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エピローグ:夢の先
エピローグ:人質だった私が夢見た先は
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歓迎されないことなんてわかっていた。
それでも私は、今度こそ家族の愛を感じてみたいと不安に押しつぶされそうになりながらがむしゃらにもがいて――
「ん、んん……」
ふっと目が覚めた私がそっと窓の外を見ると、まだ空は白くなり始めたばかり。
まだまだ寝られる時間であることに安堵しつつ隣へと視線を向けると、珍しくぐっすり眠っているアルドがそこにいた。
“いつもはアルドの方が先に起きるのに”
彼の寝顔をこうしてまじまじと眺めることは初めてで、この貴重な機会に心が浮足立つ。
髪色と同じ赤褐色のまつ毛に縁どられた彼の瞳を思い出しながら、こうやって穏やかな時間に心から感謝した。
本当はこの結婚に手を上げた時、私も家族の一員だと引き留めて貰えることを期待していた。
でも今ならわかる。
幸せとは、誰かに期待し降ってくるのを待つのではなく、がむしゃらにもがき苦しみながらも自身の手で勝ち取るものなのだと。
「大好き」
「俺もだ」
「!」
眠る彼を起こさないように小声で言ったつもりなのに、平然と返事が来てドキッとする。
さっきまで思い出すだけだった彼の瞳がゆっくりと開かれると、どうして冷たそうなんて思ったのかわからないぐらい穏やかで温かな彼のアーモンドカラーの瞳と目が合った。
「んっ」
そっと顔を引き寄せられちゅ、と軽く唇が重なる。
「アルドって、口付け好きよね?」
「え」
“なんだかんだでしょっちゅうされてる気がするんだけど”
だが当の本人は無意識だったのか、私の言葉にぽかんとし、そしてすぐに頬が真っ赤に染まる。
「え、可愛いわね」
「うるさい」
心からの素直な感想だったのだが、それが逆によくなかったのか顔を隠すようにごろんと背中を向けてふて寝するアルドについ吹き出した私は、そんな彼の背中にぴったりと体をひっつけ顔をぐりぐりと押し付けた。
「ねぇ、そっち向かれると口付け出来ないじゃない」
ねぇねぇとしつこくアルドの背中に甘えていると、はぁ、とわざとらしい大きなため息を吐いて振り返る。
そのまま今度は私から口付けると、また彼の頬に朱が差した。
「やっぱりかわ……んっ」
「仕返し」
「……いいわよ、その勝負乗ってあげるわ!」
可愛い、と再度言葉にしようとした私の口がまた唇で塞がれ、挑発的な笑みを向けられるともうどちらからとかわからないくらい深い口付けを何度も交わす。
じゃれあっているようなこの時間が堪らなく幸福で、そしてこれが私の勝ち取った幸せなのだと思うと誇らしさすら感じた。
きっとまだまだ問題は沢山あるのだろう。
それでも彼とならきっと乗り越えられるから。
私はこれからの幸せな日々に想いを馳せて、最愛の人から与えられるその愛に心を委ねたのだった。
それでも私は、今度こそ家族の愛を感じてみたいと不安に押しつぶされそうになりながらがむしゃらにもがいて――
「ん、んん……」
ふっと目が覚めた私がそっと窓の外を見ると、まだ空は白くなり始めたばかり。
まだまだ寝られる時間であることに安堵しつつ隣へと視線を向けると、珍しくぐっすり眠っているアルドがそこにいた。
“いつもはアルドの方が先に起きるのに”
彼の寝顔をこうしてまじまじと眺めることは初めてで、この貴重な機会に心が浮足立つ。
髪色と同じ赤褐色のまつ毛に縁どられた彼の瞳を思い出しながら、こうやって穏やかな時間に心から感謝した。
本当はこの結婚に手を上げた時、私も家族の一員だと引き留めて貰えることを期待していた。
でも今ならわかる。
幸せとは、誰かに期待し降ってくるのを待つのではなく、がむしゃらにもがき苦しみながらも自身の手で勝ち取るものなのだと。
「大好き」
「俺もだ」
「!」
眠る彼を起こさないように小声で言ったつもりなのに、平然と返事が来てドキッとする。
さっきまで思い出すだけだった彼の瞳がゆっくりと開かれると、どうして冷たそうなんて思ったのかわからないぐらい穏やかで温かな彼のアーモンドカラーの瞳と目が合った。
「んっ」
そっと顔を引き寄せられちゅ、と軽く唇が重なる。
「アルドって、口付け好きよね?」
「え」
“なんだかんだでしょっちゅうされてる気がするんだけど”
だが当の本人は無意識だったのか、私の言葉にぽかんとし、そしてすぐに頬が真っ赤に染まる。
「え、可愛いわね」
「うるさい」
心からの素直な感想だったのだが、それが逆によくなかったのか顔を隠すようにごろんと背中を向けてふて寝するアルドについ吹き出した私は、そんな彼の背中にぴったりと体をひっつけ顔をぐりぐりと押し付けた。
「ねぇ、そっち向かれると口付け出来ないじゃない」
ねぇねぇとしつこくアルドの背中に甘えていると、はぁ、とわざとらしい大きなため息を吐いて振り返る。
そのまま今度は私から口付けると、また彼の頬に朱が差した。
「やっぱりかわ……んっ」
「仕返し」
「……いいわよ、その勝負乗ってあげるわ!」
可愛い、と再度言葉にしようとした私の口がまた唇で塞がれ、挑発的な笑みを向けられるともうどちらからとかわからないくらい深い口付けを何度も交わす。
じゃれあっているようなこの時間が堪らなく幸福で、そしてこれが私の勝ち取った幸せなのだと思うと誇らしさすら感じた。
きっとまだまだ問題は沢山あるのだろう。
それでも彼とならきっと乗り越えられるから。
私はこれからの幸せな日々に想いを馳せて、最愛の人から与えられるその愛に心を委ねたのだった。
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