巻き込まれた薬師の日常

白髭

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1H-鎮守と毒性

1H-02 魔素に満ちる森

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 マリンたちと川遊びをした場所から川沿いを進むと、パラケル爺さんの野草畑に出る。そこからさらに北へ進み、森へと入っていく。やがて鎮守の森の外縁部に到着した。ここがヒト族に許された北限だ。

 魔力を目に溜めて強化することは、もう習慣になっている。今では意識せずとも常時発動できるようになった。魔素の濃いものがキラキラと映るのにも慣れてきた。今も前方に光るものがある。近づくと、それはダツラだった。だが以前パラケル爺さんの畑で見たものとは少し違う。

【*ブラックダツラ。痛み止めとして有用。魔素を含む[錬金材料。薬効部位;全草及び種子。鎮痙。鎮痛。散瞳。]】

「それはブラックダツラだな。珍しい。魔素も濃い。森の外で育てると効力は落ちるが、錬金材料としては使える。やはり森で取れるものは森だな」

「森そのものが影響しているのでしょうか?」
「魔素の循環する場所があってな。この辺りは放出しやすいのだろう」

 向こうで言う龍脈のようなものか。以前は信じていなかったが、こちらでは魔素が見える。地表で循環しやすい環境が整っているのだろう。まだ循環そのものは見えないが、【製薬】スキルで薬効成分を視認できるようになった。ダツラとブラックダツラの効果の差を比べてみたい。

「エルフが森に住む理由は魔素そのものね」
「やつらはヒト族と違い、周囲から魔素を取り込める。日光浴のようにな」

 道すがらジンセンやツンベルギを見つけては採取する。するとエリスがため息をついた。
「収穫はそのくらいにしたほうがいいわ。外縁部ならまた来られる。全部取っていたら日が暮れてしまうわ」

 さらに進むと、樹木の下に魔素の集まりがあった。小さな社のような人工物だ。
「それが防御魔法を組み込んだ魔導具だ。不安を催す精神魔法を発している。触れるなよ。対の魔導具が作動して里に通報されるぞ」

 なるほど、無線警報のような仕組みか。
「この魔導具を三重に囲むように設置しているの。は最初の十年間はそれにかかりきりだったのよ」

 途方もない仕事だ。パラケル爺さんは続ける。
「この仕組みを参考にしたのが俺の観測魔導具だ。氾濫の検知に役立っただろう?」

 話しながら下木を切り払い、道を作る爺さん。歩きづらさが増していく。
「レッドの前の世界はどうだったの?」
「通信が発達していてね。魔力波のようなものを使っていた。星の裏側にも即座に届くほど便利だったよ」

 エリスが興味を示す。
「それはこちらでもできるのかしら?」
「無理ですね。専門外です。ただ村と城郭都市間の通信はできているようですから、小規模なら可能かもしれません」

 思いつきを口にしたところで、パラケル爺さんが制した。
「小僧、それ以上は言うな。情報は価値だ」
「はい、気をつけます」

「ほんと良い師弟となったものだわ。パラケルも丸くなったわね~」
 「うるさい」 
 爺さんは少し照れたように黙って下草を払っていた。

 二、三時間進むと森が開けた。そこに現れたのは興奮したブラックボア。
「珍しいわね。群れから離れたのかしら」
「氾濫の討ち漏れかもしれん。流血跡もある」
「ご飯にちょうどいいね~」
「小僧、魔力操作の練習だ。仕留めろ」
「了解です」

 久しぶりのラピスバレット。ここの土は魔力の通りが良い。四、五発を生成し、脳付近に正確に着弾させた。
「また制御が上手くなったわね。火魔法を使わず可食部位を損なわないのは良い判断よ」
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