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1F-氾濫と供給
1F-18 領主たちの思惑
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学院に行くことは決まった。話題は試験について移る。
「試験といっても、大抵十二歳が受けるものだ。計算、歴史、文章理解、魔術の四つ。小僧なら問題ないはずだ」
「計算と文章理解は大丈夫だと思います。ただ、歴史と魔術は不安です」
「何を言っている。魔術は心配ない。あと半年ある、ゆっくり仕上げてやろう」
クリスティーヌ様が口を挟む。
「今まで受けていたのは教会での初等教育だけでしょう?歴史は不安ね。孫の資料を渡すけど、心配なら進捗を見せてもらうわ。月に一度こちらに来なさい。パラケルもよ」
「なっ、俺もか」
「放っておくと村に引きこもるでしょう?月一なら無理なく来られるはず。魔術ギルドにも課題を与えて教育しなさい。終わったらエリスも呼んでお茶会にしましょう。レッド君の作法を見るのにちょうどいい機会だわ」
さらにトーマス様が続ける。
「桐の月には私の家族も帰ってくる。学院でも会うのだから紹介しよう。マーカーは十三歳、コーネリアはお前と同じ十二歳だ」
初めて聞く名前に戸惑うが、王都に暮らす家族だと説明され納得する。
「よし、あらかた決まったな。すまんが辺境伯家の所属とさせてもらう。名だけ貸すから安心してくれ」
「まずは名だけ借りておけ。契約は早すぎる」
パラケル爺さんの助言に従い、うなずいた。
渡されたのはパール家の紋章が彫られた根付け風のチャーム。
「これは家来や関係者に渡している魔導具だ。身分石の代わりにもなる。鑑定妨害の魔導具は心証が悪いからな。これを持っていれば辺境伯家の保護下にあると示せる」
「ワシもエリスも持っている。アゼルもだ。安心して受け取れ」
「ありがとうございます。大切に保管します」
こうして会合は終わった。願書は送られるという。あと半年――まさかこちらでも学校に行くことになるとは。だが、やるしかない。
♢♢
パラケルと少年を見送った後、トーマスは椅子に深く腰を下ろした。
「ふぅ……終わったか。思った以上に素直で良い子ではないか」
「過去の事例では暴力的な者や社会不適合の者もいたそうですから。今回は幸運でしたね」
「学院に行くのは渋っていたが、向こうで十八年も学んでいたと聞けば無理もない話だ」
孫たちと同じ年頃であることが幸いだと話し合う。防波堤となり、彼を守る役割を果たすだろうと。
「チャームも渡せたし、パール家の紐付きと誇示できる。今は最善の判断だ」
「他の貴族への牽制にもなるでしょう。王族には手紙を送っておきます」
「願書に三者の推薦があれば十分な牽制になる。母の口添えもあれば大丈夫だ」
成績については歴史以外は問題ないと見ている。話しぶりからも、十分な教育を受けていることは明らかだった。
「パラケルが半年かけて鍛えるなら、さらに規格外になるだろう」
「そこは月一回のお茶会で補いましょう。常識を教えるのも必要です」
領主たちは満足げに頷き合い、氾濫後の対策やポーション販売の話題へと移っていった。
「試験といっても、大抵十二歳が受けるものだ。計算、歴史、文章理解、魔術の四つ。小僧なら問題ないはずだ」
「計算と文章理解は大丈夫だと思います。ただ、歴史と魔術は不安です」
「何を言っている。魔術は心配ない。あと半年ある、ゆっくり仕上げてやろう」
クリスティーヌ様が口を挟む。
「今まで受けていたのは教会での初等教育だけでしょう?歴史は不安ね。孫の資料を渡すけど、心配なら進捗を見せてもらうわ。月に一度こちらに来なさい。パラケルもよ」
「なっ、俺もか」
「放っておくと村に引きこもるでしょう?月一なら無理なく来られるはず。魔術ギルドにも課題を与えて教育しなさい。終わったらエリスも呼んでお茶会にしましょう。レッド君の作法を見るのにちょうどいい機会だわ」
さらにトーマス様が続ける。
「桐の月には私の家族も帰ってくる。学院でも会うのだから紹介しよう。マーカーは十三歳、コーネリアはお前と同じ十二歳だ」
初めて聞く名前に戸惑うが、王都に暮らす家族だと説明され納得する。
「よし、あらかた決まったな。すまんが辺境伯家の所属とさせてもらう。名だけ貸すから安心してくれ」
「まずは名だけ借りておけ。契約は早すぎる」
パラケル爺さんの助言に従い、うなずいた。
渡されたのはパール家の紋章が彫られた根付け風のチャーム。
「これは家来や関係者に渡している魔導具だ。身分石の代わりにもなる。鑑定妨害の魔導具は心証が悪いからな。これを持っていれば辺境伯家の保護下にあると示せる」
「ワシもエリスも持っている。アゼルもだ。安心して受け取れ」
「ありがとうございます。大切に保管します」
こうして会合は終わった。願書は送られるという。あと半年――まさかこちらでも学校に行くことになるとは。だが、やるしかない。
♢♢
パラケルと少年を見送った後、トーマスは椅子に深く腰を下ろした。
「ふぅ……終わったか。思った以上に素直で良い子ではないか」
「過去の事例では暴力的な者や社会不適合の者もいたそうですから。今回は幸運でしたね」
「学院に行くのは渋っていたが、向こうで十八年も学んでいたと聞けば無理もない話だ」
孫たちと同じ年頃であることが幸いだと話し合う。防波堤となり、彼を守る役割を果たすだろうと。
「チャームも渡せたし、パール家の紐付きと誇示できる。今は最善の判断だ」
「他の貴族への牽制にもなるでしょう。王族には手紙を送っておきます」
「願書に三者の推薦があれば十分な牽制になる。母の口添えもあれば大丈夫だ」
成績については歴史以外は問題ないと見ている。話しぶりからも、十分な教育を受けていることは明らかだった。
「パラケルが半年かけて鍛えるなら、さらに規格外になるだろう」
「そこは月一回のお茶会で補いましょう。常識を教えるのも必要です」
領主たちは満足げに頷き合い、氾濫後の対策やポーション販売の話題へと移っていった。
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