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ポンコツ令嬢は次期宰相様と××したい
4.ここが本番というやつですのね!
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「ふふ、今日こそ耐えきれるといいね?」
「前回と同じ失態をするつもりはありませんのことよ!?」
「今日は君のお披露目も兼ねてるから、ずうっと俺の側にいるんだよ?」
にこにこと笑うディーデリック様の隣に立つ私は、彼の瞳の色に合わせたグレーの刺繍が入ったドレスを身に纏い王城の扉の前に立っている。
相変わらず彼がずっと浮かべている笑顔は、周りを見る時とは違い私を見つめる時だけ温かさがある事に最近気が付き⋯
そして一度気付いてしまうと、その事実はいつも甘く私の心をくすぐっていた。
“はじめてディーデリック様と出る夜会⋯!”
名目としては王族主催の王太子になられた殿下の側近を選ぶ為の夜会ではあるが、既にそのメンバーはほぼ内定している。
選ぶ、というよりお披露目に近いこの夜会は、令嬢達からすれば玉の輿に乗るための出会いの場でもあって。
“それ即ち、乙女の戦場――!!”
「私が必ずディーデリック様をお守り申し上げますわッ!!」
「わぁ、心強いなぁ」
くすくすと笑っているディーデリック様の、その緊張感のない様子に脱力しかけた私だったのだが⋯
「ッ!?」
「⋯気、抜いたらだめだよ?」
突如ヴゥンと振動をはじめた魔道具に体をびくりと跳ねさせた。
“⋯くっ、しかしこれはいわば試練⋯っ!”
私とお揃いの刺繍が入ったウエストコートに身を包み、私をエスコートすべくダフネ家まで迎えにきてくださったディーデリック様は、よりにもよってこんな日に執務室で挿れられた魔道具をにこにこと私の前に掲げて見せたのだ。
『こういう時こそ心と体を鍛えて快楽への耐性をつけなくちゃだよね?』
と優雅に微笑んだディーデリック様は、私の下腹部に再び顔を埋めた後にぷちゅりと魔道具を装着して――
“さぁ、行こうか、ではないんですのよぉ⋯っ!!”
内心全力で抗議するが、しかしこれも彼の妻になるためには必要な事なのだろう。
「⋯私、絶対絶対負けませんわぁぁ!!」
「あ、お気になさらず。ディーデリック・ローランドとその婚約者のクリスティナ・ダフネです」
「⋯あ、か、畏まりました、ディーデリック・ローランド様とそのご婚約者、クリスティナ・ダフネ様ご入場です!」
名前を伝えるとすぐに入場の掛け声がなされ、扉が大きく開かれる。
色とりどりに輝くようなその会場は、さすが王家主催だと思うような真っ赤な薔薇が至るところに飾られていてー⋯
“この薔薇って⋯”
「私がディーデリック様の寝室に潜入したときに飾られていた⋯!」
「んっ、んんっ、そうだね、その花だけど潜入は黙っておこうね」
「あら?」
「君も役目がバレたら困るでしょ?」
「まぁまぁまぁ!その通りですわっ!私静かに出来ましてよぉっ!!」
彼の言葉に深く頷いた私が、エスコートの為に差し出された腕にそっと手を添える。
その添えた手に重ねるように、ディーデリック様も手を重ねー⋯
「――ッ!?」
小さく振動していたその魔道具の動きが、突然ゆっくりと抽挿し驚いた。
“ど、どうして⋯っ!?”
慌てて彼を見上げるが、しれっとした表情の彼の両手はもちろん私の目の前にあって。
“ディーデリック様が動かしてる訳じゃ、ない⋯の!?”
