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3.乗り越えろ、修羅場!⑥
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「すごい、めっちゃ格好いい……! しかも職業は弁護士なんですよね?」
「はい。あ、申し遅れました。私、村地高尚と申します」
「わぁ。ご丁寧にありがとうございます! って、えっ、村地さんって、加賀美法律事務所の弁護士さんなんですか?」
「あはは、私なんてまだまだですけどね」
きゃっきゃと話す浅見に思わずぽかんとしてしまう。
(私、名刺とか貰ってないんだけど)
初めて知った彼の勤め先。そして浅見の反応的にどうやら有名な弁護士事務所らしい。
「もしかしてみのり、知らなかったの?」
「え? うん」
私が話についてきていないことに気付いたのか、浅見が眉尻を下げて少し困ったようにくすりと笑う。
「加賀美法律事務所の所長さんといえばニュース番組にもコメンテーターとして出てるんだよ」
「そうなの?」
「所長がすごいだけですよ、僕個人が何かすごいわけではありません」
「そんなことないですよー! その事務所で働いてるってだけでもうすでにエリート弁護士じゃないですか!」
両の手のひらを合わせるように可愛く手を叩いた浅見は、またも困ったように私のへと視線を向けた。
「彼氏のことなのに……。もしかしてみのりって彼氏さんに全然興味ない……?」
「うぅーん」
興味ないか、と直球で聞かれ思わず口ごもる。私は恋愛漫画を描いているくせに恋愛から遠ざかっていたせいで、確かにそういった配慮が足りなかったのかも、と反省した。
「みのり、俺は」
「うん。浅見の言う通り高尚の事務所には正直興味なかったかも。弁護士ってことは知ってたけど、私が好きになったのって弁護士の高尚じゃなく、居酒屋でガン飛ばしてくるような失礼で子供っぽい高尚だったし」
自分の発言に深く納得しながらコクコクと何度も頷いた私は、パッと高尚を見上げた。
「何か緊急で連絡したい時とか、これからのことを考えるともう少し高尚の外面も知るようにするよ! いざという時に対応できないと困るもんね!?」
「いや、えっと」
「あ! 別に今すぐ何かってわけじゃないよ!? この間のメッセもそんな深い意味じゃないというか重い意味じゃないというかさ!? でも、確かに緊急連絡先がわからないって困るなって、今浅見に言われて気付いたよ。ありがとうね、浅見」
「えぇ? 私はそういうことを言いたいんじゃ」
「ふ、ははっ、おまっ、ははは!」
「なっ、私にも浅見に向けた外面少しは向けなさいよ!?」
「それ、くはっ、トドメじゃね? 暗にお客様対応と彼女対応の違いだってマウント取ってるように聞こえるけど」
「……ッ!」
「はぁ?」
突然吹き出した高尚は、何がそんなにツボに入ったのかお腹を抱えて笑い出すし、さっきまで饒舌だった浅見は黙ってしまうしで私はわけがわからない。
ひたすら首を傾げ、このよくわからない状況に戸惑っていると、依然笑いすぎで目元に涙を滲ませつつ高尚が私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
「ちょ、やめてよ、ボサボサになる!」
「既にボサボサのボロボロじゃねぇか」
「酷い! というか浅見の前で外面剝がれてるわよ、猫被りなおしたら?」
「うはっ、ここでダメ押しすんのかよ」
「もうっ、本当に意味わかんないんだけど」
ブスッとしながら乱雑に高尚の手を払い退ける。そんな対応をされているのに、相変わらず楽しそうに笑っている彼と、私の顔を交互に見た浅見は「帰る」と一言だけ残し家を出て行った。
「あ、というか増本さんから漫画預かってるよ。それ取りに来たんでしょ?」
彼の一番の目的を忘れてた、とリビングに置いてある預かった紙袋を取りに行こうとした私の手をパシッと高尚が掴んだ。
「それはあとでいい」
「え?」
「寝室、どこ」
きゅ、と手を握られそんなことを聞かれたせいか、一気に頬が熱くなる。
(前回シてから二週間だもんね)
付き合いたての期間の基準はわからないが、彼からぶつけられる劣情を考えればもう限界なのかもしれない。それに、私だって嫌じゃないから。
「……先に、シャワー浴びていい?」
握られている彼の手を握り返しながらそう告げる。若干恥ずかしく、でもヤキモチを妬いて拗ねていた姿を思い出すとくすぐったい。
あぁ。久しぶりに彼と口づけて、これから肌を重ねるのだろう。
ドキドキと期待から鼓動が早くなり、きっと赤くなっているのだろう私の頬を指先でなぞった高尚が、私が指をさして示した寝室へと迷いなく歩いていく。
扉を開き、ベッドへと私を横たわらせ、そして、私の額に冷感シートを貼った。
「は?」
「顔が赤いぞ。知恵熱だ」
「子供じゃないんですけど!?」
「ほら。掃除とうどんは作っといてやるから一旦寝ろ、隈が酷い」
「だー、もぉーッ! ほんっと、そういうところだからね、高尚はッ!」
