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2B-霊薬と立証
2B-01 *魔導具の理
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魔の森。城郭都市から二日ほど奥へ進んだ先に、ひっそりと迷宮が口を開けていた。そこは古代都市が時代の流れに呑み込まれ、森と同化した末路だった。今なお、内部からは有用な魔導具が掘り出される。魔の森の素材と並び、城郭都市ベンベルクの重要な輸出品であり続けていた。依頼主はもちろんパール家。彼らが冒険者ギルドに発注し、受託した冒険者が発掘を行う。森と相対しながらの作業は常に危険を孕み、依頼はランクD以上の三人組パーティーに限定されていた。
近年、城郭都市の魔導具発掘は斜陽を迎えつつある。この領から学院に進んだ魔導師が、魔導具の法則性を解き明かしたからだ。国内での価値は一時的に落ちた。とはいえ、魔導具の機構は決して単純ではなく、すぐに再現できるものではない。機能を再現して生産できるようになったことは各方面に衝撃を与えた。城郭都市も生産に舵を切り、発掘は主産業ではなくなったが、それでも未知の機構を持つ魔導具は高値で取引される。射幸性を求め、迷宮を徘徊する冒険者は後を絶たない。
魔導具の基本法則が明らかにされたのは十年前。パラケル=アウレオール著『魔導文字列解析』『パラケル流魔導具作成法』――二冊の書は今なお学院生にとって難解。出版当初は教師すら理解が追いつかず、授業は上の空だったと伝え聞いた。自分も学生時代は文字を丸暗記し、用語を必死に確認し合いながら読み進めた。実習で初めて風を生み出す魔導具を作ったとき、感動のあまり涙が出たほどだ。以来、魔導具への熱は冷めず、新製品が出れば商店に足を運び、回路を見れば新規か既出か判別できるまでになった。周囲からは魔導具愛好家、あるいはパラケル信者と呼ばれていた。
初めて魔導具を作った衝撃は今も胸に残る。好きが高じ、三年で卒業した後も院に残り、魔導師資格を得て研究を続けた。だが資金源である親から招集がかかる。来年に向け進路を決めねばならぬと。院生の自由度は高い。制度を利用し、仕方なくベンベルクに戻った。親は商家の出で、魔の森の素材を加工・販売する工房兼商会を営んでいる。
久しぶりに幼馴染と再会し、酒場で学院生活や王都の話を語った。剣士ベーガとルンフ。二人はパール家に仕える騎士の息子で、今はギルド所属のランクD冒険者だ。
「すると、コカルス。お前は魔導具の魔法陣が読めるのか?」
「ああ、新規か既出か、その程度なら造作もない」
「すごいな。さすが学院出の魔導師だ!」
二人は迷宮の存在を知っていた。森で素材を取り、魔獣を討伐してきたから当然だ。
「迷宮と森の入場はランクDからだぞ? 無理だろう、コカルスは規定に達していない」
「学院出の魔導師資格は特例で暫定Cスタートだったはずだ。卒業時にそう聞いた覚えがある」
「なら行こうぜ! 迷宮には未知の魔導具が眠っている。コカルスの知識があれば一獲千金も夢じゃない!」
射幸性に群がる冒険者の姿が頭をよぎる。酒の勢いもあり、未知の魔導具を目にできるかもしれないと思えば、選択肢は一つしかなかった。今思えば、現実逃避をしたかったかもしれない。
迷宮探索は順調に進んだ。
「おい、コカルス。これはどうだ」
「駄目だ。単純な回転魔法陣。既に解読済みだ。壊れているし値は付かない」
「こっちは?」
「火の魔導具だな。汎用品だ。大した値は付かないが、魔法陣は生きている。使えるから回収しておこう」
やがて二層目の奥で隠し扉を発見した。魔力を込めるとゴゴゴと音を立てて開き、狭い部屋が現れる。
「すごいな、コカルス!」
「魔法陣が見えたから、もしかしてと思った」
「新しい扉……お宝発見か?」
中には分厚い扉を持つ金属装置が鎮座していた。棚には氷と火の魔法陣、側面には通気口と風の魔法陣。床には制御要素板が散乱している。
「制御盤を見る限り、火と風で乾燥し、その後凍結させる魔導具のようだ」
「見掛け倒しかと思ったが……散らばる制御板は使えるか?」
「読めない文字もある。恐らく高く売れる」
収穫を終え地上に戻ると、森は魔物で溢れ返っていた。
「氾濫だ! 城郭都市側まで溢れている! 帰れないぞ!」
オークを斬り伏せるベーガ。自分も慌てて魔力を練り、応戦する。
「無理だ、遺跡に戻れ!」
戦闘の最中、ルンフが腕を深く切られた。
「すまん……ここに置いていけ」
「そんなことはできない。皆で帰るんだ。氾濫は一週間もすれば沈静化する。それまで粘るしかない」
数日が経ち、ポーションと薬草でルンフの命を繋いだ。
