四煌の顕現者:ゼクス・ファーヴニルの復讐譚

鶴生世乃

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第1章 邂逅

校舎裏の戦い

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「武器……武器……」

 ――正直ここで【顕現オーソライズ】は、使いたくない。
 目立つと非常に厄介なことになる、と。

 俺は冷撫の方を見つめる。

「ここで【結晶】を消費したくないんだけど、何か得物もってないか?」

 基本的な【顕現オーソライズ】ですら、自動的に安定性と速度を調整してくれる【熾火結晶ボーンファイア・クリスタル】には、勿論安定装置としての寿命がある。
 
 こんな所で無駄に消費するより、もっと――目立つところで使いたい。
 
「ありますよ」

 冷撫がまたもや、制服のポケットから何かを取り出す。
 こちらに手渡してきたものは、警棒らしきものだ。

 本当に何でも持ってるな。
 
 ――ていうかなんで……、警棒状の細長いモノを制服に仕舞っておけるんだろう?
 俺が首を傾げる時間的余裕は、ない。

 あちらはこちらに気づいていないが、ソレを良しとして行為に及ばれても困る。
 ソレは本当に、困る。
 しかし、ここでぐだぐだしていたら――。

 相手が、こちらに気づくかも分からないのだ。

「行ってくるよ」
「はい、ご武運をお祈りしております」
「……え?」

 一大決戦になるとでも思っているんだろうか……。
 ならないんだけどなぁ。




――――



 出来るだけ男達に近づいてから、俺は警棒を強く握り込んだ。
 これは顕現力――【顕現オーソライズ】を行うためのエネルギーに呼応――して伸縮するタイプだろう。
 顕現力を警棒に流し込み、最大限に伸ばす。

 なんでこういう野蛮な武器を、良いところのお嬢様である冷撫が持ってるんだろう? 
 ……という疑問はあるが、まあいいや。

「よし」
 
 この警棒はただの警棒ではない。
 【顕装《アーティファクト》】と呼ばれる、【顕現者オーソライザー】の補助兵装だ。

 【顕現オーソライズ】という能力はこう言ったモノを必要とせず、自身の意志力で武器を生成する能力が主であるが。
 その源である、顕現力を流し込むことでソレっぽい事が出来るのがこの【顕装】である。

 今回はそんなに顕現力を流し込んでいないため、頭に向かって振り下ろしたところで身体の丈夫な【顕現者】なら傷一つつかないだろう。
 せいぜい意識を失うくらいだ。

「こんにちは」

 彼らの直ぐ横に迫るまで、男達はこちらに気づかなかった。
 獲物に夢中だったのだろう。
 自らに迫る脅威に気づいたときには、もう遅い。

 ――俺は既に、警棒を男へたたき込む体勢に入っていた。

「がっ!?」

 自身のイメージに従うように、身体はつま先から腕まで。
 右腕の筋肉が連なって動く。

 衝突の瞬間、警棒を握り込んだ俺の身体と得物とが同一のモノと化し――。

「なんだ!?」

 それは、確かな『凶器』となった。

 男4人のうちの1人が、攻撃を受けて膂力によって吹き飛ばされる。
 衝突の勢いそのままに、全体重を乗せて脇腹にたたき込んだのだ。



 ――効果は抜群だろう。

 実際その通りで、俺に殴られた男は吹っ飛んだ先で漫画のように二度三度と回転する。
 そして最終的には顔面を地面へたたき付け、そのまま動かなくなる。

「なっ」

 今まで、目の前の少女に劣情をさらけ出そうとしていた男は、やっとこちらに気がついた。
 先程吹き飛ばした生徒は、既に気絶している。
 流石は卵とは言え【顕現者】。

 ――命に別状はない。

「お前っ――!」

 【顕現(オーソライズ)】には基本的に、詠唱が必要である。
 この人達は普通の、戦い慣れていない人達だろう。
 【顕現(オーソライズ)】の詠唱なんて時間がかかる。

 こういった時は、唱えるべきではない。

「遅いよ」

 ピーピーと喚く男達を意に介することもなく、膝を折り――。
 更に一人の懐に潜り込み、そのまま体重移動と連動して右の拳を躊躇うことなく、真っ直ぐに振り向く。

 鈍い音。俺の拳は、相手の腹に突き刺さっていた。
 吐瀉物が周りにまき散らされるが、俺は特に気にしない。

 ――あと一人。

 1分たらずで2人ノックアウトした。
 上級生の唯一立っている男は、こちらを恐れの目で見つめている。

「何が目的だ――!? こんなことして、何もなく済むと思ってるのか!」
「小物のセリフだな」

 お前が言うな。と言い返すのもバカバカしくなり、俺は首を振る。
 冷躯さんの元で訓練を積みすぎた可能性すらあった。

 それほどに、相手が弱くみえる。全くもって手応えがない。

「聞いてるのか。……ってんだろぉ?」
「聞いてない」

 非常に、面倒なのだ。
 俺の力はなんのためにあるんだ、という苦悩に陥ってしまいそうになる。

 冷躯さんに鍛えてもらったこの身体能力も、【神牙結晶】で欠点を補った【顕現】の力も。
 こんなに、くだらない茶番に使うべきではない。

 もっと有意義なことに使うべきなのだ。アマツを助けたり、冷撫を助けたりとか。
 ……あと、復讐したりとか、俺と同じような悩みを持っている【顕現者(オーソライザー)】の代弁者になったりだとか。

 ――決して、決して。
 こんな男たちに向かって、見も知らぬ少女の為に使うべき力ではない。

「なんなんだ、なんなんだ。なんなんだよ」
「これ以上はダメです! 相手が死んでしまいますよ」

 ……と、声。涼風のように耳へ舞い込むそれは、冷撫の声だ。
 どうも、俺は思考の濁流へ……見事に飲み込まれていたらしい。

 声に我に返ってみると……俺は、男の襟首を掴んで彼等の後頭部を、壁に打ち付けていた。
 男は既に白目を剥き、完全に意識を失っている。

「ごめん」
「いいえ、大丈夫ですよ」

 手遅れにならなくて良かった、と胸をなで下ろす冷撫に対して。

 俺は感情の制御が出来ていないことに、若干の焦りを感じていた。
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