲から埋められている。目を離せば何かしでかす小僧だ。まだ見守る必要がある」
「村長からの報告もこちらに回ってきているわ。他の植物を見つけて何やらやっているみたいね。スライムを捕まえたり、パラケルの店からメンタやアルテミの匂いが漂ってきたり。ずいぶん面白いことをしているようね」
香水でも作るのかしら、と彼女は笑った。
なるほど、予想通りだ。
課題が少なければ薬草を探しに行くと思っていた。
メンタとアルテミの芳香……還流装置にでも手を出したか。
スライムはわからん。
帰ってから報告を受けるしかないな。
マーロ村からベンベルクまでは馬車で一日の距離。
馬車に刻まれた紋章のおかげで監査もなく門を通過できる。
貴族案件というのは、こういう時に便利だ。
そのまま領主の館へ直行する。
ダミアンが窓を開け、門番と軽く言葉を交わす。
馬車は館の玄関に横付けされた。
まずは館の主に進捗を報告せねばならない。
だが代行はすでに王都へ向かったはず。
当主も王都に滞在中だろう。
最近は一度王都へ行くとなかなか戻らない。
となると、迎えてくれるのは家宰か……いや、あの女か。
「あら、珍しい。隠居した爺が来るとはね」
執務室にいたのは、優雅にティータイムを楽しむ顔なじみだった。
「クリスティーヌ。しばらくぶりだな。相変わらず変わらん」
クリスティーヌ。
男爵家の娘で元冒険者。
若い頃、エリスと共にパーティーを組んだこともある。
苦い思い出もある。
ワシが貴族に引き上げられた際に助けてくれた恩人でもある。
都市運営に相談役として参画できたのも、彼女の後押しがあったからだろう。
「ホーミィー村に引きこもって出てこないと思ったら、どういう風の吹きまわし?」
「弟子を久しぶりに取ったのでな。尻拭いだよ。親子共々の」
暗部から情報を仕入れる彼女のことだ。
レッドのことも、ベルナル商会のこともすでに知っているに違いない。
「あら、随分と可愛がるのね。魔力量が多いのかしら?」
「そうだな。ワシと同じ先祖返りだろう。発想も面白い。もしかすると……いや、これはわからん」
「何かしら。途中でやめると気になるわ」
「知ってのとおり、レッドは拉致被害者だ。帰ってきてから随分変わった」
「それは気になることね。エリスからの報告もあるわ」
「元から多い方だったが、魔力量がさらに増えた」
「……気になる事象ね。今度見させて欲しいわ。【鑑定】結果が楽しみだわ」
彼女の目が鋭く光る。強い興味を示した合図だ。
「よろしく頼む。人物の【鑑定】は苦手でな」
その後はマルガリタ商会の報告に移る。サルタンとの分担、ダミアンと共に陶石の村を訪れたこと、ピレネ村で磁器製作が始まったこと、マーロ村は一歩遅れているが自由度を持たせていること。領主側の意向を汲み取り、商人や貴族に売れる商品に仕上げる必要があることを伝えた。
「マルガリタ商会ね。いない間にアゼルがギルド長として資金を回収しに来たわ。金貨五千一枚渡したけど足りるかしら?ポーション代の三千枚も支払い済みよ」
「十分すぎる。当面の資金は問題ない。各ギルドも出資を望んでいる。全体で一万枚を超えなければ差し支えないのだろう?」
「あら、わかっているわね。出資金の運用と活用はよろしくね」
重要な決定は出資金の比率で発言力が決まる。
貴族の意向を通すには半分を抑えればよい。
ポーションは軍事物資、磁器は政治力の道具。
だからこそ五千一枚という数字に意味がある。
代行がホーミィー村経由で王都へ向かったこと、サルタンが各ギルドを回って打ち合わせをしていたこと、冒険者ギルドで薬草の備蓄が始まったことを知らされた。
話題は都市の運営へと移る。
「さっきまでエリスが来ていたのだけど、最近魔物が増えているという報告を受けたわ。魔の森から少しずつ溢れているみたい」
「早くないか?従来ならもう少し遅いはずだが」
「今年は早いみたいね。夫が戻ってくれば良いけど」
「呼び戻した方がよさそうだな。まだ時間はあるのだろう?」
「近々ではないわ。あなたも前みたいに城郭都市に居たらいいのに」
「もう現役ではない」
「私とエリスとパラケル。魔力量ではまだ三人が抜きん出ている。あそこを押さえるには三人が必要なのよ。魔力制御ならあなたが一番。ウィザーリングでは荷が重い。ダミアンを縛れば都市の自由が利かなくなる」
「今回のように働かされると身が持たん。もう爺さんだ。若い世代に任せる」
「お弟子さんは優秀そうね。学院に行くことは考えているのかしら?」
「さあな。代行から勧誘を受けている。報酬として。まあ断れんだろう。周囲から埋められている。目を離せば何かしでかす小僧だ。まだ見守る必要がある」
「村長からの報告もこちらに回ってきているわ。他の植物を見つけて何やらやっているみたいね。スライムを捕まえたり、パラケルの店からメンタやアルテミの匂いが漂ってきたり。ずいぶん面白いことをしているようね」
香水でも作るのかしら、と彼女は笑った。
なるほど、予想通りだ。
課題が少なければ薬草を探しに行くと思っていた。
メンタとアルテミの芳香……還流装置にでも手を出したか。
スライムはわからん。
帰ってから報告を受けるしかないな。
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