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第一章:選び、選ばれるように
6.お忘れ物(私)が勝手について行きますね
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「なるべく目立たない服をお願いできる?」
「目立たない服、ですか?」
少し不思議そうな表情のミィナに昨晩のことを思い出しながら大きく頷く。
ちなみにだが、当然昨晩もアルド殿下からの訪問はなかった。
“まぁ、それは予想通りよね”
昨日の今日で突然来るはずがない、何かキッカケがなければ。
そんな私の今日の目的はアルド殿下の視察についていくことである。
視察を通し民からの支持を得ることでいつかキッカケのひとつになれば、という下心。
――もちろん、アルド殿下には気付かれずに、だが。
「なるべく目立たない……むしろ街に溶け込める服がいいわね」
「もう嫌な予感しかしないのですが」
「もちろんミィナにも着替えて貰うからね!」
「嫌な予感が確定になった気がしますが!?」
私の発言に愕然としたミィナが顔を青くするが、私としても彼女しか知り合いがいないのだからここで引く訳にはいかない。
“もう少し騎士たちと仲良くなれればまた話は変わってくるとは思うのだけれど”
流石に一日訓練を共にした程度では信頼関係は築けないだろう。
「大丈夫よ、貴女は私が守るから」
「何ひとつ大丈夫じゃない発言なのですが」
「ミィナには私を見張っていて欲しいの、逃げ出したなんて思われたら困るから万が一の時は私に逃亡の意思はなかったとちゃんと証言してね」
「やっぱり面倒事じゃないですか!」
満面の笑みを向けた私とは対照に頭を抱えて嘆くミィナ。
彼女には申し訳ないがそこは運が悪かったと思って諦めて貰うことにした。
どんどん青い顔になるミィナだったが、それでも一応は私の希望を聞いてくれるらしく、かなり渋々出してくれたシンプルなワンピースに袖を通す。
彼女は最後までこのままでいいです、と言い張っていたが、「この場で無理やり私に着替えさせられるのと、自発的に着替えてくるのはどちらがいい?」と笑って聞くと半泣きになりながら着替えに自室へ戻っていった。
「ついて行きません、って選択肢はないのね」
一人になった部屋で思わずぽつりと本音を呟く。
二択で回答を求めたのは私だが、実質ただの人質である私の言葉なんて無視してしまえばいい。
それなのに私が頼んだ「見張って」という言葉を律儀に守ろうとしているのか、彼女は王城のメイド服ではなく私に出してくれたような服装に着替えて戻って来てくれた。
“こんなにしてくれるようなことをしたかしら”
私がしたのは手荒れが治るようにと保湿液を渡しただけ。
王太子妃という立場の私とメイドの彼女だと当然王太子妃の方が権力を持っているように思えるが実際は反対で、ただの人質として来た寵愛もない私の力なんてほぼないに等しかった。
王族なんて、支持を得られなければただの木偶の坊。
使用人からそっぽを向かれればたちまち何も出来ず、籠の中で緩やかに死ぬ。
現にミィナ以外の侍女が私の部屋に訪ねてきたことなど一度もない。
確かに彼女の話し方や態度などは主君に向けるようなものではないのかもしれないが、そもそも私は彼女の主君ではないし、気安く接してくれるのは正直嬉しい。
それに彼女はたった一人、ただ一度私物をプレゼントしただけでこんなに私の為に動いてくれているのだ。
感謝してもし足りないだろう。
“せめてミィナに尊敬して貰えるような妃になりたいわ”
現状尊敬より呆ればかりが確実に勝っているのだが、だからこそ私にも何かが出来るのだとまずは彼女に見せたいと思った。
そう、その為に。
「じゃあ早速行くわよ、視察に!」
「し、視察ですか!?」
「えぇ、目的地はイース! アルド殿下にバレないよう注意しながら一緒に視察を行うわ!」
