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2A-調整と報酬
2A-07 ギルドの再生
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冒険者ギルドの受付が終わる頃には、昼下がりの混雑が始まっていた。魔の森帰りの冒険者が増えてきたからだろう。今回は依頼者側と見なされのだろう、コソコソ言われることもなく、穏やかに帰ることができた。ロザリルさんが見送りしてくれたのも大きかったかもしれない。
「今後は気軽に来なさいな。依頼を受けるときは冒険者の恰好で」
「はい。気をつけます。服装は大事ですね」
「ふふ、それなら結構。リンネちゃんも頑張ってね」
挨拶を交わし、次は魔導師ギルドへ向かう。石造りの街並みを眺めながら広場まで歩く。城郭都市は東西南北で管轄が異なり、北門は魔の森に通じるため冒険者ギルドがある。北側は安宿や商店が多く、加工通りと呼ばれるほど魔の森の素材を扱う工房が集まっている。素材はギルドに卸され、工房で加工され、商店で販売される。ベルナル商店本店がここにあるのも、素材の流通が理由だ。
「おや?レッド坊じゃないか、どうした」
母ジーナの兄、エザック伯父さんとばったり会う。魔鉱物を扱うローリー商会の商人で、今日は小奇麗な服装をしており、商店業務に出ているようだ。
「一家でベンベルクに来ています。さっきまで冒険者ギルドにいました。明日、母さんとマリンが店に伺うそうです」
「ほう、ジーナも来てるのか。拉致の影響は?」
「もう大丈夫です。ギルド登録も済ませましたし」
「ギルドも氾濫で大変だったようだな。うちもようやく採掘再開だ。魔銀が買い占められて在庫が尽きた。追加発注まで来て催促されてるよ」
「大変ですね。でも忙しいのは商人の本望ですね」
「それはそうだ。だが魔導師ギルドめ、急に発注量を増やしやがって。パラケル爺の頃は定期発注だったから楽だったのに。ウィザーリングになってから減ったと思ったら、今度は急増だ」
どうやら自分の活動が影響しているらしい。魔銀の供給元がローリー商会とは知らなかった。母に頼んで定期発注にしてもらおう。
魔導師ギルドに到着すると、受付にはピトゥリさんがいた。以前と違い、ロビーは明るくなり、薬品の匂いも消えていた。
「ギルド長とパラケル爺が和解して、雰囲気が変わったの。職員もお客さんも増えてきたわ」
「日差しも入って、いい感じですね」
「ロビーくらいは明るくしたいものね。生産室に行くのよね?皆揃ってるわ」
生産室に入ると、ウィザーリング、パラケル爺さん、副ギルド長ヘラスムス、ヘレナ、ガウス、オルグがいた。
ヘレナたちは水蒸気蒸留でアルテミ草の濃縮ポーションを作成中。10L規模の装置を操り、特級品ができているようだ。
一方、ウィザーリングたちは乾燥魔導具の設計図を前に議論していた。陰干しの時間短縮のため、風・熱・水魔法を組み合わせた魔導具の試作に入る。冒険者ギルドに貸し出している大甕を参考にし、風と熱を与え、水分を排出する構造を試す。
「壺では使い勝手が悪い。保存用に限るか。魔法陣を流用して、箱型。開閉できるようにしよう」
設計図に戻り、形状の議論へ。水蒸気蒸留組も合流し、魔導盤の配置を確認。素材に直接魔法が当たらないよう囲いを作り、風を循環させ、水分を分離して前面タンクへ送る。制御盤は上部に配置することになった。
「ワシは制御盤と内部部品を作る。ウィザーリングとヘラスムスは箱を。ガウスはタンクと配管。ヘレナとオルグは魔導盤と回路を頼む」
「了解しました。久しぶりに全員で作るな」
六人がかりで完成したのは、10束ずつ逆さに吊るし温風をかける乾燥箱。蓋を閉めれば暗くなり、太陽光も遮断される。
「よし、試行してデータを取ろう。で、どうだ?レッドよ」
集中していて気づかなかったらしい。
「ご無沙汰しています。非常によくできていると思います。冒険者でも容易に扱える魔導具だと思います」
「その言い方だと、他の方法もあるようだな?」
「熱をかけられない植物の乾燥方法の時です。魔素が拡散しやすく、効果が絶大な植物の場合はどうするかなぁ、と」
「オフィキナールだな。ネル山脈の高地に自生する4本足の根。霊薬エリクシールの原料だが、効果期間が短く、持ち帰ると魔素が霧散する。氷漬けにしても効果は保てない」
「なるほど。対策を考えておきます」
「効果が消失したオフィキナールがある。近づきの印にこれをあげよう。君なら活用できるだろう。後で鑑定してみなさい」