だが周りには私達しかおらず、それなのにゆっくりと出入りするその魔道具に動揺する。
そんな私の動揺に気付いたらしい彼が意味深に口角を上げた。
「⋯気に入った?」
ぼそりと告げられた言葉にピクッと反応する。
それはつまり、細かい振動をするだけだったあの棒が、ゆっくりと伸縮し私のナカを擦り上げるということを意味していてー⋯
「まさか、進化したというんですの⋯っ!?」
「進化じゃなくて新機能かな。耐えられなくなったらいつでもおねだりしてね?」
「⋯耐えて、みせ、ます⋯っ!」
激しい抽挿ではないが、ゆっくりと動くからこそ自分のナカでの動きが明確にわかる。
まさか夜会の場で、だとは想像してもいなかったが⋯
それでも、特訓の成果を出さなくてはいけないのだから!
「⋯私、負けませんわぁっ」
「意地張っちゃったかぁ~」
カラカラと笑った彼に導かれるように歩きだした私は、それでも堪える表情を取り繕うべく笑顔を張り付け彼に寄り添った。
まず最初に向かうのはこの国のトップである陛下と皇后様のところである。
彼の側に寄り添いそっと頭を下げると、流石に空気を読んだらしく魔道具は動きを止めた。
次は王太子である殿下に挨拶すべく、彼と会場内を進むと一際人が集まっている場所がありー⋯
“!”
その中心には、この国の王太子である殿下と兄の姿があった。
「お、お兄様!?」
「⋯クリスティナ、まずは殿下に挨拶をしろ」
サクッと兄に指摘された私はハッとし、慌てて殿下に向き直る。
私の無作法でディーデリック様まで恥ずかしい思いをさせてしまったかもとチラリと彼を見上げるが、相変わらず笑顔を崩さずにこりと微笑みかけてくれー⋯
「構わないよ、君がディーデリックを射止めたクリスティナ嬢か」
ディーデリック様に負けず劣らず笑顔をこちらに向けてくださった殿下。
もしかしたらこの場に殿下の側近であるディーデリック様と、殿下の影の顔も持つ兄がいるからなのかもしれないがー⋯
“思ったよりも気さくな方なのね”
「私も殿下の影として任務を行っていた可能性があったのかしら⋯」
「――⋯⋯。」
“といっても、今の私はディーデリック様のものなのだけれどもね!”
現実にならなかった未来を想像し、そして自身の現実を考える。
もし過去に戻る能力が私にあったとしても、きっと私は今と同じ未来を選ぶだろう。
――そう考えると、彼が隣にいるこの現実がくすぐったく感じ頬が弛みそうになる。
「やだ、笑っちゃいそうだわ!」
「ふぅん、そんなに殿下に会えたのが嬉しいのかな⋯」
「え?」
ぼそりと何か聞こえ、ディーデリック様を見るが彼は先ほどまでと同じ笑顔を私に向けていて――⋯
「――ッ!?」
ナカに挿ったままだった魔道具が、ゆったりとした動きではなく、まるで性急に求めるよう私の奥をぱちゅっと突き思わず息を呑む。
「!⋯!?、!!?」
ゆったりとした動きの時は形を覚え込ませるようだったのに対し、突然激しく動き出した今度はまるで兄や殿下の前であられもない声色を溢れさせながら絶頂させたいようだった。
“た、だめよクリスティナ、今気持ち良くなったら私がどんな状況かバレちゃう⋯!”
そしてそれは、快感に耐えられないはしたない令嬢と証明することで。
“そんなの⋯ダメ⋯っ!”
「ディーデリック様に相応しくないと思われてしまいますわぁ~っ!?」
「んんッ!」
「?」
突然横で小さな咳払いが聞こえたと思ったら、魔道具の動きが一気に弱まりホッとする。
少し不思議に思いつつディーデリック様を見ると心なしか頬が赤く染まっており⋯
「⋯おい、ディーデリック⋯お前まさか⋯」
「なにか?」
「⋯妹君に賠償が必要ならいつでも請求するように⋯」
「ありがとう、ございます⋯」
「??」
兄と殿下はディーデリック様とは対照に青くなっており思わず首を傾げる。
私が不思議に思い口を開こうとすると、そんな私を遮るようにディーデリック様が私の前にエスコートしてくださっている腕とは反対の手を差し出して。
「⋯そろそろダンスの時間です。一曲踊ってくださいますか?」
「!」
そんな彼に私も笑顔を返しながら、そっと彼の手に自身の手を重ねた。
「前回と同じ失態をするつもりはありませんのことよ!?」
「今日は君のお披露目も兼ねてるから、ずうっと俺の側にいるんだよ?」
にこにこと笑うディーデリック様の隣に立つ私は、彼の瞳の色に合わせたグレーの刺繍が入ったドレスを身に纏い王城の扉の前に立っている。
相変わらず彼がずっと浮かべている笑顔は、周りを見る時とは違い私を見つめる時だけ温かさがある事に最近気が付き⋯
そして一度気付いてしまうと、その事実はいつも甘く私の心をくすぐっていた。
“はじめてディーデリック様と出る夜会⋯!”