にこにこと私を子供のように寝かしつける高尚を沸きあがる羞恥心のまま全力で睨み、布団を頭まで思い切りかぶる。
「おやすみ」
「おやすみなさいッ!」
そして私は、クスクスと布団越しに彼が笑っているのを聞きながらそのまま夢の中へとやさぐれつつ飛び込んだのだった。
「はい。あ、申し遅れました。私、村地高尚と申します」
「わぁ。ご丁寧にありがとうございます! って、えっ、村地さんって、加賀美法律事務所の弁護士さんなんですか?」
「あはは、私なんてまだまだですけどね」
きゃっきゃと話す浅見に思わずぽかんとしてしまう。
(私、名刺とか貰ってないんだけど)
初めて知った彼の勤め先。そして浅見の反応的にどうやら有名な弁護士事務所らしい。
「もしかしてみのり、知らなかったの?」
「え? うん」
私が話についてきていないことに気付いたのか、浅見が眉尻を下げて少し困ったようにくすりと笑う。
「加賀美法律事務所の所長さんといえばニュース番組にもコメンテーターとして出てるんだよ」
「そうなの?」
「所長がすごいだけですよ、僕個人が何かすごいわけではありません」
「そんなことないですよー! その事務所で働いてるってだけでもうすでにエリート弁護士じゃないですか!」
両の手のひらを合わせるように可愛く手を叩いた浅見は、またも困ったように私のへと視線を向けた。
「彼氏のことなのに……。もしかしてみのりって彼氏さんに全然興味ない……?」
「うぅーん」
興味ないか、と直球で聞かれ思わず口ごもる。私は恋愛漫画を描いているくせに恋愛から遠ざかっていたせいで、確かにそういった配慮が足りなかったのかも、と反省した。
「みのり、俺は」
「うん。浅見の言う通り高尚の事務所には正直興味なかったかも。弁護士ってことは知ってたけど、私が好きになったのって弁護士の高尚じゃなく、居酒屋でガン飛ばしてくるような失礼で子供っぽい高尚だったし」
自分の発言に深く納得しながらコクコクと何度も頷いた私は、パッと高尚を見上げた。
「何か緊急で連絡したい時とか、これからのことを考えるともう少し高尚の外面も知るようにするよ! いざという時に対応できないと困るもんね!?」
「いや、えっと」
「あ! 別に今すぐ何かってわけじゃないよ!? この間のメッセもそんな深い意味じゃないというか重い意味じゃないというかさ!? でも、確かに緊急連絡先がわからないって困るなって、今浅見に言われて気付いたよ。ありがとうね、浅見」
「えぇ? 私はそういうことを言いたいんじゃ」
「ふ、ははっ、おまっ、ははは!」
「なっ、私にも浅見に向けた外面少しは向けなさいよ!?」
「それ、くはっ、トドメじゃね? 暗にお客様対応と彼女対応の違いだってマウント取ってるように聞こえるけど」
「……ッ!」
「はぁ?」
突然吹き出した高尚は、何がそんなにツボに入ったのかお腹を抱えて笑い出すし、さっきまで饒舌だった浅見は黙ってしまうしで私はわけがわからない。
ひたすら首を傾げ、このよくわからない状況に戸惑っていると、依然笑いすぎで目元に涙を滲ませつつ高尚が私の頭をくしゃくしゃに撫でる。
「ちょ、やめてよ、ボサボサになる!」
「既にボサボサのボロボロじゃねぇか」
「酷い! というか浅見の前で外面剝がれてるわよ、猫被りなおしたら?」
「うはっ、ここでダメ押しすんのかよ」
「もうっ、本当に意味わかんないんだけど」
ブスッとしながら乱雑に高尚の手を払い退ける。そんな対応をされているのに、相変わらず楽しそうに笑っている彼と、私の顔を交互に見た浅見は「帰る」と一言だけ残し家を出て行った。
「あ、というか増本さんから漫画預かってるよ。それ取りに来たんでしょ?」
彼の一番の目的を忘れてた、とリビングに置いてある預かった紙袋を取りに行こうとした私の手をパシッと高尚が掴んだ。
「それはあとでいい」
「え?」
「寝室、どこ」
きゅ、と手を握られそんなことを聞かれたせいか、一気に頬が熱くなる。
(前回シてから二週間だもんね)
付き合いたての期間の基準はわからないが、彼からぶつけられる劣情を考えればもう限界なのかもしれない。それに、私だって嫌じゃないから。
「……先に、シャワー浴びていい?」
握られている彼の手を握り返しながらそう告げる。若干恥ずかしく、でもヤキモチを妬いて拗ねていた姿を思い出すとくすぐったい。
あぁ。久しぶりに彼と口づけて、これから肌を重ねるのだろう。
ドキドキと期待から鼓動が早くなり、きっと赤くなっているのだろう私の頬を指先でなぞった高尚が、私が指をさして示した寝室へと迷いなく歩いていく。
扉を開き、ベッドへと私を横たわらせ、そして、私の額に冷感シートを貼った。
「は?」
「顔が赤いぞ。知恵熱だ」
「子供じゃないんですけど!?」
「ほら。掃除とうどんは作っといてやるから一旦寝ろ、隈が酷い」
「だー、もぉーッ! ほんっと、そういうところだからね、高尚はッ!」
にこにこと私を子供のように寝かしつける高尚を沸きあがる羞恥心のまま全力で睨み、布団を頭まで思い切りかぶる。
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