「ありがとうございます。有効に使わせてもらいます」
「それと、ギルド長室にパラケルと来てくれ。伝えることがある」
「了解しました」
ヘレナが手を叩き、作業再開。ギルド長室へ向かい、リンネ同伴で三者面談が始まる。
「今後は気軽に来なさいな。依頼を受けるときは冒険者の恰好で」
「はい。気をつけます。服装は大事ですね」
「ふふ、それなら結構。リンネちゃんも頑張ってね」
挨拶を交わし、次は魔導師ギルドへ向かう。石造りの街並みを眺めながら広場まで歩く。城郭都市は東西南北で管轄が異なり、北門は魔の森に通じるため冒険者ギルドがある。北側は安宿や商店が多く、加工通りと呼ばれるほど魔の森の素材を扱う工房が集まっている。素材はギルドに卸され、工房で加工され、商店で販売される。ベルナル商店本店がここにあるのも、素材の流通が理由だ。
「おや?レッド坊じゃないか、どうした」
母ジーナの兄、エザック伯父さんとばったり会う。魔鉱物を扱うローリー商会の商人で、今日は小奇麗な服装をしており、商店業務に出ているようだ。
「一家でベンベルクに来ています。さっきまで冒険者ギルドにいました。明日、母さんとマリンが店に伺うそうです」
「ほう、ジーナも来てるのか。拉致の影響は?」
「もう大丈夫です。ギルド登録も済ませましたし」
「ギルドも氾濫で大変だったようだな。うちもようやく採掘再開だ。魔銀が買い占められて在庫が尽きた。追加発注まで来て催促されてるよ」
「大変ですね。でも忙しいのは商人の本望ですね」
「それはそうだ。だが魔導師ギルドめ、急に発注量を増やしやがって。パラケル爺の頃は定期発注だったから楽だったのに。ウィザーリングになってから減ったと思ったら、今度は急増だ」
どうやら自分の活動が影響しているらしい。魔銀の供給元がローリー商会とは知らなかった。母に頼んで定期発注にしてもらおう。
魔導師ギルドに到着すると、受付にはピトゥリさんがいた。以前と違い、ロビーは明るくなり、薬品の匂いも消えていた。
「ギルド長とパラケル爺が和解して、雰囲気が変わったの。職員もお客さんも増えてきたわ」
「日差しも入って、いい感じですね」
「ロビーくらいは明るくしたいものね。生産室に行くのよね?皆揃ってるわ」
生産室に入ると、ウィザーリング、パラケル爺さん、副ギルド長ヘラスムス、ヘレナ、ガウス、オルグがいた。
ヘレナたちは水蒸気蒸留でアルテミ草の濃縮ポーションを作成中。10L規模の装置を操り、特級品ができているようだ。
一方、ウィザーリングたちは乾燥魔導具の設計図を前に議論していた。陰干しの時間短縮のため、風・熱・水魔法を組み合わせた魔導具の試作に入る。冒険者ギルドに貸し出している大甕を参考にし、風と熱を与え、水分を排出する構造を試す。
「壺では使い勝手が悪い。保存用に限るか。魔法陣を流用して、箱型。開閉できるようにしよう」
設計図に戻り、形状の議論へ。水蒸気蒸留組も合流し、魔導盤の配置を確認。素材に直接魔法が当たらないよう囲いを作り、風を循環させ、水分を分離して前面タンクへ送る。制御盤は上部に配置することになった。
「ワシは制御盤と内部部品を作る。ウィザーリングとヘラスムスは箱を。ガウスはタンクと配管。ヘレナとオルグは魔導盤と回路を頼む」
「了解しました。久しぶりに全員で作るな」
六人がかりで完成したのは、10束ずつ逆さに吊るし温風をかける乾燥箱。蓋を閉めれば暗くなり、太陽光も遮断される。
「よし、試行してデータを取ろう。で、どうだ?レッドよ」
集中していて気づかなかったらしい。
「ご無沙汰しています。非常によくできていると思います。冒険者でも容易に扱える魔導具だと思います」
「その言い方だと、他の方法もあるようだな?」
「熱をかけられない植物の乾燥方法の時です。魔素が拡散しやすく、効果が絶大な植物の場合はどうするかなぁ、と」
「オフィキナールだな。ネル山脈の高地に自生する4本足の根。霊薬エリクシールの原料だが、効果期間が短く、持ち帰ると魔素が霧散する。氷漬けにしても効果は保てない」
「なるほど。対策を考えておきます」
「効果が消失したオフィキナールがある。近づきの印にこれをあげよう。君なら活用できるだろう。後で鑑定してみなさい」
「ありがとうございます。有効に使わせてもらいます」
「それと、ギルド長室にパラケルと来てくれ。伝えることがある」
「了解しました」
ヘレナが手を叩き、作業再開。ギルド長室へ向かい、リンネ同伴で三者面談が始まる。
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