ふふん、と得意げにそう宣言すると、もう血色はどこにいったのかと疑問に思うくらい青ざめたミィナが、思い切りガクリと項垂れつつも小さく「理解は出来ませんがわかりました」と返事をしてくれたのだった。
◇◇◇
見つからないようこっそりと王子妃宮を出た私たち。
ぶっちゃけ部屋を出るところが一番の難関かと思っていたが、そもそもミィナ以外が足を運ばない宮だ。
埃などはないので誰かが掃除をしてくれているのだろうが、掃除中の場面に遭遇することもなくあっさりと宮殿の外に出られた。
「厩舎はどこにある?」
「ここから真っ直ぐ突き当たりです」
「わかったわ、じゃあまずはそこに行きましょう」
“王都から近いとは言っていたけど、当然足はいるものね”
ミィナに案内して貰いつつ向かった厩舎で、掃除中の少年に声をかけた。
「急ぎでイースまで届け物があるのだけど、馬力のある馬を一頭貸して貰える?」
「イース?」
「知らない? 今日王太子殿下が視察に向かわれたんだけど、大事なものをお忘れになったのよ」
“さすがに人質が馬を貸せって言って貸す人なんていないもの”
しれっとそう言った私に、唖然としたミィナが慌てて私の服の袖を引き耳打ちする。
「な、何平然と嘘をついてるんですか!」
「あら。何も嘘なんてついてないわよ」
「だって忘れ物なんて」
「してるじゃない、私という『妻』を忘れているわ」
ふふん、と鼻を鳴らすとぽかんとミィナが口を開ける。
「ね? 嘘は言ってないでしょ」
パクパクと口を動かすミィナを無視し、再び少年へと向き直った私は再びにこりと笑みを作り口を開いた。
「という訳で、馬、いいかしら?」
女二人、しかもお仕着せじゃないことに多少の不信感を持っていそうではあったが、私があまりにも堂々としていたのと視察の目的地を知っていたことで納得してくれたのか、厩舎の中を指差した。
「好きなの連れてってくれていいよ」
「ありがとう」
「あぁ、でも黒毛のは――」
にこりと微笑み厩舎へと入る。
“やっぱり王城の馬となると違うわね”
中を見回すと毛並みを整えられた馬たちが何頭もおり、どの子も健康そうだった。
その中でも一番筋肉が整っている黒馬を選ぶ。
「この子の名前は?」
「ラオだけど……まぁ、触れてるならいいか」
「了解、ラオ。私たちを乗せてくれる?」
そっとラオの首筋を撫でると、瞳を細めて顔に鼻を擦り寄せてくる。
くすぐったいその仕草に思わず笑みを溢した。
「もう一頭はどうします?」
「?」
その黒馬に挨拶をしつつ撫でていると、ミィナにそんなことを聞かれ私は思わず首を傾げた。
「ですのでもう一頭です。馬車は最低でも二頭いないと引けませんが」
「馬車でなんか行かないわよ?」
「え、じゃあ」
「この子に直接乗っていくわ。だって馬車だと小回り利かないし」
平然とそう伝えると、想定外だったのかミィナがぽかんと口を開いて固まった。
「忘れ物を届けに行くなら確かにそれが最善だな」
「ですよね!」
「あぁ。殿下は馬車で向かわれたから、同じ馬車だと速度の関係で追い付くのは難しいだろう」
「えぇ、それに殿下の乗られた馬車を見つけたらすぐに対応しなくてはなりませんし」
“見つからないように、って意味だけど”
目的地が同じなのだ。
万が一途中で追い付きでもすれば、中を改められるかもしれない。
そうなるとマズイ、中にいるのは目立たない服に着替えたここにいるはずのない人質。
“それってどう考えても脱走なのよね!”
あんな啖呵を切っておいて逃げ出す女みたいな評価をされたらそれこそもう挽回のしようがないだろう。
理想はこっそり視察についていき、こっそり国民の役に立ちつつ私の評判を上げて味方を増やして支持を集め存在感を示すこと。
そしてゆくゆくはこの国に私の居場所を作ることなのだから。
“その為にはやっぱり小回りのきく馬で追いかけて見つからないようにしつつアルド殿下と一緒に来て別行動をしている体にしなくっちゃ!”
