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1H-鎮守と毒性
1H-16 相乗効果
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次の日。子供だからと早めに宴を切り上げたおかげで、朝は自然と早起きになった。族長家の台所に顔を出すと、フォミトリアさんがすでにお湯を沸かしていた。昨日は給仕を担当していたため酒量も少なく、影響は残っていないようだ。この朝、無傷で動けるのは自分と彼女くらいだろう。
「フォミトリアさん。自分に一品作らせてください。昨日までに採取した材料で作りたいものがあります。皆さん、きっとお酒で胃腸がやられていると思うので」
「あら、助かるわ。何を作るのかしら?」
「こちらでは馴染みがないと思いますが、ターリという料理です」
「ターリ?聞いたことないわね。見せてもらってもいい?」
「胃に染み込むスープのようなものです。試作から始めますので、味見をお願いします。キミヌムはありますか?」
「お肉やサラダに使う種よね?あそこの陶器の容器に入っているわ」
「ありがとうございます。昨日の宴で使っていたリコペルとメロンゲナも欲しいです」
リコペルはトマト、メロンゲナは茄子。昨日の料理で使われていたことを確認済みだ。
「リコペルは乾燥したものならあるわ。メロンゲナは収穫の最後でたくさんある」
「それと、昨日の魔鴨の釜焼きに使っていた発酵乳もお願いします」
「羊乳をもらったから、昨日仕込んだものができているはずよ」
予定通りに進められそうで安心した。
「フォミトリアさんはナーネの仕込みをお願いします」
「昨日あれだけ飲んでいたから、今日はあまり食べないと思うけど?」
「むしろ欲しがると思います。余れば帰りに食べればいいですから」
「なるほどね。じゃあ準備してくるわ」
フォミトリアがサゴ粉を取りに行く間に、自分はアイテムボックスからスパイスを取り出した。
#####
――使用するスパイスと材料――
・ アリウム
・ ギンゲベリス
・ サティバムシード
・ ロンガリゾーマ
・ キミヌムシード(魔素無し)
・ ノビリス
・ ジンセン
#####
加えて、 カロタ、 ケーパ、 ソラーニ、そして脂の少ないボア肉を用意する。
カロタ、ケーパ、ソラーニの皮を剥く作業は地道だ。途中で戻ってきたフォミトリアさんも手伝ってくれた。ボア肉は一口大に切り、フライパンで軽く炒める。
別の鍋にギー油を熱し、サティバムとキミヌムの種を弱火で炒める。焦がさないように注意しながら、ロンガリゾーマの粉を加えると、台所中に香りが広がった。
「すごい匂いね……三種類も入れるの?でも食欲をそそるわ」
「これがターリです。今回は胃腸が弱った皆さんのための特別版、[メディカターリ]です」
ケーパのみじん切りを加え、さらにギンゲベリスとアリウムを少量。戻したリコペルを入れ、水分を飛ばしてペースト状にする。刺激を避けるため、香味は控えめにした。
水を加えてペーストを伸ばし、カロタ、ソラーニ、ボア肉、ノビリス、ジンセンを投入。あとは煮込むだけだ。
「最初の工程さえ注意すれば大丈夫そうね」
「はい。油で香りを引き出すのが肝心です」
「……注意点はそこじゃないのだけど。まあ、出来上がってから話しましょう」
鍋の中で具材がぐつぐつと煮え立ち始めた。白い靄のような蒸気が、ゆらゆらと揺れ、台所の天井に広がっていく。その香りは、胃の奥を優しく刺激するかのようだ。
30分ほど煮込み、最後に発酵乳を加えて仕上げる。
二人分を用意し、試食に移る。
「これがターリの完成形ね。……ところで、鑑定してみた?」
「えっ?」
慌てて鑑定すると、結果に息を呑んだ。
【*メディカターリ。薬膳料理。胃腸修復効果60。[サティバム2+ロンガ2+キミヌム1*ノビリス2*ジンセン6] → 胃腸修復効果60・消化器系に限り修復・正常化】
胃腸限定とはいえ、修復効果60。ハイポーション並みだ。サティバム、ロンガ、キミヌムはいずれも整腸作用を持つ。ノビリスは血行促進、ジンセンは補剤として作用を増強する。魔素の相乗効果によって、想定以上の効力を発揮してしまった。
「……」
「作った工程は見なかったことにするわ。今回だけね。次は考えて作るのよ?」
フォミトリアさんは真剣な顔で言った。魔素を含む食材は寝かせて魔素を拡散させてから使うのが基本だという。複数を同時に使えば有害作用が出ることもあり、過去には命を落とした例もあるらしい。正しい調理法を守らなければ、料理は薬にも毒にもなり得る。
「はい……サティバム、ロンガ、キミヌムだけなら効果は薄かったでしょう。ノビリスとジンセンを加えたのが決定打でした」
胃腸限定とはいえ、ここまでの効果になるとは。恐るべきは魔素の相乗作用だ。
「まあ、逆に悪影響が出ず、胃腸特化になったのは発見かもしれないわね」
「……むこうの再現をしただけなんですが、まさかこんな結果になるとは」
ターリではなく、メディカターリと名付けたことが、結果的に薬効を引き出したのかもしれない。
「はいはい、では食べましょう。エルフにとっては特効薬になるこの料理を」
