俺のせいでえっちな呪いにかけられた同僚騎士に責任を取りに行ったら、与えられたは夜通しの⋯説教!?泣いた

春瀬湖子

文字の大きさ
18 / 27
追いかけるのはどちらの役目

17.応援なんて欲しくない

しおりを挟む
“キャロンに言わなきゃ⋯”


当たり前のようにこれからも側にいれると思っていた。
もしこれが断れるなら、それがどれだけ俺にとってプラスになる事だったとしても断っていたとすら思う。

「魔法師として失格だな⋯」


そもそも子供の頃から何をやってもダメだった俺が魔法師として騎士団に所属する事になったのはただの成り行きで。

“魔力があるからそれを活かす仕事に就きたかった、とかじゃないもんなぁ⋯”


魔力があるから魔法師になったのではなく、魔力があったお陰で唯一なれたのが魔法師だったのだ。
試験ももちろんダメダメだったが、魔力量は生まれもってのもの。

人より多い魔力量を“伸び代”と判断して貰った俺が奇跡的に就職できた先、それが騎士団だった。


入団し、その魔力量から期待されまず先輩騎士と組むことになり――

「火力操作をミスして何故か先輩の髪の毛だけ全部燃えたんだよな⋯」


次に組んだのも先輩だったが、強化魔法をかけようと先輩に杖を向けた時に丁度躓き先輩のお尻に杖が深く刺さって。

「俺が目覚めたらどうするんだと怒鳴られたっけ⋯」


その次の相方は同期の奴だったが、俺の夕飯を頭から被って気付けば退団していた。

「5日連続で被っただけで、そんなに被害は大きくなかったんだけどなぁ」


更にその次ははじめての後輩だったが、組んで10分でその後輩が団長に泣きつき相方を解消することになった。

「噂を聞いたってだけでまだ何もやらかしてなかったんだけどな。ただ全ての噂が事実だと伝えただけで⋯」


先輩も、同期も、後輩もダメ。
本格的に相方になってくれる相手がおらず、腫れ物というか完全に貧乏神のように扱われはじめた俺の相方に名乗り出てくれたのが他でもないキャロンだった。

そして俺の起こすトラブルにどれだけ巻き込まれても相方を解消せず、するのは皆の前でのお説教。
いつしかその光景が皆の『当たり前』になったお陰で、嫌われものだった俺も気付けばこの騎士団に馴染んでいて――


“崇高な気持ちで魔法師になった訳じゃないからこそ、キャロンに迷惑をかけないように、キャロンと一緒にこれからも戦えるようにって目標でやってきたのに⋯”

気付けば目標がキャロンの役に立つことだったからこそ、キャロンの側にいられない栄転なんて望んでなくて。


「⋯でも、国に所属している以上当然拒否権なんてないんだよな⋯」

この辞令に拒否は出来ない。

栄転を受けてキャロンの側を離れるか、栄転を拒み騎士団を退団しキャロンの側を離れるか。


「どっちにしろ、もう側にいれないじゃんか⋯」


ライアテヌス帝国の最北端にあるこのラースと、魔法塔のある帝都は馬車で1ヶ月以上は掛かる距離にあって。

休みだからと会える距離どころか、往復2ヶ月と考えれば騎士団員である俺達に取れる休みを越えている。
それはつまり、年に一度も会えないどころか騎士団で働き続ける以上もう一生会えないと言っても過言ではなくてー⋯



魔法師ならば泣いて喜んでもおかしくないこの栄転を、俺は違う意味で泣きそうになりながら自室に戻ったのだった。


――だからといって、いつまでも隠せるハズもなく。


「エイベル、俺に何か言うことはないか」

ふと任務の後にそう告げられドキッとする。
まだ俺の辞令が正式に出る前だったので知っている人はほぼいないが、相方であるキャロンは当事者の1人として聞かされていても不思議ではなくて⋯


――俺はお説教を覚悟しその晩キャロンの部屋に向かった。



暗い気持ちになりながら少し焦げたキャロンの部屋の扉をノックする。

“この扉焦がしたのも、今となったらいい思い出だよな⋯”