馬番をしていた少年の後押しもあり、選んだ黒馬と唖然としているミィナも一緒に外に出る。
少年が渡してくれた鞍を着けて跨ると、見た目からもわかっていたがはっしりとしていて二人乗りも問題なく出来そうだ。
「さ、ミィナも」
「わ、私馬になんて乗ったことありません!」
「大丈夫、私が支えてるから」
嫌だと首を振る彼女に手を差し出す。青い顔をして拒否を続ける彼女だったが、私が笑顔のままずっと手を差し出し続けていると、このまま引かないことに気付いたのだろう。
オリーブ色のツリ目に涙を溜めながら渋々私の手に自身の手を重ねてくれたので、私はその勢いに任せ一気に彼女を引き上げる。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「た、高い……っ、こんな、こんなに高いなんて」
「高さだけじゃなく今から風も感じるわよ。じゃあこの馬は少し借りるわね!」
「あいよ、気を付けてな」
「両手で! 手綱は両手で持ってくださいぃ!!」
「手を振っただけじゃない」
まだ馬を歩かせてすらいないのに、私が手綱から片手を離しただけで大騒ぎするミィナ。
そんな彼女に苦笑しつつ、彼女を後ろから支えながら私は馬を走らせたのだった。
「目立たない服、ですか?」
少し不思議そうな表情のミィナに昨晩のことを思い出しながら大きく頷く。
ちなみにだが、当然昨晩もアルド殿下からの訪問はなかった。
“まぁ、それは予想通りよね”
昨日の今日で突然来るはずがない、何かキッカケがなければ。
そんな私の今日の目的はアルド殿下の視察についていくことである。
視察を通し民からの支持を得ることでいつかキッカケのひとつになれば、という下心。
――もちろん、アルド殿下には気付かれずに、だが。
「なるべく目立たない……むしろ街に溶け込める服がいいわね」
「もう嫌な予感しかしないのですが」
「もちろんミィナにも着替えて貰うからね!」
「嫌な予感が確定になった気がしますが!?」
私の発言に愕然としたミィナが顔を青くするが、私としても彼女しか知り合いがいないのだからここで引く訳にはいかない。
“もう少し騎士たちと仲良くなれればまた話は変わってくるとは思うのだけれど”
流石に一日訓練を共にした程度では信頼関係は築けないだろう。
「大丈夫よ、貴女は私が守るから」
「何ひとつ大丈夫じゃない発言なのですが」
「ミィナには私を見張っていて欲しいの、逃げ出したなんて思われたら困るから万が一の時は私に逃亡の意思はなかったとちゃんと証言してね」
「やっぱり面倒事じゃないですか!」
満面の笑みを向けた私とは対照に頭を抱えて嘆くミィナ。
彼女には申し訳ないがそこは運が悪かったと思って諦めて貰うことにした。
どんどん青い顔になるミィナだったが、それでも一応は私の希望を聞いてくれるらしく、かなり渋々出してくれたシンプルなワンピースに袖を通す。
彼女は最後までこのままでいいです、と言い張っていたが、「この場で無理やり私に着替えさせられるのと、自発的に着替えてくるのはどちらがいい?」と笑って聞くと半泣きになりながら着替えに自室へ戻っていった。
「ついて行きません、って選択肢はないのね」
一人になった部屋で思わずぽつりと本音を呟く。
二択で回答を求めたのは私だが、実質ただの人質である私の言葉なんて無視してしまえばいい。
それなのに私が頼んだ「見張って」という言葉を律儀に守ろうとしているのか、彼女は王城のメイド服ではなく私に出してくれたような服装に着替えて戻って来てくれた。
“こんなにしてくれるようなことをしたかしら”
私がしたのは手荒れが治るようにと保湿液を渡しただけ。
王太子妃という立場の私とメイドの彼女だと当然王太子妃の方が権力を持っているように思えるが実際は反対で、ただの人質として来た寵愛もない私の力なんてほぼないに等しかった。
王族なんて、支持を得られなければただの木偶の坊。
使用人からそっぽを向かれればたちまち何も出来ず、籠の中で緩やかに死ぬ。
現にミィナ以外の侍女が私の部屋に訪ねてきたことなど一度もない。
確かに彼女の話し方や態度などは主君に向けるようなものではないのかもしれないが、そもそも私は彼女の主君ではないし、気安く接してくれるのは正直嬉しい。
それに彼女はたった一人、ただ一度私物をプレゼントしただけでこんなに私の為に動いてくれているのだ。
感謝してもし足りないだろう。
“せめてミィナに尊敬して貰えるような妃になりたいわ”
現状尊敬より呆ればかりが確実に勝っているのだが、だからこそ私にも何かが出来るのだとまずは彼女に見せたいと思った。
そう、その為に。
「じゃあ早速行くわよ、視察に!」
「し、視察ですか!?」
「えぇ、目的地はイース! アルド殿下にバレないよう注意しながら一緒に視察を行うわ!」
ふふん、と得意げにそう宣言すると、もう血色はどこにいったのかと疑問に思うくらい青ざめたミィナが、思い切りガクリと項垂れつつも小さく「理解は出来ませんがわかりました」と返事をしてくれたのだった。