「大丈夫か、飲め」
「ああ……もう眠い……」
さらに数日後、魔物の数は減り始めた。
「……俺はまだ生きているか?」
「傷口は自分のポーションで何とか繋いだ」
「外を見ろ! 青の狼煙だ!」
「助かったのか? ルンフ、しっかりしろ!」
狼煙が上がってさらに数日。領主の偵察隊が迷宮に到着した。自分が迷宮に足を踏み入れてから、すでに二週間が経過していた。
近年、城郭都市の魔導具発掘は斜陽を迎えつつある。この領から学院に進んだ魔導師が、魔導具の法則性を解き明かしたからだ。国内での価値は一時的に落ちた。とはいえ、魔導具の機構は決して単純ではなく、すぐに再現できるものではない。機能を再現して生産できるようになったことは各方面に衝撃を与えた。城郭都市も生産に舵を切り、発掘は主産業ではなくなったが、それでも未知の機構を持つ魔導具は高値で取引される。射幸性を求め、迷宮を徘徊する冒険者は後を絶たない。
魔導具の基本法則が明らかにされたのは十年前。パラケル=アウレオール著『魔導文字列解析』『パラケル流魔導具作成法』――二冊の書は今なお学院生にとって難解。出版当初は教師すら理解が追いつかず、授業は上の空だったと伝え聞いた。自分も学生時代は文字を丸暗記し、用語を必死に確認し合いながら読み進めた。実習で初めて風を生み出す魔導具を作ったとき、感動のあまり涙が出たほどだ。以来、魔導具への熱は冷めず、新製品が出れば商店に足を運び、回路を見れば新規か既出か判別できるまでになった。周囲からは魔導具愛好家、あるいはパラケル信者と呼ばれていた。
初めて魔導具を作った衝撃は今も胸に残る。好きが高じ、三年で卒業した後も院に残り、魔導師資格を得て研究を続けた。だが資金源である親から招集がかかる。来年に向け進路を決めねばならぬと。院生の自由度は高い。制度を利用し、仕方なくベンベルクに戻った。親は商家の出で、魔の森の素材を加工・販売する工房兼商会を営んでいる。
久しぶりに幼馴染と再会し、酒場で学院生活や王都の話を語った。剣士ベーガとルンフ。二人はパール家に仕える騎士の息子で、今はギルド所属のランクD冒険者だ。
「すると、コカルス。お前は魔導具の魔法陣が読めるのか?」
「ああ、新規か既出か、その程度なら造作もない」
「すごいな。さすが学院出の魔導師だ!」
二人は迷宮の存在を知っていた。森で素材を取り、魔獣を討伐してきたから当然だ。
「迷宮と森の入場はランクDからだぞ? 無理だろう、コカルスは規定に達していない」
「学院出の魔導師資格は特例で暫定Cスタートだったはずだ。卒業時にそう聞いた覚えがある」
「なら行こうぜ! 迷宮には未知の魔導具が眠っている。コカルスの知識があれば一獲千金も夢じゃない!」
射幸性に群がる冒険者の姿が頭をよぎる。酒の勢いもあり、未知の魔導具を目にできるかもしれないと思えば、選択肢は一つしかなかった。今思えば、現実逃避をしたかったかもしれない。
迷宮探索は順調に進んだ。
「おい、コカルス。これはどうだ」
「駄目だ。単純な回転魔法陣。既に解読済みだ。壊れているし値は付かない」
「こっちは?」
「火の魔導具だな。汎用品だ。大した値は付かないが、魔法陣は生きている。使えるから回収しておこう」
やがて二層目の奥で隠し扉を発見した。魔力を込めるとゴゴゴと音を立てて開き、狭い部屋が現れる。
「すごいな、コカルス!」
「魔法陣が見えたから、もしかしてと思った」
「新しい扉……お宝発見か?」
中には分厚い扉を持つ金属装置が鎮座していた。棚には氷と火の魔法陣、側面には通気口と風の魔法陣。床には制御要素板が散乱している。
「制御盤を見る限り、火と風で乾燥し、その後凍結させる魔導具のようだ」
「見掛け倒しかと思ったが……散らばる制御板は使えるか?」
「読めない文字もある。恐らく高く売れる」
収穫を終え地上に戻ると、森は魔物で溢れ返っていた。
「氾濫だ! 城郭都市側まで溢れている! 帰れないぞ!」
オークを斬り伏せるベーガ。自分も慌てて魔力を練り、応戦する。
「無理だ、遺跡に戻れ!」
戦闘の最中、ルンフが腕を深く切られた。
「すまん……ここに置いていけ」
「そんなことはできない。皆で帰るんだ。氾濫は一週間もすれば沈静化する。それまで粘るしかない」
数日が経ち、ポーションと薬草でルンフの命を繋いだ。
「大丈夫か、飲め」
「ああ……もう眠い……」
さらに数日後、魔物の数は減り始めた。
「……俺はまだ生きているか?」
「傷口は自分のポーションで何とか繋いだ」
「外を見ろ! 青の狼煙だ!」
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