扉が開くまでの数秒間だけでも感傷に浸れるのは、それだけキャロンと過ごした時間が長かったからだろう。

“相方としてずっと側にいて、これからは恋人として側にいれると思っていたのに⋯”

じわりと目頭が熱くなった時、ガチャリと扉が開かれる。
なんだかキャロンの顔が真っ直ぐ見れなくて、扉を開けてくれたキャロンの足元をじっと見ながら口を開いた。

「キャロン、あのさ⋯俺⋯」
「待てエイベル、まずは俺から言わせろ」

言葉を遮ったキャロンは、扉の前で立ち止まっていた俺の腰に腕を回し部屋の中へ促してくれて。


足元から視線を上げた俺は、そこでやっと気付く。


「⋯え?これ⋯」
「おめでとう、俺はお前が誇らしいよ」

慌ててキャロンを見上げると、見たことないほど穏やかに微笑むキャロンがそこにいた。

“お、めで⋯とう⋯?”

言われた言葉が俺の中をするりと通り抜け、ちゃんと聞こえていたはずなのに上手く聞き取れない。


――だって俺の栄転は、キャロンとのサヨナラを意味しているのだ。

“全然、全然⋯おめでとうなんかじゃ、ないだろ⋯?”


ポロリと俺の瞳から涙が溢れ、床にパタパタと落ちる。
そんな俺の様子をどう勘違いしたのか、本当に嬉しそうに笑ったキャロンは、俺の手を引いて椅子に座らせて。


「特別に頼んでケーキを用意して貰ったんだ。エイベルは甘いもの好きだっただろ?」

“キャロンは本当に喜んでくれてるんだ⋯”
きっと他意なんかなく、純粋に。

わかってる。
わかってるのにー⋯


「⋯好きだよ、甘いものも、キャロンも⋯」
「エイベル⋯?」
「だから、何も“おめでとう”じゃないって⋯悲しいって、寂しいって思うのは俺だけなの⋯?」


どうしてもそのキャロンの気持ちを受け入れられなくて。


「祝ってなんか、欲しくない⋯っ、キャロンにだけは祝われたくなんかなかった⋯っ!!」


ドンッとキャロンを押し退けた俺は、そのまま自室に駆け戻る。
部屋に入り扉を閉めて。

「鍵⋯」


鍵を締めるつまみを掴んだものの、回さず手を離す。

“もし、もしキャロンが来てくれたなら⋯”


ー⋯キャロンが自分で入ってこれるように。


「飛び出したのは俺のくせに」

追いかけて欲しいと思う自分の女々しさに涙だけでなく苦笑も漏れる。


“それでも、もしキャロンが来てくれたならー⋯”



「その時はちゃんと謝るから⋯」


謝って、仲直りして。
そしてこれからの事を話したい。

せっかくキャロンと恋人になれたのに、このまま終わらせたくなんてないから。

「キャロンも一緒に方法、考えてくれるよなー⋯?」


ぽつりと溢した本音は、1人の部屋に儚く消えた。



――キャロンが来たら、なんて謝ろう。
なんて考えながら、ベッドにもたれて目を瞑る。

耳だけは扉の方に意識を向けて、カチャリとドアノブが回る事を想像した俺は、“⋯あ、でもキャロンなら絶対ノックするよな、ドアノブなんて回さないかも”なんて想像してー⋯




――けれどその日、ドアノブが回ることも、扉がノックされる事も⋯
もちろんキャロンが俺のところに来てくれる事もないまま、1人の夜が明けるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

異世界に転生したら竜騎士たちに愛されました

あいえだ
BL
俺は病気で逝ってから生まれ変わったらしい。ど田舎に生まれ、みんな俺のことを伝説の竜騎士って呼ぶんだけど…なんだそれ?俺は生まれたときから何故か一緒にいるドラゴンと、この大自然でゆるゆる暮らしたいのにみんな王宮に行けって言う…。王宮では竜騎士イケメン二人に愛されて…。 完結済みです。 7回BL大賞エントリーします。 表紙、本文中のイラストは自作。キャライラストなどはTwitterに順次上げてます(@aieda_kei)

転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる

塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった! 特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

処理中です...