◇◇◇
見つからないようこっそりと王子妃宮を出た私たち。
ぶっちゃけ部屋を出るところが一番の難関かと思っていたが、そもそもミィナ以外が足を運ばない宮だ。
埃などはないので誰かが掃除をしてくれているのだろうが、掃除中の場面に遭遇することもなくあっさりと宮殿の外に出られた。
「厩舎はどこにある?」
「ここから真っ直ぐ突き当たりです」
「わかったわ、じゃあまずはそこに行きましょう」
“王都から近いとは言っていたけど、当然足はいるものね”
ミィナに案内して貰いつつ向かった厩舎で、掃除中の少年に声をかけた。
「急ぎでイースまで届け物があるのだけど、馬力のある馬を一頭貸して貰える?」
「イース?」
「知らない? 今日王太子殿下が視察に向かわれたんだけど、大事なものをお忘れになったのよ」
“さすがに人質が馬を貸せって言って貸す人なんていないもの”
しれっとそう言った私に、唖然としたミィナが慌てて私の服の袖を引き耳打ちする。
「な、何平然と嘘をついてるんですか!」
「あら。何も嘘なんてついてないわよ」
「だって忘れ物なんて」
「してるじゃない、私という『妻』を忘れているわ」
ふふん、と鼻を鳴らすとぽかんとミィナが口を開ける。
「ね? 嘘は言ってないでしょ」
パクパクと口を動かすミィナを無視し、再び少年へと向き直った私は再びにこりと笑みを作り口を開いた。
「という訳で、馬、いいかしら?」
女二人、しかもお仕着せじゃないことに多少の不信感を持っていそうではあったが、私があまりにも堂々としていたのと視察の目的地を知っていたことで納得してくれたのか、厩舎の中を指差した。
「好きなの連れてってくれていいよ」
「ありがとう」
「あぁ、でも黒毛のは――」
にこりと微笑み厩舎へと入る。
“やっぱり王城の馬となると違うわね”
中を見回すと毛並みを整えられた馬たちが何頭もおり、どの子も健康そうだった。
その中でも一番筋肉が整っている黒馬を選ぶ。
「この子の名前は?」
「ラオだけど……まぁ、触れてるならいいか」
「了解、ラオ。私たちを乗せてくれる?」
そっとラオの首筋を撫でると、瞳を細めて顔に鼻を擦り寄せてくる。
くすぐったいその仕草に思わず笑みを溢した。
「もう一頭はどうします?」
「?」
その黒馬に挨拶をしつつ撫でていると、ミィナにそんなことを聞かれ私は思わず首を傾げた。
「ですのでもう一頭です。馬車は最低でも二頭いないと引けませんが」
「馬車でなんか行かないわよ?」
「え、じゃあ」
「この子に直接乗っていくわ。だって馬車だと小回り利かないし」
平然とそう伝えると、想定外だったのかミィナがぽかんと口を開いて固まった。
「忘れ物を届けに行くなら確かにそれが最善だな」
「ですよね!」
「あぁ。殿下は馬車で向かわれたから、同じ馬車だと速度の関係で追い付くのは難しいだろう」
「えぇ、それに殿下の乗られた馬車を見つけたらすぐに対応しなくてはなりませんし」
“見つからないように、って意味だけど”
目的地が同じなのだ。
万が一途中で追い付きでもすれば、中を改められるかもしれない。
そうなるとマズイ、中にいるのは目立たない服に着替えたここにいるはずのない人質。
“それってどう考えても脱走なのよね!”
あんな啖呵を切っておいて逃げ出す女みたいな評価をされたらそれこそもう挽回のしようがないだろう。
理想はこっそり視察についていき、こっそり国民の役に立ちつつ私の評判を上げて味方を増やして支持を集め存在感を示すこと。
そしてゆくゆくはこの国に私の居場所を作ることなのだから。
“その為にはやっぱり小回りのきく馬で追いかけて見つからないようにしつつアルド殿下と一緒に来て別行動をしている体にしなくっちゃ!”
馬番をしていた少年の後押しもあり、選んだ黒馬と唖然としているミィナも一緒に外に出る。
少年が渡してくれた鞍を着けて跨ると、見た目からもわかっていたがはっしりとしていて二人乗りも問題なく出来そうだ。
「さ、ミィナも」
「わ、私馬になんて乗ったことありません!」
「大丈夫、私が支えてるから」
嫌だと首を振る彼女に手を差し出す。青い顔をして拒否を続ける彼女だったが、私が笑顔のままずっと手を差し出し続けていると、このまま引かないことに気付いたのだろう。
オリーブ色のツリ目に涙を溜めながら渋々私の手に自身の手を重ねてくれたので、私はその勢いに任せ一気に彼女を引き上げる。
「ね、大丈夫だったでしょ?」
「た、高い……っ、こんな、こんなに高いなんて」
「高さだけじゃなく今から風も感じるわよ。じゃあこの馬は少し借りるわね!」
「あいよ、気を付けてな」
「両手で! 手綱は両手で持ってくださいぃ!!」
「手を振っただけじゃない」
まだ馬を歩かせてすらいないのに、私が手綱から片手を離しただけで大騒ぎするミィナ。
そんな彼女に苦笑しつつ、彼女を後ろから支えながら私は馬を走らせたのだった。
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