フォミトリアさんは手をパンと叩き、気分を切り替えるよう促した。思った以上に切り替えが早い。自分も深呼吸して、匙を手に取った。
「フォミトリアさん。自分に一品作らせてください。昨日までに採取した材料で作りたいものがあります。皆さん、きっとお酒で胃腸がやられていると思うので」
「あら、助かるわ。何を作るのかしら?」
「こちらでは馴染みがないと思いますが、ターリという料理です」
「ターリ?聞いたことないわね。見せてもらってもいい?」
「胃に染み込むスープのようなものです。試作から始めますので、味見をお願いします。キミヌムはありますか?」
「お肉やサラダに使う種よね?あそこの陶器の容器に入っているわ」
「ありがとうございます。昨日の宴で使っていたリコペルとメロンゲナも欲しいです」
リコペルはトマト、メロンゲナは茄子。昨日の料理で使われていたことを確認済みだ。
「リコペルは乾燥したものならあるわ。メロンゲナは収穫の最後でたくさんある」
「それと、昨日の魔鴨の釜焼きに使っていた発酵乳もお願いします」
「羊乳をもらったから、昨日仕込んだものができているはずよ」
予定通りに進められそうで安心した。
「フォミトリアさんはナーネの仕込みをお願いします」
「昨日あれだけ飲んでいたから、今日はあまり食べないと思うけど?」
「むしろ欲しがると思います。余れば帰りに食べればいいですから」
「なるほどね。じゃあ準備してくるわ」
フォミトリアがサゴ粉を取りに行く間に、自分はアイテムボックスからスパイスを取り出した。
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――使用するスパイスと材料――
・ アリウム
・ ギンゲベリス
・ サティバムシード
・ ロンガリゾーマ
・ キミヌムシード(魔素無し)
・ ノビリス
・ ジンセン
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加えて、 カロタ、 ケーパ、 ソラーニ、そして脂の少ないボア肉を用意する。
カロタ、ケーパ、ソラーニの皮を剥く作業は地道だ。途中で戻ってきたフォミトリアさんも手伝ってくれた。ボア肉は一口大に切り、フライパンで軽く炒める。
別の鍋にギー油を熱し、サティバムとキミヌムの種を弱火で炒める。焦がさないように注意しながら、ロンガリゾーマの粉を加えると、台所中に香りが広がった。
「すごい匂いね……三種類も入れるの?でも食欲をそそるわ」
「これがターリです。今回は胃腸が弱った皆さんのための特別版、[メディカターリ]です」
ケーパのみじん切りを加え、さらにギンゲベリスとアリウムを少量。戻したリコペルを入れ、水分を飛ばしてペースト状にする。刺激を避けるため、香味は控えめにした。
水を加えてペーストを伸ばし、カロタ、ソラーニ、ボア肉、ノビリス、ジンセンを投入。あとは煮込むだけだ。
「最初の工程さえ注意すれば大丈夫そうね」
「はい。油で香りを引き出すのが肝心です」
「……注意点はそこじゃないのだけど。まあ、出来上がってから話しましょう」
鍋の中で具材がぐつぐつと煮え立ち始めた。白い靄のような蒸気が、ゆらゆらと揺れ、台所の天井に広がっていく。その香りは、胃の奥を優しく刺激するかのようだ。
30分ほど煮込み、最後に発酵乳を加えて仕上げる。
二人分を用意し、試食に移る。
「これがターリの完成形ね。……ところで、鑑定してみた?」
「えっ?」
慌てて鑑定すると、結果に息を呑んだ。
【*メディカターリ。薬膳料理。胃腸修復効果60。[サティバム2+ロンガ2+キミヌム1*ノビリス2*ジンセン6] → 胃腸修復効果60・消化器系に限り修復・正常化】
胃腸限定とはいえ、修復効果60。ハイポーション並みだ。サティバム、ロンガ、キミヌムはいずれも整腸作用を持つ。ノビリスは血行促進、ジンセンは補剤として作用を増強する。魔素の相乗効果によって、想定以上の効力を発揮してしまった。
「……」
「作った工程は見なかったことにするわ。今回だけね。次は考えて作るのよ?」
フォミトリアさんは真剣な顔で言った。魔素を含む食材は寝かせて魔素を拡散させてから使うのが基本だという。複数を同時に使えば有害作用が出ることもあり、過去には命を落とした例もあるらしい。正しい調理法を守らなければ、料理は薬にも毒にもなり得る。
「はい……サティバム、ロンガ、キミヌムだけなら効果は薄かったでしょう。ノビリスとジンセンを加えたのが決定打でした」
胃腸限定とはいえ、ここまでの効果になるとは。恐るべきは魔素の相乗作用だ。
「まあ、逆に悪影響が出ず、胃腸特化になったのは発見かもしれないわね」
「……むこうの再現をしただけなんですが、まさかこんな結果になるとは」
ターリではなく、メディカターリと名付けたことが、結果的に薬効を引き出したのかもしれない。
「はいはい、では食べましょう。エルフにとっては特効薬になるこの料理を」
フォミトリアさんは手をパンと叩き、気分を切り替えるよう促した。思った以上に切り替えが早い。自分も深呼吸して、匙を手に取った。
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