巻き込まれた薬師の日常

白髭

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2A-調整と報酬

2A-06 商人の子、冒険者となる

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「ギルドとギルド証、冒険者の活動の話はここまで。次は登録ね」
ロザリルは説明を終えると、帳簿をめくりながらこちらを見た。

「さて、レッド少年。あなたの名前はすでに記録に載っているわ。討伐支援と薬品提供の件で、ギルドから“特別評価”が付与されています」

 ロザリルから渡された登録用紙には、すでにいくつかの項目が記入されていた。空欄はわずか一つ。

 ######
[名前] レッド=ベルナル
[職業] 魔術師
[ランク] C(暫定)
[申事]
[成果] 氾濫時ポーション供給2000本(E)。氾濫時討伐・討伐支援多数(D)。後方支援(F)
[ギルド評価] 素行良。魔力量・魔力操作秀逸(A相当)。パール辺境伯当主伝手有。
      対人討伐と警護業務未経験のため暫定C。
[預かり金]
 ######

「……特別評価……?」
「ギルド長権限よ。通常は依頼をこなして初めて評価が積み上がるの。でもあなたの場合は、村の防衛と薬の提供が大きな功績と認められた。Fランク登録のまま、Cランク相当の評価点が加算されているのよ」

「ランクCなのは、どういう判定だったのでしょう?」
「本来ならFから始まるわ。Fは都市内の雑事、Eは周辺採取。あなたは氾濫時の設営所での手伝い、ポーション生産でFとEを満たしたと判断された。さらに討伐支援でD相当。通常なら試験を経て昇格するけれど、焼却設備の作成や鎮守の森への帯同を加味して、C暫定としたの。魔力量と操作はA級評価。ただし対人と警護は未経験だから“暫定”扱いね」

 ――つまり、商人ギルドや魔術師ギルドでの活動が冒険者としても評価されたということだ。Cランクなら魔石入りのギルド証となり、王都でも通用する。

「なるほど。ありがとうございます。この“申事”という項目は?」
「伝言や売込みね。パーティー紹介を受けたいとか、自分のスキルを記載してアピールする欄よ。職員が斡旋しやすくなるわ」

「では“王都学院に入学予定・商人ギルド員”と記載しておきます」
 その時、背後から声がした。

「あら、こちらに来ていたのね。贈り物は受け取ったかしら?」
「エリスさん。ランクCの証、ありがとうございます」

「少し休憩に来ただけ。あなたの活動を見て昇格としたの。飛び級だけど、細々と草摘みから始めても意味はないでしょう? 素行も実力も十分。Cにしておいた方が動きやすいわ」

 冒険者ギルドに籍を置くことで、流民として貴族の干渉を受けない立場を示せる。正式な評価として刻まれたのだ。



「ありがとうございます。これからも恥じないように努めます」
「また明日会いましょう。学院に行っても、ギルドを経由して、あなたを見守っているから安心して」

 そう言い残し、エリスは再び仕事へ戻っていった。その様子を見て、ロザリルさんは微笑み、帳簿を閉じた。


 ――背後で冒険者たちがざわめく。
「あいつ、ギルド長から挨拶されてたぞ。何者だ?」
「視力強化で見た。ランクはC、魔石入りだ」
「エリス様じゃなく“エリスさん”呼びだぞ。親しい関係なのか?」
「近くにいる、あの子もエルフ族のようだが?」
「ベルナル……商会の一族か!」

 ……聴力強化しているので丸聞こえですよ。盗み聞きはやめてほしい。だが、冒険者の肉体強化は侮れない。身なりとギルド証で身分は割れてしまった。空気を操作して音を乱し、これ以上の漏洩を防ぐ、ロザリルさんに目で合図を送った。

「預かり金はギルド内だけですよね。商人ギルドにも口座がありますが」
「資金移動は可能です。ただし手数料がかかります」
「了解しました。金貨11枚を預けます。1枚は発行料として。リンネの登録もお願いします」

「エルフ族ね。百歳を超えている? ならDランクスタートよ」
 ――エルフは年齢でスタートランクが変わるらしい。上限はD。C以上はギルド長判断とのこと。

「依頼は常設と随時依頼に分かれます。新規は朝に掲示。混雑するので注意して。あなたは依頼を出す側にもなりそうね。はい、これがリンネちゃんのギルド証」

「ありがとうございます。そうそう、この間のお礼に――」
 差し出したのは、魔力操作で作った皿とマグカップ、そして一口サイズに切り分けたクリスプスストラタム。

「まあ……ありがとう。これは古代文字? あなたなら造作もないのね」
「エリスさんと森に同行した時の土産です。お裾分けということで」
「菓子!? ……付与効果があるわね。これは内密にしておくわ」

 ――ギルド長がいる以上、ここは安心だろう。詳しくは彼女に任せることにして、ひとまず話を切り上げた。

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