名目としては王族主催の王太子になられた殿下の側近を選ぶ為の夜会ではあるが、既にそのメンバーはほぼ内定している。
選ぶ、というよりお披露目に近いこの夜会は、令嬢達からすれば玉の輿に乗るための出会いの場でもあって。
“それ即ち、乙女の戦場――!!”
「私が必ずディーデリック様をお守り申し上げますわッ!!」
「わぁ、心強いなぁ」
くすくすと笑っているディーデリック様の、その緊張感のない様子に脱力しかけた私だったのだが⋯
「ッ!?」
「⋯気、抜いたらだめだよ?」
突如ヴゥンと振動をはじめた魔道具に体をびくりと跳ねさせた。
“⋯くっ、しかしこれはいわば試練⋯っ!”
私とお揃いの刺繍が入ったウエストコートに身を包み、私をエスコートすべくダフネ家まで迎えにきてくださったディーデリック様は、よりにもよってこんな日に執務室で挿れられた魔道具をにこにこと私の前に掲げて見せたのだ。
『こういう時こそ心と体を鍛えて快楽への耐性をつけなくちゃだよね?』
と優雅に微笑んだディーデリック様は、私の下腹部に再び顔を埋めた後にぷちゅりと魔道具を装着して――
“さぁ、行こうか、ではないんですのよぉ⋯っ!!”
内心全力で抗議するが、しかしこれも彼の妻になるためには必要な事なのだろう。
「⋯私、絶対絶対負けませんわぁぁ!!」
「あ、お気になさらず。ディーデリック・ローランドとその婚約者のクリスティナ・ダフネです」
「⋯あ、か、畏まりました、ディーデリック・ローランド様とそのご婚約者、クリスティナ・ダフネ様ご入場です!」
名前を伝えるとすぐに入場の掛け声がなされ、扉が大きく開かれる。
色とりどりに輝くようなその会場は、さすが王家主催だと思うような真っ赤な薔薇が至るところに飾られていてー⋯
“この薔薇って⋯”
「私がディーデリック様の寝室に潜入したときに飾られていた⋯!」
「んっ、んんっ、そうだね、その花だけど潜入は黙っておこうね」
「あら?」
「君も役目がバレたら困るでしょ?」
「まぁまぁまぁ!その通りですわっ!私静かに出来ましてよぉっ!!」
彼の言葉に深く頷いた私が、エスコートの為に差し出された腕にそっと手を添える。
その添えた手に重ねるように、ディーデリック様も手を重ねー⋯
「――ッ!?」
小さく振動していたその魔道具の動きが、突然ゆっくりと抽挿し驚いた。
“ど、どうして⋯っ!?”
慌てて彼を見上げるが、しれっとした表情の彼の両手はもちろん私の目の前にあって。
“ディーデリック様が動かしてる訳じゃ、ない⋯の!?”
だが周りには私達しかおらず、それなのにゆっくりと出入りするその魔道具に動揺する。
そんな私の動揺に気付いたらしい彼が意味深に口角を上げた。
「⋯気に入った?」
ぼそりと告げられた言葉にピクッと反応する。
それはつまり、細かい振動をするだけだったあの棒が、ゆっくりと伸縮し私のナカを擦り上げるということを意味していてー⋯
「まさか、進化したというんですの⋯っ!?」
「進化じゃなくて新機能かな。耐えられなくなったらいつでもおねだりしてね?」
「⋯耐えて、みせ、ます⋯っ!」
激しい抽挿ではないが、ゆっくりと動くからこそ自分のナカでの動きが明確にわかる。
まさか夜会の場で、だとは想像してもいなかったが⋯
それでも、特訓の成果を出さなくてはいけないのだから!
「⋯私、負けませんわぁっ」
「意地張っちゃったかぁ~」
カラカラと笑った彼に導かれるように歩きだした私は、それでも堪える表情を取り繕うべく笑顔を張り付け彼に寄り添った。
まず最初に向かうのはこの国のトップである陛下と皇后様のところである。
彼の側に寄り添いそっと頭を下げると、流石に空気を読んだらしく魔道具は動きを止めた。
次は王太子である殿下に挨拶すべく、彼と会場内を進むと一際人が集まっている場所がありー⋯
“!”
その中心には、この国の王太子である殿下と兄の姿があった。
「お、お兄様!?」
「⋯クリスティナ、まずは殿下に挨拶をしろ」
サクッと兄に指摘された私はハッとし、慌てて殿下に向き直る。
私の無作法でディーデリック様まで恥ずかしい思いをさせてしまったかもとチラリと彼を見上げるが、相変わらず笑顔を崩さずにこりと微笑みかけてくれー⋯
「構わないよ、君がディーデリックを射止めたクリスティナ嬢か」
ディーデリック様に負けず劣らず笑顔をこちらに向けてくださった殿下。
もしかしたらこの場に殿下の側近であるディーデリック様と、殿下の影の顔も持つ兄がいるからなのかもしれないがー⋯
“思ったよりも気さくな方なのね”
「私も殿下の影として任務を行っていた可能性があったのかしら⋯」
「――⋯⋯。」
“といっても、今の私はディーデリック様のものなのだけれどもね!”
現実にならなかった未来を想像し、そして自身の現実を考える。
もし過去に戻る能力が私にあったとしても、きっと私は今と同じ未来を選ぶだろう。
――そう考えると、彼が隣にいるこの現実がくすぐったく感じ頬が弛みそうになる。
「やだ、笑っちゃいそうだわ!」
「ふぅん、そんなに殿下に会えたのが嬉しいのかな⋯」
「え?」
ぼそりと何か聞こえ、ディーデリック様を見るが彼は先ほどまでと同じ笑顔を私に向けていて――⋯
「――ッ!?」
ナカに挿ったままだった魔道具が、ゆったりとした動きではなく、まるで性急に求めるよう私の奥をぱちゅっと突き思わず息を呑む。
「!⋯!?、!!?」
ゆったりとした動きの時は形を覚え込ませるようだったのに対し、突然激しく動き出した今度はまるで兄や殿下の前であられもない声色を溢れさせながら絶頂させたいようだった。
“た、だめよクリスティナ、今気持ち良くなったら私がどんな状況かバレちゃう⋯!”
そしてそれは、快感に耐えられないはしたない令嬢と証明することで。
“そんなの⋯ダメ⋯っ!”
「ディーデリック様に相応しくないと思われてしまいますわぁ~っ!?」
「んんッ!」
「?」
突然横で小さな咳払いが聞こえたと思ったら、魔道具の動きが一気に弱まりホッとする。
少し不思議に思いつつディーデリック様を見ると心なしか頬が赤く染まっており⋯
「⋯おい、ディーデリック⋯お前まさか⋯」
「なにか?」
「⋯妹君に賠償が必要ならいつでも請求するように⋯」
「ありがとう、ございます⋯」
「??」
兄と殿下はディーデリック様とは対照に青くなっており思わず首を傾げる。
私が不思議に思い口を開こうとすると、そんな私を遮るようにディーデリック様が私の前にエスコートしてくださっている腕とは反対の手を差し出して。
「⋯そろそろダンスの時間です。一曲踊ってくださいますか?」
「!」
そんな彼に私も笑顔を返しながら、そっと彼の手に自身の手を重ねた。
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